朝は雨だった。だから今日はゆっくりできると思っていた。ところが空はそんな段取りを無視して、急に晴れ始めた。中島は慌てて畑へ向かい、ハウスを開け、アルケミラへ水をやった。最悪を避けるために、とにかく体を動かす。それだけのことだったが、動いているうちに不思議と気分が上向いてくるのがわかった。
やる気というのは、待っていれば湧いてくるものではないのかもしれない。昨日のK圃場での掘り上げ作業で残った筋肉痛が、むしろ心地よかった。今日の出発点は気分スコア「5」。
アムソニア・フブリヒティ(イトバチョウジソウ)という宿根草がある。セリでも市場でも評価が高く、おぎはら植物園を訪れたとき、この苗だけが売り切れていた。面白い品目はすぐ真似される。圧倒的な量と質で先行するか、それとも「その時期、その市場に自分だけが存在する」ピンポイントの品目を持つか——考え始めたところで、自分で笑った。経営語り、だるいな、と。
バプテシアの移植には手こずった。2年据え置いた株は根がマダコのように地中へ広がっていた。掘り上げて割り、Kの2棟目セダムハウス前に一列。その隣では、前の地主が植えたと思われる品種不明の芍薬が、ピョコピョコと顔を出していた。誰かが丁寧に育てた植物が、土の中でずっと待っていたかのように。
午後は牧場からもらった堆肥をYのハウスへ運ぶ。その段になって気分が「4」に下がった気がする——と苦笑した。けれど、体を動かせばやる気は戻ってくる。今日それはもう、経験として知っている。
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サマリー
雨予報だった朝から一転、急に晴れ出したため、慌てて畑に向かった語り手。体を動かすことで気分が上向き、やる気は待つのではなく行動から生まれることを実感する。アムソニア・フブリヒティの評価の高さから、農業経営における競争戦略について考えを巡らせるが、すぐに「経営語りはだるい」と笑い飛ばす。午後は堆肥運びの作業で一時的に気分が落ち込むものの、体を動かせばやる気が戻ることを経験則として知っていると語る。