パブリックアートのリアル
皆さんこんにちは、こんばんは。アーティスト、アートプロデューサーのハタナオキです。
今日はですね、ちょっと真面目にパブリックアートに関しての話をしていきたいと思います。
ギャラリーや美術館みたいに空調の効いた室内じゃなくて、駅前とか広場、あるいは公園とか建物の外壁、
つまり街の中に置きっぱなしになっている作品という言い方をするとどうかなと思いますけど、まあそれがねパブリックアートと言われるジャンルの話なんですよ。
僕はね、この仕事っていうのがまさに軸になっているところなので、アーティストとしてあるいはアートプロデューサーとしてこのパブリックアートに関する舞台裏のリアルを包みくさずに話していきたいと思います。
まずね、同じアートでもギャラリー展示と屋外でのパブリックアートの展示っていうのはスポーツでいうと全くの別の競技になるんですよね。
室内だと数週間から数ヶ月で終わる一つの舞台みたいな感じですよね。
だけど一方でパブリックアートっていうのは何年も何十年もその場にずっと存在し続ける一つの風景になるんですよ。
普通のアートが室内で展示されるに比べて屋外に出た瞬間からですね、アートはね、相手として干渉する人だけではなくて戦う相手っていうんですかね。
それはね、雨であったり風とか紫外線っていった周りの環境であったりとか、あとは粉塵であったり鳥であったり子供であったりベビーカーなんかの人的な要因とかその他動物とかの要因とかですね、いろいろな要素が考えなければいけなくてですね。
それがね、設計の時点で最初から織り込んでおかなければいけないっていうところが、普通の室内のアートの展示とは全然違うっていうところですね。
まず素材の話からしていくとすれば、鉄であればやっぱり錆びないっていうことが命ですよね。
下地の処理からプライマーを塗って、中塗りを塗って、上塗りを塗るというような、何回もレイヤーを何層も重ねて呼吸するような塗膜を作って、まさに車のような感じでですね、丈夫な塗膜というのを作るようにしています。
ステンレスに関しても基本的には大丈夫なんですけれども、やっぱり仕上げとかすり傷とかっていうのが目立たないように、設置の環境に合わせて仕上げというのは決めていきますね。
例えば鏡面仕上げっていうのはかっこいいですけれども、やっぱりこれは鏡と一緒なので、太陽の光が当たって反射して眩しくなって、例えばその横の道路を走っている車の邪魔にならないかとかっていう細かいところまで考えたりするんですよね。
そしてガラスに関しても、強化ガラスを使ったりですね、あとは合わせガラスを使ったりとかして、厚みを持たせてですね、人が寄りかかった時の荷重とか風圧とか、割れた時の安全性まで考えてみているんです。
結構細かいでしょ。
石はですね、重厚でいいんですけれども、やはりね、これはね、石は重たいはいいんで、やはり基礎のコンクリートと地盤というのがセットになってきます。
そして石とその基礎をつなぐ、地中で安価がどういう風に噛み合わさるかっていうところ、あるいは地震が起きた場合にどう揺れるかとか、大丈夫なのかとかっていうことまで考えないと、作品がね、いくらその瞬間を美しくてもずっと存在するっていうところを考えると、なかなか成立しないところなのかなと思います。
そして先ほども触れましたけど、やっぱり安全性ですね。
そこが大きな違いなのかなと思います。
素材と安全性の考慮
ギャラリーとか展示されている作品なんかは結構ね、角が立ってたりとか、僕はそれはそれですごくかっこいいと思うんですけれども、パブリックアートのジャンルの中においては、やはりね、あまり角があると危険なので、
角は一般的な普通のテーブルであったりとか、皆さんが触って痛くないようなぐらいの角に丸めていったりとか、飛び出ているものですね、刺さったりするようなことっていうのはないようにするように、
手に触れる高さの位置っていうところは大きく考えるところではありますね。
やはりね、なかなか大人の人はわかってくれるんですけれども、子供っていうのはね、パブリックアートに必ずと言っていいほど登ります。
登らないでくださいと書いても登ります。
だからね、作り手としては登っても大丈夫な設計にしていきます。
そして、あるいは登れないぐらいの高さの台座を作って、安全性を確保したいとかっていう細かい設計をしたりしますね。
あとは、隙間を作るときでも指が挟まったりしないようなクリアランスをとったりとか、
あとは夜の間の見え方ですね、っていうところ、あまりいないと思いますけど、ぶつかったりしないようにですね、
夜の間もちゃんと光で照らされるような照明計画っていうところを設計の人と一緒に担保していくっていうようなことになっていきます。
また、光が眩しすぎても、先ほどの共鳴し合いの時にも言いましたけれども、事故の下なので、
ある程度、照明のいい角度をつけたりとかしてですね、カットしてふわっと見える設計に抑えたりとか、
あとは、屋外っていうのは人の動線と一体で考えないと作品がね、せっかくのパブリックアートなんですけれども、
障害物になっちゃいけないので、そういったところはね、しっかりと考えてやっていきます。
もう一つはメンテナンスなんですけれども、ここはね、ギャラリー作品とは決定的に違うところで、
やはり塗装っていうのを何年ごとにやっていくのかとか、ステンレスなんかだと誰がいつやるのかとか、
あるいは、あってはいけないことなんですけど、落書き対策ですよね。
コーティングっていうところとか、どういうふうに基礎の周りは水はけをよくして、足元とかに汚れが目立たないようにするのかとか、
あと細かい話なんですけど、勾配をとってうまく水が流れていくようにしたりとか、
私のアートなんかは結構中が空洞になっていることが多いので、水がうまく出ていくような穴を見えないところで小さく開けておいたりとかして、
うまく水抜きができるようにしたりしていますね。
水抜きの穴っていうのは、なかなかわかりづらいかと思うんですけど、
季節の変動によって、特に最近は夏は暑いじゃないですか。
やっぱりオブジェ自体もあまりにも暑いと微妙に膨らんだり、寒かったら縮んだりするんですよね。
そういう時に、やはり空気の穴っていうのは、水抜きの穴と一緒なんですけども、作っておかないと作品自体が熱によって台無しになってしまうことがありますね。
街の中のアート
そういう完成した瞬間がゴールドではなくて、それがスタートで、そこから始まっていく、
もう10年あるいは何十年スパンでこの作品と付き合っていくということを考えるのを設計に入れていくのがパブリックアートの仕事のやり方なんですよね。
どうですか?なんか全然普通の絵を描くのと違っているでしょう?
どちらかというと、設計とかデザインによっているような感じがしますよね。
ここまで聞くと大変そうって思うかもしれないけど、面白いのはね、ここからで、街には意外な場所に意外な作家の作品が隠れてたりするんですよね。
渋谷駅の連絡通路にある岡本太郎の作品もありますよね。
毎日何万人近い人が通り過ぎるけど、あれはちゃんと立ち止まって見ている人っているんですかね。
待ち合わせの場所として無意識に使っていても、作品が空間の温度を決めているのかなという気はちょっとしていますけれども。
あと有名なところでいうと、六本木ヒルズの広場にある巨大な雲みたいな形のルイーズ・ブルジョワのママがありますよね。
あそこはね、世界中から観光客が来て写真を撮る儀式の場みたいになってますよね。
雲の下でこう立って写真を撮っている人がたくさんいますけど。
新宿のラブって書いてあるパブリックアートも皆さん結構象徴的なのでお分かりだと思うんですけれども、あそこもね、もはや待ち合わせの代名詞みたいになってますよね。
こういうね、日常の顔になった作品っていうのはもう鑑賞とかっていう以上に、町自体の一つの記憶の装置っていうんですかね、記憶の仕掛けになってますよね。
さらにね、言えば公園のベンチとか、ビルの吹き抜けに吊られたモビールであったりとか、壁面のレリーフ、舗装の模様とか、パッと見て、設備や内装でもアーティストの仕事が入っていることが実は多いんですよね。
だから美術館に行かなくても、あなたみんな毎日アートの横を歩いていたりとか、気づくか気づかないだけだと思うんですよね。
次にね、街を歩くときはちょっとだけね、視線をね、上下左右と言いますか、下を見たりとか、いろんな方向に広げてもらえればいいと思います。きっとね、「え、これ作品だったの?」っていうような新しい発見がね、あるはずです。
そしてここからは社会との接点の話になってきますけれども、もちろんパブリックアートっていうぐらいですからね。
パブリックアートがね、一つ入ると、そこはね、ただの通過点から理由のある場所に変わるんですよね。
パブリックアートの重要性
待ち合わせ場所になったりとか、写真を撮ったりとか、SNSで共有されたりとか、人が集まるから周囲の回遊っていうんですかね、人の流れっていうのが生まれて、
カフェが見合ったりとか、夜はライトアップが小さい安心感を作って、街の価値っていうのが、実はこういう目に見えないパブリックアートの使われ方の積み重ねでね、上がっていくんですよね。
だからね、僕はね、ここでデベロッパーや行政の皆さんにお勧めと言いますかね、優しい提言をしたいと思うんですけれども、パブリックアートっていうのはどんどん積極的に設置していってもらいたいなと思います。
これに関してはね、本当にね、ディールではなくて、誰も損をしない取引と言いますか、投資だと思うんですよね。
最初にお金がかかるかもしれないんですけれども、やはりね、その場所に文化の厚みが出ますし、場所の記憶が育つんですよね。
それはね、最初の1年とかではなくて、やはり10年、20年経っていくことで、お客さんであったりとか、名所になったりとか、何よりその街を好きになってくれる人が増えるっていうことなんですよね。
設置のコストの議論がいろいろと持ち上がったりしますけれども、大きい流れのライフサイクルで見た場合はですね、やっぱりメンテの予算の設計さえ最初に組み込んでおけば、アートはね、確実にね、街に対して価値っていうものを返してくれるんですよね。
作品単体の評価よりも、パブリックアートがその街に入った後の10年っていうのを、一緒にデザインしていければいいなと思っています。
そう言っている製作側の僕らも、現場の調査でね、座って風を感じたりするんですよ。
昼と夜の風景とか、人の流れとか、これぐらい日が当たるなとか、ここは日陰だなとか、あとこういう音が聞こえているのかなとかっていう感じですね。
そしてそこにふさわしいスケールであったりとか、デザーリング、光り方、そういったものを考えて、時にはね、10分の1ぐらいの模型を作って、動線ですね、人の流れとか、人からの見え方っていうところを追求して、
予算があるときはね、やっぱり等身大の1分の1のモックアップっていうのを作って、実際に置いてみて、お客さんに分かってもらうような感じで、検証したりすることもありますね。
そして行政や技術者の人、あるいは清掃の皆さんと同じ図面を囲んで、毎日の掃除はここからとか、交換部品はここで外れるとか、落書きはこの塗装でこういう風にすれば落ちますよ、なんていうような運用の仕方っていうのを言葉にして共有して、
アートをただ単にその場所に置くっていうのではなくて、街に組み込んでいくっていうような形で進めていくことが多いですね。
その瞬間から作品はね、制作に携わる皆さんと一緒で、単なる物体から都市の機能の一部になっていくんですよね。
こうやって作られたパブリックアートは、時間とともに街の言語になっていきますよね。
公共空間へのデザインの提案
小さな子供が触って育って、登ったりとかもすると思うんですけれども、でもね、やっぱり何十年もあるものですから、だんだん大きくなっていくに従って学生になって街汗に使ったりとか、
社会人になってふと立ち止まってみたら、子供の時に見ていた後、実はこういう意味だったのかっていう感じで意味が変わってくるんですよね。
そして今はね、すごく観光客の皆さん多いですけれども、写真を撮ってもらったりとか、また来年も日本に行きたいなって思ってもらったりとか、
気がつけばですね、あなたの生活の目印になってるんですよね。
パブリックアートっていうのはね、難しい理屈じゃなくて、実はこういう街であったりその場所の目印を作る力っていうのが一番強いんですよね。
今日はね、一つだけお願いしたいことがありまして、明日からはいつもの道で歩いていくと思うんですけれども、
30秒間だけパブリックアートとか何らかのデザインされたものを見た時は立ち止まってみてほしいんですよね。
駅前のオブジェとか、公園のベンチとか、建物の壁とか、そこには絶対に誰かのデザインされた仕事っていうのが入ってると思うんですよね。
そういうのを探してもらうのも面白いと思います。
もし見つかったらね、本当にしっかりと見てもらって、作品の良さとかっていうのを感じてもらえればいいかなと思います。
今日はもう長々と喋ってしまいましたけれども、時間が来てしまいました。
最後までこの番組を聞いていただいてありがとうございます。
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この番組は日本現代アート協会、日本現代芸術協会、ジャパンコンテンポラリーアートアソシエーションの協力でお送りしております。
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クリエイティブでお会いしましょう。