ベックリンの傑作
19世紀末、象徴主義の巨匠、アルノルト・ベックリンが描いた傑作、「死の島」。
静かと神秘に満ちたこの絵は、多くの人々の想像力をとらえ、今もなお、死生館について深く問いかけます。
ここは、とある美術館の一角。
目の見えないtomyのために、マリアがその絵の光景を言葉で紡ぎ出そうとしています。
この絵の構図は、とてもシンメトリック、左右対照的で、強い安定感と同時に、どこか閉鎖的な印象を受けるわ。
画面のほとんどを占めているのは、暗く、重い青緑色の海。
その海の上に、まるでそそり立つ巨大な破壊石のように、荒々しい岩の島が浮かんでいるの。
島は画面中央に堂々と配置されていて、見る人の視線は有無を言わさず、その岩壁へと引き込まれていくわ。
暗い海に、岩の島、色彩も重苦しいのだろうね。
ええ、色彩は全体的に非常に暗く、抑制されているわ。
空はわずかに明るいものの、濃い青と灰色が混ざったような鉛色の夕枯れ、あるいは夜明け前の空。
光の源はどこにあるのかわからないけれど、その光が岩の島の正面だけをわずかに照らしているの。
絵の手前、暗い水面には目的地である島に向かう小さな手漕ぎの船が浮かんでいるね。
船は画面手前の右側から島の切り立った崖にある小さな水門のような入り口へと静かに向かっている。
船に乗っているのは二人、いや、正確には二つの存在ね。
船の後尾で貝を操っているのは、全身が暗い色にくるまれた負など、おそらくはギリシャ神話の渡し森カロンを思わせる人物。
彼の表情や視線は暗くて判別できないけれど、視線はまっすぐに島の入り口を見つめているように見えるわ。
もう一人は、船の船首近くに直立して立っているわ。
その人物は、頭から足元まで真っ白な布かローブで全身をすっぽりと覆われているの。
フードで顔は完全に隠されていて、肌の色も髪の色も目の色も何も見えない。
その純粋な白が、周囲の深い青や黒、岩の茶色の中で強烈なコントラストを生み出して、見る人の目を釘付けにするわ。
白い人物、それが死者なのだろうか。
そう解釈するのが一般的ね。
白い人物のすぐ前、船の床には布のようなものでくおわれた長方形の物体がある。
花はずなのようなもので飾られていて、これはカンタと考えられているわ。
その棺を、白い人物は静かにでもしっかりと守っているように見える。
絵の深い意味
白いの人物の姿勢は微動だにせず、失勢でどこか厳職よ。
ナレーター
船が向かう島は洪涼しています。
岩場は深く、暗い影を落とし、まるで要塞のように水面にそそり立っています。
この島はまるで巨大な石の建築物のよう。
岩肌はごつごつとしていて、薄茶色や灰色がかった岩でできているの。
その岩壁には、まるで窓や墓穴のようにいくつもの四角い穴がうがってあるわ。
そして島の頂上や崖の上には、鉛筆のように細長く、濃い緑色や黒に近い糸杉の木立ちが密集しているの。
糸杉は南欧では古くから墓地によく植えられる木だから、この島の性格を決定づけているわね。
船長
糸杉の黒に近い緑、白い人物と黒い木に、強い対比だね。
ナレーター
本当に。その糸杉の暗い色が空の明るさを吸い込んで、一層島を重く神秘的な場所にしている。
島には小さな白い石造りの建物も見えて、それは祭壇かあるいは小さな礼拝堂のようにも見えるわ。
その建物も岩と同じく月の光か何かに照らされて、わずかに白く輝いているの。
ナレーター
ベックリンの死の島は、単なる風景画ではありません。
それは、死へと向かう旅、そして死後の世界に対する、画家自身の、そして時代の瞑想そのものなのです。
マリア、この絵は音もなく、すべてが静まり返っているのを感じるわ。
風の音も場の音も何もかも、それは絶対的な静寂、永遠の世界を表現しているのかもしれない。
あても寂しいけれど、同時に厳粛な微臭もある。あなたにはこの静けさが届いているかしら?
ああ、マリア、君の言葉で、暗く冷たい水と静かにそそり立つ岩の感触が伝わってくるよ。
白い孤独と黒い永遠。