例えばライオンの檻に大きな岩だったり木を置いて登ったり隠れたりできるようにする。
あとはご飯の時間になるとわざと木の中に隠しておいて餌を探す楽しみを作ったりとか、これだけでライオンの行動というのは劇的に変わるんですよ。
例えば朝日山動物園のペンギンの散歩。
これは例年雪の降る時期に行われている2002年に始まった取り組みです。
冬の運動不足解消のために始まったもので野生のキングペンギン。
このキングペンギンという種類は集団で海に餌を取りに行くという習性があるんですね。
この習性を生かして雪が積もった園内を約500メートル30分かけてお散歩をさせるんですね。
ここで重要なのはペンギンたちは自分の意思で歩くかどうかを決めます。
気が向かない日は歩かない。これがとっても大事なんですよ。
動物にやらせるのではなくて、動物に選択肢を与えることが環境エンリッチメントの本質です。
もう一つ例でいうと横浜動物園ズーラシアの像の展示。
このズーラシアのインド像たちはただもちろん立っているだけではありません。
広いスペースに木や水場、起伏のある地形が再現されていて、
像たちは自由に歩き回ったり水浴びをしたり木の皮を剥がして遊ぶことができます。
これが野生での行動そのものなんです。
さらに横浜動物園ズーラシアは園全体がアジアの熱帯林だったりとかアフリカのサバンナーのような感じで
気候帯地域別に分かれていて、人間も旅行しているような体験ができます。
動物たちの生息環境を再現することで、動物本来の行動が自然と引き出されるんですね。
じゃあこれが犬とどう関係するのか。
実は家の中で暮らす犬も同じ状況にあるんです。
野生のオオカミは一日中に匂いを嗅いで獲物を追いかけて仲間と遊んで縄張りをパトロール。
これが普通です。
でも家の中の犬は散歩以外の時間はほとんど何もすることがありません。
ここで一つ研究結果を紹介したいんですけれども、
野生の犬は一日の約70%食べ物を探すことに使うそうです。
つまり一日の約70%は体を動かして鼻で獲物の存在を探して、
どこにいるのか頭を使ってどうやってその食料にありつくのかという問題を解決しながら過ごしているんです。
でも家庭犬の多くは飼い主が仕事に行っている間、ただ寝て待っているだけ。
これは犬にとっては退屈でなかなかストレスフルな時間だと思うんですよ。
猫を飼っている方ならわかると思うんですけど、ここ数年でキャットタワーがかなり当たり前になったじゃないですか。
あれも環境エンリッチメントの一つで、猫は本来高いところに登る動物なんですね。
その習性を満たすための工夫がキャットタワー。
もちろん犬にも同じような工夫が必要だと思います。
それでは気になるのは環境エンリッチメントは本当に効果があるのかですよね。
実は世界中でいろんな研究が行われていて、その効果が科学的に証明されています。
イギリスのガイドドッグ協会というところの研究では、
訓練中の介助犬10頭に7種類の環境エンリッチメント活動を提供しました。
この活動の種類というのは、他の犬との遊びだったりとか地域おもちゃ、
引っ張りっ子、食べ物を詰めたおもちゃなどの7種類です。
こちらの結果なんですけれども、エンリッチメント活動の後、
犬たちのリラックス行動が大幅に増加して、
警戒行動とストレス行動が大幅に減少したそうです。
特に興味深いのは、他の犬との遊びや新しい環境での活動が
食べ物ベースの活動よりも大きな効果を示したことです。
つまりですよ、ただおやつを与えるだけじゃなくて、
社会的な交流だったりとか、新しい刺激が重要ということです。
次にアメリカのシェルターキャンペーンについて、
シェルターの犬たちは毎朝のケージ掃除の時間により、
すごい大きなストレスを感じるんですよ。
もちろん作業している方も最新の注意を払っているとは思うんですけれども、
最新の注意を払っていても、大きな音だったり、
人の出入り環境の変化というのはどうしてもあります。
ここで研究者たちは掃除の時間中に、
食べ物だったりとか、触覚的な刺激、おもちゃですね、
あとは嗅覚的な刺激を与えました。
この嗅覚的な刺激というのはラベンダーの香りを与えたそうです。
結果として吠える回数が31%減少して、
ラベンダーの香りが最も効果的だったそうです。
つまりストレスの多い状況でも、
ラベンダーの香りを与えることができるんです。
そしてもう一つだけ最も注目すべき研究なんですけれども、
高齢犬の認知機能に関する研究というのがあります。
複数の研究が、環境エンリッチメントが
犬の認知機能の低下を遅らせるということを示しています。
こちら具体的には、新しいトリックを教えたり、地域玩具で遊んだり、
こういった活動を続けた高齢犬は、何もしなかった高齢犬に比べて
学習能力や記憶力が明らかに高かったそうです。
ある研究では、環境エンリッチメントと降酸化物質を含む食事、
こちらを組み合わせた高齢犬が最も高い認知スコアを示したそうです。
もちろんどちらか一方だけでも効果があるんですけれども、
組み合わせることで相乗効果が生まれるということです。
つまりですよ、年を取ったからもう新しいことは無理じゃなくて、
年を取ったからこそ脳を使う活動が大切ということです。
環境エンリッチメントの効果をまとめるとこんな感じです。
一つ目は問題行動、破壊だったりとか無駄防衛。
一つ目は問題行動と言われるもの、破壊だったりとか無駄防衛みたいなものが減る。
二つ目はストレスが軽減される。
三つ目は認知機能が活性化される。
四つ目は高齢犬の認知機能の低下が遅れる。
五つ目は飼い主との絆が深まる。
六つ目は自信がつく。
これらは全て科学的に証明されている効果です。
なんとなく環境エンリッチメントの効果をまとめると、
環境エンリッチメントってすごいんじゃないって思ってきましたかね。
それでは具体的に家の中でどんなことができるのか。
まずは環境エンリッチメントには5つのカテゴリーがあります。
こちらをご紹介していきます。
一つ目は感覚的エンリッチメント。
二つ目は認知的エンリッチメント。
三つ目は社会的エンリッチメント。
四つ目は自体的エンリッチメント。
五つ目は栄養的エンリッチメント。
一つ目の感覚的エンリッチメントは、犬の五感を刺激すること。
特に嗅覚が重要です。
二つ目の認知的エンリッチメント。
こちらは頭を使う活動です。
パズルフィーダーといって、パズルをクリアすると
トリーツが出てくるようなおもちゃであったりとか、
飼育玩具、新しいトリックを教える。
こういったのが認知的エンリッチメントになります。
三つ目は社会的エンリッチメントです。
他の犬や人との交流、飼い主とのゆったりした時間というのも
こちらに入ってきます。
四つ目の身体エンリッチメントは、体を動かす活動です。
これは家の中でもできることというのはいっぱいあります。
五つ目の栄養的エンリッチメントは、食べ方を工夫することです。
お皿でバーッとすぐ食べ終わるよりも
時間をかけて食べる方が満足度が高いんです。
これらを愛犬の性質に合わせて実践していきます。
これからいろんな性格の子が出てきますので
あなたの愛犬の性質や得意を想像しながら
聞いてみていただければと思います。
一パターン目は探索好きな子ですね。
嗅覚を使うのが好きな子です。
お散歩中に匂いを嗅ぐのが大好きだったり
立ち止まって地面の匂いを嗅いでいるタイプの子は
こんなところに入るかなと思います。
一つ目のオススメは、ノーズワークマットと言われる
フリース生地の中に餌を置いておいて
それを探してもらうみたいなやつですね。
こういうノーズワークマット、もちろん家になければ
タオルとかフリースの中におやつを隠して
そのタオルを丸めて使う。
そのご飯を取っておいでっていう風にするだけでも十分です。
二つ目は宝探しゲームです。
部屋の中におやつを隠しておいて
探しておいでの合図で探してもらいます。
いきなり部屋のどこかに隠しても難しいので
最初は分かりやすい場所において
簡単な場所から慣れてきたらどんどん難易度を上げていく
っていう宝探しゲーム。こんなのもいいと思います。
三つ目は段ボールの中に丸めた新聞紙を入れて
その中におやつを隠します。
これで丸めた新聞紙を前足で書いて解く。
これが野生の地面を掘るっていう行動を再現してるんです。
ガーッと地面を掘ってそこから餌が出てくる。
こういった遊びも探索好きな子にはピッタリじゃないでしょうか。
二パターン目は追いかけるのが好きな子です。
これは狩猟本能が強い子などに特に多くて
ボールとかおもちゃを追いかけるのが大好きで
動くものに敏感に反応しやすいタイプの子です。
これは狩りの捕まえて引きちぎるというのを再現している遊びになるんですけれども