作品の描写
ボイスドラマアンリルソーの蛇使いの女。 目の前に広がるのはアンリルソーが描いた蛇使いの女。
1907年の作品です。 熱帯の密林を舞台にしたこの絵をマリアがトミーに言葉で伝えます。
マリア準備はいい? 想像の旅に出よう。目の前にあるのはジャングルだよ。
まるで私たちが今この熱帯の湿った空気を吸っているみたいに感じる。 うん、マリア、聞かせて。
どんなジャングルなんだ? まず画面全体を見渡してみて、横に長い大きな絵でほとんどが暗い緑色で埋め尽くされている。
右から左に向かって大きな葉っぱや細い茎がたくさん描かれていて、 それがまるで緑のカーテンみたいに分厚く重なり合ってるんだ。
それは何かの植物なのかな? そう、たぶんバナナの葉っぱとか熱帯のシダ植物だと思う。
それからそのジャングルの奥には画面の真ん中あたりに湖が描かれている。 真っ暗で鏡みたいに空を映し出している。
湖の向こうには何かある? 湖の向こうには細い三日月が浮かんでる。
月明かりはとても弱くて、からおじて見えるくらいだ。 でもその光のおかげでジャングルのシルエットが浮かび上がってる。
そしてその湖のほとりに絵の中心人物の彼女は立っている。 彼女は黒い肌をしていて裸だよ。
ただ腰から下を赤と青のストライプが入った布で巻いているだけ。 髪は肩にかかるくらいの長さで黒くて縮れている。
そして一番特徴的なのはその髪に真紅の大きな花を差していること。 真紅の花、
それは鮮やかなんだろうね。 そう、まるで血の色みたいに周りの暗いジャングルの中でその赤い花がたった一つの生命の光みたいに輝いているんだ。
彼女の顔は横向きでまっすぐ私たちの方を見ているわけじゃない。 表情はほとんどないんだけど少しうつむき加減で静かに何かを考えているみたい。
目はとても大きくて黒く描かれている。 裸なんだね。 そう、でもいやらしさは全くなくてむしろ自然の一部に見えるんだ。
マリアの説明
彼女は笛を吹いている。 左手で笛を口に当てて右手の指でその笛を押さえている。
笛か。 それで蛇使いの女なんだね。 そう、
彼女の足元を見て。 彼女の周りにはたくさんの蛇がうごめいている。
湖の暗い源から太い蛇が這い上がってきて彼女の周りをぐるぐると巻いているんだ。
その蛇たちは黒やくすんだ緑、茶色で描かれていて色どりどりではないけれどその存在感はすごい。
次に周囲の風景と音を説明するね。 ジャングルの植物の葉っぱの間によく見ると鳥の目が光っているのがわかる。
黄色の目や少し青みがかった目もある。 たくさんの鳥たちがこの音色に引き寄せられているみたい。
そうか、彼女の笛の音にジャングルの動物たちが耳をすませているんだ。 なんだかその音が聞こえてくるようだ。
うん、この絵は音のない世界のはずなのに、 彼女の笛の音やジャングルのざわめき、
虫の声、 そして蛇が動くかすかな音まで全部聞こえてくるような気がするんだ。
この絵はトミー、まるで僕らが知らないもっと深い世界の静かな夜の物語を語りかけてくるみたいだよ。
ありがとうマリア。 君のおかげでとても鮮明にその絵が見えた気がする。
黒い肌の彼女、赤い花、 そしてたくさんの蛇たち。
そしてその奥の湖に浮かぶ三日月。 なんだか本当にそこにいるみたいだ。
ナレーター。 言葉は時に目が見せてくれる景色よりももっと豊かに心を揺さぶる。
アンリルソーが描いたこの幻想的な世界はマリアの言葉を通してトミーの心の中に新たな色を灯したのでした。