1. LIFE UPDATE │ YOHEI HAYAKAWA
  2. #21:だれに向けて作品を書く..
2021-12-21 28:40

#21:だれに向けて作品を書くか? │ 平野啓一郎さん(小説家)

▼本パートのインタビュー映像
https://youtu.be/4HeFZNDi1Eo
【平野啓一郎さんへのインタビュー】
〈12月21日(火)公開〉Talk.1|だれに向けて小説を書くか?  https://youtu.be/4HeFZNDi1Eo
〈12月24日(金)公開〉Talk.2| 作品が生まれるプロセス https://youtu.be/pXPuSiwZbkQ
〈12月28日(火)公開〉Talk.3| 最も影響を受けた作品 https://youtu.be/sx2_ufb--cE
〈12月31日(金)公開〉Talk.4| 小説を書く=○○を創ること https://youtu.be/Ii2SSV-8f4M
平野啓一郎さんへのインタビュー再生リスト|https://bit.ly/31VBdXo
『本心』https://amzn.to/31OGdxm
【平野啓一郎プロフィール】ひらの・けいいちろう/1975年、愛知県生まれ。
北九州市出身。 99年、京都大学法学部在学中に投稿した『日蝕』により芥川龍之介賞受賞。 以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。 2020年からは芥川賞選考委員。 主な著書は、小説では『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋』 『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)『ドーン』(ドゥマゴ文学賞受賞) 『かたちだけの愛』『空白を満たしなさい』『透明な迷宮』、 エッセイ・対談集に『考える葦』『私とは何か  「個人」から「分人」へ』 『「生命力」の行方 変わりゆく世界と分人主義』『「カッコいい」とは何か』などがある。 16年刊行の長編小説『マチネの終わりに』(渡辺淳一文学賞受賞)は累計 58万部を超えるロングセラーとなり19年に映画化。 18年に発表した『ある男』で読売文学賞を受賞。
https://k-hirano.com/
平野啓一郎さんのオンライン読書会「文学の森」 https://bungakunomori.k-hirano.com/
▶Spotify(音声/毎週お気に入りの楽曲も流します) https://bit.ly/Spotify_INTERVIEW_YH
▶Apple Podcast(音声) https://bit.ly/Apple_INTERVIEW_YH
【目次】
OPトーク
40代になって感じる変化
『ある男』20万部突破の心境
作風に対するこだわり
ターニングポイント
『本心』着想のきっかけ
EDトーク
▼「会う力」養成講座 https://www.auchikara.com/
▼「月末 YouTube LIVE」開催
日時:12/27(月)
URL:https://youtu.be/Ts0xZoA7D-8
アーカイブ:https://bit.ly/3Dw3rWE
▼番組への感想・早川洋平・堀真菜への質問募集中です。
(いただいた質問は月末のYoutube Liveでお答えいたします!)
https://bit.ly/INTERVIEW_QandA
▼「QR CAFE」(毎月開催)
日時:1月19日(水)
お申し込みURL:https://www.life-upd.com/cafe/index.html
早川選書:『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え』(ジェンマ・エルウィン・ハリス/河出書房新社)https://amzn.to/30jly3O
(※事前に本書を読まなくてもご参加頂けます。お気軽にご参加ください。)
 ▼【聞き手・早川洋平プロフィール】 はやかわ・ようへい/新聞記者等を経て2008年キクタス株式会社設立。羽生結弦、髙田賢三ら各界のトップランナーから市井の人々まで広くインタビュー。近年は欧州を中心に海外取材を本格化するいっぽうで、戦争体験者の肉声を発信するプロジェクト『戦争の記憶』にも取り組む。公共機関・企業・作家などのメディアプロデュースも手がけ、キクタス配信全番組のダウンロード数は毎月約200万回。累計は3億回を数える。『石田衣良「大人の放課後ラジオ」』『横浜美術館「ラジオ美術館」』などプロデュース多数。 近年はユニクロやP&GなどのCMのインタビュアーとしても活動している。
https://linktr.ee/yoh.haya
▼【ナビゲーター・堀真菜プロフィール】 ほり・まな/現在、早稲田大学3年生。 コロナウイルスの流行により、人と会いづらくなったことを機に、zoomを通して色々な人の話を聴くことを始める。1年間で200人以上にインタビューを行い、聴くことの魅力に目覚める。 現在、勉強を教えない塾福幸塾と提携し「思考と対話の技術」の提供をする他、学生・若者向け対話サービス『workin’ talkin'』を立ち上げるなど、 対話、インタビューを通じて様々な事業を展開している。プロインタビュアーとして実績を積むため現在奮闘中‼︎
https://koushiro123.wixsite.com/manaroom
▼関連キーワード #平野啓一郎 #本心 #ある男
Editor : Kimi
00:01
インタビュー
こんにちは、はるまなです。
インタビュー、この番組はYouTubeとPodcast、各プラットフォームよりお届けしています。
YouTubeのチャンネル登録、Podcastの番組のフォロー、皆様よろしくお願いいたします。
そして早川さん、今回もよろしくお願いします。
はい、大丈夫ですか?声が枯れつつありますけど、ちょっと乾燥注意報ですね。
いや、そう。そんなことより今日はね、早速ね、本編に入っていきたいんです。
そんなことよりって、私自分のガサガサをごまかしましたけど。
今日は早速本題に入ると。
本題に入りたいんです。今回、早川さんが小説家の平野圭一郎さんにインタビューされるじゃないですか。
本心っていう本についてインタビューされるんですよね。
はい。
私、読んだんですよ。
ぜひその感想を早川さんと今日分かち合いたいと思って。
いいですね。いかがでした?いかがだったんですか?
時代設定がまず2040年だったじゃないですか。
確かに。20年後ですね。
そう。だから遠いSFみたいな未来の話でもないし、テーマとして自然史とか仮想空間とか、ありそうな未来が取り上げられててリアルさっていうのをめっちゃ感じたからより考えさせられたっていうのと。
後半に行くに従って、よくわかんなくなってきました。
難しい本ではもちろんなかったと思うんですけど、よくわかんなくなってきました。
あんまりネタバレになっちゃうので難しいと思うんですけど、あえてちょっと抽象的にオブラートに包みながらよくわかんない。
何がわかんないかもわかんないかなのか、こういうところがわかんなかったのかって具体的に言えますか?
このお話がそもそも主人公の男の子が、お母さんを亡くしてしまって、そのお母さんが自由史っていう選択を取りたいっていう思いを持って亡くなったんですね。
この自由史っていう言葉なんですけど、平野さんの本史、もともとは新聞連載でされていて、それが今回本になったんですけど、新聞連載では自由史っていう言葉を
安楽詩っていう書き方をしてたと思うんですけど、本にするときにいろんな思い意図があって、自由史という言葉に書き換えていると思うんですけど、いずれにしてもタイムリーというか、ずっと
この安楽詩というか、人の死の部分をどうするかっていうのはずっと世界で言われていることでしたけど、もちろんそこの部分だったりね、
03:00
あるいは平野さん言ったように仮想空間、もっとそのお母さんが亡くなってお母さんを、最初の冒頭は全然言っていいと思うんですけど、バーチャルフィギュアっていう形でね、仮想の空間で蘇ってもらうみたいなね、そういう感じだったよね。
お母さんの本心、タイトルにある通り、本心がどこにあったのかっていうのを探りながら、結末に向かっていくっていう流れだったんですけど、結局は亡くなった人は口がない、喋れないわけだから、自分で考えていくしかないっていうのはもちろんなんですけど、
なんかすっごい部粋ながら、辻村さんのつなぐの死者、辻村瑞希さんね、辻村瑞希さんのつなぐの死者の、死んだ人と会えるその死者の人につないで本心聞きたいなとか思っちゃった。
あったね、あったね、僕もつなぐ読んでるんでわかりますけどもね、それはちょっと面白いかもしれません。いいですね、作家さんの作品を横断するっていうのはいいですね。
どうしてもね、お母さんの本心がお母さんの口から聞きたいっていうふうに思ってもどかしくなってしまったっていうのがありました。
確かにそうですね、平野さんと辻村さんに対談してもらいたいと思います。
そんな諸説家の平野圭一郎さんと早川さんの対談第1回をお聞きください。
早速ですが、今回ですね、私平野さんに5年ぶりにお話を伺うんですけども、前回平野さんにお話を伺ったのがですね、ちょうどマチネの終わりにが、
上司されてその時年齢が平野さんちょうど40歳を迎えられてみたいな、私その時35歳でちょうど5歳差なので、平野さんが作家として人として40代をちょうど迎えられてまたこれからどんな方向に向かうのかなっておっしゃってたんですけど、
なんか実際40代入られて真ん中ぐらいだと思うんですけど、どうですか40代。
やっぱ変化の時期だと思いますね。仕事の上でもその時も話したかもしれないですけど、やっぱり若い時に自分は作家になりたいと思ってやろうと思ったこととかやりたかったこととかを、結構やっぱり40ぐらいになると、
一旦それはそれできたなっていう気持ちもあって、じゃあその先どうやっていこうかっていうのを、結構迷う時期かなっていう気もするんですよね。
もう一つはやっぱり、なんていうのか、肉体的な変化を感じますね。
20代の後半も30代になってからもそれぞれの時にだんだん自分が年を取っていくって実感を持ってましたけど、やっぱり40代はちょっとなんか、本当に実感することはありますよね。
本当ですか、なんか僕の中では平野さんは永遠の大学生みたいなイメージがあって、
06:00
この間ラジオでも確か代替肉みたいなサブスクで頼んでらっしゃるってどっかで聞いて、健康への意識は多分、以前はもうなんかそれこそ5年前の時は、
結構コーヒー飲んで、なんかちょっと甘いもの入れないとで運動とかもどうかっておっしゃってたと思うんですけど、逆になんか代替肉とかおっしゃってたんで、結構今は気使われてんじゃないかなって、どんな感じですか。
やっぱり昔みたいにコーヒーガブ飲みするとすぐ胃が悪くなるようになりましたしね。
あとちょっと単純に40代ってよりコロナがありましたから、この2年間。
そうですよね。
それがこうちょっとやっぱいろいろ重なって、去年はね、なんかもう精神的にも疲れたし、
そうですか。
なんとなく、まあコロナがあって、なんとなく体調も優れなかったんですよね、後半は。
もう一旦コロナ太りですごい太りましたし、
それはみんなありますね。
ストレスで食べたりしてて、でもね、やっぱちょっと何キロか体重増えると、だんだんそのこと自体でこうまた体調が悪くなってきて、
まあそれでちょっと少し多少元に戻したんですよね、体重。散歩したりとかちょっと時々ジム行ったりとかぐらいのことはしつつ、
まあ自分の体調的な関心が主だったけど、環境問題とかで、まあだんだん肉を、牛肉を特に食べれなくなるんじゃないかみたいな、
食べるべきじゃなくなっていくんじゃないかみたいな話がよくあるんで、
そうですね。
まあちょっと興味本位でその代替肉っていうのを、大豆の肉とかをいろいろ取り寄せて食べ始めたんですけど、
結構ね、そのオランダのメーカーの代替肉にハマって、
え、なんていうメーカーですか、差し支えなきゃ、僕すごい興味あって。
えっとね、ベジタリアンブッチャーっていう、結構ねアメリカとかのその代替肉とかインポストブルーニートとかまだ手に入らないんですよね、日本で。
そうですよね。
それでその日本のものもいろいろ試したんですけど、そのベジタリアンブッチャーっていうところのが、
僕にとっては持続可能性が高いっていうか、割とずっと食べられるっていうか、
で朝はまあだいたいパンと卵とかと、まあちょっとハムとかベーコンとか食べたりしてたんですけど、
そのハムとかベーコンを代替肉に置き換えたら、
ホテルとかたまんとまって朝ベーコンとか食べると胸焼けするようになってきた。
そうですね、単純に。
僕も結構昔子供生まれの時にマクロビみたいなのやってて、
おふだったり大豆のソーセージとかやってたんですけど、なんか結構どうですか、お子さんとかは食べない?
いや子供も朝とかは食べてますね。
まあそれはね本当に肉の方がやっぱり彼ら好きですけど。
ありがとうございます。
ちょうど今日ですね、本心これからいろいろ話を伺っていきたいんですけど、
その前に、ひなさんおめでとうございます。ある男が20万部突破ということで。
ありがとうございます。
どうですか、何万部突破って今までもね、この本心もそうですけど、今までの作品も全部ですけど、
09:02
なんか小説家にとって何万部突破みたいのは、まあ慣れてるけど嬉しいは嬉しいんですか?やっぱり。
やっぱり小説はね、3000人の読者に向けて書くのか、5000人に向けて書くのか、
1万人に向けてか2万人に向けてか、3万人か5万人か10万人かっていうのは、もうはっきりと違うと思いますね。
だから、3000人5000人に向けて書いてる本を、やっぱり10万人に読んでもらうってことは、まあ無理だと思いますね。
たまたまそういうことが1回ぐらいあるかもしれないけど、作家が自分の本をどれぐらいの人に向けて書くかっていうことを、
自分でイメージするっていうことだと思うんですよね。
僕は結構実験的な短編とか書いたりしてた時期があるので、
その時期はやっぱりそんなにたくさんの人は、ちょっと読めないだろうなと思いながら自分で書いてましたけど、
ただその時でもね、あんまりこうなところで実験をすると、受け入れられてしまうってところもあるんですよね。
もうアスリートのように、どんな本でも読みこなせる人たち向けに実験をすると、
わりとどんな作品書いても、それはそれで読んでくれてしまうってところがあって、
ただ僕はもうちょっと、なんていうのかな、普通の人って言うと変ですけど、
小説なんか普段読まないけど、やっぱたまには読んでみるぐらいの人たちを射程に入れながら、
やっぱり小説書きたいっていうのはあるんで、実験的な小説書くにしても、
1万部は切らないところで実験しないとあんまり意味がないなと思ったんですよね。
だからその時期は、それぐらいのところをちょっと目安にしながら考えてましたし、
その後長編小説書くようになってからは、やっぱり5万部っていうのを単行本の段階で一旦クリアすべきラインとして考えていて、
その後文庫化した後、やっぱり10万部以上っていうようなことを考えてるんで、
まあ中長期的にも、10万部超えるとちょっとほっとしますよね。
ああ、よかったっていう。
そうなんですね。
だから僕の過去の本でもかなり時間をかけて売れながら、最近10万部に足した本とかもありますし、
まあそれはそれで嬉しいですけどね、バーッと売れるっていうのとはまた別の喜びがありますけど。
この前ちょうど石田イラさんと話してた時に、作家ってやっぱり2つのタイプがあるかもって話になって、
作品って言った方がいいですかね、やっぱりその時代性を中心にするもの、もっと言うとエンタメだったり、読者の方に向いて、
その一方で、まずちょっと語弊あるかもしれないですけど、まず自分が書きたいもの、純文学的なみたいな、
前者がある意味すごいステレオタイプ、直木賞的な、後者が芥川賞的なみたいな、そういう話を彼としていて、
当然その作家さんの中でも皆さん、片方でもいいですし、両方いろいろ振り分けている方もいらっしゃると思うんですけど、
12:04
僕の勝手なイメージなんですけど、やっぱり改めて日食を読ませていただいて、
やっぱりまず圧倒的に、芥川賞を取られている点もありますけど、まず圧倒的に書きたいものというか、世界観があってみたいに感じたんですね。
ただその後もちろん読ませていただいていて、徐々に前者というか、今おっしゃってた時代とか読者とか、
なんかその辺に変わったのかなという、両方あると思うんですけど、なんか以前、角田光雄さんももともと純文学の方だったけど、
もうはや今あんま考えていないとおっしゃってましたけど、その辺批判するといかがでしょうか。
それはなんかこう意識的っていうよりも、やっぱり新人作家の限界っていうのはあると思うんですよね。つまり、今でも基本的には書きたいことを書くべきだと思うし、書いてますけど、
それはデビューの頃から変わらないんだけど、やっぱりね、そのデビューの頃一番僕は知らなかったのは、その読者っていう存在なんですよね。
自分が書きたいことっていうのはわかってるし、それのためにいろいろリサートとかもするから、まあ本も読んで、そのこと、その書きたい内容についても理解が深まっていくけど、
自分の本を出した時に、一体人がどう反応するのかっていう、その読者の存在っていうのは新人作家はどうしてもわからないことなんですよね、これは。
で、やっぱりそれは書き続けていく中で、読者が喜んでくれることもあれば、面白がってくれることもあれば、つまんないということもあるし、
泣いたり怒ったりっていろんな反応があるんですよね。で、僕は重要なのはね、それを単に読者の反応っていうふうに捉えずに、
現代を生きてる人の反応っていうふうに問いを立て直すことが大事だと思うんですよね。
現代人っていうの中にね、僕も含まれてるし、多くの人も含まれてるし、今っていう社会を生きていて、その中で本が読まれていくっていう営みがあって、
やっぱり今の人がこの世界で何に苦しんで、何に喜びを見出して生きてるのかっていうことを注意深く見るっていうことが、
人説家にとっては非常に重要で、作家にとって最も近い現代人っていうのはやっぱり読者だと思うんですね。
だから肯定的な反応であれ否定的な反応であれ、やっぱりその、なぜ彼らがそういうふうに反応するのかっていうことを考えていくっていうのはね、
新人作家にできなくて、経験的にしかなかなか理解できないことなんですよね。
で、その上でやっぱり読者向けにっていうより、やっぱり今の世界生きてる人向けに書くっていうことに関しては、だんだんと自覚的になっていく気がしますよね。
そういうことを平野さんの中で、第何期みたいな作家としてやってこれて、そのまあ、きとともにもちろん変わってきたところもあると思うんですけど、
ご自身の中で今おっしゃってたような変遷というか変化っていうのは、なんかどこかでやっぱり大きなターニングポイントみたいなものがあって変わったのか、やっぱり徐々になのかとか。
15:04
やっぱりまあ一つのきっかけは第3期ぐらいですかね。
結界っていう小説を書こうと思ったときに、まあなぜ人は人を殺してはいけないのかとか、時代も地域も超えて、人類に普遍的と言ってもいいような問いですけど、
大きな問いに答えようとしながら、結局それを読んでくれるのがその文学愛好者の数千人とかの世界の中だけっていうことでいいんだろうかと。
もっと言うなら、やっぱり文学好きでずっと読んでる人たちっていうのは、そのことはもう知ってるんじゃないかっていうふうに思ったんですよね。
これはね、なんか僕が言うとあんまり説得力はないけど、林京子さんっていう作家がね、長崎の被爆体験をずっと考えた作家ですけど、
彼女の裁判で亡くなる数ヶ月前にインタビューすることができたんですけど、その時に林さんがやっぱりつくずっとおっしゃったんですよね。
自分の本を読んでくれる人は、結局でも読む前から原爆が悪いとか戦争が悪いとかね、それがいかに悲惨なものかって、よく知ってる人たちなんだと。
本当はそうじゃない人たちに読んでもらいたかったんだけどっていうことをおっしゃっていて、やっぱりね、文学は内に閉ざした中で書いてると通じやすいですけど、
やっぱそれじゃいけないんじゃないかっていうことをやっぱりその時にちょっと考えるようになったんですよね。
もう一つは、いろいろ社会問題に関して持っていくと、だんだんこう、そういうことに取り組んでるNPOとかの人とこう、実務に取り組んでる人たちと接するようになって、
そうするとね、やっぱりマイノリティの権利擁護っていうようなことをやってる人たちは、マジョリティーの、社会のマジョリティーは自分たちのやってることに基本的には関心がないってとこからスタートするんですよね。
関心がないけれども、これは非常に重要なことだから、関心のない人たちにいかにそれをこう伝えるかっていうことをやっぱり非常に考えて、そのための努力をするんですよね。
そうですね。
文学でね、その伝わらない人に伝えようとするっていうことを言うとね、すぐにね、なんか読者に媚びてるとか、売れようとしてるとか、なんかそういうふうにこう考えがちな人たちはいるんですけど、
僕はやっぱり自分の扱ってる問題がこう、根本的にマイナーな問題で、だけれども、やっぱりこれはこう、社会の中で共有されるべき主題だって考えるときには、やっぱりそれがどういうふうにこう、どうすれば伝わるかっていうようなことを考えるべきだと思うんですよね。
だから、まあもちろん文学は読んで面白いとか楽しいとかね、そういう部分も多分にあるし、それがないとやっぱちょっとなかなか読めませんけど、プラスやっぱり自分の主題の重要性を自覚してるんだったら、これがどう伝わるかってことは自覚的にならざるを得ないと思いますね。
【佐藤】ありがとうございます。やっぱり今のお話がかかったようで、平野さんがこうね、なぜ普段ツイッターだったりメディアとかを使ってるかって、やっぱりそこを通じてるわけですよね。
18:02
【平野】ただね、もうメディア、ツイッターとかはもうね、どっちかっていうともう市市民としての。
【佐藤】ああもうそうか、平野圭一のとか小説家っていうのすらある意味あんまりない感じですか。
【平野】そうですね、だからまあくだらないツイートとかもよくリツイートしたりしてるし、音楽の話とか色々してる中で、やっぱり普通の大人としてやっぱ政治的な関心もあるっていうのが本当のとこですかね。
だから別に政府がまともであれば、そんな毎日批判する必要もないし、僕も批判するのもストレスですけど。
【佐藤】ありがとうございます。ということでですね、いよいよ本編に入っていきたいんですけど、5月ですかね、リリースされたのは今年、本審。
私も早速読ませていただいたんですけど、以前、去年、まだ新聞連載時にですね、私の方の番組で差し絵を書いてくださってた、かんみかさんにインタビューする機会があって、まだ連載中だったので、
彼女からももちろんいろんな話を伺ってるんですけど、こうして今完成して、私も改めて読ませていただいて、舞台が20年後の日本で、
メディアが進化して、死んだ人間を仮想空間上に再現するAI技術、VF、バーチャルフィギュア。
これを主人公の作家がですね、自由死を希望していた母親の本心を探るために、自己死してしまった母親をVFで蘇らせると。
関係者との面会によって自分が知らなかった母親像が徐々に明かされていくという、そういう本当のざっくり解説だと思うんですけど、
この着想のきっかけと、あといつ頃、どんな感じだったんでしょうね。
いくつかの考えが合流して、それを一つでうまく表現できるものとして、バーチャルフィギュアっていうのを思いついたんですけど、
だんだん親が亡くなったり、施設に入って認知症になったりっていうようなことを経験する世代になってくると、
まず一つはね、親の認知症になったりすると、その今まで自分の記憶になる、記憶の中にある親と、
自分のことさえも認識できなくなってしまって、突拍子もないことを喋ったりするような母親、あるいは父親との、
同一性の問題ってのは結構やっぱりみんな悩むんですよね。
同一性。
自分が知ってた親と、記憶になった後の親が変わってしまうっていう。
あるいは、虚空的な雑誌とか散々読んでてね、実家に帰ったら親がすごいなんか差別主義者になってたとか。
だから、やっぱり生きてる人間っていうのはずっとそういうふうに変化し続けていって、
自分の知ってる他者っていうのはね、必ずしも固定されてないんですよね。
それがある意味では人間かなっていう気がしていて、
亡くなった人の悲しみをどういうふうに癒すかっていうときに、
メディアとしてはまず、肖像画っていうのが描かれていた時代があって、昔。
それから写真になって、動画になって、メディア自体の情報量が増えていくと、
次はやっぱりインタラクションが求められるようになっていくんじゃないかなって気がするんですよね、今の流れからすると。
21:04
だから会話ができるとか。
そういうふうな存在をAIで作ろうっていうのは、実際この小説を連載してる途中も、
ミソラヒバリをAIで蘇らせるとか。
ありましたね。
色々ありましたけど、一つの発想だと思うんですよね。
その時にでも、それを可能にするのは一つは、今、ブログとかソーシャルメディアとかで、
あとメールとかで、人間が亡くなるときに膨大なライフログを残して亡くなりますから、
それを学習すれば、かなりそれっぽいことをしゃべれるAI人間ができるんじゃないかということを考えていて、
それが一つの着想になったんですけど、その場合、やっぱり過去は学習できますけど、
未来は学習できないんですよね、AIっていうのは当然のことなのに。
そうですね。
だから、その生身の人間がやっぱり刻々と変化していって、意外な一面を覗かせたり、
昔とはもう完全に違う存在になってしまったって感じるような経験は、AIにはないんですよね。
だから、そこのところを描いていくことで、人間っていうのは何なのかっていうことを、
もう一回問い直せるんじゃないかと思ったのが一つと、
あとは、中高年になって親を亡くすと、それはもう非常に大きなショックのはずなんですけど、
結構社会ではその悲しみが割と放置されてるっていうか、
まあ、大人になって親が亡くなるっていうのはよくあることだし、
みんな経験するでしょ、みたいな。
悲しみとか孤独っていうのが癒されないまま生きてる人たちが結構たくさんいて、
やっぱり親が亡くなった悲しみっていうのは、いくつになってもケアされるべきものなんじゃないのかなっていうふうに思っていたのが一つと、
まあ、格差問題っていうのも考えていた中で、シングルマザーの子供でっていう設定なんですけど、
映画のジョーカーとかも、母がいて子がいてっていう設定ですけど、
格差がどんどん拡大していって、低所得者層でシングルマザーの母親と子供の家庭だと、
まあ、とにかく労働時間がすごく多くて、もう会社でヘトヘトになるまで働いて、
家に帰って、もうその母と子だけで過ごすっていう時間になると、
僕の言葉で言うと、やっぱ文人が親子の文人か職場の文人かぐらいにすごく限られてくると思うんですよね。
外で友人関係とか築こうとしてもお金も時間もないっていう。
そうするとやっぱり母子間の関係っていうのがすごく濃密になると思うんですね。
そういう状態で母親をなくすと、やっぱり一般に社会的な関係が十分にあって、
親がなくなって悲しいけど、友人とか恋人とかと過ごす時間の中で少しずつ物作業が進んでいくっていう人たちとちょっと違うと思うんですよね。
その喪失感っていうのは。
だからまあそういう主人公を設定して、その心の悲しみをそのAIを通じて何とか紛らそうとするっていう物語がいいんじゃないかと。
24:03
で、その時にもう一つはやっぱりこう今、ちょうど最近Facebookがメタバースとかいうこと言ってますけど、
やっぱり仮想空間が相当充実してくると思うんですよね。
そうするとフィジカルな世界でお金がないとか、こう自分の容姿が不満だとか、いろんな理由で生きづらさを感じてる人たちが、
その仮想空間に行けばすごくこう解放されるっていうような経験をした時に、
そこに入り浸るってことを社会はもう批判できないと思うんですよね。
もうその不健全だとか何とかっていう。
よしやしや別にして、はい。
で、特にね、何かの喪失感とか現実が苦しいとかっていうことで、
仮想空間の中だけで慰められるっていうような人たちを、
リア充の立場からね、そんなのは本当の世界じゃないとか、
人間関係でないとかって批判するってことはやっぱり、
それ自体は厳しく批判されていくんじゃないかと思うんですね。
そうした中で、お母さんがいるんであればもちろんお母さんとの人間的な環境を大事にしたいけど、
もうなくしてしまったから、
そのバーチャルなお母さんとの関係をよりどころに生きていくっていう人がいた時に、
まだ親も元気でっていうような人たちが、
そんなのは本当の人間関係じゃないとかって否定するっていうこともできないんじゃないかなっていうふうに思ったんですね。
だから、そういうふうにこう、フィジカルな人間との関係性が壊れてしまったり、
それがこう、身満たされてないとか失われてしまった人が、
バーチャルな関係性を心の支えにしながら生きていくっていう世界が、
もうすぐそこまで来てるんじゃないかなと思いながら、
でもやっぱりリアルな人、人間そのものにはならないっていう中で、
人間の心っていうのはどういうふうになるのかっていうことを書きたかったんですね。
エンディングのお時間です。
インタビューでは皆様からの早川さんへのご質問や、
番組への感想、取り上げてほしいテーマなどを募集しております。
エピソード説明欄のURLからどしどしお寄せください。
また、いただいたご質問等は月末のYouTubeライブにてお答えしていく予定です。
今月のライブは12月27日月曜日の正午12時からです。
たくさんのご質問募集しております。
さあ、エンディングのお時間ですけれども、
なんかこれ何度も言ってるんですけどね、早川さんとお仕事してて嬉しいのは、
やっぱり本を読む習慣がついたり、いろんな小説家の方のことを知れるっていうのがすごい嬉しいんですけど、
最近早川さんの口からよく小説家の方の話とかインタビューしたいって話聞く気がするんですけど、
今はそういうモードというかそういう時なんですか?
何でしょう、自分の中で基本的にその感覚的にこの人面白いなっていう人にインタビューするっていうのは変わらないんですけど、
やっぱりこのインタビューで誰にインタビューするかっていうのはすごく大事だと思うんですけど、
27:00
その時にやっぱり時代性、普遍性、グッとくる、この3つがすごく大事に、
グッとくるっていうのは自分の話になっちゃいますけど、やっぱりグッとこない人はインタビュー僕はできないんですね。
どんなに時代性があってどんなに普遍性がある素晴らしいものだとしても、
なのでそこは逆に譲れないんですけど、
その時にやっぱり時代性とか普遍性って考えた時に、
色んな職業とかジャンルにとらわれず素晴らしい方たくさんいるんですけど、
最近たまたまかな、やっぱり小説ってその時代を映し出す鏡だと思いますので、
だけど本当に小説はさらに時代も超えていくので普遍性があると思うので、
そうなるとちょっと面白いなって思う方がたまたまなのかわかんないですけど、
最近確かに小説はちょっと多いですね。
そのでも流れはあります。
じゃあ今後もこのインタビューの収録に続々ともしかしたら小説家の方が出てくるかもしれないですね。
そうですね。続々とかわかりませんが出てくることは十分にあり得ると思いますし、
会いたい小説家の方はたくさんいます。
ちょっと楽しみにしております私。
それではまた次回皆様とお目にお耳に書かれますことを楽しみにしております。
ごきげんよう。
さようなら。
♪ It's rising. I'll start a brand new day when the moon is shining.
♪ I long to be with you.
28:40

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