未来の食と米不足
ブク美
毎日未来創造、本日もまだ見ぬ未来のプロトキャスト、可能性を探ってみます。
今週のテーマは、食と資源の未来ですね。
今回はですね、〈白い通貨〉という近未来ショートショートがありまして、
これをもとに、そこで描かれる世界観とか、それが私たちに何を問いかけるのか、みたいなところを一緒に考えていければなと。
ノト丸
面白そうなテーマですね。
ブク美
まず、ちょっと想像してみてほしいんですけど、舞台は2047年の日本なんです。
ノト丸
2047年。
ブク美
はい。気候変動とか、過去のいろんな政策の失敗とかが響いて、2025年からずっと米不足が続いている。
ノト丸
ああ、もう慢性的に。
ブク美
そうなんです。で、ついにスーパーの棚から完全に米が消えちゃって、価格はもうとんでもなく高騰している。
ノト丸
うわー。
ブク美
静かなパニックが社会を覆っている、みたいな。
なるほど。
そんな中で、主人公が農林水産省の官僚、竹田、38歳。
彼がですね、国民のお腹を満たすっていう、一番基本的な仕事、それができないっていうジレンマにいるわけです。
ノト丸
それは官僚としては非常に苦しい立場ですね。状況はかなり深刻みたいで、物語の中だと闇市場なんかでは、こしかり1キロが5万円超えとか。
ブク美
5万円?
ノト丸
ええ。もうまるで違法薬物みたいな扱いになってるんですよ。
で、政府が備蓄前を出そうとしても、物流は麻痺してるし、買い占めとか横行しちゃって、なかなか普通の人には届かない。
ブク美
うーん、なるほど。
ノト丸
下手したら倉庫が襲撃されたりとか、もう政府も信用できないし、隣の人さえ信用できないみたいな。
ブク美
物不足だけじゃなくて、信頼関係みたいなものまで壊れちゃってるんですね。
ノト丸
そうなんです。社会の基盤そのものが揺らいでるっていう、そういう描写ですね。
ノト丸
そんな八方塞がりの中で竹田が思いついたのが、これが結構大胆なんですけど、米そのものをデジタル管理された通貨みたいに扱っちゃおう。
ムスビシステムの導入
ノト丸
米を通貨にですか?
ブク美
ええ。この発想がどうなっていくのか、ちょっと見ていきたいんですが。
ノト丸
そこで開発されたのが、日本穀物基準、通称Musubiシステムと呼ばれるものなんです。
ブク美
Musubi?
ノト丸
これは、米の一粒一粒にレーザーで固有のIDを刻印するんです。
ブク美
一粒一粒に?
ノト丸
そうです。それをブロックチェーン技術、改ざんがすごく難しいデジタル台帳ですね。これを使って、生産地から流通、消費までを完全に追跡できるようにする。
ブク美
なるほど、ブロックチェーンで。
ノト丸
はい。国民は専用のデジタルウォレットを持って、そこに米を資産として保有する。食事の時にその分を使う、消費するという仕組みです。
狙いは、まず流通の透明化ですね。これで安定供給を目指すと。あとは買い占めとか、不正な横流しとか、そういうのをシステム的に不可能にする。
ブク美
ああ、なるほど。技術で管理を徹底すると。
ノト丸
かなり未来的な資源管理の試みと言えるかもしれません。
ブク美
このMusubiシステム、表向きは成功して、米の供給自体は安定するらしいんですね。
ノト丸
おお、それは良かった。
アイデンティティの変化
ブク美
でもここからが社会が予想もしない方向に変わっていくんですよ。
と言いますと?
例えば、カフェとかで若者たちがスマホ見ながら話している内容が、「俺のMusubiウォレットさ、魚沼産コシヒカリの比率ちょっと上げたんだよね」
とか？
「私は、あきたこまちのポートフォリオを厚めにしている。なんか海外需要高いらしいよ」みたいな。
ノト丸
まるで株の話ですね。
ブク美
そうなんですよ。完全に食料が生きるためのものっていうより、投資対象、デジタルアセットっていう価値観に変わっちゃった。
ノト丸
うーん、それはまたすごい変化ですね。
さらに、個人のアイデンティティー、自己認識にも影響が出てくるんです。
ブク美
アイデンティティーにまで?
はい。例えばSNSとかで、自分が過去にどんな米を食べたか、その産地とか品種のデータ、つまり食事履歴を公開するのが一種のステータスみたいになっていく。
食事履歴を公開ですか?
ノト丸
ね。私の身体構成、新潟コシヒカリ62%、山形つやひめ28%みたいな感じで。
ブク美
あー、自分の体が何でできてるかみたいな。
ノト丸
そうです。で、それが高じて、あなたの身体はどの田んぼに由来しますか?なんていうのが新しい挨拶になりかねないっていう。
ブク美
それはちょっと面白いような、怖いような。
ノト丸
ええ。人々が自分自身を、私はコシヒカリ系とか、うちは代々あきたこまち系で、みたいに分類し始めて、同じルーツの米を食べてる人たちの間で、妙な連帯感が生まれたりする。
テクノロジーが可視化した情報が、もう自分の根っこ、自己認識にまで影響を与えている。
これは、食と自分という関係性がどうなっていくのか、かなり深い問いを投げかけてますよね。
ブク美
いやー、確かに。で、この予期せぬ社会の変化にシステムを作った側の竹田自身も、結構戸惑いを覚えるわけですね。
でしょうね。
で、彼は休暇を取って、米どころとして有名な新潟に行ってみるんです。
ほう、産地。
はい。データ上ではずっと見てきた広大な田園風景っていうのを、初めて目の当たりにする。
その土の匂いとか、稲の匂いとかを感じながら、ふと、今朝自分が食べた米の情報、これをMusubiアプリで確認してみるんです。
ノト丸
あー、自分の食べた米のデータを。
ええ。
すると、アプリが示すんですよ。
彼が食べた米が収穫された場所として、まさに目の前に広がっているその田んぼ。田んぼID、N-0348だって。
ブク美
おー、データと現実が一致した。
ノト丸
そうです。その瞬間、彼ははっと気づくんですね。
ブク美
はい。
ノト丸
これまで、効率化とか管理の対象、あるいは投資の対象として、無機質に見ていた米っていうものが、本当は土であり、水であり、太陽の光であり、そしてそれを育てた農家の人の労働、つまり生命そのものなんだと。
ブク美
なるほど。単なるデータや資産じゃなかった。
ノト丸
ええ。自分が管理しようとしていたのは、ただの経済資源なんかじゃなくて、自分自身の体の一部であり、その起源となるこの目の前の広大な風景そのものだったんじゃないかと。
ブク美
うーん、深い気づきですね。テクノロジーで管理しようとした結果、逆に食料が本来持っている生命の意味みたいなものを再発見したというか。
ノト丸
そういう捉え方もできるかもしれませんね。さて、ここでちょっとあなたに問いかけてみたいんですけれど。
ブク美
はい。
ノト丸
もしこの物語に出てきたような結縁、システム、これが仮に現実になったとしたら、私たちの食との向き合い方とか、あるいは自分自身をどう捉えるかっていうのは、未来でどう変わっていく可能性がありますか?
ブク美
うーん、自分のアイデンティティが自分をずっと育んできたその土そのものにまでデータとして遡って可視化されるとしたら、あなたは何を感じるでしょうか?
いやー、考えさせられますね。
この物語については、さらに深く考察したロングバージョンもありますので、もし興味があればぜひそちらも聞いてみてください。
そして、#毎日未来創造をつけて、あなたの考えとか気づきをぜひシェアしていただけると嬉しいです。
