企業内哲学者として活躍し、新著『バラバラな世界で共に生きる: リチャード・ローティの哲学』が話題となっている哲学者・朱喜哲さん。同書の刊行を記念して行われた政治学者・宇野重規さんとの対談で「共通善」にも言及していた朱さんをゲストにお迎えし、「リベラリズムの逆説」回の続きを議論しました。ロールズの善/正義の区別、ローティの「バザールとクラブ」を手がかりに、SNS以後の「暗がり」なき社会、エシックス・ウォッシング、「防衛テック」ということばづかい、なぜいま企業が人文知を求めるのかまでを考えました。(岡田)
ゲストは哲学者・朱喜哲さん/ジョン・ロールズ『正義論』における「善の構想」と「正義」の区別/社会とは「みんなで取り組む命がけの挑戦」/異なる善が共存するための「頑張って無関心であること」/従軍経験とロールズの転向──共通の悲劇の記憶がリベラリズムを支える/南北戦争の「戦後思想」として生まれたプラグマティズム/リチャード・ローティの「バザールとクラブ」/SNS以後、あらゆる言説空間が「バザール化」する?/社会から失われる「暗がり」と、正しくないかもしれないことを語れる場所/企業が公共的な役割を担うほど、クラブとしてのエートスが失われる/哲学者は「正しさ」を教えない──自分たちらしい判断の基準をつくる/2016年、ケンブリッジ・アナリティカ事件を境に変わったテクノロジーへのまなざし/LLM(大規模言語モデル)以後に人間に問われる「偏り」「不確実性」「正しくなさ」/政治は「つまらない手続き的正義」であるべきか/つながることで駆逐される「方言」──ボキャブラリーの生物多様性/マーク・アンドリーセン「テクノオプティミズム宣言」が敵視する「テックエシックス」/アンソロピックの哲学者アマンダ・アスケルが依拠する「徳倫理」/ローティの「残酷さの回避」と感情教育──フィクションが担う役割/「聖会話像」──会話とはグルーミングである/斎藤環のヤンキー論と「毛繕い的コミュニケーション」/SNSと生成AIにおける「身体なきボキャブラリー」の暴走/「防衛テック」と「軍事企業」──ことばづかいからその違いを考える/トップダウンのパーパスから、ボトムアップの「ことばづかい」へ/危機の時代に人文知は輝く?/「普通に働く人」「マジョリティ」のための人文知
▼「2020s-twenty-twenties-」とは
2020年代を形づくる思想やアイデアとは何か?
テックから哲学、カルチャーまでを横断し、「思想がリアルポリティクスを動かす時代」に迫っていくPodcast番組。AIや防衛産業が立ち上がる米国テクノロジー業界の世界観や価値観を検証し、その戦略に「巻き込まれざるを得ない私たち」にはどのような選択肢や可能性があるのか? 哲学者の柳澤田実と、デサイロ代表の岡田弘太郎が、時にはゲストを招きつつ率直に話し合います。
▼出演
柳澤田実
1973年ニューヨーク生まれ。関西学院大学神学部准教授。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)、宗教を中心に文化的背景とマインドセットについて研究している。最近の関心テーマは米国テックの右傾化、若者のキリスト教回帰と少子化の関係。
岡田弘太郎
1994年東京生まれ。人文・社会科学分野の研究者と協働し、イノベーション創出や新たなる社会制度の提案を行う一般社団法人デサイロ代表理事。最近の関心は、エディターとしては「いま最も重要なテーマを提示すること」。デサイロ代表としては「持続可能な知のエコシステムを構築すること」。個人的には「東京という都市をもっと面白くすること」。
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▼参考文献
朱喜哲『バラバラな世界で共に生きる──リチャード・ローティの哲学』NHK出版(NHK出版新書)、2026年5月
朱喜哲『〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす──正義の反対は別の正義か』太郎次郎社エディタス、2023年9月
朱喜哲『人類の会話のための哲学──ローティと21世紀のプラグマティズム』よはく舎、2024年2月
朱喜哲編著『バザールとクラブ』よはく舎、2023年10月
谷川嘉浩・朱喜哲・杉谷和哉『増補 ネガティヴ・ケイパビリティで生きる──答えを急がず立ち止まる力』筑摩書房(ちくま文庫)、2026年6月
谷川嘉浩・朱喜哲編『はたらく人文知』光文社、2026年9月刊行予定
ジョン・ロールズ(川本隆史・福間聡・神島裕子訳)『正義論 改訂版』紀伊國屋書店、2010年11月
リチャード・ローティ(齋藤純一・山岡龍一・大川正彦訳)『偶然性・アイロニー・連帯──リベラル・ユートピアの可能性』岩波書店、2000年10月
リチャード・ローティ(小澤照彦訳)『アメリカ 未完のプロジェクト──20世紀アメリカにおける左翼思想』晃洋書房、2000年11月
ロバート・ブランダム(加藤隆文・田中凌・朱喜哲・三木那由他訳)『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか(上・下)』勁草書房、2020年10月
ルイ・メナンド(野口良平・那須耕介・石井素子訳)『メタフィジカル・クラブ──米国100年の精神史』みすず書房、2011年8月
パトリック・J・デニーン(角敦子訳)『リベラリズムからの体制転換──ポストリベラルと共通善保守主義』東洋経済新報社、2026年9月刊行予定
斎藤環『ヤンキー化する日本』KADOKAWA(角川oneテーマ21)、2014年3月
▼参考URL
「態度としての『リベラル』を再考する──宇野重規×朱喜哲対談『バラバラな世界で、私たちは何を共有しうるか』前編」NHK出版デジタルマガジン、2026年7月28日
https://mag.nhk-book.co.jp/article/95030/4
Marc Andreessen「The Techno-Optimist Manifesto」a16z、2023年10月16日
https://a16z.com/the-techno-optimist-manifesto/
「企業はなぜ『人文知』を求めるのか?【前編】対談 山下正太郎・若林恵」WORKSIGHT、2026年1月5日
https://worksight.substack.com/p/178-1
▼チャプター
オープニング
「共通善」をめぐる議論
南北戦争を受けて生まれたプラグマティズム
リチャード・ローティの「バザール」と「クラブ」
2016年以降、デジタルテクノロジーを取り巻く環境はどう変わったか
政治に求められる「手続き的正義」
「テクノオプティミズム宣言」と企業倫理、エシックス・ウォッシング
SNS・AI時代における「身体感覚から離れたことばづかい」の暴走
「防衛テック」と「軍事企業」におけることばづかいの違いは何を意味するか
なぜいま企業は「人文知」を求めるのか
▼クレジット
イラスト:髙橋あゆみ
ロゴデザイン:畑ユリエ
企画・制作:一般社団法人デサイロ
└リサーチ:古島海
収録:Unknown Unknown
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