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こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
さて、前回は、イギリス田舎暮らしとティータイムの思い出をお届けいたしました。
今回は、その続きのお話をしようと思っています。
今回も長くなってしまう予感がブンブンしますが、お付き合いいただけますと幸いです。
イギリスでのティータイムは、年齢も文化も言葉も生活も異なる私が、現地の人々の中に入るためにとても大切な時間でした。
同じものを飲み、同じものを食べ、同じ時間を共有することで、
私は少しずつ、日本から来た言葉もわからない、何もできない女の子から、ティータイムを共有したお茶の好みがわかる女の子になっていったんです。
それだけティータイムを共にする文化は、イギリスではとても大切だったと思います。
前回もお話ししたように、イギリス人ネイティブたちと囲むティータイムは、あまりスコーンは登場しませんでした。
手作りの焼き菓子でもてなしてくれる方の中には、スコーンを提供してくださったり、
私がスコーンが好きということを伝えていったお友達は、わざわざナオコが好きだからと私のためにスコーンを買っておいてくださったり、焼いてくださる方もいらっしゃいました。
その中でも私にとって心のふるさとでもあり、実際には同じ横浜の都市部に住んでいる祖父母がいたんですが、
田舎の祖父母のような存在であったリチャードとサラの夫妻は、何度も何度も共にティータイムを過ごしました。
サラは私の英語の先生で、この英語の授業というのは、ほとんど私を師匠宅での修行の場から連れ出して、甘やかしてくれるための工実でした。
家と屋外犬舎の掃除、洗濯、犬、鶏、羊、人の食事、そして後片付け、朝は6時前から9頭の大型犬たちのお世話、お散歩、トレーニングに明け暮れる私は、サラの家に行くこと、そこでは何もすることはありませんでした。
さらに英語を習い終われば、リチャードのお手製のスコーンや焼き菓子と温かい紅茶でのティータイム、スコーンにはクロテットクリームとリチャード自慢のキッチンガーデンで採れた果物を使ったお手製ジャム、足元にはゴールデン・レッドリーバーのポリーが私がお菓子のかけらを落とすのを待っていました。
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肌寒い時期には、ダイニングスペースの暖炉の火を見ながら過ごすこの時間が、私には何よりもご褒美だったことを覚えています。
以前の配信でもお話しした通り、残念ながらリチャードはコロナの過虫に亡くなり、私が愛したあの緑豊かな丘のふもと、湖のそばに立つ、素晴らしいお庭のあった古民家はもう他の方の手に渡りました。
あの時間はもう二度と戻ってこないものだということが、さらに思い出を美しく引き立たせるものですね。
さて、日本にいた頃からスコーンが大好きだった私には夢がありました。
イギリスにはクリームティーというお茶文化があり、これはアフタヌーンティーで提供されるスコーンとお茶を楽しむディータイムのこと。
このクリームティーを本格的に楽しんでみたいと思っていました。
日本ではスコーンというといろんな種類がありますが、イギリスではそこまで多様性はなく、プレーン生地がレーズンの入ったもの、代わり種でナッツやチョコが入ったものくらいでしょうか。
今はどこでも楽しめるようになったスコーンですが、このスコーンと共に出されるのはイチゴジャムとクルテッドクリームが基本。
とはいえ、このクルテッドクリーム、イギリスでもなかなか日常的に食べる習慣が、私が知っている限りではあまりなくて、
ハロッツのテイルームで本格的なアフタヌーンティーをオーダーしたとき以外には、クルテッドクリームをイングランドで食べたことはあまりなかったと思います。
コッツウォルトなどに行くと、コッツウォルトハニー、蜂蜜が有名なので、イチゴジャムとバターと蜂蜜というような組み合わせでスコーンが出されるということもよくありました。
それはなぜか、クルテッドクリームというのは、特に鮮度が大切で保存が効かないものらしいんです。
乳脂肪分は実に60%以上。ミルクから作られるシンプルなクリーム。バターと生クリームの間のような感じで、非常に濃厚です。
クルテッドというのは、固まった、凝固したという意味のようでした。
日本でも見られるようになりましたが、昔は早々味わうことのできなかったもの。
このクルテッドクリームの産地は、イギリス南西部、デフォンシャやコーンウォール地方であり、産地によってデフォンシャクリーム、コーニッシュクリームとも呼ばれるそうです。
気候が温暖で牧草がよく育ち、この地方の、フランスに近いんですけれども、ジャージー島で育つジャージー牛は世界的にも有名。
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このジャージー牛から獲れるクルテッドクリームは一級品とのことでした。
コーンウォール地方、イギリス南西部にはフレッシュなクルテッドクリームが作られ、それを牧場に併設されたカフェで、スコーンと共に提供するクリームティーが食べられる場所があるのよ、と教えてくれたのも、サラ・アンド・リチャードの夫妻でした。
この話を聞いてから、私はイギリス南西部にクリームティーを食べに行く旅に出ることを夢見ていました。
そこで師匠に少し休暇をもらい、1週間程度イギリス南西部へ一人旅に出ることにしたんです。
当時はまだネット環境が今ほど整っておらず、スマホを持ち歩くということもなかったので、現地での一人旅の手配、これはもちろんすべて英語ですし、英語の地図を片手にイギリス南西部、コーンウォールやレボンの街、巡りました。
ロンドンやオックスフォード、ケンブリッジやバーミンガムといったメジャーな大都市は多くなく、日本語での観光情報はまだまだ少なかった記憶もあります。
そこで南西部を旅したことのあるサラ・アンド・リチャードの夫婦にいろいろとアドバイスをいただき、一緒に旅の計画を立ててもらいました。
私の旅はイギリス南西部のハブ都市として有名なブリストルから始まりました。
現地の鉄道、バスを駆使してバース、プール、ウェイマス、ポートランド島、エクセター、トーキー、ダートマス、サルクーム、プリマス、イギリス南西部に伸びるコーンウォール半島の中心部をレボン地方といいます。
本当は西の果て、ランズエンドまで行きたかったのですが、私の旅はこのレボン地方が中心となりました。
この時の旅の記録、もしかしたらどこかにあるのかもしれませんが、見つからず記憶に頼るものになるのでざっくりとしたお話しかできないことをお許しください。
この地方には伝説が多く、私が過ごしていたイングランド・チューブとはまた違った雰囲気がある土地でした。
言葉や町の名前なんかもなんとなくチューブ・イングランドとは違っていて、特に南西部の海岸沿いの町の雰囲気は明るく穏やかで真っ白な雲、真っ青な空と海、白い砂浜を持つ海岸もあり、まるで地中海の国々にやってきたような錯覚を覚えたほどです。
デフォンに入る前に訪れたドーセット地方でも有名な都市メイマスに宿をとった際には、町には小さな焼き菓子店がたくさんありました。
その向き先にクリームティーという看板が掛かっていれば、クリームティーを提供するカフェが併設されているよということ。
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恐れ恐れドアを開くと、活腹のいいおばさんが、「あら、東洋人の女の子。一人では?」と一瞬目を見開いた後、「May I help you?」とにこやかに聞いてくる。
そして、「私はクリームティーをいただきたいのですが、黒鳥ってクリームはありますか?」と聞いたことを覚えています。
「Sure!」と言われると同時に、小さなテーブル席に通されました。
初めていただいたクリームティーは、素朴なスコーンと濃いめの紅茶、たっぷりのクレーテッドクリームとキラキラ光るイチゴジャムのセットでした。
可愛らしいバスケットに入って出てきたのを覚えています。
感動とともに即座に頼らげ、スコーンだけ追加して購入した私でした。
この翌日は、宿のおじさんから教えてもらったポートランド島という陸続きのお島駅、その先頭にあるポートランドビル灯台を目指して一人ひたすら歩いたことを今でも思い出します。
軽い気持ちで行ったのが間違いでした。往復で8時間以上ついた地。
一体何時間歩いたのか、記憶にないくらい歩きました。
ですが、この辺りの観光名所、そしてトレッキングコースにもなっているようで、多くの方が島の先端にある灯台を目指して360度大パノラマの風景の中を歩いていました。
遮るものがないので遠くから見える灯台は近くに見えるものの、それがまた遠い。
この日はクタクタでしたが、ポーツマスの灯台の近くにもやはりカフェがあり、紅茶をテイクアウトして持って行ったスコーンと、B&Bで朝いただいたパックのジャム。
それを使って、クロテッドクリームなしのクリームティーで息を吹き返した私でした。
私は小説も好きだったので、イギリスが誇る偉大な作家や作品にゆかりのある地を訪れることも好きでした。
ここではアガサクリスティの生誕地であるトーキー。
有名すぎる世界的探偵シャーロックホームズの作品の中でも特に大好きで何度も読み返し、この旅の同行者になってもらったバスカウイル家の犬の舞台となったダートムーア国立公園は今でも印象が強く残っています。
デボンの州都である美しく大きな街、エクセターからトーキーへ移動する途中に訪れたダートムーア国立公園は広大な荒野であり原野。
広大な敷地には国立公園に指定され、見渡す限り地平線の向こうまで低木や寒木、紀元の広がる姿、ヘザーやヒースという夏場に紫の花をつけるハーブが一面に咲いていたことを思い出します。
この地方は天気が変わりやすく、変わらない原野が果てしなく続くために迷いやすいので、昔から妖精や魔女、巨人などの伝説の地となっています。
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確かに日が傾くにつれ、紀元や低木の茂みの向こうに何か人ならぬ気配を感じるような、そんな不思議な場所でした。
日本で言えば富士山のおもとに広がる青木柄樹海のような感じでしょうか。
このドアトムーアを横切るバスに揺られながら、バスカビル家の魔剣伝説に出てくる犬の姿を思い描いていた私です。
陶器岩は美しく、まるで南仏マルセイを思わせるような見渡町。歴史ある保養地、リゾート地でもあり、お金持ちの夏のリゾートを基礎地として人気があります。
真っ青な海に浮かぶ白いクルーズ船やユートたちが目を引きました。
町の木もとても小さく、治安が良く、暮れる夕日をゆっくりとマリーナで眺めていたことを思い出します。
私はこの町で一つの町、一つのスコーンを目標にしていました。
たとえタイミングでクリームティーを楽しめなくても、スコーンは持ち帰りに適した焼き菓子、スーパーで購入するのではなく地元のパン屋さんやお菓子屋さんで必ず一つ購入しようと決めていました。
さて、長くなってきてしまいましたので、今日のお話はここまで。次回に持ち越していきたいと思います。
次回は、イギリス南西部の一人旅で出会った素敵な出会い、そして美味しい食の思い出、引き続きイギリスのクリームティーを巡る旅のお話をしたいと思います。
今回も最後まで聞いていただきありがとうございました。