起業とハコスコの立ち上げ
プロジェクトデザインルーム第21回ラストのパートとなりますが、引き続き藤井直敬さんと対話を深めていきます。よろしくお願いいたします。
本当にいろんな方向から聞きまくっちゃって、ありがとうございます。かなりトレ高の大きい回になってるんですけども、最後思い切ってテーマを一つに絞ってみようと思うんですけれども、
起業ですね、立ち上げる方の起業。この番組も起業カテゴリーの人に多く聞いていただいてるということもあるんですけれども、藤井さんにおける起業はハコスコですね。
これ、おいくつぐらいの時ですか、起業されたのって。
2014年に始めてるから、50ぐらいですね。
50ぐらい。いわゆるスタートアップカンファレンスでいる人たちって結構若いイメージがありますから、そういう意味だと50ぐらいでやられたっていうのはギャップが世の中的にありそうですけど、割と情熱的に立ち上がったんですか、それは。
僕に情熱はないですよ、基本的に。
なんとなくその回答の予感はしてたんですけど、当時の起業の前後ぐらいでどんなことが起こってたんですか。
そうですね、ハコスコっていうのをダンボールで作ってみて、売ってみるわって言って、その頃Kickstarter的なクラウドファンディングみたいなのなかったんで、やってみるわって言って売り出したら、1000個ぐらい来ちゃったんですよ。
それはもう会社は作ってたんですか?
会社はとりあえず作ってたんですけど。
とりあえず売れちゃった。
売れちゃって、これどうやるんだっけみたいな。だからダンボール屋さんに素材は作ってもらえるんだけど、これどうやって送るの?誰がやるの?みたいな。
組み立てとか梱包とか。
そうそう、梱包とかね、ヤマト呼ぶとかさ、電票誰が書くんだっけみたいな。
オペレーションですね。
もう全くないまま。
で、僕は基本的にビジネスはカナイと一緒にやってたね。
カナイはいわゆる外資系の企業、eBayとかね、Paypalとか日本に入ってくるときの最初の立ち上げメンバーだったんですよ。
最初の3人とかでやるプロフェッショナルなんで、そういう人がたまたま仕事が手が空いてたんですね、そのときね。
そのときね、僕がたまたま会社を起こしちゃったんで、かわいそうだなって思ってくれたんですよ、彼女が。
それで手伝ってあげるよって言って手伝ってくれたら、あっという間に絡めとられちゃって10年間。
今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。
もっとハコスコ以外で活躍したら、もっと社会に貢献できたんじゃないかなって、僕も思うし彼女も思ってる。
スタートアップの成長と課題
いやいや、でも本当に一時代というか、ハコスコの登場は本当に僕らもいろんな恩恵を預かってるんで、そこはいろんな喧騒もあるかもしれないですけれども、
どうしたんですか、その仙台。仲間とかいたんですか、当時。
いや、いないから、やっぱり僕はさっき言った通りマインドセットが研究者になった。
ビジネスマインド的なものは全くなかったんで、それは結局10年間で学んだんですけど、いろんなことをね。
基本は家内なんですよね。
彼女が組織づくりと人づくりをやってくれて、やっぱりそういうCEOがいてくれたっていうことが、僕はなんとか形になったんです。
彼女いなかったらたぶん1年くらいで辞めてると思う。
なるほど。じゃあやってみるわじゃないですか、最初。やってみたってことだと思うんですけど、
で、ちょっと売れ始めたぞってなった頃から、
前はその起業の仕方ってスタートアップマインドで、なんだろう、こう、エグジットするぜっていうような感じの、
それで社会貢献するだがたと、なんかやりたいことをやりたいから始めるっていう、
スタートアップじゃないパターンもあるじゃないですか。
どれくらいの頃からスタートアップ化していった感じだったんですか。
最初は本当に家内製糸工業的な、家内と2人で折って畳んで入れて送ってみたいなことやってたんだけど、
ご自身でやられてたんですね。
だって他にいないからスタッフがね。
マジっすか。
それ1000個送るの大変よ。
そういうのやってきてなさそうですもんね、しかも。
やってるんですよ。
やってたっすね。
それで起業っていうものをあんまり深く考えずにやったんで、
あれ世の中っていうのはVCとかからお金がもらえるらしいぞみたいな話を小耳に挟んで。
で、僕たまたまアンリーが友達だったんですよ。
なるほど。
アンリーの奥さんがペイパルで働くときに彼女を雇ったのがうちの家内なんですよ。
なるほど、すごい近しい関係ですね。
それでアンリーに、こういう会社始めたんだけど、VCからお金もらうってどういうことなのってわからないから聞きに行った。
そしたらアンリーが説明してくれて、なんか面白そうだからうちで出すよって言われて。
SEEDのお金くれるって言うから、あ、くれるんだったらもらっちゃうかみたいな。
それでもらっちゃったから辞められなくなっちゃった。
なるほど。早かったですね、1年目とかですもんね。
初めて2ヶ月。
2ヶ月早いですね。そこで起業価値が一回ガンと上がって。
そこでそれまでゼロだったのが100万円ぐらいだったのが1億円になっちゃった。
2ヶ月で1億円の起業価値になっちゃった。
そしたらもう辞められないじゃん。
始まっちゃいましたね。
始まっちゃったね。
結構そこから今のDNPとのM&Aがあったっていうことだと思うんですけど、長かったですよね。
10年だから長いですよ。
こんなはずじゃなかった。
こんなはずじゃなかった。
イメージと現実はどういうふうにずれてたんですか。
3年くらいで何とか辞めて次行こうと思ってたけど、VR自体がそんなにグーって上がらなかったから。
タイミングを失ったっていうかね。
その間から学んだこととか、辞めるっていう選択肢も例えばあったのかとか、
続けるときの気持ちってどういうふうに持っておくと実際10年走れたのかとか、
その辺結構リアルな部分をお伺いしたいですね。
今も本当に思うんですけど、下手に売り上げが経っちゃうと生活もできるし、辞めないんだよね。
そういうスタートアップって結構多いと思うのね。
例えば給料はみんなに払えるし、売り上げもそこそこ数億円くらい立ってるけど、でも増えはしないみたいな。
そういうゾンビみたいな会社が今やって、スケールしないからエグジットできないんで、
そうすると一番いい時期をそこで無駄に使っちゃうっていうのが、
自分もそうだけど今の若いスタートアップ企業家の人たちも結構多いと思うんだよね。
いい時期っていうのはその人にとっての。
クリエイティブな元気のある時期。
例えば30代前半ぐらいのさ、一番意気のいいときに40までそれやっちゃったらさ。
しかもエグジットできてないみたいな。もったいないよね。
スタートアップとしてIPOなりM&Aなりを目指す前提で始まっちゃうとやっぱそう。
DNPとの統合と今後の展望
そうですよね。
辞めたくならなかったんですか?
いつも辞めたいと思ってたけど、やっぱり辞められない。
そうですよね、責任はありますからね。
でもそれが生じ生き延びられてしまうゾンビみたいな表現もありましたけど、
そういう状態に今なっちゃってる人が実際多いとしたときに、どういうメッセージがありますか?
本当にそういうのはM&Aでどんどん安くていいから買っちゃって、
その人たちを事業を買うというよりは人を買うという形でM&Aしていったらいいと思うんですよね。
だって優秀なんだもん、その人たち。
油も載ってるし。
経営も分かってる、優秀の人たちが3年ぐらい買える。
ロックアップしてね。
ロックしちゃえばそうですよね。
だから逆に言うとスタートアップでそういう状態で頑張ってる人からしてみたときには、
IPOじゃなかったとしてもネクストステップに進んでいく手段は結構ありなんじゃないか。
そういう出口をたくさん準備してあげたほうがいいと思うんだね。
だってうちもちょっとやったけど、IPOの準備するとか言って監査法人とか入れたらさ、
あっという間に何千万溶けちゃうわけ。
あれすごいって聞きますよね。
時間も使わなきゃいけないし。
すごい時間かかるし。
だからそんなんだったらもうそれはやめて、
もう本当に買ってくれる先、特にシナジー効果のあるところじゃないと買ってもらってもしょうがないから、
そういうところを常に探しながら。
今世の中にいっぱいあるMAのコンサルテーションみたいなところって本当にインチキ臭いとこ多いから。
あれなるべく近づかないようにしてるんですけど。
それは正解だと思いますけどね。
未だにうちにも来るからね。
調べてないだろ、お前って。
結構恐怖ですね、それ。
びっくりですよ。
結構名の通ったとこから来るからね、それ。
恐怖ですね。
そうなんですね。
びっくりですね。
確かにいろんなやり方あるし、やっぱりネクストステップに進んでいけるやっぱり元気とか勇気がある時代ってすごく大事ですよね、というところなんですね。
なんかお伺いできる範囲だとは思うんですけど、
DNPさんってやっぱりすごくパッとイメージもシナジーありそうだなっていうのはあるんですけど、
やっぱりすごく盛り上がる瞬間みたいなのがあったんですか。
そうですよね、MAの前。
MAの前というか最後どうたどり着いたのかなみたいなところは。
MAの前はね、やっぱり僕ら買ってほしいからですよねって感じであんまり主張はしなかったけれども、
とはいえカコスコって会社の価値は僕と家内の2人だと思ってたので、
あなたたちが払うお金は僕ら2人のタレント倍ですよっていう、タレントのお金ですよって言ってんだけど、やっぱりわからないんでね。
会社が僕らで持ってて、買った以上それが自由に使えるんですよって言ってもわからない。
だからある意味それが成立した後は、結構藤井さんにいろんなことお願いしたらいいのにとかするんですね。
そうしたらいいんだけどできないんでね。
もったいないですね。
もったいない。それがこの2年間ずっといかないと2人でどうして僕らをうまく使ってくれないんだろうねってずっと言い続けて。
それはちょっと1個外のサイドからですけど投げますね、じゃあ。
結構やりたいことあるから、DNPと始めるとかすごくいいかもしれないですね。
いわゆるJTCと呼ばれるジャパントレジェクショナルカンパニーが、PMIをPost-Merge Integrationうまくできないっていうのは、
買って終わりなんだよね、みんなね。
どう使うかってイメージが明確にないまま買っちゃうんだよね。
一旦の中間系PMIがいくら投資したかっていうところに立っちゃってそうですよね。
その後。
PMI本当に難しいから、カルチャーとカルチャーのぶつかり合いだから。
結婚と一緒だよね。
そうですね。
結婚してみたらこんな感じじゃなかったみたいな、みんな経験あると思うけど。
なんか以前の回でお話し伺ったのが、AGE出版の原田さんのお話し伺ったときに、
カヤックと結婚して、結婚式本当にやったって言ってました。
面白い。
そのときはたまたまお互いの経営者が男性同士だったので、
両方白タキシードで会社の結婚式やったって言ってましたね。
それぐらいの出来事だなとも思いますし。
決意が必要なんですね。
喧嘩もあるだろうし、そんな危機もありそうです。
喧嘩したいですけどね。
むしろね。
喧嘩できないから。
むずいですね、それ。
え、なんか溜まってそう。
今は大丈夫なんですよ、だいぶ。
AIとビジネスの交差点
なかなかでも確かに、そこまでに2年かかるとかってなると、
なかなかやっぱり時間コストかかりますもんね。
そうですよ、そしたらもうロックアップ終わっちゃうんで。
なかなかなタイミングですね、それは。
でも本当ここからの1年とかにすごくいい出来事が起こるといいですね。
本当にそう思います。
これはうまく使ってほしいなって本当に思う。
ぜひ何か、もしかしたらご例を聞いてくださっている方の中からも
コラボレーションのお誘いとかあるといいなと思うんですけど、
なんかハコスコって実際会社であり、
プロダクトで言うと段ボールのやつなんですけど、
結構メタバスやってるとかAAとかいろいろあるじゃないですか。
何か今から注力したいとか挑戦したい新しい分野とかってありますか?
僕らは今ね、AIと一緒に生きるっていうのをやっぱテーマとして
上げているので、いわゆるファンデーションモデルを作るみたいなね。
LLMを作るとかそういうんじゃなくて、
そういうLLMっていう規制が世の中に解き放たれた今、
それをどうやって使ってどう一緒に生きるのかっていうことを考えて、
それが現実科学っていうのとセットになって考えてるんですね。
現実がそれで変わるわけですよね。
AAが世の中にもうその辺に埋め込まれちゃうことによって。
そういう現実空間で僕らはどうやって生きるべきかっていうのを考えるのを今会社で考えてる。
熟成肉のAIボット
面白いですね。
それって結構ある意味SF的な感じもあるし、
逆に言うともうさっきチューリングテストも通ってるねみたいな。
今ここにある未来なんですね。
あるんですけど、そうですよね。
なんかそれって事業として検証していくのも結構今できそうですか?
うん、できる。
いいですね。
だってAIと一緒に働いてるじゃん。
だとした時に、例えばこんな産業とだとおもろい実験できそうだなとか、
なんか目をつけられてるとこありますか?
最近やって面白いなと思ったのは、核の芯っていう熟成肉で有名な核の芯の社長のAIボットを作ったんですね。
千葉さんはお肉の情熱すごいんですよ。
もうお肉のこと喋らせたらずっと喋ってる。
その千葉ボットを作った。
そしたらお肉のこと熱く語るんですよ、そいつ。
なるほど、ちゃんと熱いんですね。
何聞いても答えてくれる。
すごいこれと思って。
ってことはさ、AI作ったけどどこに置けばいいかとかどう使えばいいかとか分かんないじゃん。
で、今やってるのは千葉さんボットにつながるQRコードを名刺サイズに印刷してあらゆるところに置いてるの。
だから実空間に千葉さんの入り口が日本中2枚に300個あるの。お店に置いてたりするの。
それってすごくないですか。
だって今のAIってどっから入るかって言ったらなんかURL叩いてみたいな。
だけどもうここにいるのよ千葉さんが。
呼んだら答えるの。お肉のこと熱く語るのよ。
はいはい。
だからここにQR1個置くだけで千葉さんへの窓口ができちゃう。
すごい面白いなと。
いいですね。
なんか急に僕もアイディアの話になっちゃったりですけど、
ふるさと納税と僕それを噛ませたら面白そうだなと思っていて、
肉の味って本当にタンパク質としての味と情報の味があるじゃないですか。
情報の味は多分タンパク質の前に取っておいた方がおいしいじゃないですか。
おいしく感じるよね。
なので普通だと生産者の方の声とか入ってたりすると思うんですけど、
千葉さんレベルになってくるとどの肉でもいける可能性あるから、
ふるさと納税で届いたやつ、必ず食べる前に一回千葉トーク挟むみたいな。
熱く語ってもらうみたいな。
そういうのは確かにできそうだし、AIと一緒に生きてる感じがしますね。
現実の感覚と余白の重要性
確かにな、その辺ぜひぜひハコスコDNPあたりとできたらいいなと思いますし、
今やられたいことはグッと伝わってきた感じがしてます。
最後になんですけど、この現実科学とつなげるということで、
ずっと模索されたり解釈が広がったりとかもしてそうですけど、
今の藤井さんにとっての現実を説明するとしたらどんな言葉になりますか。
それ毎回僕はレクチャーシリーズとってやってる、もう60回やってるんですけど、
ゲストみんなに聞いてることなんですけど、
みんなは工夫していい答えくれるんですけど、
僕自身は本当につまんないことしかなくて、
僕らが感じてる世界だよねっていうその五感が感じてる。
それ以上でも以下でもないなと。
なるほど、なるほど。
だとするとやっぱりそこに作用していく生き方、作用の仕方が
AIによってだいぶ変わってきそうだなみたいな感じですね。
それ以上でもそれ以下でもないか。
そこはすごくなるほどってなっているんですけど、
60回の中でこの捉え方面白かったよっていうのを
何か思い出に残ってるやつとかありますか。
映画監督の樋口監督いるじゃん。
樋口さんに聞いたら、僕にとっての現実は実家みたいなもんだっていうんですよ。
実家。
普段、頭の中は実家の外側のとんでもないことばっかりしてるわけですよ。
だけど、現実に戻るってことは実家に戻るのと一緒だっていう。
あっ、実家。
変なものばっかり作って、変っていうかね、
架空のものばっかり作ってる人にとって
現実って戻ってくるとこなんだと思って。
なるほど。
実家って言われたら結構ね、はぁって思いましたよ。
言い方変えるとあれですかね、素とか裸になれる場所みたいな感じなんですかね。
近いんだと思いますけどね。
でも常にあって戻れるっていう安心感。
そっかそっかそっか。
ちゃんとそこにアクセスができるっていうこともすごい大事ですね。
担保される安全地帯。
めっちゃ面白いですね、現実科学の60回。
それはあれでしたっけ、YouTubeとかですよね。
これは本当に沼なんで、ぜひリスナーの方もお時間あるときに見ていただければと思いますと。
フォローもしてください。
ぜひぜひお勧めでございます。
ということで、かなり長きにわたってお話を伺いましたが、
プロジェクトデザインルーム第20回のゲスト、藤棘さんにお越しいただきました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
プロジェクトデザインルーム、本日も最後までお聞きいただきありがとうございました。
藤さん本当に多才で、
実はまだまだ聞きたいことが消化できてないというような、
お馴染みの状況ではあるんですけれども、
中でも印象的だなと思ったのが、
この余白の議論と言いますか、
相手が研究者であろうと、アーティストであろうと、ビジネスパーソンだろうと、
やっぱりゴールがガチガチに決まりすぎちゃってると、
それを一緒に作業していくための仲間みたいな位置づけになることが非常に多いなと思うんですけれども、
ここから先はちょっとやってみないとわからないんだよねっていうような余白があることで、
同じ目的に対して情熱を持てたりとかすることがあるんだなみたいなことは、
すごく僕の中にもいいヒントとして落としていただいたなと思いますし、
それを始めるにはとりあえずやっぱり飯を食うべきだよなっていう、
当たり前の人間のコミュニケーションがやっぱり必要だなというふうに思い知らされました。
ということで、次回以降もまた素晴らしいゲストをお招きしていきますので、お楽しみにお待ちください。
お相手はコネル地財図鑑代表の出村光雄でした。