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  2. #18安全が一番!
2025-09-15 11:11

#18安全が一番!

第84回 全国産業安全衛生大会 in 大阪・近畿にて安全教育について講演してきました。安全体感機を使用した教育に取り組んだ背景と内容をお伝えします。

サマリー

今回のエピソードでは、安全体感器を活用した安全教育の重要性について語られており、工業高校における生徒たちの安全意識の低下についても触れられています。講演を通じて、安全教育の必要性を再認識し、リスナーにその意義を共有されています。また、安全教育の重要性が社会全体で求められ、岐阜県の予算で安全体感器が導入されることになりました。全国に広がる安全教育の流れや、講演での経験についても語られています。

安全教育の重要性について
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員を教える、すみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの思い、そして工業高校での教育現場を紹介していきます。
今回は、私が参加した第83回全国産業衛生大会での講演内容を中心に話したいと思います。
これは大阪で行われたんですけれども、テーマは安全体感器を活用した安全教育についてです。
この全国安全衛生大会というのは、全国の企業の方が自社の安全への取り組みや考え方について発表し合って、そしてそれぞれの安全意識をさらに高めて、一つでも労災を少なくしていこうというような取り組みです。
ほとんどが企業の発表の中、その中で工業高校として教員が発表するというのはちょっと間違いかなというような思いもありながら、少しでも工業高校の現状を知っていただき、どの会社も工業高校の卒業生や、これから工業高校の生徒が入ってきますから、そういった意味でも参考になればなという思いで話をしてきました。
今回の講演を通じて改めて安全教育の重要性を実感しましたので、ここでリスナーの皆さんにも共有したいなと思います。
発表の内容については、安全体感器という危険を安全に体感できる機械があるんですけれども、それを購入したということを発表の内容にしました。
まず、なぜ安全体感器を導入するに至ったのか、その背景からお話します。
一番大きな理由は、入学生の安全意識が年々低下していると感じるからです。
数年前、他県の工業高校で痛ましい事故がありました。
木工の実習中に、のみが太ももに刺さり、亡くなってしまった高校生がいるんです。
そのニュースを聞いたとき、私はこれは他人事ではないと強く感じました。
なぜなら、私自身授業の中で生徒たちの安全意識が低下していることを肌で感じていたからです。
何度も危ないなって思うことがあるんですよね。
大事にはいたらないですけれども、こちらがヒヤッとしているにもかかわらず、
生徒の方は何も感じていないというような場面を結構目にするんです。
背景にはものづくりへの関心の低下があるんじゃないかなと思っています。
実際、授業の中でプラモデルを作ったことはありますか?というような話とかすると、
ほとんど手が挙がらないんですよね。
プラモデルだけじゃなしに、何かものを作ったことが日常的にあるかということも、
やはり年々そういった経験をしている生徒は少なくなってきていると思います。
ですからドライバーの使い方一つでもままならないという、そんなような生徒もいます。
特に小中学校ではプログラミング教育に力が入っていますので、
技術家庭科で実際にものを作る時間というのもだんだん減ってきています。
ものを作るより、そもそもプログラムを生徒にやってもらった方が絶対怪我しないですよね。
生徒が怪我すると本当に生徒も先生も学校も大変です。
安全体感器の効果
ですからなるべく怪我というものから遠ざけれるようなものがあれば、そちらをやった方がいいんですよね。
そして最近は一人一台タブレットが普及していますからね。
だんだん動画教育も増えてきています。
動画を見ればできた気になってしまうというところもあるんですよね。
実際動画の方がわかりやすいだろうということで、そのような動画を作ってみせたこともありますけれども、
経験が少ない生徒たちが見ても、何のこっちゃという感じであまりピンとこないというのが現状です。
ある程度経験してきて動画を見ると、ああなるほどなとか、
なんかよくわからんけどやっていくうちに、ああこういった危険があるからこういったことをしなきゃいけないんだなということが通常の流れだと思いますけれども、
なかなか近年実際に手を動かす機会が減って、その結果危険を体で理解する力が弱まっているように思います。
そこで私は生徒にアンケートを取ったんですよね。
工業高校の実習で危険を感じているかということをアンケートにしました。
結果はほとんどの生徒が危険を感じていないと答えました。
一見すると安全対策が効いている証拠のように思います。
しかし私は日常の生徒の様子から見て、本当に安全対策が万全だから危険を感じていないのか、
それとも危険そのものを認識していないのか、どちらだろうということを思いました。
周りの先生と話し合う中で出た結論は後者です。
つまり危険を十分に認識できていないというのが今の現状だろうということでした。
そんな中、西日本キャンパクという会社が近くにあるんですけれども、
安全体感器があります。ぜひ使ってみませんかと声をかけていただきました。
私はすぐ、これはやってみる価値があるなと思ってお願いしました。
授業で実際に安全体感器を使ってみたところ、
アンケートではなんと100%の生徒が体験することで危険を理解できたと答えてくれました。
これは座学で危ないから気をつけましょうというのとは全く違います。
自分の身にも懲りうる危険として体感した時、生徒たちの表情が変わっていくんです。
その瞬間こそ安全体感器の大きな効果だと感じました。
具体的にどんな感想があったかといったら、電源が切れていても動くことがわかった。
これは多分エアーですよね。
残圧が残ってて動いちゃったということですよね。
実際に機械に巻き込まれたらとんでもないと思った。
これはボール板に軍手を近づけたらぐわーっと軍手が巻き取られてしまうという機械があるんですけれども、
そういったのを目の当たりにすると怖いと思うんでしょうね。
電気は見えないから注意が必要だと思う。
機械関係のことだけじゃなくて電気のことも知ってもらいたいですからね。
電気は見えないけれども非常に危ないんだという認識ができたと思います。
ただこういった経験をして危険だと感じることはいいですけれども、
怖いと思ってものづくりに携わらなければそういったことを避けられると考えになってしまってはもともこもないですよね。
こういった危険があるけれども、だからこうやって安全対策をすれば絶対に大丈夫ですよと。
もしくは何事も危険というものがあるので、その危険を予知してから取り組むようにしましょうとか。
そういった視点を持てるようになるということが大事なことです。
だから安全にものづくりが楽しくできる、そういったことを目指していかなければならないということを念頭に置かなければいけません。
この授業の様子はテレビでも報道されて、放送局がSNSにアップしてくれたんですよね。
するとその反響が本当に大きかったんですよ。
コメント欄にこれは本当に素晴らしいとか、慣れた時こそ危ないんだとか、安全教育ってやっぱり大事なんだと本当に数多く寄せられたんです。
安全教育の導入
私はこれを見て、安全教育の重要性は社会全体からも求められているんだと改めて確信しました。
単なる学校教育の枠を超えて、社会とつながる大きな意味を持つ取り組みだと感じたんです。
そして流れはさらに広がりました。
令和6年度、岐阜県の予算で1000万円ほど計上して安全体感器の購入が実現したんです。
教育の予算が年々縮小していく中で、これは本当に画期的なことでした。
おかげで多くの種類の体感器を導入することができました。
これは私の学校だけで使うのではなく、県内の工業高校で共有できるようなシステムができると良いなというふうに思っています。
貸し出しとか、出張授業などを通じて、色々なところで安全教育を底上げできたらなというふうに考えています。
さてここからは大会での講演について少し裏話を。
実は当日私はめちゃめちゃ緊張しました。
なぜならば会場に着くと想像以上に広くて、目の前には1000人ぐらいの人がびっしりいるんですよね。
その光景に正直これはまずいぞと思いました。
インデックス大阪という場所だったんですけども、色んな展示会や講演会など行えるような場所で本当に広い会場でした。
会室ではこれはまずいぞと思い、原稿を何度も書き直したり直前まで付け足したり、イメージトレーニングしたらタイムを測ったり、
もうそもそもここに来る間にやっとけよという話なんですけども、
ドタバタしながら毎日過ごしてますんで、ある程度やったつもりではいたんですけども、やはり会場に行ってビビっちゃいましたね。
でも壇上に上がって話し始めると不思議と落ち着いて、むしろ熱を込めて話すことができました。
これは間違いなく普段からこのポッドキャストで鍛えられているおかげだと思います。
毎週声に出して伝える練習をしてきたことが大舞台で自分を支えてくれたと信じています。
無我夢中で話を終えて壇上降りると、ああよかった、うまく喋れたなと思ったところに6名ほどの方が待ってくださっていました。
素晴らしい発表でした。工業高校の安全教育にとても共感しました。
そう声をかけていただき本当に嬉しかったです。
大きな舞台での発表は緊張もしましたけども、この経験を通じて得られたものは計り知れません。
今回の取り組みを通じて私は改めて安全教育を未来を守るために欠かせないものだと強く感じています。
講演の振り返り
今後、岐阜県内だけでなく全国にこの流れが広がり、製造業に携わる人たちが一人も怪我をしない。
それが私の一番の願いです。
今回は第83回全国産業衛生大会での講演を振り返りながら、安全体感器を活用した安全教育についてお話ししました。
この番組を聞いてくださっている皆さんにも、安全は誰にとっても大切なテーマであることを少しでも感じていただけたら嬉しいです。
これからも教育現場からの気づきや実践を発信していきますので、ぜひよろしくお願いします。
来週はですね、金曜日にJAXAまで行くんですよ。
JAXAで何をやるのかといったら、先日音声配信でもお伝えした小型人工衛星がISSに今届いてある状態です。
ISSから人工衛星を放出するというイベントがあるんです。
実際に生徒とJAXAの完成室に入り、カウントダウンして宇宙へ放出するんですよね。
なかなかできない体験です。楽しみにしているんですよ。
この様子をまた皆さんに次週はお伝えてきたらなというふうに思っております。
ぜひお楽しみに。ではまた。
11:11

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