音象徴について、ポケモンを教材として学んでいきました。
生徒に行ったアンケート結果の詳細は、写真で示します。
こんな感じで、Googleフォームから吸い取ったデータをスプレッドシートにうつして、さらに整理していきます。
こういうの苦手なので、気が狂いそうでした。
▼スプレッドシートで整理したものの一部
あと、人生で初めて箱ひげ図を作りました。
▼ポケモンの名前と母音
▼ポケモンの名前と濁音
せっかくなので、ポケモン図鑑を用いた実験の検証(生徒の成果物)も。
ポケモンをよく知らない生徒でもできる作業でした。
▼生徒がランダムに大量に出したポケモンの名前を、進化数と濁音数をもとに分類する
▼結果を示し、考察する。
この授業は、以下の論文をもとに考えました。
▼ ポケモンの名付けにおける母音と有声阻害音の効果― 実験と理論からのアプローチ―
熊谷学而(明海大学)、川原繁人(慶應義塾大学言語文化研究所)
http://user.keio.ac.jp/~kawahara/pdf/155_kumagai.pdf
最後にこちらも教材として使用しました。
▼ 『言語の本質』今井むつみ、秋田喜美
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どうもお疲れ様です、いかです。この番組では、高校の国語化教育をしている私、いかが、仕事のことや仕事以外のことを緩くおしゃべりしていきます。
さて、今回はまた授業の紹介の回ですね。現代語の授業です。テーマは音象徴。
音象徴ってなんやねんと思った人もいると思うんですけれど、安心してください。
今日はみんな大好きポケモンを教材とした授業の紹介ですので、はい、今からしていきたいと思います。
まずはね、クイズからです。2問出しますね。直感で答えてみてください。
1問目。進化後のポケモンっぽい名前はどっちですか?
A.カーカ B.キーキ
進化後っぽいのはカーカですか?キーキですか?
逆に言うと進化前もどっちかにあるわけですよね。さあどっちがどっちでしょう。
はい次2問目。進化後のポケモンっぽい名前はどっちですか?問題文さっきと一緒ですね。選択肢変わります。
A.キケテ B.バゴベ さあどうでしょう。
はい直感的にこっちの方が進化後っぽいなぁと思った方があるんじゃないかなと思います。
はいまず1問目を取り上げると、進化後っぽいのはカーカを選んだ人の方が若干多いんじゃないかなと思います。
まあ4対6ぐらいですかね。その進化後のポケモンっぽいと選んだのはカーカと思う人の方が6割ぐらいだったんじゃないかなとかって思います。
で2問目。キケテとバゴベだとバゴベの方が進化後と思った人の方が多いんじゃないかなと思います。
これは7割ぐらいの人がバゴベを進化後として選んだんじゃないかなと思うんですけどどうでしょうね。
はい実は音にはもともと別に意味なんてあるはずがないんですがなんとなくそう感じるという現象があるんですね。これが今日のテーマ音象調です。
さてこの音象調、言語学者の河原重人先生、慶応義塾大学の先生ですねがポケモンの名前を題材に研究をされていて、これねまあゆる言語学ラジオでも紹介されてちょっとバズった有名なものなんですよね。
私もそれを見て聞いてこれ現代語の授業でもできるんじゃないと思ってねチャレンジしてみました。
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元々現代語は現代日本語を中心とした言語の知識とか技能を身につけたりあとはその言語のことを深く考えたりそういう姿勢態度みたいなものを身につけたりする授業なのでちょうどいいなと思いましてね。
授業ではまず生徒にね2種類のポケモンっぽいイラストを見せました。
進化前は進化前として示したポケモンは小さくて可愛らしい小さなリスみたいなひつぶらな瞳のポケモンで。
進化後のポケモンとして示したのはちょっとそのさっき見せたものよりも大きめの戦闘力が高そうなちょっとねコアモテの大きめのポケモンです。
それぞれに名前をつけるとしたらどちらが自然に感じますかというようなアンケートをグーグルフォームで取ったんですよね。
例えばさっきのクイズのようなカーカキーキといったペアですね。それらをいくつか提示していきました。
この実験ポイントは大きく分けて2つです。
1つ目は母音の開口度ですね。
母音を発音するとき、超音するとき、作るときにですね、口の開き度合いっていうのが結構大きく関わってくるんですよ。
開き度合いって言うとちょっとこう見える部分の口の大きさを口の開いている部分の大きさを想像してしまうけれど、もう少し厳密に言うとこの口の中の空間がどれだけあるかっていうことなんですよね。
カーカキはケーエーでカーという音が作られていてその連続で母音にアが入っていますよね。
このアっていうのは口を大きく開けて開口度が大きい超音のされ方をします。
キーキに使われている母音イですが、これは口を小さく開けている超音する音なんですよね。
この開口度の違いが進化前進化後のイメージに影響するのかということを調べました。
この実験のポイント2つ目が濁音。これを有声疎外音と言いますが、この濁音の有無も大事になってきます。
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バゴベのように濁音が多い名前は強そうに感じやすくて、キケテのように濁音が少ない名前は進化していないというような印象を受けやすい。
こういう違いが川原重人先生の実験によって検証されていたんですね。
なのでこれを再現してみたようなものです。
生徒にこのアンケートに答えてもらったわけなんですよね。
その結果母音の開口度について調べたものでは、カーカのような開口度が大きい音が進化後っぽいと感じる生徒が多かったですね。
特にA対Iを使っているペアではこの違いが少し出ていた。
これAとEのペアだと割と有意な結果が得られたんですが、
AとUのペアも調査したんですが、これは何らかの原因で有意な結果は得られませんでしたね。
おそらく母音の開口度以外の死因の影響を受けたのかなという予想をしています。
あともう一つ、濁音の調査もしていましたよね。
こちらではもう少しはっきりとした傾向が見られました。
濁音は濁音を含んでいないペア、濁音を含んでいないペアと1つだけ含んでいるペア、
全くないペアと2つ含んでいるペア、全くないペアと3音とも濁音なペア。
このパターンで調べていたんですけれども、濁音が多くなればなるほど進化後のポケモンっぽいと感じる割合が高まっていきました。
これは川原茂先生の研究結果とも一致していることになります。
これは余談なんですけれども、授業の中で母音の開口度を説明するときにポッキーを使ったんですよね。
その時ハロウィンが近くて、トリックアトリートみたいな感じでポッキーを渡してですね。
そのポッキーをまだすぐには食べて噛み砕いて飲み込まないでくださいと。
一旦そのポッキーを口に加えてみてくださいと。
アーと発音するとポッキーが加えていない部分というか外に出ている部分がですね、下がっているということが確認できると思います。
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逆にイーと発音するとポッキーが上がるというのが確認できると思います。
このポッキーが上下する様子っていうのは、このベロ下がですね、どれだけ口の中で上がっているか下がっているかっていうのが確認できるのと一緒なんだよと。
これで生徒たちも開口度ってそういうことなんかなと実感してくれたんじゃないかなと思うんですけど。
いかんせんそのアーイーウーとか言ってるのがシュールで、私が最初見本を見せたらこいつみたいなシュールなことにはなりたくないと思った子たちは全然やろうと思えなかったけど、
多分ちょっと嫌だなと思ったんだと思うんだけど。
でも陽気な人々は、陽気な男の子たちとかはね、わりとずっと遊びながらやってましたね。
ちょっとお菓子を配ったなんて言うと怒られちゃうかもしれないけど、まあいいやそれはちょっと置いておきましょう。
そんなことをしながら母院とは関わりがありますねというようなことを言ってました。
ここまでをまとめていくと、ポケモンを例にとって調べていったわけですが、進化後っていうのはもう少し見方を変えると体が大きかったり戦闘力が高かったりするわけですよね。
この大きいとか強いとかっていうイメージと母音や濁音といったその音が関わっているということが明らかになっていきました。
さらにその授業の後はですね、ポケモン図鑑を使って実際のポケモンの名前とその濁音には本当に関連があるのかということも調査してもらいました。
ポケモン図鑑って皆さん、紙をイメージしたりあとはゲームをイメージしたりするかなと思うんですけど、今はwebでもポケモン図鑑って公開されているんですよね。
ポケモンの名前を検索窓に入力して検索すると、その戦闘力とか特性とか進化の度合いなんかを出して出力してくれるんですよね。
その生徒に見てもらったのは、進化前進化後のポケモンにそれぞれ濁音がいくつ含まれているのかっていうのを見てもらいました。
それを表にまとめてたという感じですかね。
結果、やっぱり進化後のポケモンの方が濁音を含む割合が高い。
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もう少しちゃんと言うと、例えばヒトカゲ、リザード、リザードンみたいに進化が進んでいくと思うんですけど、
その最終進化、第二進化って言ったらいいのかな、リザードンみたいな一番進化しているポケモンが濁音を含んでいないということが少なかったんですよね。
生徒たちは班ごとに一人一台タブレットを持っているので、協力しながらタブレットで調査を進めていって、
その中で自然とね、このポケモンこんな進化だったっけとか、
私ポケモンあんま知らんけど、これは手伝うわみたいな感じで、
ポケモン知らない生徒も何とか全然参加できるようなものになってたと思いますし、
知ってる子にとってはワクワクするようなというか熱中しながらやってる子もいたんで、
結構盛り上がってその作業自体は良かったなと思ってました。
ということで、こうやって授業を通して音象徴について学んでいったわけですね。
研究のプロセスを体験したということも良かったかなと思います。
ただね、ちょっとアレと思った方もいるかもしれませんね。
前回の授業じゃないわ、このポッドキャストのエピソードで言語の恣意性についてお話ししていましたよね。
言語の恣意性っていうのは音や記号など言葉とその対象との間には必然性はありませんよというようなことを話していましたよね。
あ、そうだ、前回のエピソードで言語の恣意性を説いたのはサピアだというようなことを言ってたと思うんですけど、
サピアじゃないですね、ソシュールですね。
言語の恣意性はソシュールという人が説いたんですけれども、
これは割と長い間支配的な言説として言語学をしている人の中で有名だったんですけども、
ここ最近ですね、案外そうでもないんじゃないと、
その音との結びつきある場合もあるよねというのが言われ出しました。
で、それを研究していったうちの一人が川原重人先生、このポケモンの研究もされた方ですよね。
で、あとは有名なのはやっぱりオノマトペですね。
例えばウサギがぴょんぴょん跳ねるという文章があったときに、
そのぴょんぴょんがオノマトペにあたるわけですけれども、
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このぴょんぴょんというのはいかにもそのウサギが地面を軽々と跳ねている様子を写しとっているような言葉に聞こえると思います。
まあドシドシ跳ねるとは言わないですよね。
それはそのぴょんという音を作っている構成しているもう少し細かく切った子音とか母音とかがそれっぽさを出しているわけなんですけれども、
これもその音象徴ということができますね。
このようなことについて深くまとめ、まとめて深くまとめるというか、
言及しながらまとめていっているのが言語の本質という書籍ですね。
私がよくここでも挙げている今井睦美先生、そして秋田紀美先生の教長の言語の本質、
昨年の新書大賞、昨年だったっけ、新書大賞も受賞されているという本ですけれども、
言葉の成り立ちというかその音象徴についてめちゃくちゃ詳しく書いているのでぜひ読んでいただきたいんですけれども、
これを生徒にも実は最後ちょっとポケモン図鑑やった後に読んでもらって、音象徴ってこういうものなんだということを少し体系的に学んでもらったというところでした。
生徒にとっては難しい部分もあったかもしれないけれど、テストにもこの文章を出したんですが、
割とそこの部分の理解度は高かったような気がしますね。
その分というか、漢字とかは全然難しいというかできない子が多くて、もうちょっと漢字も頑張ればみたいな感じだったんだけど、
この音象徴の部分については割とやっぱり体験をしながら学んでいったから、理解度も高かったんじゃないかなと思います。
ということで、今回のエピソードではポケモンという身近な教材を通じて、
言語の面白さとか奥深さというものを感じてもらったんじゃないかな、みたいな授業について紹介していきました。
この現代語ね、三学期は生徒たち自身が日本語の研究をするという、ちょっといつもよりも自由度の高いような授業を考えています。
今回の実験というか研究のプロセスも使える部分もあるんじゃないかなと思うので、
またねこの番組の中でもちょっと落ち着いたら、まとまってきたらそのシェアをしたいなと思っています。
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では今日はこの辺で終わりたいと思います。ありがとうございました。
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コメント
生徒にとっては言葉を振り返り、言葉に着目するきっかけになったようですね。 私はこのあたりの興味関心が無いタイプなので、こんな発想にびっくりです(笑) 言葉をデータ化していくのも、これからのデータサイエンスの世界にも結びつけられそうですね。
コメントありがとうございます! 国語はどうしても文章やその内容にフォーカスすることが多いですが、科学的な目線で言葉に向き合うこともさせてみたかったんですよね。
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