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赤いろうそくと人形 後編
2023-10-07 16:46

赤いろうそくと人形 後編

0054 231007 小川未明 赤いろうそくと人形 後編 朗読:武田伊央
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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします
小川美名作 赤いろうそくと人形
後編 不思議な話がありました
人魚の娘が絵を描いたろうそくを山の上のお土産にあげて その燃えさしを身につけて海に出ると
どんな大暴風の日でも決して船が転覆したり 溺れて死ぬような災難がないということが
いつからともなくみんなの口々に噂となって上りました ろうそくが売れるので娘は手の痛くなるのも我慢して
赤い絵の具で絵を描いたのであります こんな自分をもよく育てて可愛がってくださった御恩を
忘れてはならない と
娘は老夫婦の優しい心に感じて 大きな黒い瞳を潤ませたこともあります
この話は遠くの村まで響きました 遠方の船乗りやまた漁師は
神様にあがった絵を描いたろうそくの燃えさしを手に入れたいものだというので わざわざ遠いところをやってきました
そして ろうそくを買って山に登り
お宮に参景してろうそくに火をつけて捧げ その燃えて短くなるのを待って
またそれをいただいて帰りました だから夜となく昼となく山の上のお宮にはろうそくの火の絶えたことはありません
ことに夜は美しく灯火の光が海の上からも望まれたのであります 本当にありがたい神様だ
と神様の評判は高くなりましたけれど 誰も
ろうそくに一心を込めて絵を描いている娘のことを思うものはなかったのです 娘は疲れておりおりは月のいい夜に
窓から頭を出して 遠い北の青い青い海を恋しがって
03:01
涙ぐんで眺めていることもありました ある時南の方の国から商人が入ってきました
何か北の国へ行って珍しいものを探してそれを場 南の国へ持って行って金を設けようというのであります
商人はどこから聞き込んできたものか またはいつ娘の姿を見たものか
ある日のこと こっそりと年寄り夫婦のところへやってきて
娘にはわからないように 大金を出すからその人形売ってはくれないかと申したのであります
年寄り夫婦は最初のうちは この子は神様がお授けになったのだからどうして売ることができよう
そんなことをしたらバチが当たると言って承知をしませんでした
商人は一度二度断られても懲りずにまたやってきました そして年寄り夫婦に向かって
昔から人魚は不吉なものとしてある 今のうちに手元から離さないと
きっと悪いことがある と
誠しやかに申したのであります 年寄り夫婦は
ついに商人の言うことを信じてしまいました それに
大金になりますので つい金に心を奪われて娘を商人に売ることを決めてしまったのであります
商人はたいそう喜んで帰りました いずれそのうちに娘を受け取りに来ると言いました
この話を娘が知った時はどんなに驚いたでありましょう
うちきな優しい娘は この家から離れて幾百里も遠い知らない
暑い南の国へ行くことを恐れました そして泣いて年寄り夫婦に願ったのであります
私はどんなにでも働きますから どうぞ知らない南の国へ売られて行くことは許してくださいまし
しかし もはや鬼のような心持ちになってしまった年寄り夫婦は
なんと言っても 娘の言うことを聞き入れませんでした
06:03
娘は部屋の内に閉じこもって 一心にロウソクの絵を書いていました
しかし年寄り夫婦はそれを見ても 意地らしいとも哀れとも思わなかったのであります
月の明るい晩のことであります 娘はまた座ってロウソクに絵を書いていました
するとこの時表の方が騒がしかったのです いつかの商人がいよいよこの世娘を連れに来たのです
大きな鉄格子のはまった四角な箱を車に乗せてきました その箱の中にはかつて
虎や獅子やヒョウなどを入れたことがあるのです この優しい人魚もやはり海の中の獣だというので
虎や獅子と同じように取り扱おうとしたのであります 娘はそれとも知らずに舌を向いて絵を書いていました
そこへおじいさんとおばあさんが入ってきて さあ
お前は行くのだと言って連れ出そうとしました 娘は手に持っていたロウソクにせきたてられるので絵を書くことができずに
それをみんな赤く塗ってしまいました 娘は赤いロウソクを自分の悲しい思い出の記念に
2、3本残していったのであります 本当に穏やかな晩のことです
おじいさんとおばあさんは戸を閉めて寝てしまいました 真夜中頃でありました
トントンと誰か戸を叩く者がありました
年寄りの者ですから耳さとくその音を聞きつけて誰だろうと思いました どなた
とおばあさんは言いました けれどもそれには答えがなく
続けてトントンと戸を叩きました おばあさんは起きてきて戸を細めに開けて外を覗きました
すると 一人の色の白い女が戸口に立っていました
女はロウソクを買いに来たのです おばあさんは少しでもお金が儲かることなら決して嫌な顔つきをしませんでした
09:05
おばあさんはロウソクの箱を取り出して女に見せました その時おばあさんはびっくりしました
女の長い黒い髪が びっしょりと水に濡れて
月の光に輝いていたからであります 女は箱の中から真っ赤なロウソクを取り上げました
そしてじっとそれに見入っていましたが
やがて金を払ってその赤いロウソクを持って帰って行きました おばあさんは灯火のところでよくその金を調べてみると
それはお金ではなくて貝殻でありました おばあさんは騙されたと思って怒って家から飛び出してみましたが
もはやその女の影はどちらにも見えなかったのであります その世のことであります
急に空の模様が変わって近頃にない大暴風雨となりました ちょうど商人が娘を檻の中に入れて船に乗せて
南の方の国へ行く途中で沖にあったところであります この大暴風雨ではとてもあの船は助かるまい
とおじいさんとおばあさんはブルブルと震えながら話をしていました 夜が明けると
沖は真っ暗でものすごい景色でありました その夜南線をした船は
数えきれないほどであります 不思議なことにはその後赤いロウソクが山のお宮に灯った晩は
今までどんなに天気が良くてもたちまち大嵐となりました それから赤いロウソクは不吉ということになりました
ロウソク屋の年寄り夫婦は神様の罰が当たったのだと言って それぎり
ロウソク屋を辞めてしまいました しかし
どこからともなく誰がお宮にあげるものか たびたび赤いロウソクが灯りました
昔はこのお宮に上がった絵の描いたロウソクの燃えさしさえ持っていれば 決して海の上では災難にはかからなかったものが
12:04
今度は赤いロウソクを見ただけでも そのものは
きっと災難にかかって 海に溺れて死んだのであります
たちまちこの噂が世間に伝わると もはや誰もこの山の上のお宮に参景するものがなくなりました
こうして昔新たかであった神様は 今は町の鬼門となってしまいました
そして こんなお宮がこの町になければいいものと
恨まぬものはなかったのであります いく年も経たずして
そのふもとの町は滅びてなくなってしまいました 聞きたいラジオ番組何にもないそんな時間はポッドキャストで過ごしませんか
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