2023-07-10 15:03

「今求められる公民連携とは」『公民連携まちづくりの実践』|学芸出版社クイックライブラリー

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気になるあの本の一節を朗読でお届けする“学芸出版社クイックライブラリー”。

今回は、前大津市長で弁護士の越直美さんが、自治体による公民連携プロジェクト推進のノウハウを解説した『公民連携まちづくりの実践 公共資産の活用とスマートシティ』から、「Introduction:今求められる公民連携とは」をご紹介します。

▼書籍詳細
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761527891/

サマリー

越さんは、前大津市長であり弁護士でもあります。彼女は、自治体による公民連携プロジェクトの推進方法について解説しています。さらに、彼女は公民連携が現在求められていることについても話しています。具体的には、自治体が新しいテクノロジーを活用し、公民連携とスマートシティに注力する必要があると述べています。

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気になるあの本の遺説を、朗読でお届けする、学芸出版社クイックライブラリー。
今回は、前大津市長で弁護士の越直美さんが、自治体による公民連携プロジェクト推進のノウハウを解説した、
公民連携まちづくりの実践、公共施設の活用とスマートシティから、
イントロダクション、今求められる公民連携とは、をご紹介します。
公民連携まちづくりの実践、公共資産の活用とスマートシティ、
越志直美著、イントロダクション、今求められる公民連携とは、
人口減少、少子高齢化、施設老朽化の問題
自治体の三重区、人口減少、少子高齢化、施設老朽化、
今、日本の抱える最も大きな問題は人口減少である。
日本全国の多くの自治体は、人口減少、少子高齢化、施設老朽化という三重区に苦しめられている。
日本の人口は2008年から減少している。
2021年6月現在の日本の人口は、1年前と比べ約40万人減少した。
1年間で人口約34万人の大津市が丸ごと消滅してしまう計算だ。
そして人口減少は、自治体の三重の大きな部分を占める個人住民税や固定資産税の減少につながる。
人口減少とともに進行するのが少子高齢化である。
2020年現在、日本の高齢化率、人口に占める65歳以上人口の割合は29%。
40年後の2060年には高齢化率は38%と予測され、人口の4割を高齢者が占めるようになる。
自治体の財政運営を既に宿泊させているのがこの高齢化である。
すなわち、民生費、生活保護、高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉等に関する費用といった社会保障費の増大である。
例えば大津市では、一般会計当初予算に占める民生費の割合は2005年度の28%から2019年度には42%に増加した。
社会保障費が増大することにより、自治体が自由に使えるお金が減っているのである。
さらに、このような財政難の中、自治体の公共施設の老朽化が進む。
自治体の保有する施設は高度経済成長期に整備されたものが多い。
大津市でも、保有する施設の約80%が1965年頃から2000年頃に整備された。
既に50年以上経過している施設もあり、大規模改修や建て替えが必要となっている。
このように今、自治体は人口減少で歳入が減り、高齢化により社会保障費に係る歳出が増大する中で、
老朽化した公共施設の維持管理や更新を行わなければならないという三重区の状況にあるマイナスのパイを切り分ける。
そのような状況の中で、自治体がやるべきことは2つである。
まずは、人口を増やす努力をすること。
私が市長に立候補した動機は、保育園が足りないことなどにより、
女性が仕事か子供かの二者卓一を迫られる社会を変えたいということだった。
市長在任中の8年間に、保育所等54円、約3000人分を整備し、
待機児童は年度当初で4年ゼロとなった。
その結果、5歳以下の子供をもってフルタイムで働く女性が70%増加し、M字カーブが解消した。
そして、減少傾向であった大津市の人口も2019年には増加した。
しかし、日本全体で見た場合、残念ながら手遅れという状況である。
今後、出産・子育てをする若年層の人口はすでに減少している。
また、2020年の合計特殊出生率、一人の女性が一生の間に産む子供の数は1.34。
人口を維持するのに必要とされる2.1に遠く及ばない。
公民連携によるまちづくりの実践
そこで必要となるのが、病在生改革である。
人口増加の昭和の時代、自治体の役割は、市民にプラスのパイを切り分けることであった。
自治体内のどの地域に新しい施設や道路を作るかを決めるのが、市長や議会の仕事であった。
しかし、人口減少時代においては、自治体の仕事はマイナスのパイを切り分けることである。
どの地域のどの施設をなくすのか。
痛みを市民に振り分けることが避けられなくなっている。
私は8年間、子育て支援と並んで、この病在生改革に取り組んだ。
高齢者のハリキュー、マッサージや経路祝い金等の補助金をカットし、幼稚園等の施設の投配合を進めた。
事業や補助金の廃止等で132億円を削減。
そのために職員が何度も関係者や地域に説明に行き、私自身も怒鳴られ、高齢者に冷たいと言われながら説明を続けた。
決して楽しい仕事ではない。しかし、人口減少社会において避けては通れない仕事である。
自治体の役割の転換。空間の開放。
このように、人口減少社会において自治体のすべきことは、子育て支援による人口増加と業在生改革であると思い、私は当初よりマニフェストに掲げ、一貫して取り組んだ。
しかし、厳しい財政状況の下、何をするにもお金がないというところから出発しなければならない中で、第三の回もあるのではないかと気づいた。
それが、本書で述べる公民連携である。これまで、自治体がまちづくりを行う場合には、市民の税金で公共事業を行うという手法が主であった。
しかし、人口減少時代には、自治体にお金がなく公共事業はできない。では、まちづくりはできないのかというと、答えは否である。
必要なのは発想の転換である。自治体が何でも自分でするのではなく、今、自治体に求められているのは、自治体の持つ資産を手放すことである。
日本の自治体は、戦後、そして高度経済成長期において、公共施設やインフラを整備してきた。
それらの中には、老朽化や時代のニーズとの不一致により、使われなくなっているものもある。
そして、公共施設やインフラの維持管理が自治体の主になっている今こそ、それらの施設を民間に開放し、民間事業者に使ってもらうのである。
公民連携が生み出す市民の幸せ。
自治体にお金がないというところから出発した公民連携の実践であったが、本書で述べるプロジェクトを進めるうちに、わかったことがあった。
公民連携の真の価値は、経費削減ではなく、より市民が楽しい街づくりをすることにあったのだ。
これまでの行政の仕事の進め方は、様々な市民や関係者の意見を聞き、まず計画を作る。
計画に基づき、予算を割り振り、公共事業を進める。
当然、時間がかかり、出来上がった時点で、すでに時代と合わないこともある。
また、公共事業は税金を使う仕事であるがゆえに、様々な市民の意見を聞くうちに、建築する建物の個性が失われ、全国どこの自治体にでもあるような、面白みのない建物ができてしまう。
さらには、個人市民税や固定資産税といった市税収入と、これらの公共事業に対する支出が連動していないため、赤字採算の過大な施設を作ってしまうこともある。
これに対して、民間事業者が事業を行う場合、自治体の倍くらいのスピードで事業が進む。
そして、民間事業者は事業の採算性を重視するため、顧客の動向に敏感である。
顧客、つまり市民が求めているものを作ることができる。
大津市において公民連携の結果できた施設やサービスは、自治体では実現することができなかったものであった。
すなわち、市民が楽しめる空間や市民にとってより便利なサービス。これが公民連携が生み出す真の価値である。
スマートシティへの応用
スマートシティへの応用。情報の開放と失敗の許容。新しいテクノロジーが発展し、情報革命が進む今。
自治体がスマートシティの取り組みを進めることは、人口減少社会に対する第4の回となる。
本書で言うスマートシティとは、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント、計画、整備、管理、運営等の行動化により、
都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域を意味する。
人口減少は労働力不足も引き起こす。そこで労働力不足を補うため、新しいテクノロジーを使うことが考えられる。
例えば、バスの運転手不足という課題については、本書で述べる通り、自動運転という甲斐がある。
新しいテクノロジーを使うことの目的は、市民生活を便利にすること。
そして、自治体のデジタルトランスフォーメーション、DXを進め、行政を効率化することにある。
ここでも自治体の役割に対する基本的な考え方は同じである。
自治体にはAIといった新しいテクノロジーの知見はない。
一方で自治体は、多くの情報を有し、その情報が有効活用されないまま眠っている。
この情報を開放し、民間事業者に使ってもらうことが自治体の役割である。
そして、スマートシティを進める上で一番大切なことは、自治体が失敗を許容することである。
新しいテクノロジーの発展において、失敗なくして成功はない。
行政は間違ってはならないという無病性から脱却し、自治体がスタートアップ企業と融合し、
共に失敗を繰り返しながらスピーディーに前に進んでいけるかが問われているのである。
街づくりの在り方の変化
情報革命時代に求められる街。
自治体と少子高齢化の中で、全国の自治体は昭和時代の公共事業中心の街づくりを続けるのか、
それとも公民連携やスマートシティに舵を切るのか、今まさに帰路に立っている。
新しいテクノロジーの発展は、これまでの街づくりの在り方を根底から揺さぶっている。
かつて商店街が郊外大型店舗に駆逐され、また地方では百貨店の閉店が相次いでいる。
そしてこれからは、インターネットショッピングの発展により、郊外大型店舗も安泰ではない。
インターネットで何でも買える時代において、それでも人が出かける場所はどこなのか。
新型コロナウイルス感染症の流行は、人口減少の影響を前倒しで顕在化させた。
乗客の減少によるバスや鉄道の廃止や減便。
自治体が10年後のものと思っていた公共交通の危機が現実化し、私たちにも猶予はない。
一方で、新型コロナウイルス感染症の流行は、地方に新しい可能性をもたらした。
デスクワークができる業種では、在宅勤務が当たり前となった。
東京からの人口流出が起こり、地方に移住したり、ワーケーションとして地方で過ごしたりする人も増えるであろう。
私たちは、もう買い物に行く必要もなければ、仕事に行く必要もない。
そのような時代に人が求め、人が出かける場所。
自治体と民間事業者・市民の連携
それは、そこにしかない自然や価値がある場所。
家族や友人と楽しく過ごせる場所。
自分が本当に行きたい場所である。
だからこそ、自治体は、全国均一の街づくりから抜け出し、
民間事業者と共に、市民が楽しいと思える、個性ある街づくりをすることが求められている。
そのような街を作るため、今こそ自治体は、公共事業の主体から、
民間事業者や市民に空間や情報を開放するプラットフォーマーへと形を変えていかなければならない。
当然、民間事業者や市民も、利益の追求や要望だけではなく、
自らが地域にコミットし、楽しさや面白さを享受する。
人口減少の先は暗闇ではない。
私たちは、発想と手法の転換により、より自由で楽しい空間を作ることができるのである。
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