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2025-08-20 06:17

ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」

世界の名画ランキング第10位 ルノワール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」のボイスドラマです

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2025年夏の東京、上野の森美術館で開催されているオルセイ美術館展。多くの人でにぎわう会場の一角で、二人の男女が立ち止まっていました。
マリアさん、ありがとう。こんなに混んでるのに、僕のために時間を取らせちゃって。
いいのよ、tomyさん。私もこの絵大好きだから。それに、こうしてtomyさんと一緒にいると、私自身も新しい発見があるの。
この絵はルノワールのムーラン・ド・ラ・ギャレットだっけ?確かルノワールの代表作の一つなんだよね。
ええ、そうよ。さあ、tomyさん、この絵の前に立ってみて。私がこの絵の魅力を全部言葉にして伝えるから。
マリアはtomyの手を引いて絵の正面へと案内しました。tomyは静かにその絵の前に立ちます。
tomyさん、準備はいい?じゃあ始めるわね。この絵は縦が約131cm、横が約175cmもあるとっても大きな油絵よ。
私たち二人をすっぽり包み込んでくれるようなそんな大きさ。
まず絵の全体像から説明するわね。描かれているのはパリのモンマルトルにあった野外ダンスホールムーラン・ド・ラ・ギャレット。
画面いっぱいに陽気な人々が描かれているの。まるで私たちもその場にいるかのような臨場感があるわ。
陽気な人々か。賑やかそうな声が聞こえてきそうだ。
ええ、人々は画面の右から左へそして奥へと流れるように配置されているの。まるで渦を巻いているみたい。
だから絵のどこを見ても視線が止まることがないわ。画面の向こうから人々の笑い声や音楽が聞こえてくるような気がするの。
絵の構図の中心は画面の左下にある座っている男女のグループね。若い男の人たちが座っていてその周りを女性たちが囲んでいる。みんなおしゃべりに夢中よ。
なるほど。そうか、僕の耳にはその楽しそうな声が聞こえるよ。
でしょ。そして彼らの後ろには立ってどどっている人々がいるわ。男の人と女の人がクエアーになって楽しそうに踊っているの。みんなの動きがまるで音楽に合わせているみたいで生き生きとしているわ。
この絵で一番の特徴は光と色彩の表現ね。木漏れ日がまるでスポットライトのように人々に降り注いでいるの。
木漏れ日、どんな風に見えるんだろう。
それがね、トミーさん。ルノアルは光そのものを描いているの。人々の洋服や肌にキラキラと輝く光の反転が散りばめられている。まるで絵の具が生きているみたいに。
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まず、色彩について。全体的にとっても明るくて温かみのある色使いよ。
例えば、手前で踊っている女性は水色のドレスを着ている。そのドレスに木漏れ日の黄色い光が当たってエメラルドグリーンに輝いて見える。詳細な描写。
髪の毛も見て。多くの女性は金髪や茶色の髪をしているわ。その髪に光が当たってキラキラと輝いているの。まるで天使の輪みたい。
肌の色は健康的なピンク色。男の人たちの頬は少し赤みを帯びていて、お酒を飲んで楽しんでいる様子がわかるわ。
服装や小物。次に服装ね。女性たちは当時流行していた縞模様や水玉模様のドレスを着ている。男の人たちはカンカンボウという麦わ葉帽をかぶっている人が多いわね。
みんなオシャレをしてこのダンスホールに集まってきたのよ。視線についてなんだけどみんなの視線はバラバラなの。会話を楽しんでいる人、踊っている人、遠くを見つめている人。だから絵の中の時間がまるで永遠に続いているように感じるわ。風景描写。
風景についても説明するわね。このダンスホールはたくさんの木々に囲まれているの。画面の右奥には木の幹が何本も描かれていて、その葉の隙間から瞬いばかりの太陽の光が差し込んでいる。
葉っぱの隙間から太陽の光。その光が僕たちに降り注いでいるんだね。
そうよ。そしてその光と影が人々やテーブルに複雑な模様を描いているの。ルノアルはその模様一つ一つを丁寧に描き分けている。ねえ、トミーさん、この絵は単に風景を描いた絵じゃないわ。そこにいる人々の一瞬の表情や高揚した気分。そしてその場に流れる幸福な時間そのものを描いているんだと思うの。
マリアさん、ありがとう。すごくよく分かった。僕の頭の中にいろいろとりどりの光と楽しそうな人の精舞が浮かんできたよ。
よかった。トミーさんの心にこの絵の光が届いてくれて本当に嬉しい。
二人の間にしばしの沈黙が流れます。しかしその沈黙は決して不快なものではありませんでした。二人はそれぞれの心の中でルノアルが描いた幸福な時間を共有していたのです。
マリアさん、僕、この絵の光をずっと忘れないと思う。
ええ、私も。次はどの絵を見に行こうか。美術館を出た二人は夏の夕暮れの街へと消えていきました。ルノアルの描いた光は二人の心の中でこれからも輝き続けることでしょう。
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