おじいさんの贈り物
二人の兄弟 島崎藤村
2 釣りの話
ある日、おじいさんは二人の兄弟に釣りの道具を作ってくれると言いました。
いかにおじいさんでも、釣りの道具は難しかろうと、二人の子供がそう思って見ていました。
この兄弟の家の周りには、釣竿一本売る店がありませんでしたから。
おじいさんはどこからか釣り針を探してきました。
それから細い竹を切ってきまして、それで二本の釣竿を作りました。
針と竿ができました。今度は糸の番です。
とおじいさんは言って、栗の木に住む栗虫から糸を取りました。
ちょうどお蚕様のように、
その栗虫からも、
白い糸が取れるのです。
おじいさんは栗虫から取れた糸を巣につけまして、それを長く引き延ばしました。
その糸が日に乾いて固くなる頃には、兄弟の子供たちの力で引いても切れないほど丈夫で、立派なものが出来上がりました。
さあ、釣りの道具がそろいました。
で、兄弟にくれました。
釣りの結果
二人の子供は、おじいさんが作った釣竿を手にさげまして、大喜びで小川の方へ出かけていきました。
小川の岸には、くるみの木が生えている場所がありました。
兄弟はかじかのいそうな石の間を見立てまして、くるみの木の陰に腰をかけて釣りました。
半日ばかり、
この二人の子供が小川の岸で遊んで家の方へ帰って行きますと、ちょうど、おじいさんも木をいっぱい背負って山の方から帰って来たところでした。
釣れましたか。
と、おじいさんが聞きますと、兄弟の子供はがっかりしたように首を振りました。
賢いお魚は、一匹も二人の釣り針にかかりませんでした。
そのとき、兄弟の子供は、おじいさんに釣りの話をしました。
兄はゆっくり構えて釣っていたものですから、釣針にさした餌は、みんなかじかに食べられてしまいました。
弟はまた、お魚の釣れるのが待ち遠しくて、本当に釣れるまで待っていられませんでした。
ついに水中の中をかきまわすと、かじかはみんなを驚いて石の下へかくれてしまいました。
団られました。
の下へ隠れてしまいましたおじい さんは子供の釣りの話を聞いて
正直な人のよさそうな声で笑いました そして二人の兄弟にこう申されました
一人はあんまり気が長すぎだし また一人はあんまり気が短すぎ
ました釣りの道具ばかりでお魚 は釣れません