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こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
こちらの番組では、たくさんのワンちゃんや飼い主さんと関わってきた私が、
日本の犬と飼い主さんのQOLをあげるおテーマに、犬のあれこれについて、私個人の見解からお話ししています。
時には子育てネタや、留学時代や旅行の思い出などのお話もお届けいたします。
犬のトレーニングについての実践編や業界裏話、アニマルコミュニケーション等については、メンバーシップ配信にてお伝えしています。
昨年中はたくさんの方とご縁をいただき、本当にありがとうございました。
改めまして、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
このお正月、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
ここ関東は、関東らしい冬晴れと、カラッ風といわれる乾いた身を着るような冷たい風が特徴的な新年を迎えております。
私は横浜から南房総の方に今、移って家族とのんびり過ごしております。
空気は乾燥し、顔にあたる風が冷たいな、という風に思いますけれども、太陽が出ている時間はとても暖かく感じます。
こんな時は、寒い日のきんと冷えた空気の中を犬たちと歩いた記憶がよみがえります。
ということで、新年最初の収録配信は、イギリス修行時代の思い出を一つお話ししようと思います。
私の師匠はガンドックという狩猟回収犬のトレーニングと競技を行う先生でいました。
ガンドックというのは、撃ち落とされた鳥や小動物をハンドラーの手元まで持って帰ってくる役目を担っていた犬なんですが、競技そのものの名前でもあります。
ガンドックのテストや練習では、本物の鳥ではなく、鳥と同じ重量のあるダミーと呼ばれる重りが利用されます。
イギリスでは人気のあるドックスポーツでもあり、全国大会もあるんですね。
私が修行時代に滞在した先は、ロンドンやオクスフォード、バーミンガムなどの大都市ではなく、おそらく日本人にはほぼほぼ知られていないだろう田舎の町でした。
しかも、師匠が住んでいるのは人もまばらな住宅地で、車がなければ最寄りのバス停まで歩くことさえままらならないというような場所。
周りは緩やかな丘と森、牧草地に囲まれた、まあ緑豊かな土地でした。
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犬7頭、猫1匹、羊3頭、鳥5羽と暮らしていて、マンションの異質で生まれ育った私にとっては、まるで動物王国そのものでした。
秋から冬にかけて、イギリスではシューティングが解禁となります。
シューティングシーズンが来ると、本物の鳥を撃つことから始まるガントックのコンペティションや、
鳥撃ちのイベントのお手伝いとして、撃ち落とされた鳥を回収する、ピッキングアップという企画に呼ばれることがありました。
ちなみに、ハンティングというのは地を走る生き物の狩り、シューティングは空を飛ぶ生き物の狩りで、使う犬もその様子も全く違います。
私は一度だけハンティングにも随行したことがありましたが、狐やウサギを大勢が追い立てる様は、ちょっとかわいそうになってしまって複雑な気分でした。
シカもありましたかね。
だからといって、鳥だから良いというわけでは全くないのですけれど、人間というものは、どんな刺激にでも次第には慣れてしまうものなんですよね。
最初はあんなに恐ろしいと思っていた光景でも、次第に平気になってしまうんですから。
実際の鳥を使ったトレーニングは軽々しくできるものではなくて、普段はダミーや冷凍保存されたそのままの鳥を使っていました。
そのため、実際の取り打ちやシューティング、狩猟の場での鳥の回収、ピッキングアップを手伝わないかというお誘いは非常にありがたく、実践の場にもなるわけです。
私は何度かこのピッキングアップに参加したことがありました。
ピッキングアップはガンドックの競技会やワーキングテストのように、回収する犬たちが主役というわけではありません。
あくまでも取り打ちシューティングこそが主役であり、鳥を回収するのはお手伝い。
だからこそガンドック競技会の場では見られない、体験できないようなことにも出会いました。
シューティングで使われるのはカモのような水鳥やキジのような鳥が多かったと思いますが、
それらをシューティング用に飼育し、寮に最適な数や繁殖状況を見極めて、寮番のスケジュールや場所を管理するのはゲームキーパーと呼ばれる職業の人々です。
当然ですが、そんなことができるのはかなりのお金持ちです。
私は一度だけ、ああこれが本物のイギリスの上流階級の遊びってやつね、ということに出会ったことがあります。
それはある村の領主さんの敷地で行われた大掛かりなピッキングアップに参加した時のことでした。
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私がどういう戦いでその場に行くことになったのか、詳しいことはわからなかったのですが、
どうやらその村は代々一つのファミリーが治めていて、かなり古くから存在する村のようでした。
映画館を一つ作るにも領主の許可が要るような場所なのよ。
と、師匠に言われましたが、それが冗談だったのかは今になってもわかりません。
私の耳にはその村の名前はオーバブリーというふうに聞こえましたが、
スペルを確認したわけでもないので、本当にそういう名前だったのかも今となってはわかりません。
その日の狩りにはびっくりするほどのたくさんの犬たち、ガンと呼ばれる狩猟者たち、
そしてガンドックのハンドラーたちが集まっていました。
湖の向こうで犬たちと待機した後、水鳥の大群が一斉に空を黒に染め、
それと同時に旅に重なる獣声、そしてパタパタと地に落ちる鳥たち。
それを合図に犬たちとハンドラーたちは一斉に撃たれた鳥を回収に向かいます。
ピックアップトラックに乗り、移動しては撃たれた鳥を回収し、トラックに積んでいくんです。
その光景の迫力には唖然とするものでした。
犬たちは茂みに、森に、湖に飛び込んでは、口に口に鳥をくわえて戻り、次々とまた飛び出していきます。
ハンドラーの支持する方向へ、まるで弾丸のように。
回収作業を任された犬とハンドラーたちは、それぞれ回収した鳥の数を競い合っているようでした。
狩猟はお金持ちのゲームである、という意味を理解したのはこの時でした。
ひとしきり回収を終えた後は、漁師の館でのアフターパーティー。
当然のことながら、東洋人の若い女性なんて私一人。
この時の私は、まだ都営して4ヶ月ほどで、日本から持ってきた水色の長靴を履いていました。
これが非常に目立って、ブルーウェリントンの少女と、あだ名をつけられたほどです。
というのは、伝統的な漁場での衣装は決まっていて、大体がアースカラー。
雨が降っても当然傘をささず、レインコートなんてもってのほか、古くて重い、コーティングされた昔ながらのハンティングスタイルを着ていました。
レインコートや取り打ち帽、それに日本でも最近流行りだしたハンターのようなアースカラーのブーツを履くことがお決まりで、伝統的な狩猟スタイルでの参加が常でした。
この時も水色の長靴を履いた東洋人の小さな女の子はよく目立ったようで、多くの人に声をかけられました。
とはいえ、私はまだ受け答えがしっかりできるほど英語が堪能ではなかったんです。
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それでも一言ずつ言葉を返していったことを思い出します。
中には眉をふさめていたり、この場にふさわしくないと思った人も当然いたでしょうが、幸い私はそんなことを感じられるほどの言語の余裕も気持ちの余裕もなかったんですね。
ある一人の明らかに仕立ての良いスーツに身を包んだ紳士がやってくると、師匠や周りのお友達のハンドラーたちが注目し、立ち上がって彼に挨拶をし始めました。
これがこのエステイト、領地の領主でした。
彼は私に目をとめると面白そうな顔をして、「そのブルーウェリンと似合ってるね。日本ではシューティングをしたことあるの?」と聞きました。
私は緊張しながら、「いいえ、初めての経験で驚きました。でもとても楽しかったです。お招きありがとうございました。」というようなことをしどろもどろ答えました。
最後に、「サーッとつけるかどうか悩んだことを思い出します。」
彼は笑って、「それは良かった。奥の部屋で温かいティーを楽しんでいてね。」と答えてくれました。
私は本当の貴族というのは選ぶらずに機品のある方なんだなぁと思ったのでした。
ほんのわずかな滞在でしたが、その館の印象は今でも深く刻まれています。
大きな池、管理し美しく整えられた庭園と、自然の地形にそのままに残されているエステイトの中の両場、どのくらい広いのか私には見当もつきませんでした。
お城かと思うほどのハニーストーン作りの大邸宅、そこでのアフターパーティーは一瞬だけ参加をしました。
師匠が7頭の犬たちをすべて連れて室内に入れなかったので、彼らを車に残していたので、それが気がかりだったんですね。すぐに私たちは追い飛ばしました。
皆さんの中でダウントンアビーというイギリス貴族のテレビドラマをご存知でしょうか。
正しく、あんな感じで私は貴族の館って本当に鹿の首の白製やら肖像画が廊下に飾られているもんだなぁと、変なデジャビンに囚われたものです。
100人は入るであろうホールにはシューティング後のティータイムを彩る様々なお菓子やクッキー、軽食が並び、熱い紅茶、コーヒー、ジュース、おそらくお酒もあったと思います。
だけどここでは紙コップなんだねと変な感想を抱いたことも思い出しています。
この村は大体このファミリーが治めているの。彼が今の党首をと言われたので、この村の全てがこの領主の土地であるということなのか、それはよくわかりませんでしたが、
イギリスの地方にはこうした貴族のエステートや邸宅が存在します。そして人口の数%を占めるという貴族のファミリーが今でも存在し、実際にその大邸宅に住んでいます。
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貴族の方々も現代では広大なエステートの経営に躍進されているようで、時々屋敷を貸し出したイベントや、普段は巨大な邸宅を観光名所として見学してもらって、
もしくは宿泊施設として運用し、本人たちは現代風の便利な家屋に住んでいるというパターンもあるようです。
私は夏の祭典CLAにも参加しましたが、こちらは4日間をかけて行う夏の野外フェスで、会場は毎年どこかの貴族のエステート内となります。
日本で言えばフジロックを貴族の領地で行うようなものですね。
領地といっても邸宅の他に、英国式庭園、キッチンガーデン、池や小川、森、湖、芝生、牧場や牛、馬、羊のための草地があります。
冬枯れした落葉樹の林の中を金色に差し込む光の反射する小川を飛び越えながら犬たちと進んだ日のことが脳裏によみがえります。
大葉振りでの1日は短かったものなの、私にとっては一生忘れられない経験となりました。
観光客としても、語学留学生としてもイギリスには滞在をしていましたが、それだけでは決して味わえない体験、経験をたくさん私はさせていただきました。
あの時はひたすらに学ばなくちゃ、吸収しなくちゃと必死でしたが、その場に居合わせたこと、それこそがかけがえのない体験であり学びだったこと、今になってよくわかります。
今後もこうした犬留学だからこその体験のお話、ちょいちょいしていこうと思います。
ということで本年最初の収録配信はこちらでおしまいになります。
最後まで聞いていただきありがとうございました。