00:04
寝落ちの本ポッドキャスト、こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。
ご意見・ご感想・ご依頼は、公式Xまでどうぞ。
寝落ちの本で検索してください。
あと番組フォローもどうぞよろしくお願いします。
さて、今日は、宮沢賢治さんの
オツベルと象を読もうかと思います。
初めて読むな、宮沢賢治、このポッドキャストでは。
宮沢賢治さん、日本の詩人、童話作家。
仏教信仰と農民生活に根差した作を行った。
作品中に登場する架空の理想郷に、
郷里の岩手県をモチーフとして、伊波東部と名付けたことで知られる。
主な作品に銀河鉄道の夜、注文の多い料理店、
セロ引きの豪州、ほか多数あるということですね。
まさか、宮沢賢治を読む日が来るとは。
童話っぽいんで、あんまり読むことないかなと思ってましたけど。
今日はオツベルと象を読もうと思います。
読んだことあんのかな。
タイトルは覚えてるんですけどね。
中身全然覚えてないな。
読んでないかも。
意外とそういう人多いんじゃないかな。
僕だけ?いや、そんなことないよね。
意外とタイトルは知ってるけど。
多い料理店も聞いたことあるけど、
中身、あんまり。
銀河鉄道の夜もタイトルは知ってて、
ジョバンニとカンパネルなんか出てくるのは知ってるけど、
ちゃんと字で受け取ったかっていうとね。
意外とそうでもないよって人が少なくないように思いますが。
本日はオツベルと象を読んでいきたいと思います。
それでは参ります。
オツベルと象
ある牛飼いが物語る
第一日曜
オツベルと来ては大したもんだ。
犬こき機械の六台も据え付けて
ノンノンノンノンノンと
おおそろしない音を立ててやっている。
十六人の百姓どもが顔をまるっきり真っ赤にして
03:00
足で踏んで機械を回し
小山のように積まれた稲を片っ端からこいて行く。
藁はどんどん後ろの方へ投げられて
また新しい山になる。
そこらはもみや藁から立った細かな塵で
変にぼーっと黄色になり
まるで砂漠の煙のようだ。
その薄暗い仕事場を
オツベルは大きな琥珀のパイプをくわえ
吹き柄を藁に落とさないよう
目を細くして気をつけながら
両手を背中に組み合わせて
ぶらぶら行ったり来たりする。
小屋はずいぶん頑丈で
学校ぐらいもあるのだが
何せ新式犬こき機械が六台も揃って回っているから
ノンノンノンノンフルーのだ。
中に入るとそのためにすっかり腹がすくほどだ。
そして実際オツベルは
そいつで上手に腹を減らし
昼飯時には六寸ぐらいのビフテキだの
雑巾ほどあるオムレツのホクホクしたのを食べるのだ。
とにかくそうしてノンノンノンノンやっていた。
そしたらそこへどういうわけか
その白象がやってきた。
白い象だぜ。
電気を塗ったのでないぜ。
どういうわけで来たかって?
そいつは象のことだから
多分ぶらっと森を出てただ何となく来たんだろう。
そいつが小屋の入口にゆっくり顔を出した時
百姓どもはギョッとした。
なぜギョッとした?
よく聞くね。
何を知らすか知れないじゃないか。
かかりあっては大変だから
どいつもみな一生懸命自分の稲をこいていた。
ところがその時オツベルは
並んだ機械の後ろの方で
ポケットに手を入れながら
じらっと鋭く象を見た。
それから素早く下を向き
何でもないという風で
今まで通り行ったり来たりしていたもんだ。
すると今度は白象が
片足床にあげたのだ。
百姓どもはギョッとした。
それでも仕事が忙しいし
かかりあってはひどいから
そっちを見ずにやっぱり稲をこいていた。
オツベルは奥の薄暗いところで
両手をポケットから出して
もう一度ちらっと象を見た。
それからいかにも退屈そうに
わざと大きなあくびをして
両手を頭の後ろに組んで
行ったり来たりやっていた。
ところが象が威勢よく
前足二つ突き出して
小屋に上がってこようとする。
百姓どもはギグッとし
オツベルも少しギョッとして
大きな琥珀のパイプから
06:02
ふっと煙を吐き出した。
それでもやっぱり知らない風で
ゆっくりそこらを歩いていた。
そしたらとうとう
象がのこのこ上がって来た。
そして機械の前のところを
のんきに歩き始めたのだ。
ところが何せ機械はひどく回っていて
もみは夕立かあられのように
ぱちぱち象にあたるのだ。
象はいかにもうるさいらしく
小さなその目を細めていたが
またよく見ると確かに少し笑っていた。
オツベルはやっと覚悟を決めて
いねこき機械の前に出て
象に話をしようとしたが
そのとき象がとてもきれいな
うぐいすみたいないい声で
こんな文句を言ったのだ。
ああだめだ
あんまりせわしく砂が私の歯にあたる。
まったくもみはぱちぱち歯にあたり
またまっしろな頭や首にぶっつかる。
さあオツベルはいのちがけだ。
パイプを右手に持ち直し
どきょうをすえてこう言った。
どうだいここはおもしろいかい。
おもしろいねえ
象がからだをななめにして
目を細くして返事した。
ずっとこっちにいたらどうだい。
百姓どもははっとして
息をころして象を見た。
オツベルは行ってしまってから
にわかにがたがたふるえだす。
ところは象はけろりとして
いてもいいよと答えたもんだ。
そうかそれではそうしよう
そういうことにしようじゃないか。
オツベルが顔をくしゃくしゃにして
まっ赤になってよろこびながらそう言った。
どうだそうしてこの象は
もうオツベルの財産だ。
いまに見たまえオツベルは
あの白象をはたらかせるか
サーカス団に売りとばすか
どっちにしても万円以上をもうけるぜ。
第二日よう
オツベルと来たらたいしたもんだ。
それにこのまえ稲子木小屋で
うまく自分のものにした
象も実際たいしたもんだ。
力も二十馬力もある。
第一みかげがまっ白で
牙はぜんたいきれいな象毛でできている。
皮もぜんたいりっぱでじょうぶな象皮なのだ。
そしてずいぶんはたらくもんだ。
けれどもそんなに稼ぐのも
やっぱり主人がえらいのだ。
おいおまえは時計はいらないか。
09:00
丸太でたてたその象小屋の前に来て
オツベルは琥珀のパイプをくわえ
顔をしかめてこう聞いた。
僕は時計はいらないよ。
象がわらって返じした。
まあ思ってみろ。いいもんだ。
こういいながらオツベルは
ぶりきでこさえた大きな時計を
象の首からぶらさげた。
なかなかいいね、象もいう。
鎖もなくちゃだめだろう。
オツベルと来たら
百キロもある鎖をさ
その前趾にくっつけた。
うん、なかなか鎖はいいね。
三足歩いて象がいう。
靴を履いたらどうだろう。
僕は靴など履かないよ。
まあ履いてみろ。いいもんだ。
オツベルは顔をしかめながら
赤いはりこの大きな靴を
象のうしろかかとにはめた。
なかなかいいね、象もいう。
靴に飾りをつけなくちゃ。
オツベルはもう大急ぎで
四百キロあるふんどうを
靴の上からはめ込んだ。
うん、なかなかいいね。
象は二足歩いてみて
さもうれしそうにそう言った。
次の日ぶりきの大きな時計と
やくざな紙の靴とはやぶけ
象は鎖とふんどうだけで
大よろこびで歩いておった。
すまないが税金も高いから
今日は少し川から水を汲んでくれ。
オツベルは両手をうしろで汲んで
顔をしかめて象にいう。
ああ、ぼく水を汲んでこよう。
もう何杯でも汲んでやるよ。
象は目を細くしてよろこんで
その昼すぎに五十だけ
川から水を汲んできた。
そしてなっぱの畑にかけた。
夕方象は小屋にいて
じっぱのわらを食べながら
西の三日の月を見て
ああ、稼ぐのはゆかいだねえ
さっぱりするねえと言っていた。
すまないが税金がまたあがる。
今日は少し森から滝木を運んでくれ。
オツベルはふさのついた赤い帽子をかぶり
両手をかくしにつっこんで
次の日象にそう言った。
ああ、ぼく滝木を持ってこよう。
いい天気だねえ。
ぼくは全体森へ行くのは大好きなんだ。
象は笑ってこう言った。
オツベルは少しぎょっとして
パイプを手から危なく落としそうにしたがもう
あの時は象がいかにもゆかいなふうで
ゆっくり歩き出したので
まだ安心してパイプをくわえ
小さな席を一つして
百姓どもの仕事のほうを見に行った。
その昼すぎの半日に
象は九百羽滝木を運び
目を細くしてよろこんだ。
12:02
晩方象は小屋にいて
葉っぱのわらを食べながら
西の四日の月を見て
ああ、せいせいしたサンタマリア
とこうひとりごとしたそうだ。
その次の日だ。
すまないが税金が五倍になった。
今日は少し火事場に行って
炭火を吹いてくれないか。
ああ、吹いてやろう。
ほんきでやったら
ぼくもう息で石も投げとばせるよ。
オツベルはまたどきっとしたが
気を落ちつけて笑っていた。
象はのそのそ火事場へ行って
べたんと足を折ってすわり
冬後のかわりに半日炭を吹いたのだ。
その晩象は象小屋で
七羽のわらを食べながら
空の五日の月を見て
ああ、つかれたなうれしいなサンタマリア
とこう言った。
どうだそうして次の日から
象は朝から稼ぐのだ。
わらもきのうはただ五羽だ。
よくまあ五羽のわらなので
あんな力が出るもんだ。
じっさい象は賢才だよ。
それというのもオツベルが
頭がよくてえらいためだ。
オツベルと来たらたいしたもんさ。
第五日曜
オツベルかね。
そのオツベルは
俺も言おうとしてたんだが
いなくなったよ。
まあ落ちついて聞きたまえ。
前に話したあの象を
オツベルは少しひどくしすぎた。
仕方がだんだんひどくなってきたから
象がなかなかわらわなくなった。
時には赤い龍の眼をして
じっとこんなにオツベルを
見おろすようになってきた。
ある晩象は象小屋で
三羽のわらを食べながら
十日の月を仰ぎみて
苦しいですサンタマリア
と言ったということだ。
こいつを聞いたオツベルは
ことごと象につらくした。
ある晩象は象小屋で
ふらふら倒れて地べたにすわり
わらも食べずに
十日の月を見て
もうさようならサンタマリア
とこう言った。
おやなんだってさようならだ
月がにわかに象に聞く
ええさようならですサンタマリア
なんだいなりばかり大きくて
からっきし育児のないやつだな
仲間へ手紙を書いたらいいや
月がわらってこう言った
お筆も紙もありませんよ
象は細いきれいな声で
しくしくしくしく泣きだした
そらこれでしょう
すぐ目の前で
かわいい子供の声がした
象が頭をあげてみると
赤い着物のどうしがすわって
15:01
すずりと紙をささげていた
象はさっそく手紙を書いた
ぼくはずいぶん目にあっている
みんなでてきてたすけてくれ
象はいっせいにたちあがり
まっ黒になってほえだした
オツベルをやっつけよう
象の象が高くさけぶと
おうでかけよう
グラララガーグラララガー
みんないちどにこうする
さあもうみんな
あらしのようにはらしの中を
泣きぬけて
グラララガーグラララガー
野原のほうへとんでいく
どいつもみんなきちがいだ
ちいさなきなどはねこぎになり
やぶかなにかもめちゃめちゃだ
ぐわぐわぐわぐわ
はなびみたいに
野原の中へとびだした
それからなんの
はしってはしって
とうとうむこうの
あおくかすんだ野原のはてに
オツベルのやしきの
きいろなやねをみつけると
象はいちどにふんかした
グラララガーグラララガー
そのときはちょうどいちじはん
オツベルはかわのしんだいのうえで
ひるねのさかりで
からすのゆめをみていたもんだ
あまりのおおきなおとなので
オツベルのいえのきゃくしょうどもが
もんからすこしそとへでて
こてをかざしてむこうをみた
はやしのような象だろう
きしゃよりはやくやってくる
さあまるっきり
ちのけもうせてかけこんで
だんな象です
おしよせやした
だんな象ですと
こえをかぎりにさけんだもんだ
ところがオツベルはやっぱりえらい
めをぱっちりとあいたときは
もうなにもかもわかっていた
おい象のやつはこやにいるのか
いるいるいるのか
よしとうしめる
とうしめるんだよ
はやく象ごやのとうしめるんだよ
よしはやくまるたをもってこい
とじこめちまえ
ちくしょうめ
じたばったしやがるな
まるたをそこへしばりつけろ
なにができるもんか
わざとちからをへらしてやるんだ
よしもうごろっぽんもってこい
さあだいじょぶだ
だいじょぶだとも
あわてるなったら
おいみんなこんどはもんだ
もんをしめろ
かんぬきをかえ
つっぱりつっぱり
そうだおい
みんなしんぱいするなったら
しっかりしろよ
オツベルはもうしたくができて
らっぱみたいないいこえで
ひゃくしょうどもをはげました
ところがどうして
ひゃくしょうどもはきがきじゃない
こんなしゅじんにまきぞえなんぞ
くいたくないから
みんなたおるやはんけちや
よごれたようなしろいようなものを
ぐるぐるうでにまきつける
こうさんをするしるしなのだ
オツベルはいよいよやっきとなって
そこらあたりをかけまわる
18:02
オツベルのいぬもきがたって
ひのつくようにほえながら
やしきのなかをはせまわる
まもなくじめんはぐらぐらとゆれ
そこらはばしゃばしゃくらくなり
ぞうはやしきをとりまえた
ぐららがぐららが
そのおそろしいさわぎのなかから
いまたすけるからあんしんしろよ
やさしいこえもきこえてくる
ありがとうよくきてくれて
ほんとにぼくはうれしいよ
ぞうごやからもこえがする
さあそうするとまわりのぞうは
いっそうひどくぐららがぐららが
へいのまわりをぐるぐるはしっているらしく
たびたびなかからおこってふりまわす
はなもみえる
けれどもへいはセメントで
なかにはてつもはいっているから
なかなかぞうもこわせない
へいのなかにはオツベルが
たったひとりでさけんでいる
ひゃくしょうどもはめもくらみ
そこらをうろうろするだけだ
そのうちそとのぞうどもは
なかまのからだをだいにして
いよいよへいをこしかかる
だんだんにゅうとかおをだす
そのしゅわくしゃではいいろの
おおきなかおをみあげたとき
オツベルのいぬはきぜつした
さあオツベルはうちだした
ろくれんぱつのピストルさ
どーんぐららーが
どーんぐららーが
どーんぐららーが
ところがたまはとおらない
きばにあたればはねかえる
いっぴきなぞはこういった
なかなかこいつはうるさいね
ぱちぱちかおへあたるんだ
オツベルはいつかどこかで
こんなもんこをきいたようだと
おもいながらけいすをおびからつめかえた
そのうちぞうのかたあしが
へいからこっちへはみだした
それからもひとつはみだした
ごひきのぞうがいっぺんに
へいからどっとおちてきた
オツベルはけいすをにぎったまま
もうくしゃくしゃにつぶれていた
はやくももんがあいていて
ぐららーがぐららーが
ぞうがどしどしなだれこむ
ろうはどこだ
みんなはこやにおしよせる
まるたなんぞはまちのようにへしおられ
あのしろぞうはたいへんやせてこやをでた
まあよかったねやせたね
みんなはしずかにそばにより
くさりとどうをはずしてやった
ああありがとうほんとうにぼくはたすかったよ
しろぞうはさべしくわらってそういった
おやかわへはいっちゃいけないったら
1989年はっこう
21:01
しんちょうしゃしんちょうぶんこ
しんぺんぎんがてつどうのよる
よりどくりょうよみおわりです
なんかごしちちょうがみてとれたので
ちょっとりずむつけてよんでみましたが
こんなかんじなんですかね
これは何がいいたいの
オツベルはこらしめにあってましたね
そういえばよそさまのポッドキャストで
宮沢賢治のものしか読まないっていう
とがった番組ありましたね
そんなに好きなんだっていうのが
一点といずれ枯れるぞっていう
そんなに狭めていいのっていう
まあもしかしたら宮沢賢治が終わった後
オツベルさんに行くつもりで
やってらっしゃったのかもしれませんが
ずいぶんとかってるなっていうね
でも宮沢賢治さんのテキストは
青空文庫内でもアクセス数が高いようなので
そういう戦略というか
せめかたとしては
間違ってないのかもしれないですけどね
ということで今日はオツベルとそうでした
はいと言ったところで
今日のところはこのへんで
また次回お会いしましょう
おやすみなさい