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葬式の行列、田中幸太郎。鶴岡の城下に、大葉武兵という武士があった。
その大葉は仲間の寄り合いがあったので、それに行っていて夜中頃に帰ってきた。
北国でなくても寂しい屋敷町。 その寂しい屋敷町を通っていると、
前方から葬式の行列が来た。 夕方ならともかく、深夜の葬式はあまり例のないことであった。
大葉は行列の先頭が自分の前へ来ると聞いてみた。 「どなたの葬式でござる?」
相手は躊躇せずに言った。 これは大葉武兵殿の葬式でござる。
何?大葉武兵? そうでござる。行列は通り過ぎた。
武兵は気が転倒した。 そして家へ帰ってみると、玄関前に焚火をしたばかりの跡があった。
それは、葬式の送り火であった。
大葉はその晩からぶらぶら病になって、 間もなく送り火を焚かれる人となった。
