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あひるさんのくつ、村山和子。あるとき、きりぎりしさんが、くつやさんをはじめることになりました。
どんなくつでも、おのぞみしだいにつくります。
というかんばんをみてやってきたのが、あひるさんです。
きりぎりしさんは、あひるさんのあしをはかって、よるもねないでくつをいっそくこしらえて、あひるさんのところにもってゆきました。
あひるさんは、たいへんおしゃれでしたから、じぶんのあしのかっこうのことはたなえあげて、きりぎりしさんのこしらえてきたくつをひとめみていいました。
まあ、こんなへんなかっこうのくつは、うしさんにでもかってもらうがいい。
きりぎりしさんは、たいへんこまりましたけれども、しかたがありません。
しおしおとそのくつをもってかえりました。
そしてそれをおみせえならべておきましたが、あんまりぶかっこなものですから、だれもかってくれません。
おしまいには、そのうえへほこりがつもりつもって、とうとうどこにくつがあるのやらわからなくなりました。
それから、さんねんばかりたったあるばんに、あひるさんがじどうしゃにのって、きりぎりしさんのみせのまえをとおりかかりました。
あひるさんはじどうしゃのうんてんしゅになったばかりでしたから、あんまりじょうずにじどうしゃをごかすことができません。
あっ!と思うまに、きりぎりしさんのみせのなかへじどうしゃがはいってしまいました。
そしてそのひょうしに、ほこりのなかにうずまっていたくつがとびだしました。
このものおとで、きりぎりしさんがでてきました。
そしていいました。
このくつがごいりようですか?
あひるさんはしかたなく申しました。
そうです。これをください。
ほんとうに、ちょうどよくあなたのあしにあいそうです。
と、きりぎりしさんがいいました。
あひるさんはかおをあかくしました。
きりぎりしさんはさんれんごろごろしていたくつがうれたので、どんなにうれしかったでしょう。
けれども、そのくつをはじめにちゅうもんしたのが、このあひるさんだったということにきがついたのは、それからいっしゅうかんあとのことでした。
