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2025-08-31 19:11

〈赤い海の畑〉ロング・バージョン

「ながらで聴く未来ものがたり」Long Ver.

まだ起きていない未来に触れる。近未来ショートショートから未来の可能性を探るプロトキャスティング。

今週は"食と資源"の未来をテーマに6つのストーリー

#毎日未来創造 

 

下記noteのSFショートショートを元にNotebookLMで音声化しています。

note URL:

https://note.com/daisaw33/n/n83328624f8d6

 

サマリー

このエピソードでは、2040年代の日本における遺伝子編集技術とAI管理によって、糖度50を超える苺が登場する近未来のSF短編「赤い海の畑」が紹介されます。果物が嗜好品から工業的資源へと変わる未来像や、その影響が人々の感情や社会経済にもたらす課題について考察されています。また、「赤い海の畑」を通じて、食の未来に関する考察が行われ、テクノロジーが私たちの食に及ぼす影響や可能性について議論されています。特に、農業における自動化と効率化の利点に加え、失われるかもしれない自然とのつながりや食の本質についても深く掘り下げられています。

未来の食と資源
ノト丸
毎日未来創造。本日もまだ見ぬ未来のプロトキャスト。その可能性の種を一緒に探ってみましょう。
今週通してお届けしているテーマは、食と資源の未来です。
さて今回はですね、あるリスナーの方からいただいた、日常のふとした疑問。これがきっかけとなって、生まれた近未来SFショートショート〈赤い海の畑〉。
それとその作品に寄せられた解説文。これらを手がかりにして、食の未来を一緒に深掘りしていきたいなとこう思うわけです。
物語の舞台は、2040年代の日本。ここでは遺伝子編集技術とAI管理システム。これが生み出した糖度50を超えるという驚異的な苺が登場します。
で、なんとそれが世界経済の構造すら変えてしまったという、そんな世界が描かれているんですね。
ブク美
これは非常に示唆に富んだ設定ですよね。物語の発端となったそのリスナーの方の気づきっていうのが、最近の果物、特にイチゴなんかは昔と比べて本当に甘くなったなと。
このまま品種改良が進んだら、いつか甘すぎてそのままでは食べられないような、そんな果物が登場するんじゃないか。
そうなったら私たちの食卓、あるいは社会全体ってどう変わっちゃうんだろう?っていう、そういう問い。これが全ての始まりだったということですね。
ノト丸
なるほど。その問いから生まれた物語。
ブク美
その問いに対する一つの未来像として、この物語は食べ物が単なる嗜好品とか栄養源を超えて、工業的な資源としての価値を強く帯びていく可能性を描き出しているんです。
甘すぎる果実っていう、ちょっと奇妙にも聞こえるかもしれないですけど、この未来の種がどんな社会とか経済、そして人間の感情みたいなものを芽吹かせるのか、非常に興味深い視点から掘り下げていけそうですね。
ノト丸
では早速、あなたにも想像してみてほしいんです。もし、あなたが毎日口にする、あるいはこう生活を支えている食べ物が、味わうためじゃなくて、なんていうか、工業製品みたいに資源として生産されるようになったとしたら、どうでしょう?
物語の主人公である農家のケンジも、まさにその問いのこう宇宙にいるわけです。
俺たちは果物を育てているのか、それともただの甘味料の原料、つまり砂糖を生成しているだけなのか?って。いやー、これは重い問いかけですよね。
ブク美
そうですね。物語のタイトルにもなっている赤い海の畑、この情景を少し具体的に思い描いてみましょうか。それはですね、地平線の彼方まで文字通り真っ赤な絨毯が広がっているかのような巨大な植物工場なんです。
ノト丸
うわー、赤い絨毯ですか?
ブク美
はい。ドーム型の天井に覆われた内部には例の砂糖イチゴのプランターが、まあ整然としかしどこまでも続いている。
壮観ではあるんですが、そこには土の匂いとか気まぐれな自然っていうのはなくてですね、まるで精密機械の内部みたいな、どこか無機質でコントロールされて美しさみたいなものが漂ってるんですね。
ノト丸
無機質な美しさ。
ブク美
はい。ここではAIマネージャーがイチゴの糖度を極限まで高めるその一点のためだけに、気温、湿度、二酸化炭素濃度、そして培養液の成分といったその環境要因のすべてをミリ秒単位で完璧に制御しているんです。
遺伝子編集技術でイチゴが糖分を生成する経路だけを極限まで活性化させたその結果として、糖度を50を超えるイチゴが生まれる。まさに生物をハックするようなそんなアプローチですよね。
ノト丸
しかもこの砂糖イチゴ、すごいのはただ甘いだけじゃなくて常温での長距離輸送にも耐えうるその頑丈さも兼ね備えてるってことですね。だから生食用ではなくて、新しいタイプの甘味料、ストロベリーシュガーの原料として世界中に出荷されていくと。
ブク美
そうなんです。これが従来のサトウキビとか甜菜といった昔からの糖資源を駆逐してしまって、新たな果糖経済圏と呼ばれるマーケットを形成するに至るわけです。
さらに面白いのが、このイチゴの糖度が、まるで原油価格みたいにリアルタイムで変動して取引される。糖度指数市場なんてものまで生まれているっていう点なんです。
ノト丸
えー、糖度が市場で取引されるんですか。
ブク美
そう、農作物がなんか金融商品のような側面を持つようになる。これは食料のあり方における、まさに素材革命と呼べるような大きな変化かもしれないですね。
ノト丸
その結果として、世界の有名スイーツブランドとか大手飲料メーカーは、パッケージではシュガーゼロとかナチュラルとか歌いながら、実際にはこのストロベリーシュガー由来の天然果糖をこぞって使用するようになると。
うーん、なんか皮肉な状況ですよね。
ブク美
ええ、ケーキに使われるクリームの甘さが変わったり、清涼飲料水の市場が再編されたり、一方で伝統的な製糖業は衰退の一途をたどると。
ノト丸
そして、物語の舞台であるケンジの村は、この果糖経済圏の世界的な中心地になって、莫大な富を築き上げることになるんですね。
ブク美
そうなんです。かつては過疎と高齢化に悩んでいたような、まあ日本の典型的な農村がですね、なんか勝者なデザイナーズ住宅が立ち並んで、若者たちが最新型の電気自動車を乗り回すような、まるでシリコンバレーのような、そういう富裕層コミュニティへと変貌を遂げるわけです。
ノト丸
はあ、すごい変化だ。
ブク美
ええ、世界中から視察団が訪れて、羨望の眼差しを向けられる。でも、その一方で、作り手であるケンジの心の中には、こう食いがたい違和感みたいなものがどんどん持ち着いていくわけですね。
ノト丸
来た大口のバイヤーが、目の前にある真っ赤なイチゴにはまあ目もくれずに、手元の糖度計の数値だけを見て、エクセレント、糖度52.3、まさにパーフェクトな原料ですな。ってこう興奮気味に話す場面。この原料っていう言葉がケンジにぐさっと突き刺さるんですよね。
ブク美
ああ、それはきついですね。
ノト丸
自分たちはこう愛情を込めて作物を育てているつもりだったんだけど、市場が見ているのはただの糖度指数っていう数字であって、自分たちが生産しているのは市場価値そのものなんだ、と。
まさに食が人の五感で味わう嗜好品から数値で取引される資源へと、その本質を変えてしまったその瞬間を象徴しているような。
ブク美
うーん、なるほど。この物語では、甘さっていうまあ、一点が極端に追求されましたけど、これって食の未来における可能性のほんの入口に過ぎないのかもしれないですよね。
技術の課題と哲学
ブク美
ゲノム編集をはじめとするバイオテクノロジーがさらに進化して普及していけば、私たちは果物とか野菜の特性をまるでソフトウェアをプログラミングするみたいに、より精密にデザインできるようになる可能性がある。
ある意味で、機能性果実の本格的な時代の到来と言えるかもしれないですね。
ノト丸
機能性果実ですか?具体的にはどんなものが考えられますか?
ブク美
例えば、より身近なところで言うと、メディカルフルーツっていう考え方ですね。
特定のビタミンとかミネラル、あるいはポリフェノールみたいなそういう健康成分を通常の品種よりもはるかに多く含むように設計された果物。
ふむふむ。
このイチゴ一粒で1日に必要なビタミンCがほぼ取れますよとか、鉄分が不足しがちな方向けに強化したリンゴですみたいなものは、技術的にはもうかなり実現可能なレベルに近づいていると思いますよ。
ノト丸
なるほど。サプリメントを取る代わりに果物を食べるみたいな感覚ですかね?
ブク美
まさに。さらに踏み込むと、特定の病気の予防とか治療に役立つ成分、例えばワクチン成分なんかを組み込んだバナナとかトマトみたいな、食べるワクチンの開発も研究されてるんです。
ノト丸
えー、食べるワクチン?
ブク美
これがもし実現すれば、注射が苦手な子どもたちとか、あるいは医療インフラが十分でない地域での予防接種に、革命的な変化をもたらすかもしれない。食が医療の領域にまで踏み込んでいくわけです。
それはすごいですね。健康っていう切り口以外ではどうでしょう?何かありますか?
個人のニーズに合わせた展開っていうのも考えられますね。例えば、個々人の遺伝子情報とか健康診断データ、活動料件のログなんかをもとにして、その人に最適な栄養バランスを持つ果物を処方するようなパーソナライズドフルーツサービス。
ノト丸
パーソナライズドフルーツ。あなたの今日の健康状態に合わせて、カリウムを20%増量して糖質を15%カットしたオーダーメイドスイカをお届けしますみたいなことですか?なんかもうSFの世界ですけど、でもデータ連携が進めば不可能じゃないかもしれないですね。
ブク美
そうですね。そしてもっとエンターテインメントに振った方向性としては、感覚拡張フルーツなんていうのもちょっと面白いかもしれません。
ノト丸
感覚拡張。それは何ですか?ワクワクしますね。
ブク美
例えば口に入れた時の温度とか、舌触りで色がガラッと変わるブドウとか。
色が変わる。
あるいは最初はシャリシャリとした食感なのに、噛んでるうちにクリーミーな舌触りに変化していくメロンとか。
ノト丸
食感が変わるメロン。
ブク美
あとは食べ進めるごとに香りが段階的に変わっていく桃なんていうのも想像できますね。
単に味覚だけじゃなくて視覚、触覚、嗅覚といった五感を複合的に刺激する全く新しい食体験のデザイン。
これが可能になるかもしれない。食事がもっと遊び心に満ちた驚きのある体験になるかもしれませんね。
ノト丸
うわ、甘さだけじゃなくて健康機能、パーソナライズ、そしてエンタメ体験まで。
技術は本当に食の可能性を大きく広げそうですね。
ブク美
まさに。しかしですね、こうした輝かしい未来像の一方で物語の主人公ケンジが感じていたような影、つまり無視できない課題とか問いも同時に浮かび上がってくるわけです。
ケンジの葛藤っていうのは単なる個人の感傷ではないんですね。
ノト丸
具体的にはどのような課題が考えられるんでしょうか。
ブク美
まず最も懸念されることの一つが生物多様性の喪失ですね。赤い海の畑の世界では効率と生産性、そして糖度指数っていう単一の価値基準が優先された結果どうなったか。
ケンジのおじいさんが汗水流して土の上で育てていたような甘みだけじゃなくてしっかりとした酸味とか複雑な香りを持つ昔ながらのイチゴ品種っていうのはほとんど姿を消してしまったんです。
ノト丸
そうなんですか。
ブク美
一部の好家向けに超高級品として細々と栽培されるだけで一般の市場からはもう駆逐されてしまった。
特定の機能に特化したデザイナーフーズばかりがもてはやされる世界で、こうした多様な品種、多様な味、そしてそれにまつわる食文化みたいなものを私たちはどうやって守って未来に継承していくのか。これは非常に大きな課題だと思います。
ノト丸
確かに。効率とか機能ばかり追い求めると画一化が進んじゃう危険性ってありますよね。味の多様性が失われるっていうのはなんか寂しいことですね。
ブク美
そうですね。そして経済的な側面での食の格差の問題、これも深刻化する可能性があります。物語の村は果糖経済圏で潤いましたけど、それはあくまで一部の成功例です。こうした高度な技術で生み出されるデザイナーフーズっていうのはおそらく初期には高価なものになるでしょう。
その恩恵を受けられる人とそうでない人との間に新たな健康格差とか情報格差が生まれるんじゃないか。富める者はますます健康になって、そうでないものは取り残される。そんな未来はやっぱり避けなければいけない。富の再分配とかアクセスの公平性をどう担保するのか、社会システム全体の設計が問われることになります。
ノト丸
なるほど。技術が生み出す富とその分配のバランスっていうのは常に難しい問題ですね。
ブク美
さらにもっと哲学的ともいえるような根本的な問いも投げかけられています。それは自然とは何かという問いです。
ノト丸
自然とは何か?
食の未来を考える
ブク美
はい。遺伝子レベルで人間の意図通りに設計されて完全にコントロールされたAI管理の工場で、土に触れることなく水耕栽培で育てられた果実。これを私たちは果たして自然な食べ物と呼べるんでしょうか。あるいはどこからが不自然なのか。この境界線っていうのは技術が進めば進むほどどんどん曖昧になっていくでしょうね。
ノト丸
その問いはケンジが抱いた俺は本当に農業をしているのかっていう。自身の仕事に対する根源的な疑念に直結しますね。
そうですね。
彼は亡くなったおじいさんのことを思い出すシーンがありますよね。おじいさんは毎朝畑に出て土の匂いを嗅いで作物の葉の色ツヤを自分の目で見て空に浮かぶ雲の形とか風向きから天候を読んでいた。作物はな人間の足音を聞いて育つんだっていうのが口癖だったと。
ブク美
いい言葉ですね。
ノト丸
それに対して自分はどうかというと快適な管理センターのモニター室でAIが示す数値をチェックしてアラートが出たらマニュアル通りに対応するだけ。そこにかつての農業にあったはずの作る実感とか自然との対話みたいなものはあるのかって。
ブク美
それは農業に限らず、あらゆる産業、あらゆる仕事においてテクノロジーの進化と自動化が進む現代に生きる私たちが共通して向き合わざるを得ないテーマかもしれませんね。
働くことの意味とか手応え、創造性みたいなものを人間はこれからどこに見出していくのか、効率とか生産性だけじゃない何か別の価値軸っていうのが必要になってくるのかもしれないですね。
ノト丸
まさにそこであなたにも改めて問いかけたいんです。これからテクノロジーが私たちの職にもっと深く、もっと広範囲に入り込んでくるであろう未来において、あなたにとっての本物の食とは一体何でしょうか。そしてテクノロジーと共存する中で作る実感とか食べる喜びを私たちはどのように守り育んでいけるのでしょうか。
ブク美
深い問いですね。今回の深掘りでは赤い海の畑という一つのSF作品を起点にして、食が単に味わうという行為から、より能動的に作り出すあるいは特定の機能を発揮させるものへと、その意味合いを大きく変容させていく未来の可能性、これを探ってきました。
私たちの健康寿命を伸ばしたり、食の楽しみ方を豊かにしたり、そして新たな産業構造を生み出すかもしれない、そのポテンシャルは本当に計り知れないものがあると思います。しかし同時に物語の最後に描かれたシーンも私たちは心に留めておく必要があるでしょうね。
幕大な富と名声を手に入れたはずのケンジ、村の盛大な収穫祭の喧騒から一人離れて、ライトアップされた巨大な植物工場、あの赤い海を遠くに眺めながら彼はポツリとつぶやくんです。これが農業の未来か、と。
その時彼の手には村の特産品であるサトウイチゴを使ったシュガーゼロイチゴカクテルのグラスがあった。しかしそのカクテルにはかつて祖父の畑で採れたイチゴにあったようなあの甘酸っぱい香りとかプチプチとした種の食感とか、そういうものはもう何も感じられない。ただどこか空虚で人工的な甘さだけが舌に残る。
その何とも言えないやるせなさ、虚しさみたいなものが、ケンジのあのつぶやきにつながっているように思えるんです。
ノト丸
テクノロジーがもたらす恩恵は大きいけれども、それによって失われるものもあるかもしれない、ということですね。単に高機能で効率的な作物を大量生産できることだけが、豊かな食の未来とはまあ言えないのかもしれない。
ブク美
ええ、真の豊か者とは何か、という問いにやはり立ち返る必要がありそうですね。
ノト丸
そうですね。だからこそ、今日の話をあなたの日常に照らし合わせるためのちょっとした思考実験、私たちの未来リトマスを提案させてください。
この24時間で、あなたが口にする果物とか野菜について、ほんの少しだけ意識を向けてみてほしいんです。
例えば、あなたが子供の頃に夢中で食べていたイチゴとかトマト、あるいはスイカ、それらと比べて、今スーパーで売られているものは甘さとか種類、形や大きさってどう変わったでしょうか。
ブク美
ああ、確かに変わってますよね。
ノト丸
種なしが当たり前になったり、昔は見かけなかったような色とか形の野菜が増えていたりしませんか。
うーん。
あるいは、いつものスーパーの棚をちょっと注意深く見てみるのも面白いかもしれません。
糖度保証とか、まるまる成分含有とか、機能性を謳う表示とか、ちょっと珍しい新しい品種の野菜や果物が見つかるかもしれません。
私たちが気づかないうちに、食の世界って少しずつでも確実に変化しているはずなんです。
そうした変化に気づくことが、未来を考えるまず第一歩になるかもしれないですね。
ブク美
そうですね。
そしてその変化の先に、どんな未来を望むのか。
ケンジのおじいさんが育てたような素朴だけど地味深い、昔ながらのあの酸っぱいイチゴのおいしさもちゃんと大切にされて、
一方で最新技術が生み出す新しい機能とか体験も楽しめる。
そんな多様な選択肢の中から、誰もが自分にとっての最高の食を選び取れること。
ノト丸
うん。
ブク美
そして作り手である人々が物語のケンジみたいに、これは本当に自分の仕事なのだろうかなんて虚しさを感じることなく、
作る喜びとか手応えを実感しながら働けること。
ノト丸
多様性、選択の自由、そして作り手の実感。
それらがこうバランスよく保たれた未来。
それこそがテクノロジーと共に目指すべき、真に豊かな食の未来の姿なのかもしれないですね。
ブク美
そう思います。
ノト丸
明日も引き続き、食と資源の未来をテーマに、まだ見の未来のプロトキャストをお届けします。
今日の話であなたが感じたこと、考えたこと、ぜひ#毎日未来創造のタグを付けてシェアしてみてください。
お待ちしています。
19:11

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