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たにしの出世
2024-02-10 15:43

たにしの出世

0072 240210 楠山正雄 たにしの出世 朗読:橋本由紀
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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
楠山雅雄作 たにしの出世
昔あるところに大変貧乏なお百姓の夫婦がありました 長者の他を借りてお米や比叡を作ってその日その日のかすかな暮らしを立てていました
夫婦はだんだん年をとって毎日働くのが苦しくなりました それでも自分たちの後を継いで代わりに働いてくれる子どもがないので
相変わらず夏も冬もなしに水田の中に使って昼や午後に食われながら汗水垂らして働いて それでも暇があると水に縁のある神様だというので
水神様のおやしろに夫婦してお参りしては 神様神様どうぞ子供を一人お預けくださいまし
子供でさえあればカエルの子でも粒の子でもよろしゅうございますと言って一生懸命祈りました するとある日急におかみさんは体中がむずむずして赤ちゃんが産みたくなりました
こう言って騒いでいるうちにおぎゃーとも言わずに赤ちゃんがそれこそコロリと丸い石ころが転げ出すようにして生まれました
全くの話この子は石ころのように小さく丸っこいので 粒粒と呼ばれている谷師の子であったのです
粒の子でもと申し上げたら本当に水神様が谷師の子をくださった 夫婦はこう言ってでも水神様のお申し子だからというので小さな谷師の子をお椀に入れて水を入れてその中で大事に育てました
5年経っても10年経っても粒の子はやはり粒の子で いつまでも小さくコロコロしていてちっとも大きくはなりませんでした
毎日毎日食べるだけ食べてあとは1日寝て暮らして あーともかーとも声一つ立てません
お百姓のお父さんはやはりいつまでも貧乏で相変わらず長者の田を耕して年中休みなしに稼いでいました
03:05
やれやれ今日も腰が痛いぞとある日お父さんは背中を叩きながら地主の長者屋敷 へ収める小作米の俵をせっせと蔵につけていました
するうちふと頭の上で お父さんお父さんその米は私が持っていくよという声がしました
不思議に思ってお父さんが仰向いてみると 軒先の高い棚の上に乗せられて田西の子が日向ぼっこをしていました
田西の子が口を聞くはずがない何かの空耳だろうと思って構わず仕事をしていますと また耳の旗で
お父さんお父さん私が持ってくってばと呼ぶ声がしました 口を聞いたのはやはり粒の子だったのです
お父さん綿は小さいから馬を引いていくことはできないけれど 米だらの上に綿を乗せてくれれば地主様のお屋敷まで馬を連れてってきてあげるよ
田西の子がずんずんそう言って口を聞くとお父さんもお母さんも本当にびっくり してしまいました
でもこの子は何しろ水神様のお申し子だから きっと変わったことができるのかもしれないと思ってそう言われるままに
田西の子を3秒の米だわらと米だわらとの間にしっかり落ちないように乗せてやって じゃあ行っておいでと言って馬のお尻を叩きました
お父さんお母さんでは行ってまいります 田西の子は人間のことちっとも違わない言葉でそうはっきり答えて
さあ出かけようはいしーしーと上手に声をかけました 馬はひひんといなないてパッカパッカ歩き出しました
でも心配なのでお父さんが後ろからそっとついて行きますと 田西の子は馬の上から馬方のする通りかけ声一つで器用に馬を進めていきました
誰も人のついていない馬が一人で歩いてきて 子作のお米を3秒も運び込んできたというので
長者屋敷の人たちはびっくりしました するとそれが実は一人ではなく小さな田西が米だわらの間に挟まってついてきて
田わらの中から人間のような声で お米を持ってきたから下ろしてくださいと怒鳴っているのがわかると余計びっくりして
しまいました 旦那様田西が馬をひいてお米を持ってきました
とみんなが言って騒ぐので長者ものこのこ出てきました その間に田西の子は一人でハキハキお手伝いさんたちに指図をしてお米を馬から
06:12
下ろして蔵に積み込ませました いくら水神様のお申し子でもこんな利口な口を聞く田西は珍しい
こう思って長者はこの田西をいつまでも宝物にしておきたくなりました そこで田西のご機嫌を取るつもりで
田西殿田西殿お前さんをうちの娘の向に取りたいがどうだねと言いました すると田西は真面目な声で
それはどうもありがとうございますでは家へ帰ってお父さんとお母さんに話してみ ましょうと言ってさもうれしそうに帰っていきました
田西は帰ると早速百姓夫婦にこの話をしました 2人は驚いて長者のところへ本当かどうか尋ねに行きました
長者も今さらそれは冗談だとも言えないので あ本当だともでは2人の娘を呼んでどちらが息子さんのお嫁になるか聞いてみようと
言ってまず姉の娘を呼び出しました かわいい田西殿お前は向に取りたいか
こう言うと姉の娘は半分も聞かずに まあ他の中の汚い虫っけらなんかと怒った声で言って畳をけだてて出ていきました
そこで今度は妹の娘に聞きました 妹の娘は
お父さんのお約束なさったことならその通りにいたしましょう と素直に答えたのでとうとう田西の子は長者の向になることになりました
長者の娘は田西の向さんを大事にしてその上 田西のお父さんやお母さんにも親切にしてやりました
ある日お天気がいいのでいつものように帯の間に息子さんを挟んでお嫁さんは お里の両親を訪ねに行きました
水陣の親しろの前まで来ると田西のお向さんは どうも帯の間に乗せられてばかりいるのも窮屈になった
少し降りて休んでいこうとお嫁さんに言いました ではこの上が綺麗で広くっていいでしょと嫁さんは言って石の鳥居の上にお向さんを休ませ
ました ああ広い田んぼが見えて青々した空が眺められて久しぶりでいい心持ちだ
私はここでしばらく日向ぼっこをしているからその間にお前は親しろへお参り してくるといいよ
09:02
それでは行ってまいります お嫁さんはそれから石段を登って親しろにお祭せんをあげて
丁寧に神様にお辞儀をしてまた急いで石段を降りて帰ってきました ところで元の石の鳥居のところまで来てみるとそこにちゃんと
乗っていたはずの他西のお向さんの姿が見えません 鳥居の台紙から転げ落ちたのかと思ってそこらをキョロキョロ見回しましたがそれらしいもの
の影も形も見えません もしやカラスがついくちばしの先でつばんで持っていったのではないか
どうかしてそこらの田の中へでも転がっていったのであればいいがと思ってお嫁さん は田んぼの中に入ってみました
春先のことで田の中は水がじくじく湧き出していて 田の草の中からスミレやレンゲの花が顔を出していました
お嫁さんはよそいきのきれいな着物が泥で汚れるのも忘れて 水田の中へ入っていきました
つぶつぶお里へ参らぬか つぶつぶ向子殿どこへ行ったと言い探して回るうちに春の日はいつか暮れてもう
田んぼの中はよく見えないのに体は泥まみれになってしまいました すっかりくたびれてがっかりしきって泣き顔になって
お嫁さんは深い深い泥の中に今にもずるずる引き込まれそうになったとき これこれこんなところでいつまでも何をしているのだねと言いながら
いつどこから現れたか 光るような美しい若者が涙でかすんでいるお嫁さんの目の前ににっこり笑って立っていました
水神様の申し子でありながら訳があって10年もの長い間 谷市の殻の中に封じ込められていたのが
今日お嫁さんが水神様の親しろに参景して真心を込めてお祈りしてくれたおかげで 封じが溶けてこの通り立派な若者の姿に変わることができたのです
当たり前の人間同士のお婿さんとお嫁さんになった二人は改めて水神様の親しろに お礼参りをしてめでたく家へ帰りました
こうして小さな谷市から出世したお婿さんは谷市の長者と呼ばれて 優しいお嫁さんと一緒に末永く栄えましたとさ
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