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2022-03-07 02:16

#28【青空文庫】はちとくま

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村山籌子「はちとくま」

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Murayama Kazuko title:Bee and Bear


00:01
はちとくま 村山和子
一匹の小熊が森の中から、のこのこと日当たりのいい野原に出てきて、
倒れていた丸太の上に腰をおろして、うれしそうに、「んふっ!」と笑いました。
小熊は懐から蜂蜜を入れた壺を取り出して、指でしゃくって、ちびちびなめ始めました。
「いつ食べてもうまいのは蜂蜜だ。蜂蜜に限る。甘くて、おいしくて…。」
と、ひとりごとを言いながら、せっせとなめておりました。
すると、そこへ、一匹の蜜蜂がぶーんと飛んできて、小熊の帽子のまわりをぐるぐるまわりながら言いました。
「小熊さん、ぼくはほんとうにはらがたってたまらないよ。」
「なにがはらがたつんだ?ぼくは、なんにもきみにわるいことをしたおぼえはないよ。」
と小熊は、やっぱり蜜をたべながらこたえました。
すると、蜜蜂は、
「だってきみ、かんがえてみたまえ。きみは、ぼくたちがながいあいだくろうしてためた蜜を、
それこそべろべろとみているうちになめちまうんだもの。
これくらいはらのたつことはないよ。」
と、はねをふるわせていいました。
小熊はこういわれてみると、なんだかはちにきのどくなようなきもちになりました。
そこで、
「はちくん、そんなにおこらないでくれ。
そのかわりに、ぼくはきみをいいところへつれていってあげよう。」
といって、
小熊ははちをはなのいっぱいさいているだれもしらない谷まえへつれていってやりました。
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