2023-07-03 04:28

「自然界の図となる色①」『色彩の手帳 建築・都市の色を考える100のヒント』|学芸出版社クイックライブラリー

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気になるあの本の一節を朗読でお届けする“学芸出版社クイックライブラリー”。

今回は、色彩計画家の加藤幸枝さんによる『色彩の手帳 建築・都市の色を考える100のヒント』から、1項目をピックアップし「自然界の図となる色①」をご紹介します。

▼書籍詳細
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761527143/

サマリー

自然界の図となる色は、草花や昆虫、小動物などの命ある小さなものが持っている鮮やかな色です。人間もそのみずみずしさを環境における図的要素として位置づけられています。

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気になるあの本の一節を朗読でお届けする、学芸出版社クイックライブラリー。
今回は、色彩計画家の加藤幸恵さんによる、
色彩の手帳、建築・都市の色を考える100のヒントから1項目をピックアップし、
自然界の図となる色①をご紹介します。
自然界の図となる色①
自然界の図となる鮮やかな色は、草花や昆虫、小動物など命ある小さなものが持っている、と定義しています。
人間も薄い皮膚を通して血色が浮き立って見えるような赤子や、
はつらつとした若い女性など、そのみずみずしさは環境における図的要素として位置づけられ、
この世界に生き生きとした鮮やかな彩りを添えています。
ただし、その鮮やかさはあくまで一時的なものです。
花の姿や樹木の紅葉はその季節限りのものですし、
人目を引く昆虫も限られた命の中でその姿を印象的に見せています。
人も生物の一種ですから、例えば年を重ねるごとに白髪になったり、
肌の色がくすんでいくことなどはごくごく自然な現象です。
自然界の変化と彩り、フランスのカラーリストジャン・フィリップ・ランクロッシュは、
現在、実務から身を惹かれ、ご自身が所有する島で、毎日海の景色を見ながら過ごされています。
朝、昼、夕の景色を何百枚と描かれていて、いまだに飽きることがないそうです。
絵の具を混色するために使うのは紙皿で、
一枚描き上げるごとにその色が残った紙皿、パレットも保管し続けているのだとか、
色とその表現に対する根っからの探求心と、
色彩に対する飽くことない興味を持ち続けていらっしゃるのだなと感じます。
刻々と変化する美しい景色は、国や文化、年齢を問わず、私たちの心を強く惹きつける事象の一つです。
定位しない、変化し続けるということと、季節により様々な彩りが見られること、
そしてそれが時間の変化とともに繰り返されることなど、飽きない要素が満載です。
私たちの暮らしの傍らにこうした自然の変化があることを思うと、
動かないものイコール建築や工作物は、
やはり自然の存在を生かすような見せ方を考える方が得策なのではないかと感じます。
1990年代、公共施設や設備にアメニティという名目の下、
地域の花や鳥、特徴ある行事、お祭りや花火大会などが描かれ、
地域のらしさやにぎわいが端的な形で表現される事例が目立ちました。
現在でも規模の大きな壁面や工作物に、地域のシンボルを描こうという動きは見られ、
それが地域の資産として定着している場合も稀にありますが、
やはり本物の花や鳥をその地で目にする感動に追いつくのは難しく、
ならば、その本物がより生き生きと魅力的に見える、
体感できる状況を整えることに力を注ぐべきではないかと考えています。
自然界の図となる色①をお送りしました。
続きはぜひ本書をお手に取ってお読みください。
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