アイデア図鑑の企画と背景
(音楽)
(松本)皆さんこんにちは。学芸出版社編集部の松本ゆうまと申します。
今回はマチザラジオエディターズトークということで、
学芸出版社から発売になりました「建築模型アイデア図鑑」「身近な材料で作る83の方法」の
企画編集担当者の古野のさつきさんにお話を伺いたいと思います。
古野さんよろしくお願いします。
じゃあまず簡単に古野さんの自己紹介をお願いします。
(古野)はい、編集担当をしました古野と申します。
学芸出版社では2017年に入社をして、今年で4年、今4年目が経過したところになります。
建築学科を出身で編集の商店に就いたという経営的です。
(松本)はい、ありがとうございます。ということで今回の本「建築模型アイデア図鑑」
まずどういう本なのか、簡単に振り返ってもらえますか、紹介してもらえますか。
(古野)はい、建築模型アイデア図鑑は、建築の仕事をされている人だったら誰でも模型を作ると思うんですけれども、
そういう模型を作るための材料、模型用材料というものをなるべく使わないで、
100円均一だったりとか、ホームセンターとか、あとは道端で拾えるものなんていうのを使いながら、
どんな面白いアイデアが作れるのかというのを、8図3画集めて、その作り方と一緒に紹介するような本になっています。
もともとこの本の一番最初のアイデアは、この西日本工業大学の石垣孝先生が持っていたもので、
それを広げてこの本にしていったというのがあるんですけれども、
なのでまずは石垣先生に最初に声をかけて、一緒に作っていきましょうという中で、
たまたま九州産業大学の石垣先生と、私は学生の頃に大変お世話になったんですが、
石垣先生を中心とした九州産業大学のABC建築道場というグループが、
週毎という企画をしていて、週に1回テーマを決めて、
それに対する空間を模型で表現をして発表をする、
1位をみんなで投票で決めるという企画をしていて、
参加しているのは建築学生さん?
そういう探伝も日々やっていることから、
九州産業大学の学生さんというのは非常に模型作りが優秀的で非常に上手かったんです。
というのを知っていたので、ぜひ一緒にやってくれませんかと声掛けをして、
この2組でやっていただけることになったという。
模型作成にかかるコスト
先ほどの紹介でもあったように、身近な材料で作る、
そんなめちゃくちゃお金がかかるものではなくて、
手近で手に入ったり、あまりお金をかけずに調達できるというのは、
石垣先生やABC建築道場の方々も普段から心がけていることだったんですか?
そうですね。石垣先生は道端で拾えるものとかも使っていらっしゃったんですけど、
結構ホームセンターに行って、模型材料になりそうなものを探すというのをライフワーク的にやられていて、
そういうところに詳しいというのと、
あとABC建築道場は学生さんの活動、やはり先生が師範で、
学生さんが活動されているということで、当然お金に余裕がないという、
お財布が厳しいという皆さんなので、いろいろ活用されて、
特に100円金質とかを活用されていたり。
古野さんは、模型って結構お金かかるなというか、
アイデア図鑑の制作
かけずに作れたらいいのになという思いは、元から古野さん自身も持っていたんですか?
そうですね。
石垣先生とABC建築道場の皆さんと一緒に作ることになったこの本ですが、
どういうふうに進めていきましたか?
企画、編集、原稿、作成というか、中身を作っていくにあたって。
中身を作っていくにあたっては、
模型のアイディアと作り方を紹介するというのはまず決まっていたんですけど、
それに対してどんな情報が追加されていけばいいのかというのを、
まず最初に話し合いをして、
フォーマットを決めてからそこに埋めていってくださいという形で進めていきました。
この83の方法、目次見たら、
例えばポリ袋で作る静かに揺れる水面とか、
大きいのけで作る冬の木立ちみたいな、
すごく身出し作りとかの工夫をしている印象がありますけど、
アイディア83というのは最初から決まったんですか?
もっと多く出して絞っていったという感じですか?
最初はできるかどうか分からないというように、
100というのを準備していまして、
ただ実際作り始めるとやっぱり、
時間もかかっているか、大変なので、
100までは頑張ってアイディアは出してみましょうというので、
100くらいは出してもらいましたね。
そこからどんどん、これはちょっと乗せるのは厳しいだろう、
みたいな話を重ねながら、83まで絞られていった。
なるほど。
このアイディアをまずフォーマット決めて作っていく中で、
何か一番苦労したところは?
そうですね。一番苦労したのは、
皆さん普段から作られているものではあるんですけど、
例えば今回作り方を6段階に分けて紹介しているわけなんですが、
みんなさらっと作っちゃっているので普段、
これをどう分けていくかとか。
手順として分かりやすく示すってどうなるのかとか。
手順を6段階に分けて説明していくときに、
アイディア表現に関する議論
どう分けたらいいかとか、
あとは実はアイディア自体は面白いんだけど、
もう3個まで終わってしまうみたいな、
手順が3つで終わってしまうみたいなことも、
特に後半の典型なんかはよくありまして、
その辺をどういうふうに表現していくのかっていうのは、
結構議論になったところですね。
あとは、右上に目安って言って、
作業時間と難易度が今書いているんですけど、
ここは本当はもっといろいろ買いたかったところであったんです。
ただ、今回100円均一とかホームセンターとか、
いろんなところで材料を買ってて、
値段がそもそも、
どのメーカーの何を買ったら作らないみたいな。
目安に要は必要経費みたいなものを示せたらよかったみたいな。
それは確かに何を使うかによって幅があって、
でも大体は数百円とかレベルで調達できる。
大体1000円以下で作れちゃうような感じなんで。
ということで、この83の中でいくつか、
プロ野さんが特に気に入っているものとか、
自分は建築学生の頃はやってなかったけれど、
すごくいいと思ったみたいな、
一応、趣のアイディアがあればいくつか教えてください。
水辺の表現
そうですね。
2章の周辺環境のところで、
水辺を作るアイディアがいくつか出ているんですけど、
これはすごいみんな役に立つだろうなと思っていて、
まず広い場所の水辺の表現として、
6番と7番のスプレーするだけの波がざわめく水面というのと、
ポリ袋で作れる静かに揺れる水面というのがあるんです。
これは多分設定した敷地が海だったり、
広い水辺の敷地だと、
必ず表現しなきゃいけない水面というものを、
結構簡単にできるっていうので、
面白いなと思っているのと、
8番のレジン液で作る浅瀬の川というのは、
これはどっちかというとちょっとした水辺?
雨で水溜りできちゃったとか、
田舎のすごい浅い川みたいな、
そういうのを表現するのにすごい向いていて、
水辺と表現ってなかなか難しいし、
本当はモデリングウォーターという専用の材料を使ったりするんですけど、
それだとものすごく高いので。
レジン液ってちなみに何なんですか?
アクセサリーを透明なものに閉じ込められているアクセサリーみたいな、
ああいうのを作るときの材料で、
太陽の下に置いておくと、
それで固まる、紫外線で固まるっていう液。
これ使えるじゃんって思ったきっかけを知りたいですね。
本とは全然関係ないですけど。
たぶん本当にモデリングウォーターとか、
8番の下に乗っているジェルメディウムってやつの水系の素材なんですけど、
高いんですよね、本当。
高いし広い面積に使えないから、
ものすごくお金がかかるみたいな。
だいたい水辺を具体的に表現したい時って、
コンペだったりとか、
ここぞという曲をやりたいやつなので、
結構模型がデカくなるっていう。
必然的にコストも高くなる。
コストも上がるっていう悩みがあって、
たぶんそれを百均とかウロウロして、
これ使えるってなったんじゃないかな。
ちょっとした発明っていう感じ。
関連すると、205ページの方に、
資料として載せている水辺の表現。
ロー。
これも似たような感じで、
ローはレジン液だと量に限りがあるんで、
小さめの敷地というか場所が向いてるんですけど、
ローはプルプルのローがあって、
それを使うみたいなんです。
ロウソクとみたいなんじゃなくて、
もうちょっとなんか。
おしゃれなインテリア用みたいな。
あれを溶かして流し込むんです。
じゃあもうちょっと建物とか家具とかの方はどうですか。
食材を使ったアイディア
あとは今敷地を紹介したので、
食材のところに、
リファンショーが食材なんですが、
食材って模型で非常によく使うんですよ。
小さな模型から大きな模型まで、
いろいろ使ったりするんですけど、
それに対応、各スケールに対応したアイディアが
たくさん出てきたなと思っていて、
特に切ってると便利だなって単純に思うのは、
30番の落ち葉を集めた賑やかな庭木っていうのは、
実際の植物を乾燥させて使うっていうアイディアなんです。
普通食材って模型用材料で作ろうとすると、
針金で軸を作って、
もしゃもしゃした材料を上につけて木にするっていうと、
だいたい表現が似てくるんですけど、
落ち葉だといろんな樹種が使えるので、
単純にちょっと違った印象を与えられるというのと、
あとは模型に色が加わるので、非常にいいなと思います。
あとは、31番以降に抽象的な表現が結構載ってますけど、
これもすごく面白いなと思うし、
32番のマップピンなんかは本当に使いやすいし、
立てるだけ?
そうです。
こういう極端に言う人。
身近な材料で建築模型を作る方法
刺していくだけなんですよ。
完成写真のところは少し工夫をして、
ヤスリで削ってスプレーを軽く吹きかけることで、
ちょっと木の葉っぱの感じが出るっていうので工夫してるんですけど、
別に白とか透明のやつで、それだけでもいいなと思うし、
あとは四巻ブラシはこれはかなりの発明で、
これは面白い。
ちょっともう全員驚いたっていうか。
確かにすごくシン・ワンジュリンっぽく見えるという。
持ち手の方も使うっていう。
ゴミを出さないっていうのも結構建築学生の課題で。
なるほど。
模型のアップサイクルみたいな。
そうです。
それにもいいなっていうものですね。
あとは、建築の仕上げ、4章の建築の仕上げだと、
35番の耐水ペーパーで作る色あせたスレッド屋根なんかは、
本当に上手に作ればかなりリアルですし。
この写真とか見ても、よく街中で見るこういう屋根っぽいというか。
そうなんです。すごくいい感じに作れるというか。
36番は結構執念で。
これ折るだけで作れるっていう色が見えます。
屋根の、これは瓦の境目を折ることで表現している。
これは作り方としては簡単なんですけど、
難易度を見ると簡易になっているように。
雑にやっちゃうとそのまま完成度が低くなるけど。
上手に作れば写真のように美しくて。
こういうのが見つかったっていうのが面白かった。
確かにね。素材勝負みたいな、アイデア勝負みたいなところもあれば、
ある程度こういう風に、テクニック勝負みたいなものも混じっていると。
面白い。いいですね。
なんかすごい、全部一個一個聞いていきたいぐらい。
すみません。一個一個話しそうになってしまいました。
小物の方は、一押しというか、
一押しは67番のくるみボタンで作る鍋とフライパンっていう。
かわいい。
くるみボタンって布を巻いて仕上げるボタンっていう。
布を巻いて挟んでボタンに。
たまに。
ちょっとレトロなシャツみたいなのに使われてたりするんですけど。
これをそのまま、スマイレージと合わせてそのまま使えるっていう。
しかもかなりリアルに仕上がるっていうので、
すごいこれも発明だなと思います。
やっぱりこういう鍋とかフライパンとかも、
僕が建築出身じゃないからちょっと分かってないところもあるけど、
やっぱり模型の中でこういう生活風景みたいなのを
フライパンとかで示すみたいなのも定番というか、
模型の作りでは割と必要な要素なんですか?こういうの。
必要な要素ですね。
定番っていうわけじゃないんですけど、
コンペとかここぞという課題で模型を作ろうとすると、
やっぱり大きく表現したくなってくる。
1/30とかになると、
本当にこう中身がかなり表現しないと寂しくなっちゃうので、
こういう鍋とか、アプチュン68番のお皿とかを使うと、
すごくよく表現できる。
スケールによってやっぱりそういう要素を模型に盛り込むか、
小物や家具の制作方法
みたいなのも全然変わってくるということですね。
やっぱり大きい模型になってくると、
この後半の家具インテリアだったりとか、
典型っていうのを入れた方が、
魅力的な模型にできるっていうのが。
あと紹介しとかないといけないですね。
78番のつけまつげの教室用ホウキもこれもちょっとお気に入り。
つけまつげの毛の細さと密度が模型用のホウキにちょうどよい。
そう。
なんかすごい面白い。
ちょっとこれ私真面目にふざけたなと思うのは、
つけまつげ(ボリュームタイプ)って書いたのが結構キモで、
もっと薄いのもあるけれど、そうじゃなくてたっぷりのやつ。
そうですね。
模型制作に対する熱意と探求心
あともっと言うと、
やるの人が使うようなグリーンってなったやつじゃなくて、
まっすぐのやつが必要っていう。
そういうちょっと面白い。
これは面白い。
これは作ってるときに、
ちょっと時間がかかった本なので、
担当してる学生さんがちょっと変わっていったり、
代替わりしちゃったりして、
たぶんもともと女の子が出してきた案だったんですけど、
今やってるのは男の子になっちゃったみたいで、
私がつけまつげにどういうこだわりがあるか書いとくと面白くないですかって言ったときに、
ちょっと男なんでわからないので、
女の子の学生に聞いてみますみたいにやりとりがあったりしました。
だんだんこういうのばっかり考えてくると、
機能を度外視して素材だけが見えてくるみたいな。
目に見えてくるみたいな。
確かに模型のアイデアを考えまくってると、
だんだん自分のものの見え方がすごくミクロになっていっちゃう。
結構ちょっと最後につながるかもしれませんが、
先生方が期待されてるのはそういうところで、
やっぱりこの本を見て、この本通りに作るっていうのも、
読者層と推奨
表現の手法が増えるっていうのでいいんですけど、
そうじゃなくて、こんなの使ってるのかと思って、
そういう目でものを見ていってほしい。
そうすると多分そこに載ってる以外の表現が自分で見つけられるようになって、
それがないと作れないと思ってたはずが、
こんなに作れるものが身近にあるじゃないかと思えるようになるというのが、
非常にこの本を通して伝えたいことだと思います。
はい、じゃあその流れで、
どういう人に読んでほしいかっていうあたり、メッセージ的にお願いできますか。
学生さんにはもちろん、
学生さんが多分一番目標をくくって作る機会が多いんじゃないかなと思うので、
ぜひ読んでもらいたいなと思うんですけども、
実務の方もぜひこういう表現があるっていうことを見て読んでいただけたら嬉しいなと思います。
あと、模型アイデア図鑑ですが、コラモに2つ入れていって、
長年講演の整備をされてきた行政職員の方による、
植栽模型というのをどういうふうに作っていけばいいのかというコラムと、
建築カメラマンの鳥村浩一さん、非常に有名な方なんですけれども、
模型写真をどういうふうに撮っていったら、どういうふうに加工していくとうまく撮れるかというコツをテキストで書いていただきましたので、
ここも非常に読んでほしいなと思います。
確かにすごい充実感がありそうなコラムですね。
ということで、今回は建築模型アイデア図鑑の編集担当者の鵜野さつきさんにお話を伺いました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
(♪ BGM)