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こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
こちらの番組では、たくさんのワンちゃんや飼い主さんと関わってきた私が、
日本の犬と飼い主さんのQOLをあげるおテーマに、犬のあれこれについて、私個人の見解からお話ししています。
時には子育てネタや、留学時代や旅行の思い出などのお話もお届けいたします。
さて前回は、犬の学習法③として、よく問題行動に挙げられる、
散歩中に他の犬に対して吠えるというお悩みへの、性の強化と性の罰のトレーニングのアプローチについてお話ししました。
今回は犬の学習法④、最終回です。
小難しい犬の学習理論と行動学のお話が続いて、再生回数は全然伸びませんが、私はめげずに喋り続けますので、
お付き合いいただける方は、どうぞ最後までお聞きいただけたら嬉しいです。
私が好んで使うトレーニングの一つとして、クリッカートレーニングとシェイピングがあります。
クリッカーというのは、トレーニングの道具の名前です。
手のひらの中に収まる小さなサイズの器具で、中央にある突起またはボタンを押すとカチンと音が鳴るというものです。
こんな感じですね。こんな感じです。
これ2種類、違うタイプのクリッカーを今鳴らしてみました。
こんな小さな単純な道具が犬の行動に劇的な変化をもたらす様を何百何千と見てきた私にとって、
クリッカーはとても面白く奥深い道具になります。
皆さんはイルカの章はご覧になったことはありますか?
プールの水面の上に吊られた輪っかの中を華麗なジャンプでくぐり抜けるイルカの姿。
かっこいいですよね。私もイルカのトレーナー憧れましたよ。
さて、このイルカの輪くぐり、どうやって教えるのかご存知でしょうか?
まさかイルカを抱えて輪の中にブーンと投げ入れるなんてわけないですよね。
イルカに輪くぐりを教える方法はいくつかありますが、一つの方法として取られているのがシェイピングという方法です。
シェイプは英語で形という意味ですが、まさに行動を形作るという教え方です。
まずはイルカのいるプールに輪くぐり用の輪っかを沈めます。
この輪っかにイルカが近づいたら合図を鳴らして小魚を一匹与えます。
輪っかに近づいてきたら小魚をもらえるということを学習したら、今度は輪っかをくぐった時にだけ笛を鳴らして小魚をあげるようにしていきます。
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実際には輪をくぐるように誘導する場合もあります。
輪をくぐったら合図が鳴って魚をもらえることをイルカが学習したら、だんだんとその輪っかをプールの上へと引き上げていきます。
イルカが輪を通ったら合図が鳴ります。合図が鳴ったら魚をもらえます。合図が鳴らなかったら魚はもらえません。
その単純な繰り返しでイルカは自分のとった行動に対し合図が正解であるということを学習していき、どうしたら正解の合図が鳴るのかを考えていくようになります。
この合図が今のカティというクリッカーの音ですね。
少し前の配信で私は愛犬にベルを鳴らしてもらって少年時代を歌いました。
ベルを鳴らすという行動は基本的にはクリッカーで教えたものです。
まずはベルを彼に見せて興味を持って匂いを嗅ぎに行ったらクリッカーを鳴らしておやつを一つあげます。
次は前足でベルの一部に触ったらクリッカーを鳴らしておやつを一つあげます。
その次はベルに触って音が鳴ったらクリッカーおやつ。
その次はベルの頂上にあるトッキーを押して音が響いたらクリッカーおやつ。
そしてこのようにベルの上をトッキーを押してきれいに音を響かせるという最終目的まで段階的に行動を形作っていくことをシェイピングと言います。
クリッカー自体はクイズ番組で言う正解の合図です。
正解の後には商品が来るということを一番最初に強くインプットしておく必要があります。
様々な言葉がありますがクリッカーの音イコールおやつの関連付けを最初に犬に教えることをチューニングと呼んだりします。
よく犬の気を引くためにこのクリッカーを鳴らす人がいますがこれは大きな誤解です。
クリッカーはあくまでも正解の合図です。
犬が自分自身で取った行動に対しそれは正解だよやったねと教えるものなんです。
このクリッカーを使ったトレーニングが効果があるのは前回までお話しした性の強化の理論をうまく使っているからです。
行動により良い刺激が与えられると行動は増え強化される。
この性の強化の理論によりクリッカーの音で犬の行動を強化することができます。
また犬が自発的に取った行動に対してそれが正解だよということを教えるものですので
犬にとってはデメリットが少ない上どうやったらクリッカーが鳴るんだろうと自分で考えて行動をするようになっていきます。
この自分で考えて行動する犬を目の当たりにした瞬間は私の大きな喜びです。
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お座り・待て・伏せなど人のコマンドに従うトレーニングだけを長年してきた犬は
この自分で正解を考えて導き出すという過程がとても苦手です。
例えば同じベルを目の前にしても何をしたらいいのかわからずじっと座って指示を待つ指示待ち犬というのは多いものです。
クリッカーでシェイピングのトレーニングをしてきた犬は
この目の前にあるこいつを何かすればいいんだな。
よし当ててやるぞと生き生きとした眼差しで正解探しをし始めます。
私は犬が自分で考えて行動を見る様が大好きです。
こちらが言ったことを置き換えのように正確にこなすだけが犬を育てる犬と暮らす醍醐味であればロボットで十分です。
私は彼らが自分で考えて私が持っている答えにたどり着いたとき本当に感動するし誇らしく思います。
そして私とコミュニケーションが本当に取れたなと実感するんです。
クリッカーを使ったトレーニングでは注意点がいくつかあります。
その1クリッカーは犬に犬の取ったその行動今の行動が正しいよと教えるものです。
行動が起きたら直ちに鳴らし報酬であるおやつを与える必要があります。
行動正解の合図これがクリッカーですね。
報酬のタイミングがずれると犬は違う行動が正しかったのだと学んでしまいます。
その2タイミングや行動を間違ってクリッカーを鳴らしてしまっても最初のうちは必ず報酬を与えます。
間違ったのは人間ですのでクリッカーの音イコール報酬の方程式を変えてはいけないと言われます。
その3クリッカーを使ったトレーニングでは犬の自発的な行動に対し正解を教えその行動を強化することが基本です。
望む行動をしないからとおやつで釣ったり先にクリッカーを鳴らして気を引くことでは学習ができません。
クリッカートレーニングは時に犬とハンドラーこれはクリッカーを持っている人ですね。
両方に忍耐が必要になります。
その4最初からゴール最終目的にたどり着こうとしないで細かく目標設定をすることが必要です。
例えばベルを鳴らすというゴールに最初からたどり着くのは難しいので
まずはベルに興味を持って近づいていったらクリッカーを鳴らすというように少しずつ少しずつ導いていきます。
その5曖昧な鳴らし方グレーゾーンを作らないこと
例えばこんな鳴らし方ですね。
これですと最初の勝ちなのか最後の勝ちなのかどちらが正解なのか犬に伝わりません。
この点でハンドラーに強い意思が必要になります。
また犬が偶然や自発的にとったハンドラーが意図していない行動を強化することもできます。
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例えば犬が偶然猫ちゃんのように顔を描いた仕草がかわいいなと思ったらその瞬間にクリッカーを鳴らしておやつをあげます。
クリッカーで学ぶことに慣れている犬であれば5分もすれば顔を描く仕草を覚えてくれるでしょう。
クリッカートレーニングは犬だけではなく猫や哺乳類全般そしてイルカやキングにも使えるというものです。
興味がある方はぜひクリッカートレーニングと検索してみてくださいね。
そしてトリックや芸を教えるためだけではなく恐怖やトラウマの克服
自信のない犬に自信をつける落ち着かせるコミュニケーションを深めるためにも大変有効なトレーニングです。
実際クリッカートレーニングを始めていくと犬たちはクリッカーが大好きになります。
そしておやつとクリッカーを両手に持つとクリッカーの方を意識します。
このおやつはタダでもらえないことは知っているんだよ。今僕は何が求められているんだろう。
このクリッカーはどうすれば鳴るんだろうと犬が考えるようになるんですね。
クリッカーの難点といえば使いこなすことにそれなりの技術がいることと
食べることに興味のない動物には効果が得にくい。ついついおやつに頼りすぎてしまう方が多いということでしょうか。
それでも私はこのクリッカーを使ったトレーニングはとても面白いと思っていますし
犬に負担をかけすぎずに行動を変える方法として効果があるなと思って使っています。
興味のある方はぜひクリッカートレーニング始められてみてくださいね。
細かい情報がもっと欲しいよとかどのように実際やっていったら教えたらいいんでしょうか。
使ってみたいという方はレターやコメント、インスタのDMなどでもお気軽にお尋ねくださいね。
本日も最後まで聞いていただきありがとうございました。
次回もまたよろしくお願いいたします。