2020sが立ち上がった背景のひとつに、『テクノロジカル・リパブリック』邦訳版発売以降のナラティブや、地政学的緊張を背景とした日本の防衛政策の急速な転換がありました。本番組でも継続して「防衛テック」を異なる方向性から捉えようとしてきましたが、今回は現代美術家サイモン・デニーの論考を手がかりに、防衛テック企業がイタリア未来派の美学を引用する理由、Spotify創業者のダニエル・エクが共同会長を務めるドイツの防衛テック企業「Helsing」に対する音楽アーティストのボイコット、日本における「楽天不買運動」までを議論しつつ、「防衛テック」に対する私たちのスタンスを考えました。(岡田)
「防衛テック」は未来派の再来なのか?/『アバンダンス』共著者エズラ・クラインが批判した、a16zマーク・アンドリーセンの「反動的未来主義」/現代美術家サイモン・デニーの論考「Epic Fury: The Dark Art of Defense Tech」を読み解く/NYのダイムズ・スクエアとパッセージ・プレス──反動思想を支える出版/「テクノスタルジア」と、アバンギャルドへの郷愁/「テクノ・オプティミスト宣言」に引用された、未来派フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティの言葉/退廃主義から未来派が生まれたねじれ──マリネッティと第一次世界大戦/「テック右派」という呼び方への違和感と、事業創造の必然としての防衛テック?/パランティアのAIPConで展開されたMoMAを模した「PMoA」/未来派の航空絵画と「Anduril Cinematic Universe」/塚本晋也『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』から読み解く、生理的な拒絶という美学/美学には美学で抵抗するしかないのか?/大規模言語モデルは「戦場」をどう描くのか/欧州の「技術主権」に貢献する防衛テック企業「Helsing」/Spotify創業者ダニエル・エクはHelsingに初期から投資し、会長に就任/マッシヴ・アタックのSpotifyボイコット/「ウクライナ以外には配備していない」は反論になっているのか/楽天とHelsingの提携報道と、楽天市場からの撤退/クリストファー・ノーラン『オデュッセイア』と、戦争を悔いる英雄像/「2020s」のスタンスを考える/三菱UFJ銀行の防衛産業への融資方針と、止まらない現実/「防衛テックの倫理とガバナンス」をともに考えるコンソーシアム構想/「後に引けない状況」を避けるために。抑止と安全保障のジレンマ/テクノロジー業界と国際政治・地経学・安全保障の語彙を合わせる/「終末論」の煽りに振り回されず、対立の手前を耕すために
▼「2020s-twenty-twenties-」とは
2020年代を形づくる思想やアイデアとは何か?
テックから哲学、カルチャーまでを横断し、「思想がリアルポリティクスを動かす時代」に迫っていくPodcast番組。AIや防衛産業が立ち上がる米国テクノロジー業界の世界観や価値観を検証し、その戦略に「巻き込まれざるを得ない私たち」にはどのような選択肢や可能性があるのか? 哲学者の柳澤田実と、デサイロ代表の岡田弘太郎が、時にはゲストを招きつつ率直に話し合います。
▼出演
柳澤田実
1973年ニューヨーク生まれ。関西学院大学神学部准教授。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)、宗教を中心に文化的背景とマインドセットについて研究している。最近の関心テーマは米国テックの右傾化、若者のキリスト教回帰と少子化の関係。
岡田弘太郎
1994年東京生まれ。人文・社会科学分野の研究者と協働し、イノベーション創出や新たなる社会制度の提案を行う一般社団法人デサイロ代表理事。最近の関心は、エディターとしては「いま最も重要なテーマを提示すること」。デサイロ代表としては「持続可能な知のエコシステムを構築すること」。個人的には「東京という都市をもっと面白くすること」。
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▼参考文献
ニック・ランド(五井健太郎訳)『暗黒の啓蒙書』講談社、2020年5月
エズラ・クライン、デレク・トンプソン(土方奈美訳)『アバンダンス:「豊かな時代」を呼びさませ』NewsPicksパブリッシング、2025年12月
ヴァルター・ベンヤミン(久保哲司訳)「複製技術時代の芸術作品」(浅井健二郎編訳『ベンヤミン・コレクション1 近代の意味』筑摩書房(ちくま学芸文庫)、1995年6月所収)
▼参考URL
Ezra Klein「The Chief Ideologist of the Silicon Valley Elite Has Some Strange Ideas」The New York Times、2023年10月26日
https://www.nytimes.com/2023/10/26/opinion/marc-andreessen-reactionary-futurism.html
Marc Andreessen「The Techno-Optimist Manifesto」a16z、2023年10月16日
https://a16z.com/the-techno-optimist-manifesto/
Simon Denny「Epic Fury: The Dark Art of Defense Tech」Artforum、2026年4月20日
https://www.artforum.com/features/simon-denny-art-defense-tech-1234747490/
Simon Denny「Rules Based Order」
https://simondenny.net/rules-based-order/
「Europe's Anduril rival Helsing raises $1.8 billion at $18 billion valuation」CNBC、2026年7月13日
https://www.cnbc.com/2026/07/13/helsing-fund-raise-defense-18-billion.html
「Massive Attack remove music from Spotify to protest against CEO Daniel Ek's investment in AI military」The Guardian、2025年9月18日
「Helsing responds to "misinformation" surrounding its activities after Massive Attack becomes latest band to pull music from Spotify」MusicTech、2025年9月22日
「通販生活が楽天市場から撤退 迎撃ドローン関連の報道受け『企業理念に反する』」ITmedia NEWS、2026年8月18日
https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/18/2000000596/
「三菱UFJ銀行が防衛産業に融資 慎重姿勢を転換、安保政策を軸に判断」日本経済新聞、2026年9月16日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1112W0R10C26A9000000/
映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』公式サイト
▼チャプター
オープニング
マーク・アンドリーセンの「反動的未来主義」とは何か?
現代美術家サイモン・デニーの論考「Epic Fury: The Dark Art of Defense Tech」を読み解く
「テック右派」という呼び方への違和感と、事業創造の必然としての防衛テック?
パランティアのAIPConで展開されたMoMAを模した「PMoA」
美学には美学で抵抗するしかないのか?
欧州の「技術主権」に貢献する防衛テック企業「Helsing」
クリストファー・ノーラン『オデュッセイア』と、戦争を悔いる英雄像
「2020s」はこのテーマにどう向き合うか?
エンディング
▼クレジット
イラスト:髙橋あゆみ
ロゴデザイン:畑ユリエ
企画・制作:一般社団法人デサイロ
└リサーチ:古島海
収録:Unknown Unknown
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