00:00
どじょうと金魚 小川みめい
ある日、子供がガラスの瓶を手に持って、 金魚を欲しいと言って泣いていました。
すると通りかかったどじょう売りのおじいさんが、 その瓶の中へどじょうを二匹入れてくれました。
子供は喜んで瓶に顔を押しつけるようにして眺めていると、 髯を生やして滑稽な顔に見えるどじょうは、
「ぼっちゃん、あのきれいな馬鹿しで脳のない金魚よりは、 私のほうがよっぽどいいのですよ。
ひとつ、おぞってみせましょうか。」 と言って、一匹のどじょうは瓶の底から水の上まで
もんどり打って滑稽な顔を表面へ出し、 また瓶の底に沈みました。
子供は今までどじょうを馬鹿にしていたのは、 全く自分の考えが足りなかったのだと知りました。
金魚よりか愛嬌があるし、踊りもするし、 ずっとおもしろいや。」
と子供は瓶を持ち歩いて友達にふいちょうしたのです。 金魚を持っている子供は笑って、
「そんなどじょうなんかなんだい。 この金魚は高いのだぜ。」
と言って相手にしませんでした。 「ぼっちゃん、悲しむことはありません。
見ててごらんなさい。」 とどじょうは言いました。
じめじめしたいやな天気が続きました。 生活力の乏しい金魚はみんな弱って死んでしまったけれど、
どじょうは元気でした。 そしていつでも愛嬌のある顔をして、
かわるがわる瓶の中で踊っていました。
