臨界期・敏感期のお話をする前にまず一つ有名な研究をご紹介します。
1935年オーストラリアの動物行動学者ローレンツ博士という方がある発見をしました。
ローレンツ博士は鳥のガンという種類の鳥ですね。
ガンの卵を孵化させる実験をしていました。
この時卵から帰ったガンのヒナたちはお母さんのガンじゃなくて最初に見た動く物体、これローレンツ博士なんですけど、ローレンツ博士のことを母親だと思い込んだんです。
ヒナたちはローレンツ博士の後をずっとついて歩いて、このローレンツ博士のことをずっとお母さんとして認識していました。
しかもですねこの後本物のお母さんのガンを見てもこのヒナたちはローレンツ博士から離れようとしなかった。
これをすり込みと呼びます。インプリンティングという言い方をしたりします。
このすり込みっていうのは生まれて間もない時期に生涯続く強い愛着が一瞬で形成されるっていう現象のことです。
このローレンツ博士の言葉で言うと生後最初の数時間でヒナはガンになるわけではなくて何をガンと認識するかを決めるということですね。
これ実はですね犬にも同じことが言えるんです。
犬の臨界期は生後3週例から12週例日数にすると約90日間です。
もちろん個体差もありますし小型犬と大型犬では多少に数の開きはあるんですけれども大体12週例と呼ばれています。
この時期に出会ったすべてが犬にとって安全なもの仲間としてすり込みがされるんですね。
逆にこの時期に出会わなかったものっていうのは怖いもの敵になる可能性が高いんですよ。
動物行動学の視点から見るとこれは生存戦略としてもちろん合理的なんですよ。
っていうのは野生の狼の子供は生後3ヶ月で親から独立をし始めるそうなんですよ。
その前に何が仲間で何が敵かっていうのを学んでなければ生き残れないんです。
犬にとっても同じと考えられていてこの時期は一生の中でも好奇心が警戒心を上回る唯一の時期なんですね。
人間でいう生後6ヶ月から3歳までの成長期犬はこれをたった10週間で3週例から12週例の間に駆け抜けます。
だからこの90日間が重要なんです。
じゃあ子犬がどう成長していくのか犬の成長っていうのは大きく4段階に分かれています。
第一段階としては新生時期といって生後0週目から2週例まで生まれたばっかりの子犬で目も耳も閉じていて母犬に完全に依存をしていて使えるのは嗅覚と触覚だけです。
この時期に人間が優しく撫でてあげたり抱き上げたりする早期ハンドリングと呼ばれる刺激が脳の発達を促進するということも分かっています。
第二段階は移行期と呼ばれて生後2週例から3週例までのことを言います。
生後13日前後で子犬は目が開くようになってきます。
18日から20日ぐらいで耳が聞こえるようになってきます。
この1週間で犬の脳は爆発的な成長します。
そして第三段階目で社会期という時期が来ます。
これが生後3週例から12週例。
ここが臨界期、敏感期と呼ばれているものです。
先ほどから臨界期という言葉を敏感期という言い換えをしているんですけれども
動物学、動物行動学的には敏感期という言い方もしたりします。
この臨界期、敏感期というのは特定の刺激に対して脳が最も敏感に反応して学習をする時期です。
この時期は好奇心が警戒心を上回っていて
新しいものに積極的に近づいていって
出会ったすべてのものに愛着を形成して
12週を過ぎると恐怖心が好奇心を上回り始めるという4つの特徴があります。
そしてこの後第4段階として弱霊期と呼ばれるものが来て
生後6ヶ月から12ヶ月ぐらいのことを言います。
この段階でもですね面白い現象があって
これは後戻り現象と呼ばれるものなんですね。
どういうものかというと社会期に他の犬とか人と触れ合っていても
その後も継続的に良好な経験っていうのを積んでいかないと
また恐怖心を抱くようになってしまうんです。
つまりこの社会化って呼ばれるものは
1回やって終わりじゃなくて継続していくということが大切なんです。
ここで3つのよくある例っていうのを出してみたいと思います。
あなたの愛犬で想像してみてください。
1つ目のケースはチャイムが鳴ると狂ったように吠える。
これは臨界期にチャイムイコール怖い音と学習してしまった可能性があります。
例えば育ててくれた方のところでチャイムが鳴りました。
みんな興味を持ってワンワンワンって吠えていて
飼い主さんがうるさーいって大声で怒った。
こういうのでチャイムが鳴ると怖いことが起きると学習してしまった可能性があります。
動物行動学的にはこれを恐怖の繁華、ジェネラリゼーションっていうふうに呼ぶんですけど
一度怖い学習をすると似た音すべてが怖くなります。
2つ目のケースは散歩中他の犬を見ると吠える。
例えばよく聞くんですけど
うちの子は気が強いからすぐ吠えちゃうなねとかっていう方も多いんですけれども
まあこれ結構怖いから吠えてる子っていうのも多いんですよ。
僕が見てる感じは8割9割は怖いから吠えてます。
気が強くて吠えてる子っていうのは1割から0.5割いない気がします。
臨界期に他の犬と遊んだ経験が少ない子とかは特に多いんですけど
犬同士のコミュニケーションっていうのがわからないまま成長します。
動物行動学ではこれを社会的スキルの欠如というふうに呼びます。
3つ目のケースは男性を怖がる。
これもよく聞くことだと思うんですけど
女性には懐くけど男性が近づくと逃げる。
これは臨界期に男性と触れ合う機会が少なかったのかもしれないです。
犬にとっては男性と女性は全く別の生き物なんですよ。
体格も違うし声の高さも違うし匂いも違うし
だから両方に慣れておく必要があるんです。
じゃあ臨界期にこういった経験をできなかった子
もう諦めるしかないのかというとそんなことはなくて
実際成犬になってから社会化に成功してる子っていうのをいっぱい見てきてます。
例えば保護犬で迎えた千葉ちゃんがいました。
保護犬なんでどんなドラマを持ってるか
もちろん詳細にはわからないんですけど
初めて会った時には人が近づくだけで震えていて
歯を剥き出してもそれ以上近づかないでっていう警告のサインを出してました。
もちろんそのサインを無視して手を近づけたりとかすると
吠えたりとか手に噛みついてしまうような子でした。
でも飼い主さんが半年間かけて少しずつ人に慣れさせた結果ですね。
今ではお散歩中に人とすれ違っても
落ち着いていられるどころかおやつをくれるんじゃないかと思って
自分から人に寄っていくまでになりました。
他の例でいうと掃除機の音でパニックになっていたトイプードルの子がいました。
この子は飼い主さんが毎日5分間掃除機を遠くでかけるところから始めて
3ヶ月徐々に徐々に慣れさせていった結果
今は掃除機がかかっていても全然平気でベッドに寝ていられるそうです。
大切なのは焦らないことと諦めないこと。
一番大事なのは犬のペースを尊重することです。
じゃあ日本と世界の違いで見てみるとどうなんでしょうか。
例えばこんな話を聞いたことあるでしょうか。
子犬は生後13週までに100人の人と触れ合わせる。
これは世界の基準としてアメリカとかヨーロッパでは常識なんですよ。
この100人ルールというのはイギリスの動物行動学者のイアン博士という方が提唱しました。
なぜ100人なのかというと多様性を経験させるためなんですね。
さっきも言った通り男性と女性は全く違う生き物として捉えるように
男性女性子供高齢者太った人痩せた人制服の人帽子の人いろんな人に出会わせます。
犬は見た目が違うイコール別の生き物として認識をするんです。
だからできるだけいろんな格好をしたいろんな体格のいろんな性別の人
多様な人に触れ合わせる必要があるんです。
じゃあこれ日本ではどうなんでしょうか。
日本には動物愛護法で生後56日以下の子犬の販売が禁止されてます。
なのでペットショップに並んでいる子たちっていうのは生後57日目以降の子たちっていうのが並んでます。
正直ペットショップがどうこうではなくてこの57日目以降に販売というのは僕自身はいいことだと思うんですね。
発症例までは母犬とか兄弟と過ごすべきという科学的根拠に基づいた規制なので
ここにいるメリットというのもいっぱいあるのでこれ自体はいいことだと思うんです。
ただこの今回のテーマの臨界期と照らし合わせると一つちょっと大きな問題がありまして
どんなに最短でペットショップで子犬を迎えたとしても購入したとしてもすでに生後8週例を超えてるじゃないですか。
大体の獣医さんとかペットショップの店員さんとかがワクチンが全部終わるまでは外に出さないでくださいって言うんですよ。
ペットショップのルールとか獣医さんのワクチンプログラムのスケジュール次第ではあるんですけれども
大体ワクチンの3回目が終わるのは早くても生後12週例になります。
そこからさらに2週間待つと生後14週から16週例で臨界期の終わりと言われているのは生後12から14週例で終わると言われています。
つまりですねこのワクチンの完了を待っていると臨界期が終わってしまうんです。
これが日本のジレンマだと僕は思っています。
じゃあ世界ではどうしているのかというと
地面に降ろさないで外に連れ出すという行動をとっています。
地面に降ろすことでワクチン未完了なので感染症のリスクというのが上がってしまうので
抱っこをしたままないしはペットカートに乗せて外出をする。
これだと感染のリスクっていうのを最小限に抑えながら社会化をすることができます。
アメリカの獣医行動学会というのがありましてワクチン未完了による感染症のリスクよりも
社会化不足による行動問題のリスクの方が大きいというのは明確にもう声明を出しています。
つまりワクチンを待って臨界期を逃す方が遥かに危険ということです。
正直僕は日本ではワクチンを完了するまでは外に出さないで
それまではお家の中で育てましょうっていう方がいっぱい聞くんですよ。
この抱っこをして外になるべく出して100人の人と会いましょう
なんていう話は日本ではあんまり聞いたことがないです。
ということは日本ではこの情報が広まってないんですよ。
結果多くの子犬たちが生後12週まで室内で臨界期・敏感期を過ごして
ワクチンが終わってから初めて散歩に出るわけじゃないですか。
その時にはもう臨界期・敏感期が終わっているので
子犬が外の世界で初めて見るものは
なんだろうこの世界どういうものがあるんだろう
どんな匂いがするんだろうっていう興味が先じゃなくて
恐怖の方が先になっちゃってるんですね。
まぁちょっと悲観的な話が続いたんですけれども
じゃあもう政権になってしまった、もう臨界期を逃してしまった
そんな場合でも科学的根拠に基づいた救いっていうのはもちろんあります。
動物行動学ではこの臨界期を敏感期ということが増えている
というお話は先ほどしたんですけれども
なぜかというと興味の扉が完全に閉じるわけではないからです。
もちろん臨界期の方が学習という面で
最も効率的な時期ではあるんですけれども
それでも犬の学習というのはずっと続いていきます。
ただ臨界期・敏感期よりも時間と根気が必要になるということです。
政権の社会化を成功させる5つのコツをお伝えしたいと思います。
1つ目はスモールステップ
2つ目は無理自意をしない
3つ目は飼い主は冷静にいる
4つ目はポジティブな関連付け
5つ目が専門家に相談する
1つ目のスモールステップ
いきなり大勢の犬がいる場所に連れて行かないであげてください。
これドックランとかでもみんな間違いがちなんですけど
ドックランっていうことに飼い主さんがテンション上がっちゃって
いきなりドックランの中に入れるんですよ。
そうするとドックランデビュー失敗する子が
もう圧倒的に多いです。
飼い主はドックランでの正解の過ごし方がわからないで
他の子に喧嘩を打っちゃったりとか
ストレスをためて帰ってくる子
いっぱい見てきてます。
まずは遠くから見せて
どういうものなのかっていうのを勉強させてあげてください。
そしたらドックランの柵に少し近づいてあげてください。
今度はドックランの柵の周りをぐるーっと一緒に
回りながらドックランの中にいることを触れ合ってみましょう。
こういう感じで今日は遠くから見るだけでいいです。
今日は一歩近づくだけでいいです。
今日は柵の周りをぐるーっと外回るだけでもいいです。
段階を踏んで少しずつ少しずつ慣れさせていってあげてください。
二つ目は無理事をしないことです。
犬が怖がった様子を見せたらすぐに距離をとってあげてください。
常に耳と尻尾の位置、あとは体の姿勢、興奮の周りであったりとか
この辺から注意を逸らさないで
少しでも怖がったらすぐに距離をとってあげてください。
あくまで愛犬のペースを尊重してあげましょう。
三つ目は飼い主さんは常に冷静でいてください。
例えばあなたの愛犬が吠えちゃいました。
ここで飼い主さんがパニックになると
犬も今吠えて当たり前なんだ。怖がって当たり前なんだ。
噛みつこうとして追い払おうとして当たり前なんだ
という風に学習します。
なので犬がどんなにパニックになっても
飼い主さんは常に冷静にいてください。
ちょっとぐらい相手に迷惑かけないぐらいだったら
笑顔で落ち着いてこれは怖がらなくていいんだよ
という姿勢をあなたの愛犬に示してあげましょう。
四つ目はポジティブな関連づけです。
これは怖いものを見たらすぐにおやつをあげましょう。
これによって何が起きるかというと
怖いものを見たでその後にいいことが起きる
という風に学習をさせます。
これで怖いものをいいことに上書きしていってあげる。
動物行動学的にはこれを脱寒作という風に言うんですけれども
こういったものでどんどんどんどん上書きをしていってあげる
ということですね。
そして五つ目が専門家に相談してください。
これはドックトレーナーさんでもいいですし
しつけ教室でもいいですし
場合によっては11さんとかに相談してみてもいいと思います。
特に犬が恐怖とか不安を感じた瞬間
というのが見極められないという方は
ぜひアドバイスを受けてください。
アドバイスを受けるというのは
あなたの愛犬を知ることなので
決して恥ずかしいことではないんですよ。
逆に犬の気持ちを分かったつもりになって
シグナルを見落として
愛犬をずっとストレスにさらしている方が
よっぽどリスクなので
ぜひ気軽に聞いてみてください。
この臨界期・敏感期というのを逃しても
飼い主さんの根性と愛情で犬自体は変われます。
ただ正直時間はかかります。