00:00
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。
この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
映画「国宝」とその感動
今日は、330回、映画「国宝」を見て感じた「鍛錬というゆるぎないもの」というタイトルでお届けしたいと思います。
先日、実は映画「国宝」を見に行きました。急に思い立って水曜日に見に行ったんですね。
というのも、席の近くに座っている若い男の先生が感動したということで、これまでにないほどの映画だというようなことを、本当に実感こもって伝えてくるわけですね。
おまけに、SNSでも、国宝という映画への限りない絶賛がバンバン書かれていまして、
これは行かなくちゃならないかなと、私も重い腰を上げまして、水曜日、映画の日、お安くなる日だったので行ってまいりました。
国宝という映画は、2025年、今年の6月6日に封切りされた映画で、リー・サンイルさんという監督さんで、出演なさっている俳優さんは、吉沢良さんと横浜隆盛さんという若手の、非常に目鼻立ちの整った美系の男の俳優さんが出ていらっしゃいまして、
詳しくはネットで調べてもらえればいいと思うんですけど、歌舞伎の世界を描いた作品になっています。
2時間55分という長さだったんですけど、1秒たりとも無駄な時間はなかったです。
ずっと画面、スクリーンに釘付けになりまして、一つ一つのシーン、一つ一つのセリフ、一つ一つの映像のアングルというか、それがこちらの見ている者の心をずっと掴んで話さなかったという、そういう風な映画でした。
これは感想を言うレベルではありません。しかも俳優さんの演技がどうたらこうたらとか、そんなコメントをする立場では私ありません。本当に言葉にならないほどの感動で、言葉にしてしまった途端、それが陳腐になってしまうというような、最高のレベルの映画だったと思います。
間違いなく私の長い人生の中で歴代一位の映画だったというふうに思いますね。
歌舞伎の世界で、芸の世界の厳しさがメインなんですけれども、この歌舞伎を舞台にするということだけですごく大変だったと思うし、俳優さんは1年半ぐらいずっと歌舞伎を鍛錬なさっていたということで、1年半の鍛錬って本当に考えられないですよね。
教員としての鍛錬と経験
大学院に行くぐらいですよね。それぐらいあと俳優さんは人の前に出て演技をする、パフォーマンスをするということの難しさ、厳しさをご存知だからこそ、1年半の鍛錬ということも厭わずに歌舞伎役者になるべく鍛錬し続けたんだなというふうに思いますね。
この国宝を見た後には、ひるがえって私は自分自身の授業のことを考えるわけですけれども、特に私は教育困難校に長年いたので、徹底的に自分のパフォーマンスを否定され続けてきた、そういう期間が長かったんですね。
そのたんびに自分の授業でのパフォーマンスを鍛錬してきたと思います。
国宝という映画で言うならば、お師匠さんに駄目だしされ続けてきたというふうに感じます。
なので結構こうしたらいやしたらい、こうはどうだどうだと言いながら試行錯誤しながら、授業での自分の振る舞い方とか話し方というのを鍛錬し続けてきました。
ということで、そういった意味では教員というのは教材研究から授業作り、評価、そういった授業力というか授業構成力、これも相当鍛えないといけないですし、声の出し方、身振り手振り、生徒をどのように引き込んでいくか、ある意味エンターテイメント性も持ってないといけないので、
そういったパフォーマンス力というのも高くないといけないですし、それから根底には生徒指導のスキルもないといけない、コーチングとかそういったスキルもないといけないということで、授業をするというのはとてつもなくハイレベルな能力を必要とする、そういったものだと思うんですよね。
私は厳しいところでやってきたので、かなり叩き上げられてきたかなというふうに自分では思うんですよ。
映画のワンシーンの中にはお弟子さんにお稽古をしていたお師匠さんが、お稽古終わってから扇を置いて三つ指をついてお弟子さんに丁寧にお辞儀をありがとうございましたというふうにするシーンがあるんですよ。
私はあそこでちょっと感動しまして、やっぱり一流の世界なんだなーって思いましたね。教える人が教えられる人に対して最大の礼を尽くすっていう、そういうふうな芸の前では教えるとか教えられるっていう、そこに上下はないんですよね。
でもね、実は私は毎時間授業の終わりにはありがとうございましたと教団からお辞儀をしています。
これは生徒に見せつけるためにやっているわけではないので、扱わしくない程度に、生徒から見ても悪目立ちしないようなさりげない様子で、自分の中で納得できるお辞儀を毎時間毎時間しています。
やっぱり授業の前では教えるものと教えられるもの、この二者の関係に上下はないっていうのを私の中ではずっと心静かに思い続けてきたもので、歌舞伎の映画を見て、あ、そういうふうにするんだと思って、本当にちょっと嬉しかったというか感動したというか、そういうシーンがありました。
授業もね、やってもやっても至らないところが出てきてしまうっていう、もう正解のない道を行く芸道みたいなものですよね。
そういった中に身を置いても、鍛錬し続けないとうまくいかない。そういったのが授業だと思います。
ところがね、昨今も本当に非常に現場は多忙化してしまっていて、もう授業どころじゃないんですよ、本当に。
もう皆さん、現場の先生、みんな深く深くうなずいていらっしゃると思いますけれども、もう授業どころじゃないんですよ。
本当に何とかしてもらいたいですね。授業どころじゃないくせに、学習指導要領であれもやれこれもやれというふうにカリキュラムオーバーロードがガーンと降ってきてですね、もう本当に何とかしてもらいたいなっていうのが切実な思いです。
ということで今日は、映画国宝を見て感じた、鍛錬という揺るぎないものについてお話をしました。
それではここまで聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。