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2025-02-11 26:08

103夢野久作「瓶詰地獄」(朗読)

103夢野久作「瓶詰地獄」(朗読)

無人島の二人のボトルレターのお話です。今回も寝落ちしてくれたら幸いです。


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寝落ちの本ポッドキャスト。こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品は全て青空文庫から選んでおります。
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さて、今日はですね、
夢野久作さんの「瓶詰地獄」というテキストを読もうと思います。
実は夢野久作さんはシャープ1とかでも読んでるんですよね。
あの頃は酔っ払いながらなんであんまりお勧めしません。
シャープ1から20くらいは酔っ払いながらやってますので、
ポッドキャストが何たるかとか、
よちよち歩きの右も左もわからない時代だったのでお勧めしませんけど、
お勧めしないなりにダメさ加減を見てほしくて残しておりますが、
物好きな方は聞いてみてください。
夢野久作さん、陸軍将位、全総統を経た後、
大正15年、綾香市のつづみで小説家デビュー。
代表作「ドグラマグラ」は日本探偵小説3大記書に数えられ、
本章を読破した者は必ず一度は精神に異常を起き出すと言われているそうです。
ドグラマグラね、いつか読み上げたいなという野心はちょっとあるんですけど、
45万字とかあるんですよね。
数字で言われてもピンとこないと思うんですけど、
前々回に分割して読み上げた夏目漱石のぼっちゃん、
これが9万7千字なんですね。
これが少し早口目で読んで2時間2時間みたいな感じなので、
たぶん1時間にこなせる文字数って2万字ぐらいなんですよ。
45万字とかあるのでドグラマグラは20時間。
で、精神異常を起き出す。
恐ろしくて手が出る感じはしませんか。
まあいつかは。ちょこちょこ取りだめていったらいいのかな。
まあコワイロは変わるかもしれないですけどね。
ツギハギみたいになってね。
そのうちやろうとは思いますけど、
ドグラマグラ自体10年ぐらいかけて書いたというものらしいので、
一気に思いついてダーッと書いたものではないと思うんで、
読み上げ方もそういうふうにね、
ちょこちょこ読み上げてそれをつなげる形がいいのかもしれませんが、
今日読むのはビン詰め地獄です。
こちら青空文庫ではビン詰め地獄と漢字四文字になってますが、
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wikipedia上とかだとビン詰めの地獄とかになってまして、
ちょっと表記の揺れがございますが、
僕は青空文庫からテキストを引いておりますので、
脳を抜いてね、ビン詰め地獄で読み上げていきたいと思います。
何が入っているんですかね、ビン詰め地獄ね。
バラバラな人間の体の一部とかが入っているのかな。
怖い話っぽいのでね。
それでは参ります。
ビン詰め地獄。
拝堤。
地下ますます御精鋭。
慶賀建祭候。
昇れば、かねてより御通達の
潮流研究用逃亡式赤風呂付きのビルビン。
習得次第届け告げ、
使祭るよう、
都民一般に申し渡し置き候ところ。
このほど、本島南岸に
別小包みのごとき
樹脂風呂付きのビルビンが
三個漂着致しおるを発見。
届け入れ申候。
目際、いずれも約半里。
乃し、一里を隔てたる箇所に、
あるいは砂に埋もれ、
または岩の隙間に固く挟まれ下りたるものにて、
よほど以前に漂着致したるものらしく、
中身も御工事のごとき完成破垣とは相見えず、
雑木町の破片用のものらしく候をため、
御革命のごとき漂着の
とき・ひ・とうの記入は不可能と存ぜられ候。
さるとも、なお何かの御参考と存じ、
三個とも風雲のまま、
尊敏にて御送付申し上げ候を間、
何卒御楽衆愛願いたく、
この段寄与へ候。
敬愚
云厚云日
云東村役場
海洋研究所恩中
第一の瓶の内容
ああ、この離れ島に救いの船がとうとう来ました。
大きな二本の煙突の船から、
ボートが二艘、荒波の上に降ろされました。
船の上からそれを見送っている人々の中に混じって、
私たちのお父様やお母様と思われる、
懐かしい御姿が見えます。
そして、
おお、私たちの方に向かって、
白いハンカチを振ってくださるのが、ここからよくわかります。
お父様やお母様たちはきっと、
私たちが一番初めに出したビルビンの手紙をご覧になって、
助けに来てくださったに違いありません。
大きな船から真っ白い煙が出て、
今助けに行くぞ、というように、
高い高い笛の音が聞こえてきました。
その音が、この小さな島の中の鳥や虫を、
一時に飛び立たせて、遠い和田中に消えていきました。
けれどもそれは、私たち二人にとって、
06:01
最後の審判の火の落下よりも恐ろしい響きでございました。
私たちの前で、天と地が裂けて、
神様のお目の光と、
地獄の炎が一時にひらめき出たように思われました。
ああ、手が震えて、心が慌ててかかれません。
涙で目が見えなくなります。
私たち二人は、今からあの大きな船の、
真正面にある高い崖の上に登って、
お父様やお母様や、
救いに来てくださる水父さんたちによく見えるように、
しっかりと抱き合ったまま、
深い淵の中に身を投げて死にます。
そうしたらいつも、あそこに泳いでいるフカが、
間もなく私たちを食べてしまってくれるでしょう。
そして後には、この手紙を詰めたビール瓶が一本浮いているのを、
ボードに乗っている人々が見つけて、
拾い上げてくださるでしょう。
ああ、お父様、お母様、
すみません、すみません、すみません、すみません。
私たちは初めから、
あなた方の愛し子でなかったと思って、
諦めてくださいませ。
また、せっかく遠いふるさとから、
私たち二人をわざわざ助けに来てくださった、
皆様のご親切に対しても、
こんなことをする私たち二人は、
本当に本当にすみません。
どうぞどうぞ、お許しください。
そして、お父様とお母様に抱かれて、
人間の世界へ帰る喜びの時が来ると同時に、
死んでゆかねばならぬ、
不幸せな私たちの運命を、
お憐れみくださいませ。
私たちはこうして、
私たちの肉体と魂を罰せねば、
犯した罪の償いができないのです。
この離れ島の中で、
私たち二人が犯した、
非常に恐ろしい横島の報いなのです。
どうぞこれより上に懺悔することをお許しください。
私たち二人は、
負荷の餌食になる値打ちしかない、
しれものだったのですから。
ああ、さようなら。
神様からも人間からも救われ得ぬ、
悲しき二人より。
お父様、お母様、皆々様。
第二の瓶の内容。
ああ、隠れたら生みたまう神様よ。
この苦しみから救われる道は、
私が死ぬより他にどうしてないのでございましょうか。
私たちが神様の足鞘と呼んでいる、
あの高い崖の上に、
私がたった一人で登って、
いつも二、三匹の孵化が遊び泳いでいる、
あの底なし淵の中を覗いてみたことは、
今までに何度あったか分かりません。
そこから今にも身を投げようと思ったことも、
行く旅であったが知れません。
けれどもそのたんびに、
あの哀れな綾子のことを思い出しては、
魂を滅ぼす深いため息をしーしー、
岩の角を降りてくるのでした。
私が死にましたならば、
09:01
後からきっと綾子も身を投げるであろうことが、
分かりきっているからでした。
私と綾子の二人が、
あのボートの上で突き沿いの馬や夫妻や船長さんや、
運転手さんたちを波にさらわれたまま、
この小さな離れ島に流れ着いてから、
もう何年になりましょうか。
この島は年中夏のようで、
クリスマスもお正月もよく分かりませんが、
もう十年ぐらい経っているように思います。
その時に私たちが持っていたものは、
一本の鉛筆とナイフと、
一冊のノートブックと、
一個の虫眼鏡と、
水を入れた三本のビール瓶と、
小さなバイブルが一冊と、
それだけでした。
けれども私たちは幸せでした。
この小さな緑色に茂り栄えた島の中には、
稀にいる大きな蟻のほかに、
私たちを悩ます鳥、獣、
羽生物は一匹もいませんでした。
そして、その時十一歳であった私と、
夏になったばかりの綾子と二人のために、
余るほどの豊かな食物がみちみちしておりました。
吸管蝶だのオウムだの、
絵でしか見たことのない極楽蝶だの、
見たことも聞いたこともない華やかな蝶だのがおりました。
おいしいヤシの実だの、パイナップルだの、
バナナだのと、赤と紫の大きな花だのと、
香りのいい草だのと、
または大きい小さい鳥の卵だのが、
一年中どこかにありました。
鳥や魚などは棒切れで叩くと何ほどでも取れました。
私たちはそんなものを集めてくると、
虫眼鏡で天日を枯れ草にとって、
流れ木に燃やしつけて焼いて食べました。
そのうちに、島の東にある峰と岩の間から、
きれいな泉が潮の日だときだけ湧いているのを見つけましたから、
その近くの砂浜の岩の間に、
壊れたボートで小屋を作って、
柔らかい枯れ草を集めて、
綾子と二人で寝られるようにしました。
それから小屋のすぐ横の岩の横っ腹を、
ボートの古釘で四隅に掘って、
小さな蔵みたいなものを作りました。
島には上着も下着も、
雨や風や岩角に破られてしまって、
二人とも本当の野蛮人のように裸になってしまいましたが、
それでも朝と晩には、
きっと二人であの神様の足台の崖に登って、
バイブルを読んで、
お父様やお母様のためにお祈りをしました。
私たちはそれから、
お父様とお母様にお手紙を書いて、
大切なビール瓶の中の一本に入れて、
しっかりとヤニで封じて、
二人で何遍も何遍も口づけをしてから、
海の中に投げ込みました。
そのビール瓶は、
この島の周りを巡る丑代の流れに連れられて、
ズンズンとわだなか遠く出て行って、
二度とこの島に帰ってきませんでした。
12:01
私たちはそれから、
誰かが助けに来てくださる目印になるように、
神様の足台の一番高いところへ長い棒切れを立てて、
いつも何かしら青い木の葉を吊るしておくようにしました。
私たちは時々居酒会をしました。
けれどもすぐに仲直りをして、
学校ごっこや何かをするのでした。
私はよく綾子を生徒にして、
聖書の言葉や字の書き方を教えてやりました。
そして二人とも、
聖書を神様とも、
お父様とも、
お母様とも、
先生ともを持って、
虫眼鏡やビール瓶よりずっと大切にして、
岩の穴の一番高い棚の上にあげておきました。
私たちは本当に幸せで安らかでした。
この島は天国のようでした。
かような離れ島の中の、
たった二人きりの幸せの中に、
恐ろしい悪魔が忍び込んで来ようと、
どうして思われましょう。
けれどもそれは、
本当に忍び込んできたに違いないのでした。
それはいつからとも分かりませんが、
月日の経つにつれて、
綾子の肉体が奇跡のように美しく、
艶やかに育っていくのが、
ありありと私の目に見えてきました。
ある時は花のせいのように眩しく、
またある時は悪魔のように悩ましく、
そして私はそれを見ていると、
なぜか分からずに思いが暗く、
悲しくなってくるのでした。
お兄様、と綾子が叫びながら、
何のけがれもない目を輝かして、
私の肩へ飛びついてくるたんびに、
私の胸が今までとはまるで違った気持ちで、
ワクワクするのが分かってきました。
そしてその一度一度ごとに、
私の心は滅びの悩みに渡されるかのように、
恐れ震えるのでした。
けれどもそのうちに、
綾子の方もいつとなく様子が変わってきました。
やはり私と同じように、
今までとはまるで違った、
もっともっと懐かしい涙にうるんだ目で、
私を見るようになりました。
そしてそれについて何となく、
私の体に触るのが恥ずかしいような、
悲しいような気持ちがするらしく見えてきました。
二人はちっとも諌かえをしなくなりました。
その代わり、何となく憂い顔をして、
時々そっとため息をするようになりました。
それは二人きりでこの離れ島にいるのが、
何とも引用のないくらい悩ましく、
嬉しく、寂しくなってきたからでした。
そればかりでなく、
お互いに顔を見合っているうちに、
目の前がみるみる影のように暗くなってきます。
そして神様のお示しか、
悪魔のからかいか分からないままに、
ドキンと胸がとどろくと一緒に、
ハッと終わりに帰るようなことが、
一日のうち何度となくあるようになりました。
15:00
二人は互いにこうした二人の心をはっきりと知り合っていながら、
神様の戒めを恐れて口に出し得ずにいるのでした。
もしそんなことを主でかした後で、
救いの船が来たらどうしよう、
という心配に打たれていることが、
何も言わないままに、
二人同士の心によくわかっているのでした。
けれどもある静かに晴れ渡った午後のこと、
ウミガメの卵を焼いて食べた後で、
二人が砂浜に足を投げ出して、
遥か海の上を滑っていく白い雲を見つめているうちに、
綾子はふいとこんなことを言い出しました。
「ねえお兄様、
あたしたち二人のうち一人が、
もし病気になって死んだら、
あとはどうしたらいいでしょうね?」
そういううち綾子は、
顔を真っ赤にしてうつむきまして、
涙をほろほろと焼け砂の上に落としながら、
なんとも言えない悲しい笑い顔をして見せました。
その時に私がどんな顔をしたか私は知りません。
ただ死ぬほど息苦しくなって、
張り裂けるほど胸がとどろいて、
推しのように何の返事もしえないまま立ち上がりますと、
そろそろと綾子から離れて行きました。
そしてあの神様の足台の上に来て、
頭をかきむしりかきむしりひれ伏しました。
「ああ、天に申します神様よ、綾子は何も知りません。
ですからあんなことを私に言ったのです。
どうぞあの娘を罰しないでください。
そしていつまでもいつまでも清らかにお守りくださいませ。」
そして私も、
ああけれども、けれども、
ああ神様よ、私はどうしたらいいのでしょう。
どうしたらこの悩みから救われるのでしょう。
私が生きておりますのは綾子のためにこの上もない罪です。
けれども私が死にましたならば、
なおさら深い悲しみと苦しみを綾子に与えることになります。
ああどうしたらいいでしょう私は。
おお神様よ、
私の髪の毛は砂にまみれ、私の腹は岩に押し付けられております。
もし私の死にたいお願いが身心にかなえましたならば、
ただいますぐに私の命を燃ゆる稲妻にお渡しくださいませ。
ああ隠れたるに見たまう神様よ、
どうぞどうぞ皆をあがめさせたまえ。
見しるしを地上にあらわしたまえ。
けれども神様は何のお示しもなさいませんでした。
藍色の空には白く光る雲が糸のように流れているばかり、
崖の下には真っ青く真っ白く渦巻きよどめく波の間を
遊び戯れているフカのしっぽやヒレが時々ひらひらと見えているだけです。
その青ずんだ底なしの淵をいつまでもいつまでも見つめているうちに、
18:04
私の目はいつとなくぐるぐるとくるめき始めました。
思わずよろよろとよろめいて、
漂い、くざける波の泡の中に落ち込みそうになりましたが、
やっとの思いで崖の端に踏みとどまりました。
と思う間もなく私は崖の上の一番高いところまでひとっ飛びにひっかえしました。
その絶頂に立っておりました棒切れと、
その先に結びつけてあるヤシの枯葉をひと思いに引き倒して、
目の下遥かの淵に投げ込んでしまいました。
もう大丈夫だ、こうしておけば救いの船が来ても通り過ぎてゆくだろう。
こう考えて何かしらげらげらとあざけり笑いながら、
狼のように崖を駆け下りて小屋の中へ駆け込みますと、
四辺のところを開いてあった聖書を取り上げて、
海神の卵を焼いた火の残りを上にのせ、
上から枯草を投げかけて炎を吹き立てました。
そうして声である限り、
綾子の名を呼びながら砂浜の方へ駆け出して、
そこへらを見回しました。
が、見ると綾子は遥かに海の中に突き出ている岬の大岩の上にひざまずいて、
大空を仰ぎながらお祈りをしているようです。
私は二足三足後ろへよろめきました。
荒波に取り巻かれた紫色の大岩の上に夕日を受けて、
血のように輝いている乙女の背中の光合しさ、
ずんずんと後ろが高まってきて、
ひざの下の海藻を洗い漂わしているのにも心づかずに、
黄金色の滝波を浴びながら一心に祈っている、
その姿の気高さ、眩しさ、
私は体を石のようにこわばらせながら、
しばらくの間ぼんやりと目を見張っておりました。
けれどもそのうちふいっと、
そうしている綾子の決心がわかりますと、
私ははっとして飛び上がりました。
夢中になって駆け出して、
かやがらばかりの岩の上を傷だらけになって滑りながら、
岬の大岩の上に這い上がりました。
キチガエのように暴れ狂い、
泣き叫ぶ綾子を両腕にしっかりと抱きかかえて、
体中血だらけになって、
やっとの思いで小屋のところへ帰ってきました。
けれども私たちの小屋はもうそこにはありませんでした。
小屋、枯草と一緒に白い煙となって、
青沢のはるか向こうに消え失せてしまっているのでした。
それから後の私たち二人は、
体も魂も本当の暗闇に追い出されて、
夜と泣く昼と泣く悲しみ、
はがみしなければならなくなりました。
そうしてお互いに愛抱き、
慰め、励まし、祈り、
悲しみ合うことはおろか、
同じところに寝ることさえもできない気持ちになってしまったのでした。
21:00
それは大方、私が聖書を焼いた罰なのでしょう。
夜になると星の光や波の音や、
虫の声や風のはずれや、
木の実の落ちる音が一つ一つに聖書の言葉をささやきながら、
私たち二人を取り巻いて、
一歩一歩と近づいてくるように思われるのでした。
そうして身動き一つできず、
転むこともできないままに、
離れ離れになってもだえている私たち二人の心を、
うかがえに来るかのようにもの恐ろしいのでした。
こうして長い長い夜が明けますと、
今度は同じように長い長い昼が来ます。
そうするとこの島の中にてる太陽も、
歌うオウムも、舞う極楽鳥も、
タマムシもガモヤシもパイナップルも花の色も、
草の香りも海も雲も風も虹も、
みんな綾子の眩しい姿や息苦しい肌の花とごっちゃになって、
ぐるぐるぐるぐると渦巻き輝きながら、
四方八方から私を包み殺そうとして襲いかかってくるように思われるのです。
その中から私と同じ苦しみにとらわれている綾子の悩ましい目が、
神様のような悲しみと悪魔のような微笑み等を別々に込めて、
いつまでもいつまでも私をじーっと見つめているのです。
鉛筆がなくなりかけていますから、もうあまり長く書かれません。
私はこれだけの悩みと苦しみにあいながら、
なおも神様の戒めを恐れている私たちの真心をこの瓶に封じ込めて、
海に投げ込もうと思っているのです。
明日にも悪魔の誘いに負けるようなことがありませんうちに、
せめて二人の体だけでも清らかでおりますうちに。
ああ神様、私たち二人はこんな苦しみにあいながら、
病気一つせずに日に増しまるまると太って健やかに美しく育っていくのです。
この島の清らかな風と水と豊かな家庭物と美しい楽しい花と鳥とに守られて、
ああ何という恐ろしい戦略でしょう。
この美しい楽しい島はもうすっかり地獄です。
神様、神様、あなたはなぜ私たち二人をひと思いに殺してくださらないのですか。
太郎しるす
第三の瓶の内容
お父様、お母様、僕たち兄弟は仲良く達者にこの島に暮らしています。
早く助けに来てください。
市川太郎
市川綾子
24:03
1998年発行
門川書店
門川ホラー文庫
夢の旧作怪奇幻想傑作戦
綾香種のつづみ
より独了
読み終わりです。
最後、第三の瓶の内容はカタカナでした。
電報風でした。
そっか、死体とか入ったかじゃないんだな。
ボトル、ん?ボトルレターって言うんでしたっけ?
瓶に手紙入れるやつ。
へぇー。
こんな感じか。
夢の旧作さん、ずっとエッセイを読んでましたからね。
その、なんて言うかな、作品には触れてないんですよ、僕。
夢の旧作さんの、その作品に取り掛かる姿勢とか、
僕はこう思うんだよね、みたいな心情のトロは読んだことありますけど、
作品そのものに触れたことがないんで。
こんな感じか。
こんな感じが45万字あんのか、ドグラマグラ。
恐ろしいな。
いやー、そっか、それで気が違っちゃうわけでしょう。
精神異常を来たすって書いてありましたもんね。
ちょっとずつ取りためるのかな。
ちょっと保留です。
確かにいくらでもあるしな、作品は。
なんかいざちゃんと作品に触れてみると、
そっか、こんな感じの10年かけて積み重ねた山なんだなと思うと、
なんか登る気がしない。
踏破できる気がしないというか。
みんな挫折するとか言うもんね。
一回保留ですかね。
人間失格も心も読み上げてないからな。
そういう大きな山がまだ残ってるんで、
その辺こんな下跡かな。
なんか読み上げたらお腹が空いてきました。
ご飯を食べに行きたいと思います。
ということで、本日のところはこの辺で。
また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
26:08

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