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たまごとおつきさま、むらやまかずこ、むかし、 のはらのいっけんやに、にわとりがいちわすんでいました。
そののはらのむこうには、 ひくいきれいなやまがみっつならんでたっていました。
あるつきのいいばんのこと。
そのにわとりが、たまごをひとつうみました。
そのたまごに、ちょうどのぼってきたつきが、 ひかりをさしかけましたので、
たまごは、それはうつくしくて、 しんじゅのたまのようにみえました。
にわとりはうれしくてたまらないので、 たまごばかりみていました。
けれどもそのうちに、たまごはだんだんきえていって、 かげばかりになり、
おしまいには、そのかげさえも みえなくなってしまいました。
ぼんやりそれをみていたにわとりは、たいへんびっくりして、 おつきさまのところへかけていって、
「おつきさま、どうぞ、わたしのたまごをかえしてください。」
とたのみました。
するとこんどは、きゅうにおつきさまがわらいながら、 だんだんしぼんで、たまごになってしまいました。
にわとりはたいへんよろこんで、
「ほんとうですか、おつきさま。 これがわたしのたまごですか。」
といって、それをはねのしたにいれようとしますと、
それがみるまにおおきくふくれて、
みっつならんだやまのむこうから、 おつきさまになってのぼってきました。
あくるあさ、にわとりがめをさまして のはらにいってみますと、
まえのばんのおつきさまがしろくすきとおって、 そらにのぼっていました。
そこでにわとりはおおきいこえでなきました。
「それはたまごか、おつきさまか。」