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生きた人形 後編
2024-06-22 14:32

生きた人形 後編

0091 240622 小川未明 生きた人形 後編 朗読:田中みずき
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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします
小川美名作 生きた人形
後編 おばあさん
どうしたら私はこの世の中でただ一人の兄さんに めぐり合うことができるでしょうか
と 少女は訴えたのです
白髪頭のおばあさんは 考えていましたが
それは 方々の
人の出入りするところへ行って いろいろの人に
お前さんの兄さんの話をして聞いてみなければ わかりっこはないよ
私が いいところへ連れてってあげるから
明日の晩に街外れの橋の上に行って 待っておいで
きっとだよ 私はお前さんの身の上を悪く取り計らわないから
と おばあさんは言いました
少女は親切なおばあさんだと思って その世は別れて帰りました
翌日になると 少女は
人形の代わりになって店先で勤めるのも今日限りだと思うと 街の景色を見るにつけ
なんとなく物悲しかったのであります 五福店の主人というのは気軽な面白い人でした
少女は自分の身の上を打ち明けて話したのは おばあさんと主人の二人っきりでしたが
主人はどうかして兄さんに会わせてやりたいと 陰ながら心配していましたので
新聞記者に話したものと見えて このことが土地の新聞に乗りました
すると 生きた人形の身の上話がたちまち街の中に広まったのでした
03:03
ちょうどその日のことであります 青年が五福店へ訪ねてきました
私が 兄です
と言って少女に面会を求めました けれど彼女は子供の自分に別れたので兄さんの顔を覚えていません
本当にお兄さんでしょうか と少女は美しい目でじっと青年を見つめていました
何しろ10年も経ったのだから忘れてしまったのに無理はない けれど
僕には ゆきちゃんの小さな自分の可愛らしい姿がありありと目に残っているよ
と青年は言って 僕も覚悟をして家を出たのだから
立派な画家にならなければ帰らないと思っていたんだ と語りました
そして懐からお母さんの写真を出して 妹に見せたのであります
一日だって お母さんのことを思い出さない人でなかった
と言って 青年は涙を落としました少女は今彼を本当の兄だと信じて疑うことはありません
一時に喜びと悲しみとで胸がいっぱいになって 張り裂けるようでありました
兄さん私はとうとう 兄さんにめぐりあお母さん
なぜ死になされたの お母さん
と兄にすがりついたのでした そしてもし
今日兄さんにめぐり合わなければ 晩にはあのおばあさんに連れられて
また遠くどこかへ行ってしまったであろうと話しました それは
片目の白髪のおばあさんじゃなかったかい と兄は聞きました
片目だったかもしれません 大変に親切な
すると片藁に一切の話を聞いていた主人も また兄もびっくりして
06:06
あのおばあさんに見込まれたらどうしても逃げられはしないということだ 恐ろしい門明かしのおばあさんなのだ
仲間が幾人あるかもわからないきっと船つき場の街へ お前を売るつもりだったろう
何にしても早くこの街から逃げ出さなければいけないと言いました その晩のことであります
あちらには港のあたりの空を赤々と10日の光が染めていました そして汽笛の音や
いろいろの物音がこちらの街の方まで流れてきました また一方は遥かに青黒い山脈が
よく晴れた月の明るい空の下に延々と連なっていました その荒野を
青い着物を着て頭に薄紅色の布をかけて 顔を隠し
白い馬に乗って孫に惹かれながら とぼとぼと山の方を指して行く女がありました
馬は黙っていました 乗っている人も黙っていました
そして 馬を引いて行く人も
黙っていました ただ月の光にあたりはぼーっと夢のように霞んで
果てしもない広い野原にこれらの人たちは絵のごとく浮いて見えたのです この時
黒い人影がその後を追ってきました 2人3人
めいめい手に棒を持って喚いてきました とうとう彼らは馬に追いつくと行く手を遮って
青い着物を着ている この女だ
もう決して逃がしはしないぞ と追ってきた者どもは言いました
孫はたまげてその人たちの様子を眺めました おい
この女をどこへ連れて行くつもりだ と一人は尋ねました今夜のうちにあの山の頂の大寺までお連れ申しますので
09:05
夜が明けると 雨さんにおなりになるのだそうでございます
と孫は答えました まあいいから
ここから馬を街まで戻せ と追っては迫りました
たたび月の明るい野原を歩いて 一向は
街はずれの橋の上まで参りますと 白髪のおばあさんがそこに立って待っていました
よく私に黙って逃げたなぁ とおばあさんは怒って
馬から女を引き下ろして 女の被っていたキレを取り除けて
恐ろしい目で顔を睨みました えっ
これは 本当の人形だ
私は生きている人形を連れて来いと言ったのだ とおばあさんは叫びました
みんなもあっけに取られて人形を見ました こうしている間に
本当の少女は もう
兄さんといずくえか この街から去った自分であります
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