映画「急に具合が悪くなる」の紹介
この時間は日替わりコメンテーターが6時の切り口で、多様な視点を提案するCatch Up。
木曜日は、クリエイティブプロデューサーの三好剛平さんです。
三好さん、おはようございます。
おはようございます。
汗だくで駆けつけてくれてありがとうございます。
はい、あの8時16分ぐらいに家を出て、自転車で駆けつけました。
しゃっかり汗かいてきたのが伝わるぐらいのね。
ねえ。
そんな汗をかきながら、今年、今回も熱のこもったプレゼントお願いします。
はい、今週はですね、明日6月19日金曜日より福岡ではTJ博多、ユナイテッドシネマほか各劇場で上映となります。
映画、「急に具合が悪くなる」をご紹介します。
映画のあらすじと濱口監督について
来た。
来ましたよ。
はい、浜口隆介監督による最新作で、今年の間の国際映画祭では主演女優のお二人が最優秀女優賞をね、受賞したことも大きく日本でニュースになりましたけれども。
実はですね、この映画、私ご縁ありまして業務支社で、実は4月末時点にね、すでに拝見させていただいてたんですけども。
もうね、その日からずっと、今日こうして紹介させていただける日をずっとずっと待ち焦がれていたぐらい。
そっかそっか。
もうね、この映画を一度見た後には世界と向き合う姿勢まで変えられてしまうぐらい。
えー。
本当にそうなんです。
具合良くなってるじゃないですか、じゃあ。
そう、めちゃくちゃ具合良くなってるんです。
本当にそうなんです。
でね、もうほんとね、途方もない注意深さと大胆さを両立させながら、私たちが生きる現実の先にいじでも希望を見出して、それを観客に差し出すような一本でございまして。
もういよいよこの一言を投下しますけどね。
はい、もう現時点で、というか、もう何ならもうここ数年の間でベストに上げたいぐらい破格の一本でございました。
出たー!
2026年、ベスト。
もうね、すごい、すごい。
もうちょっとね、この映画どうやって越えんだろうというぐらいすごいです。
えー。
はい、いきます。
えー。
ここからその魅力をご紹介していきます。
はい。
まずはですね、この急に具合が悪くなるという映画のあらすじからご紹介します。
はい。
パリ郊外の介護施設、自由の庭で施設長を務めるマリー・ルーという女性がいます。
このマリー・ルーは、入居者を人間らしくケアすることを理想とするユマニチュードというですね、先進介護があるんですけど、それを導入しながらも、その施設の人手不足だったりとか、スタッフの無理解に悩まされているわけですね。
そんな中、そのマリー・ルーはですね、ある偶然をきっかけに、日本人の舞台演出家、森崎マリさんというですね、その女性とですね、出会うわけです。
で、彼女がパリで公演する演劇公演に足を運び、その内容に勇気を与えられるような気持ちになるんですね。
で、なんですが、その公演後の舞台挨拶で、その舞台演出家のマリさんは、実は余命半年の心肝癌と糖尿中であるということが明らかにされます。
ここでマリーさんとマリさん、この同じ名前の響きを持つ偶然にも導かれまして、みるみる交流を深めていく、その二人だったんですけれども、ある時マリさんは急に具合が悪くなる。
その、まあ言ったらね、ご自身の病状が悪化してしまうわけです。
で、そのマリさんの病気の進行とともに、二人の関係が深まっていくわけですけれども、そして互いの魂を通わせ合うようになっていき、そしてっていう、まあそういうようなゲームなんですね。
原作との関連性と偶然性
この映画、今やもう世界の映画界から本当に新作が最も待望される映画作家の一人になりました。
濱口龍介監督の最新作で、彼にとって初めての日本とフランス、あとまあ本当はいくつかの国があるんですけど、メインはその二つの国を舞台とした初の国際共同作品となりました。
で、先月開催されたカンの国際映画祭で初上映されると、上映後なんと14分もの拍手喝采が鳴り止まないほどの、もう観客の心を震わせまして、主演の二人に最優秀女優賞を二人同時に受賞させるという異例の結果をもたらしたということになります。
で、そんな本作なんですけど、実はこの急に具合が悪くなるというですね、同じタイトルを持つある一冊の本を原作とした映画なんです。
で、この映画を紹介するにあたっては、ちょっとこの本との関わりをもう絶対に切り分けることができないほどに重要なものになっているので、ここからそれをちょっと紹介します。
はい、この原作なんですけれども、実際に癌を患って、医師からあなたは急に具合が悪くなるかもしれないからと宣告されて、転移が進行するただ中にあって、なお生き抜いていた哲学者の宮野真希子さんという女性がいます。
その方と臨床現場の調査を積み重ねていた人類学者の磯野真希子さんというですね、この2人の女性が交わした20通の往復書簡からなる書籍なんですね。
お手紙のやり取りだったんです。で、言ったらこれね、当初はだから言ったら物語の形式ですらない本なわけですよ。
で、この本に、しかしこの2人の魂のやり取りに非常に感銘を受けた濱口監督は、全くその異なる境遇の2人の登場人物に設定を置き換える、言ったら本案を行うわけですけれども、その過程においてね、濱口さんが意識されたことは、やっぱりそのまず宮野さんと磯野さんの所感に現れるような言葉だったりとかやり取りをただ借りてくるのとは次元の違う2人の間柄のその根底にある。
いわば土壌とも言うべきものをまず丁寧に捉えて、そこから生まれる物語を入念に育んでいくようなね、そういうような映画作りに勤められたというふうにインタビューでも答えていらっしゃいました。
で、ちなみにこの原作に登場するその哲学者の宮野真紀子さんは、お亡くなりになるまでですね、福岡大学で準教授を務めておられただけではなくて、この原作本が生まれるきっかけもまさしく福岡の親福岡通りにあった、ある本のあるところ、アジロっていうですね、この本屋さんがあるんですけど、この書店で2人が登壇されたイベントがきっかけだったんですよ。
ということで、ここ福岡でこの本作は実は生まれた縁だったりとか偶然とも結びついていることをちょっとここでお伝えします。
で、ここで偶然という言葉を使いました。で、これは実はその宮野真紀子さんが生前専門に研究されていたのが、私たちが生きる中で出くわす無数の偶然性、その不思議さを探求した久喜修造というですね哲学者がいたんですけど、その人の研究をずっと宮野さんされていたんですよ。まさしく偶然はもう本当に宮野さんのど真ん中なんです。
で、そしてこの偶然というもの自体がこの物語、そしてこの映画全体の非常に重要な起点となるものであることとつながっていきます。
で、この物語はですね、とにかく幾重にも偶然、つまり人間の予期を超えて私たちに巻き込む出来事だったりとか、その可能性がとにかく張り巡らされているわけですね。
これは例えば、それまで全く面識のなかった国籍も年齢も異なる2人の女性がフランスの地で出会うということだったりとか、偶然2人が同じ名前を持ち合わせていたことだったりとか、予期せず互いに共通する問題意識を抱えていてすぐに意気投合することだったりとか、
そしてマリさんは偶然にも嫁い成国を受けるような病気を患ってしまっていることであったりとか、あるいはいつどの瞬間にも予期せず急に具合が悪くなる可能性を抱えていることだったりとか、などね、これ例を挙げ始めたらキリがないわけです。
なんですけど、それは当然そのはずなんです。というのが、私たちがこの世界で生きるということは、そうした無数の偶然と絶えず出くわしては、その度に複数の分岐に晒されて、その度に瞬間ごとの選択を重ねているということが、私たちの人生の実装でもあるということですよね。
ケアと映画の共通点、そして希望
で、この映画が本領を発揮するのはここからなんですよね。で、あのちょっと話が一旦ちょっと横に逸れるんですけど、劇中に登場するこのマリールーという女性はケアの現場で先ほどちょっと触れたユマニチュードというですね、ケアの理想を抱えながらその浸透がなかなか難しいというその困難に葛藤する様子が描かれるわけですけど、このユマニチュードというですね技術が重視するのは、目の前にいる患者の今ここ、今っていうこの瞬間を徹底的に見ることが重要なんです。
そしてその相手と心を通わせるところからケアを始めていくっていうそういう技術なんですね。で、言い換えればそれは人を単なる処理可能な情報の束のようなものとして見るのではなく、今目の前にいる相手そのもの、目の前で起きている出来事そのものに関心を向けて、それを迎え入れて、また自らもそこに関わっていくっていうケアの姿勢であり、また眼差しなんですね。
で、ここまで来てその眼差しっていうのが実は映画の原理とも限りなく近いんじゃないかということにだんだん気づかされているわけですね。
映画ってのはね、まず多くの人にとってはもちろん映像で何かしらの物語を伝える、その表現みたいなこととして思うかもしれないんですけど、それをさらに微分していくと、それは誰かがカメラを向けたある出来事、その現実の記録として存在しているものなんですね。
で、そこではあらかじめ予定調和なものだけを映し取っていくってことは、実は原理上不可能なんですね。
いつでもカメラが向ける時にはそれは被写体となる俳優さん、その人間だったりとかその演技、あるいは背景として映り込む街灯とか、天気とか光とか音とか、そうした無数の予期せぬ偶然も丸ごと迎え入れて引き受けて、その瞬間ごとの美しさとかその輝きに全力で注意と関心を払って完成させていくのが映画っていうものだとも言えるわけですね。
ここでケアと映画っていうのが実はだからその共通する眼差しがあるってことが見出されるわけです。
で、それは言い換えると偶然にお見事される無数の今、その現実が生まれる瞬間に美しさや可能性を見出すことであるということ、そしてそれを引き受ける私たち人間の態度であるというわけです。
さらに言うと、それは私たちに絶えず訪れ続ける無数の今、その偶然の不確実性みたいなものを排除するのではなく、目の前の人と世界にとにかく関心を払い尊厳を抱きながら関わっていくっていう姿勢であり、自分たちを取り巻く世界への信頼を回復して、今ここっていうその偶然に身を委ねる勇気であるということが理解されていくわけですね。
ここまで来るとまずここでもううっとりするぐらいに見事な論法だって思うわけです。
なんだけど、ここでさらにこの映画がすごいのは、そのようであってなおその実現が難しいという私たちの世界に根強く横たわっている現実がこの映画の中盤以降驚くようなやり方で明らかにされていきます。
ぜひここから映画をご覧いただきたいんですけど、そこである種提示される絶望的な私たちの現実の中から、それでもなおどのように抜け道を探ることができるのか。
自分たちの生きるこの世界の絶望に抵抗すべく、今一度私たちを取り巻く世界、それ自体の尊厳を見つめるっていうアクションからどのように取り戻してあり得る希望の道筋を探っていけるのかという、そういう映画になっていきます。
この世界とその応答の可能性をもう一度信じてかけてみるということに、観客たちを誘い出すのが、この急に具合が悪くなるという映画です。
約束しますけど、この映画を見終えた後には本当に世界の見え方が変わります。
諦めちゃいけない。
そうなんです。本当にそうなんです。
さらにはこの映画は本当にいろいろすごいことを達成しているんですけど、とにかく驚かされるのは、正直この一本の映画でここまでのことを達成してしまえるのかということの驚きであるし、間違いなく濱内監督は映画という表現の操縦能力が世界の中でも超一級の、どれだけ映画が上手い人なんだということが圧倒されるほどの一本でした。
はい、ということで映画急に具合が悪くなるは、明日6月19日より福岡ではTJ博多ユナイテッドシネマ他にて公開となります。
この困難な現実が山積するこの時代にあって、目の前の相手への、そして自分を取り巻く世界への信頼を取り戻させ、もう一度その可能性と希望に賭けてみたくなる気持ちにさせるような映画です。
もう本当に絶対絶対劇場でご覧くださいというご紹介でございました。
リスナーへのメッセージと次回予告
見てないのに痺れた。感動しました。
マジで最高です。
見に行きたいと思います。
そして月に一度お送りする6月のリスナー名作劇場。テーマはお願いします。
お父さんにまつわる映画といえば。
はい、ということで父の日もありますけれどもね。
父親にスポット当たる映画、メール、そしてファックス、そしてSNSで今度の日曜日まで送ってください。
お待ちしております。ここまで三石豪平のキャッチアップでした。
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