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おはようございます。心理学者のじんぺーです。
本日も心理学の最新論文を紹介していきたいと思います。
今日も2025年、今年出たばかりの論文です。
空間無視の症状について
空間無視と呼ばれる症状があるんですけれども、
脳の先天的なものもあれば、事故とか病気とかで脳が損傷して起こるということもあるんですけれども、
この空間無視ということと、あとは芸術創作の環境を調べたような研究になっておりまして、
珍しいんですけど、一人の人、自分の分野、実験の心理学というのは何十人、何百人、何千人というデータを取って、
それで分析をするということが多いんですけれども、今回の研究は一人の患者さんを対象に扱ったケーススタディになっております。
この人がすごく特殊なサンプルかなと思うんですけど、脳卒中が起こって、
空間無視の症状が出たと。その後に絵を描き続けた3年間、絵を描き続けた絵が残っている。
それをデータとして使えるというところが、とても興味深い研究の一番中心になっているかなと思います。
ぜひどういう患者さんが捜索過程をたどっていったのかということを一緒に見てもらえれば嬉しいなと思います。よろしくお願いします。
まず空間無視の話からいきたいなというふうに思っています。聞いたことありますかね。見えてないわけじゃないですよね。
ちょっとちゃんと定義から説明しましょうかね。脳の右半球、特に頭頂上とか頭皮質と呼ばれる脳領域に損傷があると、
視野の左側の空間や物体に対する注意や認識が極端に低下する。その症状のことです。
これすごく重要なこととしては、視覚障害とはまた違うということですね。見えてないわけではないんです。
見えてないわけではないんだけども、意識に上がってこない。注意として注意が当たらないとか反応できないみたいなことが特徴です。
なかなか健常な視力を持っている方だと想像しにくい、視力というか見えている方だと想像しにくいんですけども、そういう症状があります。
例えば食事のときにお皿の左側の食べ物だけ残してしまったりとか、絵を描くときに、今回もそういう研究ですけども、絵を描くときに左半分を描かない。
顔を描いているんだけども、なぜか目が右側しかない、口が半分しかないみたいなことが起こるわけです。
とても興味深い現象だなというふうに思いますが、そういう患者さんを対象にしています。
芸術創作のデータと結果
今回一人だけなので、その方を紹介すると58歳、右利き男性、建築家、2004年に脳卒中があって、そこから頭皮質とかに病変が及んでしまったということで、
あと重要なのは、先ほども言ったように見えていないわけではない、視覚やとかに特に異常はないということのようです。
この方、病院に通っていて、そのときにMRIのデータとかもあるし、アートセラピーのような形で絵画を描いていたと。
これは重要なこととしては、自発的に創作をしていたということも強調して書かれているんですけど、自発的に描いていて、
週に1回で3年ぐらい描き続けていた、そのデータが残っているということです。
絵画のデータも統計処理ができるので、それの対照性であるとか、一口に対照性といってもいろんな切り口で対照かどうかと計算できるんですけど、
今回は特に、右と左で分けたときに、色彩のエントロピーという、色彩がより多様かどうかというぐらいで理解してもらったらいいと思うんですけど、
多様かどうかということと、対照物がどれぐらい細かく描かれているかみたいなこととかを指標にしていたりします。
結果がだいぶクリアーではあるんですが、まずは対照性の話に行く前に、
そもそも最初の数週間というのは、キャンバスの40%以上が未塗装、濡れていない部分が40%以上あったみたいなんです。
面白いですよね。左ですよ、左側のところが全然描けていない。濡れていないし、何も描かれていないみたいな状態になっていた。
ちょっとずつ回復していって、26週目になったところで、濡れていない領域というのはなくなったということのようです。
論文のURLをいつも通り概要欄に貼っておきますので、もしよかったら飛んでみてください。
この論文は誰でもアクセスできるので、使われた絵が描かれています。
一応全てもアクセスできるんですけど、論文の本文の中には代表的な作品が数点描かれていて、
この26週目とか最初の数週みたいなところの比較がなかなか興味深いなというふうに思います。
色彩の対照性の話なんですけども、これもどんどん消失していった。消え切るわけではないみたいなんですけど、
だいぶ当初に比べては偏りが少なくなっていったというのが定量的な分析によって分かったそうです。
あとはその単純さとか複雑さみたいなところにおいても、やはり当初は右側により細かい情報、構成が細かったんですけども、
それがどんどん改善されていった。左の方にもちょっとずつ細かい対象物とかが描かれるようになってきて、
差がどんどん少なくなっていったというのが今回の結果かなというふうに思います。
空間無視の回復とアートの影響
なかなか面白い空間増しという症状も、回復したのがアートの影響かと言われたら別にそれだけではないと思うので、
いろんなリハビリとか治療があっての上でそういう回復が見られたと思うので、
絵を描いているからこうなったということではないんですけども、
とても絵の蓄積からこういう推移が分かるというのはとても面白いなというふうに思います。
あとすごく重要なこと、最後にこれはお伝えしておかないといけないと思うんですけど、
この患者さん実は発症してから140週目の検査の時に、
テスト、神経心理検査みたいなことを受けて、この検査をした時に空間無視の初見というのが完全になくなったというふうに言われています。
つまり標準的な検査の上では空間無視が完全に回復したというふうに判断されていたそうです。
一方で絵画、この140週目の絵画を見ても非対称性が完全になくなることはなかったというのが書かれています。
これすごく面白いなと思います。従来使われているテストでは治ったと言われているけど、
そういうアートを結構無意識的な領域とか、もしかしたらいろんな認知的な作用を統合する行為だと思うんですよね、絵を描くということは。
そこでしか抽出できないようなまだ症状が残っているのではないかというところとかもとても面白いところだなと思いますし、
たぶんこういうテストって本当に作業的なテストが多いと思うんですけど、絵を描くという、なんて言ったらいいんですかね、なかなか難しいんですけど、
本当にいろんな力とか感情もそうだろうし、気づきとか注意とかもそうだろうし、いろんなものを総動員して行われるこの芸術創作という行為が
人の心とか症状というものの捉えきれない部分を捉えているというのは、そう言えると思うんですけど、それがとても面白いなと思って読んでおりました。
ぜひ論文読めますので覗いてみてもらえれば嬉しいです。
はい、というわけで今日は左空間虫と絵画のアートの話をさせていただきました。
アートセラピーというのが絵を描くだけじゃなくて、たとえば自分の研究していた俳句とか詩を作ったりとか、いろんなところでやられているわけです。
そこにはもちろん媒介物を挟むとか、いろんなポジティブな効果があると思うんですけど、従来のテストでは分からなかったところが分かるというか、まだ拾い切れていない、言語化とか研究者が可視化できていないところを可視化する、もしかしたら一つの術になるんじゃないかというのは、
とても面白いことだなというふうに思っています。
なかなかこういうリッチなデータというのは得られにくいと思うし、今回も1サンプルだけなので何か強く主張することは難しいんですけども、こういう研究もあるよということを覚えておいてもらえるといいんじゃないかなと思います。
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
今日もいい一日にしていきましょう。
じんぺいでした。心を込めて。
はい、今日も雑談をしていきたいと思います。
今日は4月にありましたね、1日ということで、新年度ですかね。新年度って1日からであってますか?
4月2日から学年が変わるみたいなの言うじゃないですか。あれってなんでなんですかね。調べよう。
調べてきましたが、よくわからないことはないけど、前日に年齢が上がるんですか?
そんなややこしいことしなくてもいいのにと思うんですが、僕だけでしょうか。
新年度ということで、場所が変わったりとか仕事が変わったりとか、一緒にいる人が変わったりとかする人もいるかとは思うんですけども、
ドキドキするのはあまりかそういう人は。そういう日ってなかなか人生何回もないと思うので、楽しんでいいスタートができればいいなとそういう風に祈っております。
ドイツは3月31日と4月1日は何も変わらずに1日が過ぎていくかなという風に思いますので、あまりそういうドキドキ感みたいなものはないんですけども、
もし新しい環境に行かれるとか、新しい環境に自分が行かなくても誰かが来るとかね、後輩ができるとかそういうことがあると思うので、ぜひ楽しんでいっていただければいいんじゃないかなと思います。
個人的にはこういうシーズンはとても好きですね。新しい出会いみたいな時期はとてもワクワクするそういうタッチでございました。
皆さんもいい1日、いい年度のスタートを切れますようにお祈りしております。