罠なんですね。
罠だったんですよ。というのも、FRPというのは複合素材なので、流し込むって言われてもほぼ間違いなんですよ。これに気づくまでに6年かかったんですね。
すごい。
そうなんですよ。高校生ぐらいになって、やっとこの本が間違いだと気がついたんですよ。それまでは中学生、高校生時代まで街の繁華街にその材料を探しに行ったりするんですけども、全然これが本が書いた人も多分よく分かってないからそう書いたんだろうなっていう感じで、はしょられてて。
非常に材料を集めるのに苦労したり、間違いを正すのにも6年かかったわけです。
すごい。作っていることもすごいんですけど、諦めなかったことがすごいですね。
苦労しました。最初はFRPというものがポリウレタンとガラス繊維とあと硬化剤でできてるんですけれども、本にはFRPを流し込むとしか書いてないので、
じゃあまず粘土原型はできてるから石膏で型を取ろうと。これも学校の教材の残りとか先生にもらってきて型を作るわけです。
型を作ったら当然このFRPを流し込みたいんですが、当然材料なんて持ってないし見たこともないわけです。
近くのプラモ屋さんとか塗料屋さんとかそういうところに聞きに行くんですね。ところが分からないと。聞いたこともないからっていうことだったんですけど、
繁華街とかに歩いて行って大きな塗料屋さんとかに行くと、あれは塗るものだと言うんですよ。塗るものであって流し込むもんじゃないよって言われて。
こっちは本を信じてますから。だって残念するんですよ。もう子供にとってはバイブルなわけですよ。
そこに書いてあるのが間違えてるはずないって思いますよね。
そうなんですよ。で、塗料屋さんに言われて船着き場に行ってみなさいと。船着き場に行けばFRPを使ってるからそれを見せてもらえなさいと。
当然バス代とかも節約して、いざ何かあったらすぐ材料を買えるようにお金を取っておくわけじゃないですか。
で、船着き場に歩いて行くと。歩いて行ったら確かにボート修理をしてる人がいたんですね。
聞いてみたらFRPは今ちょうど使ってるよと。見せてもらったら塗ってるんですねやっぱり。
あーなるほどなーと思って。でも流し込むって本には書いてあるぞおかしいなと思って一旦家に帰るわけですよ。
そしたらですね風呂場が昔、風呂系が昔はFRPだったんですよ。
ケロヨンみたいなやつですか?
あーそうですそうです。ところがですね、昔のFRPっていうか、FRPってもともと工技の強化プラスチックなのでいろんな意味合いがあるんですよ。
風呂場で使われてるFRPっていうのは昔のトタン屋根みたいな繊維の入ったプラスチックもFRPと呼ぶので、
別のFRPだったんですよ。
あーそっかそのFRPという略語は違うものだったってことですか?同じものだけど別種類があるみたいなこと?
えーまあ全く工技の意味で、強化繊維プラスチックなので繊維が入ってるプラスチックだったら何でもFRPって呼ばれるんですよ。
あー意味合いが広かったんですねFRPが。これっていう固有名詞というよりはもうジャンルの名前だったんですね。
そうです。で風呂場でたまたま自分家の風呂がFRPと書いてある。
じゃあこれどう見ても型に流し込んで作ってるだろうから、FRPっていうのは船着き場で作ってるのとは別だと解釈しちゃったんですよ。
なるほど。
いろいろな情報を得て、だんだんだんだん6年経つうちに、いやこれは本の方が間違ってるなと。
いろんなことに気づいて結局船着き場で使ってたFRPを塗ってる状態が、その本で言うFRPを流し込むということだと気づいたんですよ。
あーそこに戻ってくるんですね。
そうなんです。
えーすご。そこまでもやっぱり諦めないのがすごいですって。
いやー苦労しました。
プロジェクトXみたいですもん、今ここまで。
そう言っていただけると苦労が報われます。
まあそこからは会心劇ですよ。ただやっぱり今みたいにネットというものがないので、やっぱり試行錯誤は変わらなくて。
で、高校生になってから行きつけの画材屋さんで透明樹脂を扱うようになってて、透明樹脂も買ってライダーの目を透明にして本物にどんどん近づけていくと。
で、使ってる材料はもう撮影用の仮面ライダーの衣装と全く同じものなので、ラテックスというゴムも使うようになって、どんどん完成度が上がっていったんです。
すごい。なるほど。それで今そこまでのクオリティができるわけですね。
元々の原型はやっぱり作品を見て雑誌だったりとか、仮面ライダーの本を見てご自身で造形を作られてるわけですね、原型は。
見てそれが作れるっていうのがまたすごいですね。
いやいや、もう慣れと言うか。
下世話なことに聞くことになってしまうかもしれないんですけど、仮面ライダーの仮面を一つ作るのって大体おいくらでどれくらいの時間がかかるものなんですか?
費用と時間があれば、一つのマスクを完成品に持っていくまでに1ヶ月かかりますね。
仕事をしながらだとやっぱり時間が取れないので、3ヶ月くらいかかったりしますね。値段の方もでしたっけ?
値段の方は、もしお伺いしてもよければ。
値段の方はですね、ピンキリなんですけれども、いい材料を使えば、たぶんマスク1個に最初の1個が12万円かかるんですよ。
最初の1個っていうのは何でかっていうと、まず原型を作るじゃないですか。これ絶対必要ですよね。
で、型を作るじゃないですか。型のシリコンゴムがまた高いんですよ。そこからFRPを流し込むというか貼り付けていって作るので、
普通にマスクを1個作るだけだったら、型にもFRPを流し込むっていうか貼り付ける。
この作業をするだけでいいので、もうFRPの材料だけで済むんですよ。たぶん3万円あればできるんじゃないですかね。
秋島さんもある種量産体制ができているってことなんですね。
これは量産になってしまうんですよ。型を1個作ってしまうと、だいたい12個ぐらい抜けるんですね。
質によっては30ぐらい抜けるでしょうから、どうしても1個だと撮影している最中に、自分たちは趣味で撮影するじゃないですか。
色が剥がれたり、破損したり、そういったことがあるんですよ。
なので、それをリカバーするためにやっぱり1回で2、3個は作っておくっていうのがまずあるんですね。
やってることはほぼ東映のチームが仮面ライダーを作るのと同じ工程を踏んでるんですね。
もう散々調べて、材料も全部揃えて、今は科学的な、平成仮面ライダーになってから色々と違うんでしょうけど、昭和の方の仮面ライダーと全く同じ素材を使ってます。
本当に仮面ライダーがお好きなんですね。
そうですね。僕は仮面ライダーに憧れて、仮面ライダーの格好をして、みんなに喜んでもらって、幼稚園、保育園とかのボランティア活動をするっていうのもよくやってたので。
ヒーローですね、本当に。
とんでもない。僕なんかまだまだです。
ヒーロー系でいうと、特撮系でいうと仮面ライダー一択なんですか?
仮面ライダー戦隊だったりとか、ウルトラマンとか、もしくはアベンジャーズだったりとか、そっちはもうあまり興味がないというか、やりたいのは仮面ライダーって感じですか?
そうですね。実際はアイアンマンとかも作ってますし、戦隊のコスチュームみたいなのも作ってるんですよ。
なんですけど、戦隊って布が多いので、僕、裁縫苦手なんですね。
そこまでできて苦手なジャンルがあるんですね。
そうなんだ。そういうもんなんだ。
でもちょっとお話聞いてて、3つのシミュレーションじゃないですか。造形だけで十分一本になるなと思ってるんですけど。
じゃあもう全然それで。
いいですか。ぜひ2回3回出てほしいんですけど。
その時はよろしくお願いします。
このまま造形の話を深く伺っていきたいなと思うんですが。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
でもすごいですね。その仮面ライダーを見てその形を作れるっていう。
その3D処理ができる能なんだなっていうのは思うんですけど。
他にこの能力が役立つこともありそうですね。
なんかあるんですか?そういう。
他の趣味以外のことで、仮面ライダーの仮面を作っていたからかなって思うようなメリットというか、良かったなってことってあったりしますか?
ありますね。
先ほど石川さんがおっしゃられたみたいに、やっぱり物を立体的に捉えることができるようになっているみたいで。
あと色彩感覚も上がるんですよ。塗料とかを使うので。
僕がよく家族にも言ってるんですけど、とにかく背中に気をつけろと。
車とかあるじゃないですか。
車とかが止まってたら、それに映ったりするものを見て、自分の背中に人がいないか、なんか変なものが近づいてないかとかを必ず確認しなさいと。
外の窓ガラスとかでもそうです。
その時に家族がガラスに映ったものを見ても平面的に見えるらしいんですよね。
聞いてる感じ多分平面に撮ってるなっていう感じがするんですけど。
誰がどれくらいの距離感でこっちに近づいてて、何を持ってるのかがよくわからないと。
それは白い車だったり銀の車だったりしたら映りが悪いので、それはわかるんですが、黒い車とかはっきり映るじゃないですか。
なんですけど、それでもやっぱり感覚がつかめないというのがあるんですけれども、
自分はやっぱりどれくらいの距離でどういう色のものがどういう風に映り込んでるから、
これは今車の車体がこれぐらいの角度だからこういう風に曲がっていて、
自分の目に映っているんだっていうのを脳で補正するんですよ。
おそらくなんですけど、自分のことでおそらくっていうのもちょっとあれなんですけど、
やっぱりそれぐらいしか考えつかないんですが、おそらくそれで3D的感覚が非常に役に立ってるみたいです。
本当どんどんマキシマさん自体がヒーローっぽくなっていってますね。
とんでもないです。
すごい、なるほどね。
でもそうやって趣味が日常の中にも浸食してくる感じって面白いですよね。
そうですね。
もともと好きな仮面ライダーは昭和の1号、2号とかからスタートされてるんだと思うんですけど、
今も平成の仮面ライダーがあって、令和で今もガチャとかやってますけど、その辺もご覧にはなってるんですか?
はい、もちろんです。
やっぱり物を作る上でも、また自分たちで俳優さんをご招待してイベントを開くことがありますので、
その時に見てないと失礼っていうのもあるんですが、やっぱり好きだからっていうのが大きくて。
今回のガチャードに至って、やっぱりヒロインが鹿児島出身ということで。
りんげちゃん鹿児島なんですね。
そうなんですよ。それがまた嬉しいじゃないですか。どんどん見ちゃいますね、今でも。
あの子めっちゃ若いんですよね、しかもね。
ですよ、しかも演技力がしっかりしてますよね。
すごい、そうか。僕も仮面ライダーは好きなんで、この話めっちゃ面白いです。
同じ趣味ですね。
鹿児島さんは仮面以外も作るんですか?ボディパーツ、もしくはガチャードとかで言うと、
錬金術の指輪だったりとか、そういう小物系とかもあったりするじゃないですか。
カードを入れる腕につけているものだったりとか、ああいうのとかにも造形は作っていったりするんですか?
そうですね、形のあるものはすべて作れます。
そうなんですよ。使っているカードもカード出しサイズだったりするんですが、
撮影用だとちょっと大きめのトランプサイズだったりすることがあるので、
先ほど聞かれたようにやっぱり仮面ライダーのボディも本物もすべて作るので、
どうしてもテレビの大きさに合わせようと思ったら、市販のものでは間に合わない時があるんですよ。
なのでやっぱりそういう時は、ベルトの機構から何から考えて、カードの大きさも自分で絵を描いて作ったりしますね。
そうか、じゃあカードも描いているってことか。
そうですね。
すごーい。
いや、これやってる方意外と多いと思うんですよ。
そうなんですね。
なるほど。すみません、僕が勝手に勘違いしてましたけど、もっともっとすごかった?
いや、とんでもない。これはあくまで趣味ですから。
それを作っているっていうのも結構時間もかかるし、
でもやってて楽しそうだなと思います。僕も好きだからなんとなくわかるんですけど。
そうですね。やっぱり趣味に没頭するっていうのは幸せな時間ですよね。
そこまで作れる牧島さんに、逆に今後こうできたらいいなとか、これしたいなみたいな感じのこととかって、
どういった目標が存在するものなんですか?
そうですね。もうすべての仮面ライダーを揃えたいとは思ってます。
はー、すごいですね。それは場所も取りそうですけど、今牧島さんが作ったことのある仮面ライダーっていうのは、
仮面ライダーでいうと何人分くらいなんですか?
だいたい20人ちょっとです。
すごい。それはもう昭和平成やつを作っているってことですか?
そうですね。昭和平成、もう令和のやつも作っているやつはありますので。
あー、そうなんだ。すごい。
目標に至らないものもあるので、あくまでもだいたい20体ちょっとになりますね。
すごいですね。それは牧島さんのご自宅とか、ご自宅のガレージ的なところとかで保管されているんですか?
そうですね。実家を使っている時もありますけど、だいたいは僕はおもちゃ倉庫を7つ持っていまして。
すごい。
いえいえ。その空きはあるんですよ。なのでそこにポイポイと入れているっていう感じですね。
博物館じゃないですか、もう。
いえいえ。そこまでは。ただ自分がネットを始めたのが4年前なんですが、
4年前にネットを始めるまでこういう自分のやっていることが特殊で需要があるっていうのは思ってなかったですね。
いやー、すごいな。そっか、それまではどちらかというと黙々とリアルでつながっている人と楽しんでいるっていう感じだったんですね。
そうです。
いわゆる胃の中の蛙的なものが逆で働くパターンってあるんですね。
そうだったみたいですね。自分でもこんなにネットでいろいろ聞いてもらえるとは思ってなくて。
すごいな。いや、めちゃくちゃ見に行きたいです。
いや、もうぜひ来てください。もうビップ対応ですよ。
触りたい。そのおもちゃサイズのものは、万代さんから出ているおもちゃのものは触ったことあるんですけど、
撮影で使われているサイズってどんな感じなのかなとか、やっぱりね、平成とかも見てますけど、
やっぱりやってみたいというか、変身ってあるじゃないですか。
そうですね。
USB挿してみたいし、コイン入れてみたいし、いいな、すごいな。
もうぜひその時、こちらに来られた時に、お時間あるようですから来ていってください。
本当ですか。来ててももらえるんですか。
全然。
憧れのやつ。
いや、石川さんのお目にかなうといいんですが。
いや、今もう写真拝見しただけで確実にかないますよ。
あれは写真の技術が、多分撮った人の技術がいいんじゃないですかね。
ここまで突き詰められるものなんだなっていうのはね、ちょっと写真拝見しただけでも思いましたね。
ありがとうございます。
ちょっとこの趣味の話をお伺いする上で、いつも皆さんに伺ってるんですけど、
僕も仮面ライダーは好きですけど、作ってみようと思ったことはないんですね。
この造形、仮面ライダーの造形に関して、石川に少し作ってみなよって牧島さんが背中を押すとしたら、僕に何を教えますか。
まずスケッチですね。スケッチをして、形をとにかく頭に覚え込ませるんです。
僕がネットで作り方をやっぱり公表してるんですけど、まずはもう図面を書くことなんですよ。
図面を書いていくうちに、最初は下手でもいいんです。
まず書いてみて、このパーツがこの位置に来て、ここからここまでの線引きになってるから、
後ろを書くときにこうなるから、絵で書くものと立体の嘘というか、歳が頭で理解してくるんですよ。
なのでまず書くことですね。
いろんな角度で書くっていうことですね。
そうです。もう自分で分かんないところとか、下手すれば絵本を見ながらそれを模写してもいいです。
例えばもう斜め下からの構図とかあるじゃないですか。
テレビでは正面しか見えなくても、ちょっとした書籍とかで見たら斜め下のポーズとかあると。
そういうところを書いていくんです。
手で書いて、脳に覚え込ませて、他の角度も書いてっていうので、
だんだん見てるだけじゃなくて、手を動かすことによって頭の中で形が作られていくんですね。
そうなんです。それをすることによって、いざじゃあ粘土で作ってみようと。
原型を始めようというときに、ここはこういうふうにつながってたのかっていうのを理解しながらできるんです。
ちゃんと本当に何年も何年もいろいろ試行錯誤した人だから、めちゃくちゃ説得力がありますね。
そうなんですね。そうやってるんだ。
まず本当に模写してみたいなって思いました。
ぜひやってみてください。やっぱり世界が変わりますよ。物の見方が変わります。
そうですね。なんとなく見てました。どっちかっていうとストーリーで楽しんでるタイプだったのかなと思います。
たまに仮面ライダー展とかあるじゃないですか。
仮面ライダー展とかに行って、やっぱり実物を見て作っていけるっていうのはすごく勉強になるんですよ。
ただこれよく突っ込まれるんですけど、大体の人って正面の写真を撮るじゃないですか。
僕みたいに物を作る人間だと、普段テレビで見られない、絵本で見られない、そういう角度から撮りたいっていうのがあって、変な写真ばっかりになるんですよ。
脇を写してるとか、顎下だけ写ってるとか。
そういう違いが出てくるんですね。
そうですね。ここはよく突っ込まれますね。なんで正面撮らないの?
正面はもう見てるんだと。散々見てるから。
めっちゃ面白いですね。3つの趣味を全部聞き切ることができないぐらいになったので、近いうちに牧島さんは2回3回出ていただきたいなと思ってるんですけど。
イラストもめちゃくちゃ上手でしたし、写真見せていただいてて。
プロの漫画家ですかっていうのだったし、収集の方も、おもちゃの収集の方も本当に博物館ができるレベルのお話を聞けそうなので。
むしゃらじにとっては、こんなにお話をいろんな角度で聞ける人は話したくないので、ぜひまた来てください。
よろしくお願いします。リスナーの皆様と石川さんにお目にかなうようだったらいいんですが、なかなか趣味の範囲ですから、うまくいかなかった時は許してください。
趣味の範囲という言葉には本当にすごい膨大な数があるんだなって思いました。