1. 小松正史『耳の保養』
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2024-12-09 09:51

【作曲論】音を足すだけでは良い曲は作れない。

作曲するときに、和音をできるだけシンプルにそぎ落とした方が落ち着きのある曲が表現できます。その根拠を具体的にまとめてみました。作曲論を超越した生活やライフスタイル論にもつながる話となっています。
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みなさん、こんにちは。作曲家で大学教員の小松正史です。
寒くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今日はですね、作曲理論についてね、少し深掘っていきたいんですけれども、
音をですね、たくさん足すだけで作曲をする場合はあまり良くないっていうか、和音をできるだけシンプルに削ぎ落とした方が、
実は良き音が出る、良い音楽が作れるんじゃないかっていう仮説があるんですけど、
そこの辺りをね、深掘っていきたいなというふうに思っております。
この話題をね、伝えようと思った理由なんですけども、
毎回ですね、大学でサウンドスケープ論っていう授業をね、座学なんですけどやってまして、
毎回コメントカードをね、コメントシートを学生に書いてもらってるんですよね。
そこで、僕の曲を聞いてもらって感想をいただいた時に、
すごくシンプルな音で結構しっかり伝わるものがあるなっていうようなそんな話をね、
書いてくださった学生さんが結構いらっしゃったんで、
シンプルな音作りとか和音っていうことと落ち着きとの関係みたいなものをね、
ちょっとね、僕の経験の中から考えてみたいと思うんですね。
その背景で、僕の曲を聴いていただいている方はね、
かなりシンプルでピアノソロでっていうのを伝えてお分かりになるかとは思うんですけれども、
割と僕の場合はですね、メロディーが右手で弾きますよね。
左手で和音とかルートの音とか弾くわけなんですけれども、
あまり特徴的なというか複雑な和音を使ったりとかね、
コード進行をあまりしてないっていうことがあったり、
あと2コードとか4コードっていう2小節とか4小節とか、
あるいは8小節のコードを循環して演奏するっていうような、
そこの上にメロディーが乗っかっていたりとか、
即興があったりとかっていうような、
割とコード進行、和音の進行も割とゆったりしているというか、
シンプルなところが多いんですね。
そこで考えていくとですね、おそらく3つぐらい特徴があるのかなと思います。
まず1つ目が予測可能性と安定感っていうのがあるのかなっていうふうに思うんですね。
これ例を出すと、カノンコードっていう、
割と有名なJ-POPでもよく使われている循環コードがあるんですけれども、
これって聞いていいんですね。
予測が可能であったりとか、安定感をもたらすことが多いんですね。
人っていうのは予測可能なパターンに安心感を覚える傾向があるんですよね。
なのでシンプルな和音構成っていうのは、
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心理的な落ち着きがあるんじゃないかなっていうことがまず言えますよね。
ということで予測が可能だっていう、それによって安定感が生まれるっていう、
そこがまず1つ目ですね。
2つ目が調整がすごく明確なんだっていう話なんですけれども、
この調整っていうのは以前の音声配信でお伝えしたんですけれども、
調整は雰囲気ですね、音の並び方の雰囲気みたいなものが各調によってあるんだけども、
そういう調整ですね、明るいとか暗いとか楽しいとか寂しいとか、
そういうものを引っ張っていくような、そういう和音の話なんですけれども、
複雑な和音を多用したらですね、その調整に曖昧さが出てくるんですよね。
どこ行くのかなっていうね、複雑な音って結構人って不安定にさせるし、
何なんだろう、伝えたいことが分からないなみたいな、言葉もそうですよね、
あんまりたくさん伝えると伝えたいことが伝わらないっていうね、
そういうことよくあるわけなんですけど、これが和音構成でも同じでして、
調整を明確にすることによってまたまたですね、聞き手に安心感とか安定感を与えたりとか、
それによって落ち着いた印象を生み出したりするってことが言えるんじゃないかなっていうふうに思いますね。
そして3つ目なんですけれども、空間的な余白が生まれるっていうことなんですよ。
シンプルな和音、例えばCとかね、ドミソとかね、Fとかドファラとか、
そういう3音、あるいは場合によっては2音しか使わない場合があるんですけれども、
そういう和音構成というのは、音楽全体にですね、空間的な余白を生み出すんですよ。
この空間的な余白によってですね、聞き手が曲に入り込もうとしていくっていうか、
自分の想像力が刺激されて、自分なりの解釈を頭の中でしていくっていうのがあるんですね。
つまり、受けてというか、聞き手が割と積極的に曲に入り込もうとしているとか、
曲を解釈しようとか、曲を聞き入っていこうみたいな、そういう傾向というかね、
心理状況を作り出すことが多いんじゃないかなって思うんですね。
なので、結果的に落ち着いた雰囲気が生まれてくるというのがあるんだなというふうに僕は思っています。
というふうにですね、曲をシンプルにする、特に和音をシンプルにすることによって予測が可能であったり、
調整が明るくなった、明確になったりとかですね。
あと、空間的な余白が生まれるっていうことの原因があるかなということで、
僕これ本能的に自分が気持ちいいって思って作っているわけなので、
この理論、3つの理論は後付けの話なんですけど、間違いなく学生とか聞き手に伝わっているなというふうに思いますね。
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これがですね、坂本隆一さんの作品にも結構傾向が近いところがあるんですね。
坂本さんの曲を聴くとですね、シンプルで和音構成がしっかりわかりやすいところもあったり、
時に現代音楽的なところはありますけれども、特に落ち着きがすごくあるなというふうに思って、
そして聴き手が知らず知らずのうちに曲に入り込んでいくような感じがするんですね。
僕これをちょっと言葉にしてみるとですね、坂本さんの音って枯れた音っていうか、
日本の和ビサビの世界に近いところがあるんじゃないかなというふうに思うんですね。
亡くなる前に坂本隆一さんはですね、枯れた竹矢部に一錠の風が吹いて竹が鳴っているような、
そういう音をですね、結構理想とされていたという、最後のライブというか、
NHKで収録した曲のインタビューがありますけれども、そこでそういうことをおっしゃっていて、竹が鳴るわけですよね。
一筋の風が吹いてね。これは余計な音を削ぎ落として、本質的な音だけを残していく姿勢なんじゃないかなというふうに思って、
これもね、共通してますよね。そして和音構造が結構ね、坂本さんは演奏家っていうよりも作曲家が演奏するっていうような、
そういうスタイルを持っていらっしゃるような、それはもう間違いないことだと思います。
それで技巧的なものとかね、演奏者として人の目を、耳を弾かせるっていうよりも、複雑な装飾音とかね、
そういう飾りをつけずに、基本的な和音構造をめちゃくちゃ大切にしていらっしゃったんじゃないかなというふうに思うんですね。
さらに和音進行もね、突発的に変化するところはあるんだけれども、積極的に作為でもって進行しないところが結構あるんじゃないかなというふうに思います。
転調とかね、そのあたりが割と特徴的ではあるんですけど、気がつけば転調してしまってるっていうような、そんな自然な感じの転調をすごく感じるんですよね。
これによってですね、落ち着いた雰囲気が醸し出されていくことが多いですし、そのあたりがね、本当に一筋に違和感なくシンプルな世界観を出しておられるような、そんな印象が僕はあるんですね。
そういうふうにですね、作曲するときに和音をできるだけシンプルに削ぎ落とした方が、いろんな方向性はあるんだけれども、落ち着く曲っていうのが表現できるんじゃないかなというふうに思うんですね。
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つまりは、音を足すだけでは良い音は作れないんですね。
これ、音楽のみならず様々な表現、そして日常生活でも言えるんじゃないですか。いろんなものを足すだけでは良い生活はできないというか、引き算っていうことですね。
マイナスの音デザイン、ここでも大事だと思うので、これ音楽の世界だけじゃないんですよね。
他のマインドセットとかね、生き方にもつながるものなので、僕はそういう方向に年を減るにつれて近づいていきたいなというふうに思っております。
今日はそんな感じで聞いていただきありがとうございました。バイバイ。
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