行動中心アプローチの特徴
冒険家の皆さん、おはようございます。
今日も、落雷に揺られて灼熱の砂漠を横断していらっしゃいますでしょうか。
本日は、2023年の9月19日です。インドでは午前8時45分を回ったところです。
今日も、Twitterの音声配信、むらスペを始めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
今日は、「行動中心アプローチを簡単に理解する方法」というタイトルでお話をしたいと思います。
リスナーの方が集まる間に、最初にいくつかお知らせをしておきたいと思います。
まず、ズームでハナキンなんですけど、今週のハナキンの乾杯の温度は、ナイゼリアの森田光明さんが乾杯の温度をとってくださることになっています。
先週、アクシデントがあってご参加になれなかったんですけど、今週は多分大丈夫だと思います。
ハナキンPDは、「多様な社会ってどんな社会?」というタイトルで、皆さんと情報交換のようなディスカッションをしたいと思います。
僕の方がプレゼンをするんじゃなくて、皆さんからこの問いについて意見を聞いてみたいと思います。
日本語教師映画パーティーは、ただいま提案受付中ですので、もしこの映画を日本語教師の皆さんと一緒に見たいという提案がありましたら、
Twitterのハッシュタグで日本語教師映画パーティーと検索すると、多分その提案の受付フォームが見つかると思いますので、そこからご提案をお願いしたいと思います。
あと、日本語教師ブッククラブは、今月は多様性の科学という本をみんなで読んでいます。
昨日も、これを読んでいればこういうことはないのになと思うことがあったんですけど、国民民主党でしたっけ。
新馬幹事長という方が、今回の内閣の副大臣とかに、女性が一人もいないということを批判されて、こんなふうに言っていました。
優秀な女性、男性関係なく登用する、ジェンダー関係なく政治の舞台で活躍できる環境は作らないといけないが、
あれ、Twitterがまた切れちゃったんですけど、録音の方は続いているので、録音を続けたいと思います。
新馬幹事長がおっしゃっていたのは、優秀な女性、男性関係なく登用する、ジェンダー関係なく政治の舞台で活躍できる環境は作らないといけないが、
女性が何人とか数で評価するつもりはない、というふうにおっしゃっていたそうです。
ただ、優秀な人材だったら男性でも女性でも採用すればいいというのは、そこだけ見ると一見正しいように見えるのですが、
実はこのアプローチをとってしまって、その結果、集団の多様性が失われてしまう。
例えば今回の場合は男性だけになってしまったわけです。
そうすると、個人の能力とは別に、集団としての能力が低くなってしまう。
そういうことが、この多様性の科学という本を読むとすぐに理解できます。
そういう例もたくさん載っています。
例えばCIA、アメリカの中央情報局でしたっけ、そこのところも昔は白人男性ばかりだったんですね。
例えばムスリムとかも全然いなくて、
ビンラディンのメッセージの本当の意味とかに気がつくことができなくて、
そして911を防ぐことができなかったというようなことが、この本でも紹介されています。
この本をシンバさんが読んでいれば、こういう発言はされなかったと思いますし、
逆に男性だけというような副大臣の構成ができることもなかったんじゃないかなと思っています。
それから、この日本語教師ブッククラブ、来月の本も提案受付中で、
今のところ3冊本が提案されているので、先着4冊だけなので、
ぜひ、もう1冊はご提案できますから、
この本を日本語教師の皆さんと一緒に読んでみたいという方は、
日本語教師ブッククラブのハッシュタグをつけて、
それで検索するとまたその提案フォームすぐ見えると思いますから、
ご提案をお願いしたいと思います。
それから日本語教師チャットの方は、今週土曜日の日本時間の午後9時からになっています。
今回は日本語教師の読書というタイトルで、皆さんといろんな情報交換をしてみたいと思っています。
それでは本日の本題に入りたいと思うんですけど、
今日お話ししたいのは、行動中心アプローチを簡単に理解する方法ということなんですね。
これを話そうと思ったのは、完成した行動中心アプローチの教科書だけ見ても、
文系シェラバスと何が違うのかよくわからないという声がよく聞くんですよね。
色取りはみんなの日本語に比べてカラフルでいいやとか、
そういう評価をしている方もいらっしゃるんですけど、実際カラフルですけど、
でもそこが問題なんじゃないんですよね。
そこはもう違いとしては本当に表面的な違いであって、
もっと本質的な違いは、言葉の通り行動を中心にその教科書が構成されているということなんです。
だけどその本質が見えてこないかもしれないんですね。
その教科書の1ページずつ見ているだけでは、そこがあまり見えてこないのかもしれません。
そのためには、その本質の違いを知るためには、
行動中心アプローチのコース開発、コースデザインを実際に自分で体験してみる、
そういうところが僕は大事なんじゃないかと思います。
国際交流基金のCan Doの開発
具体的にどういうふうに色取りとかは開発されてきたのかというと、
まず国際交流基金がJF生活日本語Can Doというのを発表したんですね。
もうこれ何年も前になるんですけど、今の時点では2019年の8月に更新されたのが一番新しいバージョンで、
Can Doが381項目あるわけですね。
このCan Doというのは何とかできるとか、そういうものですね。
日本語で例えば自分の名前を書くことができるとか、自分の名前をキーボードで入力することができるとか、
そういう能力記述文というんですけどね、それがCan Doというものです。
これは文化庁もこういうのを似ているものを開発しています。
日本語教育の参照枠に基づく生活Can Do案一覧というふうに、
そういう資料があるんですけど、それを見るとExcelの表みたいなのがあって、
そこに789番まであるわけですね。
これは最初にご紹介した国際交流基金のCan Doをかなり取り入れていて、
でもそれ以外にも追加で入れているから多くなっているのかな。
ちょっとその辺の状況はよくわかりませんけど、少なくとも789のCan Doが文化庁も公表しています。
要するに文系シラバスのときは、この文系を教えるためにこの教科書を使って授業をしましょうという感じだったわけですけど、
行動中心アプローチの場合は、この行動ができるようになるために言葉とか文系を教えて、
その結果その行動ができるようになりましょうという考え方なわけですね。
その結果、文化庁ではなくて国際交流基金の生活日本語Can Doのほうですけど、
このCan Doをもとにしてその後で彩りという教科書ができたわけなんですね。
この教科書もよく見てみると、最初のJF生活日本語Can Doのところに、
Can Doのリスト作成の難しさ
駅でこの電車が自分の行きたいところに行くのかを周りの人とか駅員の人に聞くとか、
そういうCan Doが入ってますけど、それもその彩りの中の13課とかその辺に入っていますね。
ここまでは客観的な具体的な事実だったんですけど、
ここからちょっと僕の個人的な意見とかそういうことになります。
そういうことをちょっとお話ししたいと思います。
これはですね、さっき昨日ぐらいだったかな、
Twitterでチャソさんという人がCan Doの達成に必要な言語材料、
語彙や文法項目などをリストアップするなどの準備って難しくない?
そういうことをTwitterで投稿されていたんですね。
これはみんなのCan Doサイトとか、あるいは国際交流基金関係の資料で書いてあるところがいくつかあるので、
そういうのをご覧になった上でのご感想だと思います。
これはもう全くその通りなんですよ。
少なくとも去年の11月までは本当に全くその通りだったんですね。
このコースでデザインをするためには、
このCan Do Syllabus、行動中心アプローチのコースをデザインするためには、
まず最初にCan Doのリストを作らなければいけないわけですよね。
このCan Doというのはさっきも言いましたけど、
要するにどんなことをするかということなんですね。
これが本当に厳密な意味でのCan Doというのは、
そのCan Doの一つの分だけでレベルが分かるようにしなければいけないんですね。
なのでこういう条件だったらこれができますとか、
あるいはこういう内容だったらこれができますとか、
そういうふうにかなりレベルを合わせるための調整というのは結構めんどくさいんですけど、
最初からレベルが決まっていれば、
例えば私は初級後半の学習者を担当しますというふうに決まっていたら、
その場合はCan Doでレベルを表現するための細かい調整というのはあまり必要ないと思います。
なのでもうただ具体的にこれをするとか八百屋さんで買うとかですね、
そのぐらいの本当に簡単なCan Doでいいと思いますね。
それを考えると、要するにあまり厳密なCan Doのリストというよりも、
ただ何をするか、その人が日本語を使って何をするかという行動のリストを作るだけで大丈夫です。
なのでそこはあまり深く考えないでいいんですけどね。
でも実際に特定の学習者がどんな行動をするのかというのを考えるのは、
結構それも一人で考えるのはかなり難しいと思います。
実際に僕もこれまで行動中心アプローチの教師研修というのを毎年やってきたんですけど、
ChatGPTの助け
その行動の、想定する学習者の行動のリストを作るというのがかなり大変で、
そこでドロップアウトしてしまうという人が結構いらっしゃったんですよね。
だけどそれが、さっきも言いましたけど去年の11月30日に大きく変わったんですね。
なぜかというと、ChatGPTという大規模言語モデルと呼ばれている種類の人工知能ですけど、
ここにかなり助けてもらうことができるようになったからなんです。
例えば僕みたいに、海外に住んでいる日本人の日本語教師の行動のリストを20例挙げてください、
そういうふうにChatGPTに聞いてみると、それなりに納得のできるリストが出てきます。
もしそれが自分の想定していたものと違っていたら、
例えば仕事に限定したリストを作ってくださいとか、
あるいは仕事以外の行動のリストも作ってくださいとか、
そういうふうにさらに要求してもっといい行動のリストを作ることもできるわけなんですね。
実際に、僕がさっき海外に住んでいる日本人の日本語教師の行う行動のリストを
ChatGPTに作ってもらったので、それをご紹介してみたいと思います。
日本人教師の行動のリスト
基本的には見出しだけ読みますけど、それにもう少し細かい説明もついていますね。
1から20まであります。ちょっと長いですが読んでみますね。
1番は教材選定ですね。2番は文化交流イベントの開催。
3番目はオンライン授業の実施。4番目はローカル文化の学習。
僕の場合で言えばヒンディ語とかあるいはヒンドゥの宗教の勉強とかそういうことですね。
5番目は学生の進行状況の追跡。
6番目はセフアールベースの授業計画。
7番目は学生のカウンセリング。8番目は日本のニュースや情報の共有。
9番目は模擬試験の実施。10番目は学外活動の企画。
これは学生と一緒に日本食レストランとか映画館に行って日本の映画を見るとかそういうことらしいですね。
11番目は日本語教師コミュニティへの参加。12番目は研修やセミナーへの参加。
13番目は自身の教育方法の研究マルテン発表。
14番目は生徒からの自分の授業に対する評価とかそういうことですね。
15番目は授業後の補修。16番目は日本の伝統行事の紹介。
17番目は日本の教育システムの紹介。18番目はSNSを使った情報発信。
19番目は現地の教育機関との連携。20番目は留学生へのサポート。
これは日本から海外に来ている留学生じゃなくて、日本への留学を考えている学生の相談を受けたりサポートを提供するとかそういうふうに書いてありますね。
こんな感じでそれなりに現実的なリストが出てくるわけです。
これだけでも全然その場合によってはそのまま使えるとは思いますが、
もちろん場合によって何か足りないところがあったりしたらもっとこういうのも作ってくださいとかそういうふうにさらに要求することもできるわけです。
その後でこれらのCan Doを達成するためにどんな言葉とかどんな文法を教えるかを考えなければいけないわけですね。
これも大規模言語モデルが出てくる前は本当にとっても大変だったんですけど、
今はそれほど大変ではありません。
例えば会話が中心になるようなCan Doの場合は会話モデルをたくさん作ってもらえれば、
そこに出てくる語彙とか文法を教えればいいわけですよね。
この方法だとゼロ初級の場合はまだちょっと難しいことがあるかもしれませんけど、
初級の中盤ぐらいからはもう十分に実用的なものが作れます。
そのChatGPTにこのぐらいのレベルの会話モデルを作ってくださいと言えば全然大丈夫だと思いますね。
さっきも言いましたけど会話モデルを作ってもらうんですけど、
一つのCan Doごとに会話モデルを3つとか4つとか作ってもらって、
それで全てのCan Doの言葉とか文法のリストを最終的には、
全てのCan Doについて会話モデルを3つか4つぐらい作ってもらって、
そういういろんな会話モデルのコンテンツができるわけですよね。
一つ一つのCan Doごとにこの会話モデルに出てくる難しい語彙と難しめの文法をリストにしてくださいとやるわけですね。
そうするとたくさんのCan Doがありますからお互い重複するものとかたくさんありますよね。
だけど重複するものは、これは行動中心アプローチに限らず、
モジュール型の教材はみんなそうなんですけど、
1回だけ教えればいいということはないので、
螺旋状に何回もそういう文型とか同じ語彙に出会うわけですね。
そうやって習得していくので、
特に煩雑でなければ何回も同じ文型とか同じ語彙がそうやって出てきてもいいとは思います。
だけどあんまりたくさん同じものばっかり出てくるんだったらもちろん、
多すぎる場合は削除しても全然いいとは思うんですけど。
あるいは逆にちょっと足りないなと思ったら、
こういうキーワードも入れて会話モデルを作ってくださいとか、
そういうふうにすることもできるわけですね。
こんな感じで大規模言語モデルを活用することで、
この行動中心アプローチの理解に必要なコースデザインというのは、
本当に簡単に理解できるようになっています。
今、録音で聞いてくださっているリスナーの方がいらっしゃいましたら、
ぜひこういう体験を自分でもできますし、
この大規模言語モデルのアカウントを持っていれば自分でもできますし、
体験をするためのコースとかもありますから、
そういうところに応募してみるのもいいんじゃないかと思います。
それでは本日もムラスペにご参加くださいまして、ありがとうございました。
今日のこの行動中心アプローチを簡単に理解する方法について、
ご意見とかご感想とか質問とかありましたら、
ぜひムラスペのハッシュタグ付きでご共有いただければと思います。
それでは本日も良い一日をお過ごしください。
そして冒険は続きます。