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2025-09-22 10:15

#772【視覚言語】空白の力―日本マンガが読者に託す「場」の推論 (Atilla et al., 2023)

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【本日の一語】
視覚言語 (visual languages):絵やコマ割りなどの 視覚的要素を使って意味や物語を伝える体系

【本日の論文】
Atilla, F., Klomberg, B., Cardoso, B., & Cohn, N. (2023). Background check: Cross-cultural differences in the spatial context of comic scenes. Multimodal Communication, 12(3), 179–189. https://doi.org/10.1515/mc-2023-0027

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サマリー

本エピソードでは、日本のマンガにおける視覚言語の重要性と、その空白の効果について論じています。特に、文化間のマンガスタイルの違いや、それによる意味の伝達方法に焦点を当てた研究が紹介されています。

視覚言語の紹介
おはようございます。心理学者のじんぺーです。心理学に触れる一日一語の司官です。
この番組では、心理学に関するキーワードを一つ取り上げて、合わせて論文も紹介しています。
今日の一語は、視覚言語という言葉です。
漫画の研究を紹介してみたいと思います。
漫画、コミックを分析するとどういう風になるのかというのを、文化比較の観点から調べた研究になっております。
まずは、今日の一語から紹介してみたいと思います。
視覚言語という、やや聞きねじみのない言葉かもしれません。
ビジュアルラングエッジという英語ですけれども、これは何かというと、一言で言うと、
絵とかコマ割りなどの視覚的要素を使って、意味や物語を使える体系システムのことを指しています。
言語というと、言葉そのものか、をイメージしてしまうんですけど、
例えば、手話とか、あとは数学の記号とかも言語の一つであると。
意味を構造的に組み立てるシステムという意味で言語という言葉を使っていて、
なので視覚、ビジュアルの言語ということがあり得ると。
この漫画の文脈において言うと、コマ割りとか、あとは視覚要素ってたくさんあるじゃないですか。
背景の線とか、黒塗りにしていることもあったりすると、余白にしておくこともあると思うんですけど、
そういうことを総称して、こういう視覚言語という概念で語っているというのがこの論文になっているわけなんですけど、
文化比較の結果
認知科学会という会がこの間東京であって、それに参加していて、そこの基調講演に来られていたのがまさにこの論文を書いた先生で、
ニール・コーン先生という方なんですけど、漫画の分析はたくさんされている方です。
この論文でも使われているんですけど、データベースを作ったんですよね。
世界各地の漫画を省略して、漫画のリストというよりは代表的な各地域というか文化における代表的な漫画をいくつか取り上げて、
その数ページ、数十ページをひたすら分析すると、それをデータベースとして残していくということをしています。
今回のデータはそのデータベースの中から6カ国、日本、中国、ロシア、ナイジェリア、スペイン、アメリカという6カ国の各10作品なので、合計では60作品。
ページ数でいうと1274ページが分析に使われています。
人力でやっているみたいで、このページはコマ割りが何コマあってとか、このコマは文字数がこれぐらいでとか、どれぐらいの解像度かわからないですけど、
文字があるところ、余白があるところ、あとは空間の効果ね、あとは人物が描かれているかどうかとか、
そういうことすべて人力で読んで預けて、読んで預けてということをして、この貴重なデータベースが完成しているわけなんですけど、それを文化比較するということをしています。
いくつか文化差が見られたところを紹介していけたらと思うんですけど、結構シンプルかなと思います。
まずは東アジア型、日本、中国、ロシアという漫画のスタイルというのは背景を省略する、あとは単色化する、黒塗りするみたいな手法で空間情報を示す比率が高かったということのようです。
対象的に欧米型はアメリカ、スペイン、ナイジェリアというそういった漫画を見てみると、書き込みがあって明示的な、より説明的な背景を用いて空間を提示するということが示されたそうです。
面白いですよね。その結果とも似ているんですけど、特に日本とロシアの漫画というのは明示的な背景から次の明示的な背景までの間隔がスペインよりも長かったということです。
これはまさに空白を、業館と言ってもいいかもしれないですね。漫画では業館とは迷わないかもしれないんですけど、イメージは業館に近いです。業館が長くて、読んでいる人に間を埋めさせるような読ませ方を意図しているんじゃないかということ。
この意図しているのは、作者が意図しているというよりも文化がいて、そういう漫画を読んで育って書いている、もしくは読んでいるという文化で育っていくわけですよ。
そういう読まれ方もそうだし、読ませ方と読み方が育っていって、そんな文化差が出てくるというので結構面白いなと思っています。
これらの影響というのは、2個の理由があって、文化差が生まれた理由ですけど、一つは、自分もたびたび紹介させてもらっているんですけど、東アジアの人というのは文脈とか背景情報に注意を向けやすいです。
一方で欧米の方というのは、その対象ごと、対象対象に注意を向ける、細部に注意を向ける、分析的に注意を向けるということが知られておりまして、その文化差がこの漫画の書き方にも現れていたんじゃないかというのが一つです。
もう一つは、真似してきたスタイルというのがあるんですよね。
ここで顕著に例が出ているのはロシアで、ロシアの漫画というのは日本のスタイルを模倣した影響が強いというふうに言われていて、その日本の漫画スタイルを輸入したことによって、そういった背景がより情報が少なかったりとか、明治的な情報と明治的な情報の間の間隔が長かったりするというのは、そういった日本からの影響が大きいんじゃないかということとか、
ナイゼリアは一方でアメリカ、アメコミ風のテイストを模倣している風に、どちらかというとそういう伝播がされているようで、明治的な表現が多くなったんじゃないかということとかが分析されていて、
どこの漫画を真似してというか、参考にして土地の漫画、コミック、文化が発展してきたかというのがあるわけなので、それもすごく今回のこの文化差を説明する要因としては大きいんじゃないかということが考察ではなされておりました。
漫画の未来と影響
そんな感じで、漫画の研究面白いなと思うんですけど、想像していただいたらわかる通り大変ですよね。
1ページだけでもコマって何コマもあったりとか、情報量がね、小説とか小説、小説は小説で研究するのは難しいんですけど、イメージするところが人それぞれ過ぎて、
だけど視覚情報とかコマ割りとか変数が多いと、なかなか研究するのも難しいなと思うので、こういったふうにある種人力でデータベースを作って比較するということはとても重要なことかなというふうに思います。
今はこのデータベースもっともっと大きくなっているみたいで、いろんな仮説とかも立てられそうだなということは妄想してみてもいいかもしれないですね。
面白い現象としてやっぱり漫画を、漫画といえば日本みたいなところは今でもあると思うんですけど、このドイツでもやっぱり日本の漫画を探せるというかよく見つけますし、仲のいい友人もね、
ナルトとかポケモンとか読んでますし、その人は日本が特に好きだからかもしれないんですけど、そんなふうに文化を渡るというところもあると思うので、そうなると10年後20年後の漫画の書かれ方って影響を受け合いますよね。
もちろんそれは世界から輸入して日本で読まれている漫画も逆もまたしかりという感じではあるんですけど、そういう影響の受け合い方というのも興味深いなと。
かつてはモネとかコウホーが日本の絵のスタイルを取り入れたりとか、日本でも西洋で学んだ画家さんが日本に技術を持ち帰ったりみたいな交流がずっとあったわけなので、それが漫画の世界でも続いていくんだろうなと思うと結構ワクワクするなと個人的には思っておりますし、
漫画の美学をやっていってもいいのかなというふうにも思っていたりします。そんなところですね。最後まで聞いてくださってありがとうございました。今日もいい一日にしていきましょう。
陳平でした。心を込めて。
10:15

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