岐阜県の産業の重要性
こんにちは、私は岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの熱い思いと工業高校の取り組みを紹介していきます。
今回は、私の生まれ育った地であり、日本のものづくりを支える重要拠点である、岐阜県の産業について話したいと思います。
岐阜県は日本のほぼ中央に位置し、豊かな森林資源と清流に恵まれた県です。
この恵まれた自然環境と地理的条件を生かして、古くから陶磁器や繊維など様々な産業が発展してきました。
特に私も携わる機械系学科に関係する製造業は、県内総生産の約30%を占め、全国平均を上回る割合となっています。
その中でも運送用機器、具体的には航空機産業と自動車産業に焦点を当てたいと思います。
本日はまず航空機産業についてお話しします。
岐阜県の航空機産業の歴史は古く、第二次世界大戦中の鏡原に遡ります。
川崎航空機工業、現在の川崎重工業が鏡原に工場を設立したことが始まりです。
戦後は一時中断しましたが、1950年代から再び航空機生産が始まり、
特に防衛省向けの航空機やボーイング車との国際共同開発などで技術を蓄積してきました。
そして現在、アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区として国の総合特別区域法に基づき、
愛知県、岐阜県を中心に航空機産業の一大拠点として国際的にも対抗できる地域として成長しています。
また航空自衛隊岐阜基地もあり、毎日定期的にいろいろな自衛隊機が日常的に岐阜県上空を飛んでいます。
その機体を川崎重工と関連会社がメンテナンスする協力体制が整っています。
具体的に多い仕事内容は民間航空機の部品製造や修理、そして防衛産業の仕事です。
それらをひっくるめて私たちは航空機産業と呼んでいますが、この産業の将来的な展望としては、まず旅客機の需要は今後20年で2倍になることが予想されています。
その需要に応えようと三菱重工を中心に国産旅客機を作ろうというプロジェクトが立ち上がりました。
計画は遅れながらも進み、初の試験飛行の時には学校の上空を飛んでいるのが見えて、私も本当にこれから国産の旅客機ができて、航空機産業がものすごく活気づいていくなって思いました。
しかしコロナ禍で航空関係の仕事は一気に逆風となり、そのまま国産旅客機完成とはいたらず大変残念です。
生徒やその保護者と話をすると、コロナ禍のイメージが強いのか、航空機産業が未だに業績が良くない印象がついているようです。
コロナ禍を終えて航空機の需要予想は元に戻ったということですから、コロナ禍前の予想通り2倍ぐらいに増えていくということです。
さらに旅客機だけでなく防衛費が増額したことで自衛隊関連の機器の需要が高まっています。
飛翔隊と呼ばれているミサイルも受注が多いと聞きます。
各会社に現状を聞きますと、数年先まで生産計画が入っていて非常に忙しい状況にあるそうです。
人材育成と未来の展望
そういう航空機産業の現状っていうのは国防も絡んでいるのであまり報道されないですし、一般の方を対象に事業をしていないので看板を出していない会社もあるくらいです。
会社の名前を聞いても知らなかったりするのもよくある話です。
このような背景をもとに、私の勤める岐阜工業高校の機械科は航空機械工学科という名称に改められました。
それだけ岐阜県が航空機産業の人材育成に欠ける思いが伝わってきます。
教員は今までなかった航空機の実習を立ち上げなければならないので、勉強しながら年々実習内容をブラッシュアップしています。
では航空機産業とは具体的にどんな特徴があるのでしょうか。
私の視点から3つ挙げたいと思います。
1つ目は自動車産業とも共通する部分は一部ありますが、航空機は何かあったら墜落して多くの方が亡くなってしまう乗り物ですから、非常に安全には厳しくて、
誰がいつどの機械でどのような工程で作ったかということが部品一つ一つに紐づけられているんです。
もし事故があった時に原因を明らかにするため、製造工程まで遡って安全のために対策をどうするのかを徹底的に調べられる体制になっているんです。
2つ目はそもそも航空機部品は軽く作るために各種部品を薄くせざるを得ないんですが、
そうするとなるべく丈夫に作り、長く使うという発想ではなく、壊れることを前提に定期的に交換していくという考え方で機体を維持管理することになっています。
ですから部品を受注すると、その機種がなくなるまで定期的に部品供給をする必要があるので、その企業は長いスパン、その部品製造が仕事としてあるというのが特徴です。
自動車産業ではモデルチェンジが頻繁に行われるので、航空機のように長いスパンというわけにはいかないのが大きな違いですね。
3つ目は防衛に関わる仕事は国籍が日本でないと働けないということです。
人材不足だからといって外国籍の方に仕事を手伝ってもらえない部分があるのは自動車産業とは違いますよね。
ただでさえ製造業に携わる人口が減ってきているのに、反比例するように仕事はこの先計画的に山ほどあって仕事があるのに倒産してしまうということも考えられるくらい危機的な状況です。
この人材不足という課題に対して、まず教育側では中学生や高校生、その保護者に対するものづくりの魅力発信が重要です。
工業高校での実習体験や卒業生の活躍事例の紹介などを積極的に行っています。
また、企業側でも若者が働きたいと思える職場環境づくりや技術者としてのキャリアパスの明確化、給与、待遇の改善などが進められています。
さらに、行政も含めた3学間連携での取り組みも始まっています。
そのような内容も少しずつ発信していきたいと思っています。
いかがでしたでしょうか。
今回の放送では、牛圏の主要産業でもある製造業の中でも航空機産業について話をしました。
航空機についてはまだまだ話し足らないところもありますので、継続していろんな情報を発信していきたいと思います。
また、こんなことを聞いてみたいというリクエストや質問があれば、ぜひお便りをいただければ嬉しいです。
今後は具体的に地元企業の発信なども積極的に行っていく予定なので、どうぞお楽しみに。
番組の感想やご意見もぜひお聞かせください。
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次回の自動車産業についての配信は来週月曜日の朝7時を予定しています。お楽しみに。
それではまた来週お会いしましょう。