異なる領域とのコラボレーション
プロジェクトデザインルーム
プロジェクトデザインルームを引き続き、藤井直敬さんと対話を深めてまいります。よろしくお願いします。
前のパートでは、結構このアートのアプローチとか研究みたいなところをテーマにお話をしたんですけれども、
今日せっかく藤井さんのビジネスの側面も持っていたり、非常に多彩なので、
領域の違う人たちと逆境的なプロジェクトを成功させるためにはどうしたらいいんだみたいな、
ちょっとそんな視点で少しお話を伺いたいというふうに思っています。
大体、触手が違うと共通言語がなくて、プロジェクトの途中で飲みに行くと相手方の悪口を言ってるみたいなことで、
意外とそういうので結束したりとかしますけれども、
できれば早く仲良くなってグルーヴ感が作れるに越したことないなと思っています。
なので、ちょっと3つ視点で聞きたいんですけど、研究者と組むときどうしたらいいですかっていう話。
アーティストとかデザイナーと組むとき、ビジネスパーソンと組むときみたいな。
それぞれがまた別の領域の人だったと仮定してお話を伺いたいなというふうに思っています。
まず、研究者の方が言葉を選ばず言えば結構難しい方も多い印象があるみたいな世の中のイメージかなと思うんですけども、
どんなことを意識するといいですかね。
どこにツイートスポットがあるとか、逆に地雷があるとか、初めましてこんなことやりたいんですけどっていうときに、
かなりテーマを絞らずに話しちゃってるんですけど、
具体的なご経験の中からこれはうまくいったなとか、逆に失敗したなとかあれば。
多分大きく2つあって、研究者にお願いするテーマが決まってる場合と決まってない場合があって、
決まってる場合だと、大抵の場合はその研究者のことを調べて、
こういう人とこの人はこういう研究をしてるから一緒にやりたいと思っていくじゃないですか。
そうすると、その研究はその研究者からしたらもう終わった研究なことが多いんですよ。
もう表に出てるから。
それって多分表に出て一般の人が知るようになると、1,2年経ってたりするんですよね、下手すると。
そうするともうそのときは別のことやってるんですよ。
だからもはや新規性がないから、新規性のないことは研究者はやりたがらない。
だけどお金くれるんだったら大学院生にやらせとくかみたいなそういう話になる。
だとしたらあんまりうまく回らない。
もう一個、テーマはないんだけど、この人面白そうだから会いに行ってみようかみたいな感じで行くと、
テーマなしで行っちゃうと相手の興味のあることは出てくるんだけど、
でもそれを何かの役に立てようとか思ってないんで、研究者は。
その時点では好奇心とか。
やりたいことでしか彼らはドライブされないので、
そうするとそこはそれで勝手に好きなことをやられて終わるみたいな。
今両方聞いて両方辛くなったんですけど。
だから辛いんですよ、研究者と何かやるって。
出口として、研究者としての出口として、やっぱりその人が何か手を動かして研究以外のことをやっちゃってる人ってたまにいるんですよ。
アーティストとの関係構築
僕もメディアと作ったりしてたし、おっちゃいさんなんかもそうですよね。
だから、はみ出したとこで何かやっちゃってる人っていうのがいたら、その人は一緒にできるかもしれない。
なるほど。はみ出してる人はどういうとこに顔出されてることが多いですか?
はみ出してる人は見えるからね。
そうか。
本書いたり変なことしたりしてるから、そういう人だからってことはすごい少ないってことなんですよ。
そうですよね。しかも結構集中しちゃいそうですよね、問い合わせが。
でも確かにそうか、そうかもしんないですね。はみ出し部分を探す、リサーチしておく。
やっぱ会いに行くっていうところにもハードルあると思うんですけど、
シンプルに大学の研究室って手紙書いたり電話したら会えるもんなんですか?
返事は来るんじゃないですか。
それはでも朗報ですね。結構やらずに止まっちゃってるケースすごく多そうだなとか、
なんかすごく秘密が多そうだから行けなそうなイメージもあるみたいな。
そういうのはないと思いますよ。だから一番いいのは知り合い経由でちょっと相談したい人がいるんだけど、
なんか行くと昼間の時間に行くよりちょっとご飯食べるぐらいの、それぐらいのほうがいいかもしれないな。
いいですね。
そしたらとりあえずうまくいかなくても、ご飯は食べたからよかったやぐらいの、期待値下げていくほうがいいと。
なるほど。それはいいかもしれないですね。結構ゴリゴリの書類があって、
ご相談なんですけど予算とスケジュールがあってみたいなことよりも、まずは人とコミュニケーションを。
そもそも話すに値する人物なのかっていうのはお互い分かんないんで。
そうですね。
代わりにご飯があったらしょうがないか。
意外とほっこりした回答法で、いやいやすごく参考になります。ありがとうございます。
逆に今度、これ僕も自分ごとになりそうですけど、アーティストとかデザイナーの方と組むときっていうのは、
よりそれをブーストさせていくときに、藤井さんなりに気をつけてることとか何かありますか。
そうですね。僕は自分の立ち位置がアーティストではないと一時期そうかなと思った瞬間はあったけど、今は違うと思ってるんで。
彼らもやっぱり研究者と似たところがあって、自分の作品作りっていうのは一番大事なんですよね。
だからそこからすごくずれたことはやりたいとは思わないし。
アーティストとか研究者もみんな常々思ってるのは、自分にもっとお金が回ってくればこんなすごいことできんのにっていうのが常にみんなある。
俺はあれをやりたいのに、でも今はできないとか。
機会を与えられるとしたらラッキーって思って飛びついてくるけれども、でも方向は自分のしたいようにしたいっていう。
だからパトロンにしかなれない。
なるほど。
基本はね。
はい。
だけどそこで、でもこれぐらいだったら妥協してもいいかっていう、その妥協のレベルによってモチベーションが多少影響を受けて、
うまくいくかうまくいかないかの。
そうですか、なるほどな。
でも先ほど説明いただいたいくつかの作品も藤井さん以外のパフォーマーとかアーティストの方と組んだりしてるじゃないですか。
その時に多分研究者としての脳みそもあってこんなこと実証してみたいっていうのあるじゃないですか。
あれはなんでそんなうまくいったんですか。
あれは僕はパトロンだったからです。
理研の研究費が使えたから。
なるほど。
でも好きにしてくださいって言ったわけじゃないですよね。
もちろん僕は僕でこうやったらいいんじゃないっていう、一緒に作ってるフェーズはありますよ。
そのスタートってどういうふうに設定します?
なんか検証したいことみたいなところから始められるんですか。
僕は研究者としてはいわゆる仮説検証型じゃなくて探索型なんですよ。
やってみたら仮説検証型の人はやっぱり仮説を積み重ねていくんで、
過去の事例をベースに次こうやったらどうなるだろうっていっていろいろ積み重ねていく。
僕は探索型なんで、とりあえずあっちこっち手を伸ばしてみるっていう、
その結果がどうなるかわかんないけどやってみようっていう種類の研究してるんですね。
メディアアートに関しても、こういうテクノロジーがあって、
これとこれつなげたらどうなるんだろうっていうのをやってみたら面白いねっていう。
なるほど。かなりやっぱり余白があるんですね。
どうなるんだろうスタートだと。
それは面白いですね。
そういう時には馬が合うアーティストの方とだったらすごくドライブしそうな気がします。
その時にちょっとこれやってみたんだけど面白いねみたいな。
そういうのが積み重なっていって作品に落ちていく。
面白いな。仮説型だと多分こうなると思うから一緒にやってほしいってなると、
確かにそうなった時にほらねって感じになっちゃって。
で?で?ってなっちゃって。
確かにそうだな。どうなるんだろう部分を残しながらスタートしつつ、
でももしかしたら自分の中にはいくつか仮説もあるかもしれないけどみたいな。
ビジネスパーソンとの協力
そこは結構最初にプロジェクト組む時のすごくコツかもしれないですね。
で、宮さんはプロジェクトやる時はどっちなんですか?
なんか両方あるですね。
なんか農家の時は買い取るぞと言ったら、
人が結構来るんじゃないかは割と仮説としても持ってました。
持ってたんですけど、その結果、その与えたというか支払った10枚の100円玉で、
人は何を買うんだろうはわかんないかったんですよ。
知りたかったし、なんでそこの会場に結構いろんなものを用意したんですよ。
自販機みたいなのを置いて、100円玉あるからみんな買うかなとかめっちゃ買ってたんですけど、
はたまたその返還されたアート作品は自分のものを買いたいっていう人が結構いるのか、
全然売れないのかとか、あとこれ僕らが所有してるから他のものに使いたい放題できるようになった時に
自分は何作るんだろうとか、2段階だったかもしれないですね。
でもそういう巻き込み型のものはやっぱり面白いですよね。
受け手が決めるから、中身はね。
確かに確かに、今すごくぼんやり自分がやってたことが意外とそうだったのかもっていう発見はちょっと面白かったですね。
ありがとうございます。
3つ目の視点が、相手がビジネスパーソンだった場合と。
だから当時でいうと、藤井先生は理研にいたときはビジネスマンって感覚ではなかったですか、研究者という立ち位置ですよね。
相手方にビジネスの人が来るケースも結構よくありますもんね。
相手方っていうか、そうですね。
相手方研究的なものは企業の人とはやってましたけど、そのときはたぶん鼻持ちならない人だったと思いますよ、僕。
どんな雰囲気だったんですか。
だから僕はお金のことが全然わかってなかったから、向こうが出すお金の意味ってわかんなかった。
これをもらってるけど、その後どうするみたいな。
それもあるしね、その対価をもらってこの作業をするっていうのは、言われた通りのことをやって、それ以上何でやらなきゃいけないんだっけみたいな。
一緒に作る、一緒にやろうよみたいな感じがなかった。
そうなんですね。
なんかそのとき、逆に家庭の話になっちゃいますけど、相手方にいたビジネスの人がどうしてくれてたらもっと藤井さんが踏み込んでくれてきてたんですかね。
向こうがね。
多分僕のマインドセットは、相手が何かの言い方を変えても変わらなかったと思う。
だから今世の中にいる研究者も、本人が変わるきっかけを見つけない限り変わらないんじゃないかなと、自分のことを思うとそう思う。
なるほど。
やっぱりそのときはメインでやってる研究があって、そっちがやっぱりプライオリティが高いし、共同研究はある意味取引というか、ちゃんとしたジョブとしてやってる。
やっぱり向こうは、研究者としての僕のところにお願いしますみたいな形でやってくるんですよね。
そうすると、やっぱり威張っちゃうんだよね、気持ちがね。
威張るつもりないよって。
なかったけど結果的に、ああやってあげるよみたいな、そういう感じだった。
なるほどなるほど。
だけど自分がね、ビジネスやって、外の研究者とかコラボレーターの会社の人とかやると、やっぱり一緒にやるっていうね、態度がないとうまくいくことはないね。
一緒にやる。
面白がってくれる。やることを、面白いねこれ、やろうよって言って、意味をお互いちゃんと理解、共有してる。
そういうことがない限り、うまくコラボレーションが動かないなと。
やっぱり飯食ったほうがいいですね。
そうそうそうそう。
そうっすよね。
安いもんだよ、飯は。
アートとビジネスの融合
飯食いに行ってどこを余白にするかみたいな、両方がまだ想定しきれてないワクワクのエリアみたいなのを探していく必要があるんですね。
めちゃくちゃ共感しますというか、なるほどって思ってきました。ありがとうございます。
そういうふうにですね、この研究者とかアーティストデザイナー、ビジネスみたいな、いろんな立場があるんですけど、
藤井さんなんかって混在してる時あるじゃないですか。混在してるじゃないですか、肩書き的には。
1個のプロジェクトで自分の肩書きが綱引きしちゃうみたいなことってあったりしますか。
綱引きはしないですね。基本的に僕は同じ人格でずっといられると思いますね。
でもそうですよね。よくうちの会社の中の事例で言うと、いわゆるプロデューサーって呼ばれる、プロジェクトを成立させる、
それはお金面でも期限の面でも、ここまでは行きたいみたいなことも含めてやってる人と、
クリエイティブディレクションみたいな品質とか表現の内容にコミットすることが、
1人の人がやる場合みたいなのが結構苦しいですって言われるようなケースもあったりして、
僕意外とそうでもないんですけど、むしろ一番いいやんって思ったりすることもあるタイプで、
今でもご質問を投げさせていただいた中で言うと、どっちかというとそれ一緒にやれちゃった方が楽派ですか。
僕は常に妥協しながら生きてるので、だって100点取れないじゃん。
デンフォイで100点取ることができないから、だったら合格点はどこだろうっていうミニマムなレベルを設定して、
その中で一番自分が尖らせたいところはグッと上げるけど、
だから僕、仕事早いんですよ。早いのは常にパッとやった時に大抵のことは60点ぐらいのものはできてるんですよ。
それは僕の才能なのかなんだかわからないけど、それで手離すって渡しちゃうんで、
そうすると向こうの人がさらにもうちょっと良くしてくれたら戻ってきた時にもっといいじゃないですか。
それを繰り返してると良くなるっていう。
でもやっぱ抱えちゃった時に、うーんって悩んで抱えちゃった時に時間っていう有限なものが消費されちゃうからコストがどんどん重ねてくるんだな。
渡しちゃう。結構いいですね。
でも50点では渡さない。
そこあるんですね。
60点ぐらいで、これだったら文句は言うけどしょうがないなっていうレベルで渡す。
それ以上悪くならないけど過半は取れてるっていう。
確かにその感じもすごい重要だなと思いますね。
コンソーシアムの重要性
面白いなあ。
やっぱなんか藤井さんの活動を見てて僕が感じるのは、
この積み上げとか積み重ねみたいなものがすごくさっきの作品群の中でもそうですけど、
妥協してるというふうには僕は感じなかったですけど、
次またの上乗せすればいいみたいな感覚もなんかあるのかなと思って聞いてました、今。
そうですね。やっぱどうしても時間が期限があって、お金の上限があってってなると、
今できる一番いいものはなんだろうっていうのはいつも考えてる。
そうですよね。だからなんかこう普段BtoBのお仕事してて、
その場限りでしか付き合いがない前提のプロジェクトがやっぱり多すぎる気がするんですよ。
でもやっぱ研究とかってなると長く続けられるじゃないですか。
でもなんかこの予算、この100万円でこのお題に対して本当に100点を取らないともうダメです。
もう次はないですみたいな状況でKPIが設定されることがすごく多すぎる気がしていて、
だからみんな、なんだろう、妥協できないようなところにすごくいろんな時間とかを使ってうまくいってない気がするんですね。
なのである程度腰を据えたパートナーシップみたいなのはすごく今世の中必要そうな気がしますよね。
信頼と蓄積。
というのはすごくなんか今気づきました。
ちょっと時間割と行っちゃってるんですけど、最後にもう一個だけこのパートで聞きたいのが、
コンソーシアムやられてるじゃないですか、ブレインテックの。
あれ僕も1回なんか総会みたいなのをお伺いして、めちゃくちゃずっと面白かったんですけど、
たまにコンソーシアム作りたいんですみたいな相談を受けたりして、いろんなものを調べるんですけど、
なんかうまくいってないとか、シンプルにつまんなそうとか、
集まってる人の目が死んでるみたいなのが結構見受けられるんですよね、そのワードの周りに。
やっぱ企業とか学術機関がたくさん集まって交差する組織、めっちゃ難しいっていう印象があるんですけど、
どんな点で力を注がれてるのかみたいなのを少しヒントをいただきたかったです。
コンソーシアムって継続することはすごく難しいですよね。
やっぱり何らかの目的を共有して集まってくる団体なので、目的設定っていうのがやっぱり時間で変わってっちゃうから、
例えばブレインテックとかもね、あと僕がもう1回やってるXRのコンソーシアムっていうのなんかは、
XRってもはや沈黙化しちゃってるから、これどうしようって話で今ちょっとリニューアルしてるんですけど、
だからやっぱりその集まる目的とか人とかが、始まるときはね、やっぱり熱量あるんで、
始めるのは楽なんですけど、時期さえ間違えなければね。
だけどそれが熱量って誰かが火くべ続けないとダメだから、誰が火くべるんだっけみたいなのが、
すごい辛いよね。
やっぱ大変なんですね、それはそれで。
この目的設定がっていうお話だったんですけど、逆にこの終了条件みたいな、
これ達成したら解散できてハッピーだよね、みたいなのってなんかあるんですか?
そうね、VRのコンソーシアムをやった時は3年で目標設定したし、ブレインテックも3年で設定して、
でも達成できてないけど辞めてないけどね。
それは一応3年単位くらいで考えてる。
なるほど。でもやっぱそこ大事なんじゃないかなというか、
次元大事。
するんでることが気持ちいいっていうレベルの人って、集まってもしゃあないじゃないですか、みたいな。
むしろしっかりした忙しい人たちが、ちゃんと短期間で何かの成果をして解散するみたいな。
株式会社とかってなるとやっぱり続いていくことが正義になるんですけど、
そこが大事なのかという気が今返してきました。
コンソーシアムは時間区切ったほうがいいですね。
時間以外にも設定できることってないですかね?
成果と解散条件
なんだろうな。やっぱKPIみたいなの設定しちゃうとつまんなくなっちゃうから。
つまんないですか、そこはね。
つまんなくないですか。
いや、わかります。
仕事になっちゃうから。
なんかちょっと数字ゲームみたいな感じもなってきちゃうとこありますもんね。
人数何人なりましたみたいな。
なるほどな。
例えばですけど、働き方改革コンソーシアムみたいなのが仮にあったとしたら、
日本の大企業で5社、週9、3日が達成されたら辞めるとか。
でもそういうのはちょっと面白いかなという気はしますね。
コンソーシアムの活動の結果ね。
結果なのかな。
でもありがとうございます。
なんかその辺も僕も今からもし立ち上げることがあればすごく大切にしたい学びを今いただきました。
ありがとうございます。
ではこのパートは以上となります。ありがとうございました。