あの、もしあなたが職場でですね、部署の残業時間を減らすために、明日から残業申請のルールを厳格化しよう、なんて提案をしたとしたら。
それって、完全に論理的な判断に見えますよね。でも実は、同時に完全に間違っているかもしれないんです。
そうなんですよね。まあ、一見すると筋が通っているように感じるんですけど。
はい。今日はですね、私たちの脳が一番陥りやすい、この正しそうな論理の罠についてディープダイブしていきたいと思います。
よろしくお願いします。実は私たちの脳って、このAだからBであるっていう、シンプルな直線型の論理が大好きなんですよ。
直線型の論理ですか?
ええ。残業が多い、だから申請を厳しくする、みたいな、この直結したストーリーを思いついた瞬間、脳内ではある種のドーパミンが出てですね。
ああ、なるほど。
なんか自分は論理的で完璧な答えを見つけたぞーって快感に包まれるんです。でも、まあその快感こそが最大の落とし穴なんですよね。
えーと、それってスマホのカメラで例えるなら、目の前の鼻にピントを合わせてマクロレンズで摂写ばっかりしているような状態ですよね。
ああ、まさにそんな感じです。
画面の中ではすごく綺麗で完璧の写真が撮れているように見えても、一歩引いて広角レンズに切り替えてみたら、実はそこは立ち入れ検出の危険なエリアだった、みたいな。
本当にその通りです。どれだけ理由と結論が綺麗につながっていても、最初にピントを合わせるべき問いとか前提がずれていたら、もう全体としては完全にゴールから外れてしまうんです。
ゴールから外れる。
はい。論理的であることと正しいゴールにたどり着くことって必ずしもイコールじゃないんですよね。
今これを聞いてくださっているあなたも、自分はちゃんと筋道を立てて考えているはずなのになぜか結果が伴わないなってもやもやした経験があるかもしれません。
まあ誰にでもありますよね、そういうこと。
なので今回は、本当の意味で論理的に考えるとはどういうことなのかを解き明かしていきます。小難しいビジネスの理論は一旦脇においてですね。
ええ。
選択とか旅行の計画、あとは仕事の残業っていう3つの身近なシチュエーションを解剖していきましょう。
日常の何気ない行動にこそ私たちの思考の癖とか認知の視覚が一番露骨に現れますからね。すごく面白い探求になると思いますよ。
では早速なんですけど、誰もが経験のある選択の例から広角レンズを覗いてみましょうか。
はい、選択ですね。
状況としては、洗い終わった洗濯物をとにかく早く干したいっていうシンプルなミッションです。
よくある日常のワンシーンですね。
ここで一つの方法があります。
洗濯かごから洗濯物を1枚取り出して、それに合うハンガーを選んでその場ですぐ干す。
そしてまた次の1枚を取って干す。これを繰り返す方法です。
これなんか多くの方が無意識にやってる方法じゃないですかね。
そうですよね。私もやってます。
1枚ずつ見ると手に取ってすぐ干すわけだから、すごく行動が早くて無駄はないように感じますよね。
ええ。目の前にある1枚をいかに早く干すかっていう視点で見れば、確かに進んでる実感もあると思います。
でもこれこそが罠なんですよね。
その通りです。洗濯かごの中を考えてみてほしいんですけど、タオルとかTシャツ、靴下みたいにいろんな種類が混ざってますよね。
はい。こちゃ混ぜになってます。
もしタオルの次にTシャツ、その次に靴下って手に取る種類が毎回ランダムに変わったとしたらどうなるでしょうか。
ああ、使うハンガーが違いますね。
そうなんですよ。タオルのためのハンガー、Tシャツのためのハンガー、干す場所の高さとか、
種類が変わるたびに使う道具や体の動かし方を変えなきゃいけない。
これを私たちはコンテキストスイッチ、つまり切り替えのコストって呼んでいます。
切り替えのコスト、脳のエネルギーも体の動きもその都度ちょっとずつリセットされちゃうわけですね。
はい。目の前の1枚にピントが合っていると、この小さなタイムロスの積み重ねを完全に見落としちゃうんです。
なるほど。
なので、別の視点として、最初に洗濯物をタオル、Tシャツ、小物って種類ごとに全部仕分けちゃう方法を提案してみます。
ほうほう。
そしてタオルならタオルだけを連続して干す。こうすると最初の仕分けには時間がかかりますけど、干すときの切り替えコストは劇的に減りますよね。
ちょっとここを整理させてください。
はい、どうぞ。
ということは、最初に全部床に広げて仕分けする時間も結構なタイムロスになりませんか。トータルの時間で考えたら結局1枚ずつ干すのとそんなに変わらないような気もするんですが。
あ、そこなんです。
え、違うんですか。
素晴らしい視点なんですけど、実を言うとどちらが常に絶対的な正解かっていう問い自体がナンセンスなんですよ。
ナンセンス、どういうことでしょう。
例えばですね、今聞いてくださっているあなたが一人暮らしで、今日の洗濯物がたった3枚しかないなら、わざわざ仕分ける方が絶対に非効率ですよね。
あ、確かに。3枚ならそのまま干した方が早いです。
あるいは、干す場所が極端に狭くて種類ごとにまとめるスペースがない環境かもしれない。重要なのはどこまでをゴール、つまりスコープに含めて考えているかなんです。
考える範囲ってことですね。
ええ。1枚を早く干すことにスコープを絞るなら最初の方法が論理的ですし、大量の洗濯物をすべて干し終えるまでの総時間とか労力にスコープを広げるなら、後者の仕分ける方法が論理的になります。
はあ、なるほど。同じ早く干すっていう目的でも、自分が見ている範囲がどこかで取るべきアクションが180度変わっちゃうんですね。
そうなんです。私たちの脳はすぐに完了できる小さなタスクをこなしてドーパミンを得ることを優先しがちなので。
1枚干したぞ、みたいな。
はい。だから意識的に自分が今どの範囲のゴールに向かって動いているのかを確認しないと簡単に錯覚に陥るんです。
これはちょっと耳が痛いですね。さて最初の洗濯の例で判断する範囲の重要性が見えてきたんですけど。
ええ。
これ実は時間軸、つまり決める順番についても全く同じ錯覚が起きるんですよね。今度は旅行の計画を例にして考えてみましょう。
旅行の計画はですね、思考の順番がそのまま行動の順番に出るのですごくわかりやすいケースだと思いますよ。
あなたも週末の旅行を計画していると想像してみてください。日程が決まったらまず何をしますか。
まず最初にすることですね。
多くの人はとりあえず人気の宿と行き帰りの新幹線を早めに予約しちゃおうって思うと思うんですよ。
まあ早く押さえないと埋まっちゃいますからね。
そうなんです。宿が確定すれば人安心ですし。で、宿と移動手段を確保してからさてどこを観光しようかなって回る順番を決める。
これも安心を優先するっていう明確な理由があるので一見するとすごく筋が通っています。
宿がないっていう最悪のリスクを回避するって一点においては非常に論理的ですね。
はい。
でももしこの旅行の本当のゴールが現地の行きたいスポットを限られた時間で効率よくたくさん回ることだったとしたらどうでしょう。
あー。
このとりあえず宿を取るっていう順番は後々になって致命的なボトルネックを生み出すんです。
致命的なボトルネック。あーわかりますそれ。
後からここにも行きたいあそこにも行きたいってリストアップして地図に並べてみたら最初に取った宿が観光エリアからものすごく遠かったりするんですよね。
ええよくありますよね。あるいは宿に戻るために同じ道を何度も往復しなきゃいけないような不自然なルートになっちゃったり。
なんか移動だけで半日潰れてあうよみたいな後悔するパターンですね。
そうです。先に宿っていう強力な条件を固定してしまったがために本来の目的だったはずの効率の良い観光が犠牲になってしまうんです。
じゃあ本来のゴールを達成するためにはどういう順番で考えるべきだったんですか。
ゴールが効率の良い観光ならば決める順番を完全に逆にする必要があります。
逆ですか。
まず行きたい場所をすべて挙げる。次にその位置関係を見てどういうルートで回るのが一番無駄がないか。
動線を考える。そのルートが見えてからようやくこの動き方ならこのエリアにある宿に泊まるのが最適だって。
宿の場所を絞って最後に全体のスケジュールに合わせて交通手段を決めるんです。
なるほど。行動のゴールから逆算して条件を後から決めていくわけですね。
その通りです。私たちは旅行の計画を立てるとき一番簡単でコントロールしやすい行動、スマホで宿を予約することですね。そこから手をつけがちなんですよ。
確かにポチッとするだけですからね。
でも論理的な手順っていうのは簡単な順じゃなくてゴールから逆算した順でなければいけないんです。
ここからが本当に面白いところなんですけど、どうしても泊まりたい憧れの温泉宿がある場合はどうなりますか。
私の旅行のモチベーションはもうそこにあるんですっていう場合。
はいはい。
それでもルートから決めるべきなんですか。
それは素晴らしい質問ですね。その場合の答えは明確にNOです。
NOですか。
なぜならそのケースにおいては憧れの宿に泊まること自体がこの旅行の最優先のゴールに変わっているからです。
最初の問いの置き方が間違っていると、その後の対策がどれだけ緻密でも意味がないってことですね。
ええ。目に見える数字だけを見るのか、それが生まれる原因まで見るのか、その問いの付加波で次に考えるアクションが全く変わってきます。
では、これまでの話を総合するとどういうことになりますか。一見バラバラに見えた3つの例が繋がってきそうですが。
はい。この3つに共通しているのは、目の前の分かりやすい事象だけで判断していないっていうことなんです。
なるほど。選択では1枚の速さじゃなくて、全部終わるまでっていう範囲を見ました。
ええ。
旅行では、先に決めやすいものじゃなくて、実現したいことから決める順番を考えました。
そうですね。
そして仕事では、表面の数字じゃなくて、生まれる原因まで見ましたね。
そういうことです。ただ一つ補足しておきたいのが、全体を見るっていうのは、関係しそうな情報をすでて集めるっていう意味ではないんですよ。
あ、そうなんですか。
ええ。ゴールを判断するために必要なところまで見るという意味なんです。
選択なら、干すときの気温や湿度まで、毎回全部調べる必要はないですよね。
確かに。ロジカルシンキングっていうと、すごく難しいフレームワークが必要だと思いがちですよね。
いや、必ずしも必要はありません。ゴールを確認して必要な範囲を見て、判断の理由を順に繋ぐことは、特定のフレームワークがなくても誰にでもできます。
それを聞いてちょっと安心しました。
それともう一つ、結果には偶然とか外部の条件も影響するので、結果がうまくいったかどうかと、考え方がロジカルだったかは分けて考える必要がありますね。
ロジカルに考えたからって、必ずしも成功するわけじゃないってことですね。
ええ。生んで得た成功は次には再現できませんから。なぜその判断をしたのかっていう、思考のつなぐりをたどれるようにしておくことが大事なんです。
毎日の家事から仕事の戦略まで、本当に見えている世界がガラッと変わるような感覚です。
日常の何気ない判断の中にも、ゴール、見る範囲、理由のつながりっていう形で現れますからね。
はい。リスナーの皆さんもロジカルシンキングって特別な場面だけのものじゃないって感じていただけたと思います。
最後に皆さんに少し視点を変えて問いを投げかけたいと思います。
お願いします。
次に誰かがとても筋の通った最もらしい理由を説明してきたとき、その理由そのものを疑うのではなく、こう考えてみてください。
はい。
この人はそもそも何をゴールに設定しているのだろうって。ゴールが違えば正しいはずの理由も全く意味の変えてしまいますから。
はあ、なるほど。そもそもあなたが登っているその論理的なはしごは、本当に行きたいゴールにかかっているのかってことですね。
ええ。ご自身の人生やキャリアにおいても同じことが言えるかもしれませんね。
思考のつながりをたどる面白さ、存分に味わうことができました。
あなたの日常を少し違った視点で見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。
最後までディープダイブにお付き合いいただきありがとうございました。