ルーベンスの作品の紹介
ボイストラマ ルーベンス キリストの昇架
木々のざわめきと鳥たちのさえずりが聞こえる静かな午後。 美術館の一室にマリアとトミーの二人がいました。
トミーは白状を片手にマリアの隣に立っています。 彼らの目の前にはルーベンスの大作
キリストの昇架が描けられています。 マリア、今からこの絵について説明するね。
準備はいい? うん、よろしくマリア。君が感じたことを僕にも教えてくれると嬉しいな。
はい。 この絵はね、縦が4メートル以上、横が3メートル以上もある
とても大きな油絵なの。 だから私たち二人並んでも全体を視界に収めるのが大変なくらい。
全体の構図と色 この絵の構図は圧倒的な迫力に満ちています。
画面の中央に大きく斜めの線が一本走っています。 それはキリストが描けられている十字架です。
この十字架が絵全体を対角線に分けるように配置されているため 見る者の視線は自然と左下から右上へと導かれていきます。
まず画面中央にいるのがイエスキリスト。 彼は十字架にかけられ苦痛に顔を歪めているわ。
彼の髪は赤茶色で乱れているわ。 肌は青白くて汗と血で光っているように見える。
そしてその視線は苦痛に耐えながらも天を見上げているの。 深い悲しみとそれでも希望を捨てないような強い眼差しを。
天を見上げているんだね。
そしてそのキリストを今まさに持ち上げようとしている男たちが 画面の右側に8人くらい描かれているわ。
みんな力強く筋肉粒々の体をしていて色黒な肌に汗が光っている。 彼らはみんな
くすんだ赤や茶色の服を着ていてその顔はどれも苦痛に歪んでいる。 この重い十字架を持ち上げるのに
どれだけの力がいるのかが伝わってくるの。 彼らの視線は十字架や足元に力を入れているところに注がれていて
真剣そのものよ。 画面の左側にはこの出来事を見つめる人々が描かれています。
キリストの足元画面の左下には嘆き悲しんでいる女性たちがいる。
絵の持つ意味と感情
一人はキリストの足元にうずくまって頭を抱えているわ。 彼女の着ている青い服が暗い画面の中で際立って見える。
その隣には顔を歪めて悲しんでいる女性がいて彼女の視線はキリストに注がれている。 そしてその女性たちの後ろには槍を持ったローマ兵たちが馬に乗って立っているの。
彼らの顔は厳しい表情で冷たい光を放つ甲冑を身につけている。 その兵士たちの視線は?
彼らはねまるでこの出来事を監視しているように私たちの方 つまり絵の外を見ているように感じる
冷たい 無関心な視線よ
激しい人間のドラマが繰り広げられる中背景には穏やかな風景が広がっています 絵の奥には木々が茂る森が描かれているわ
全体的に暗い緑と茶色が使われていて少し不気味な雰囲気なの でもその森の奥の方には遠くの街並みがぽんやりと見えている
街並み? そうまるでこの悲劇的な出来事とは無関係に日常が続いているようにも見える
そして空は熱い雲に覆われていてその雲間のから一筋の光が差し込んで キリストを照らし出しているの
この光がこの絵の希望を象徴しているように感じられるの マリアは話し終えて静かにトミーの隣に立ちました
トミーは目を閉じて彼女の言葉を心の中で反数しているようです ありがとうマリア
君の説明のおかげでこの絵が持つ力 その激しい動きと人々の感情が僕の中に鮮明に浮かび上がってきたよ
どういたしまして 二人の間にしばし静けさが流れました
絵画の前に立つ二人はされどまるで同じ景色を心の中で共有しているかのように見えました