レジリエンスをキーワードに、世界20の都市戦略と実践から持続可能な街づくりのヒントを読み解いた『世界のSDGs都市戦略-デジタル活用による価値創造』。
20都市のとりくみから見えてきたことを、本書の著者であり国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の櫻井美穂子さんにお話しいただきます。

主な話題
・SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」をターゲットにした書籍
・今のまちづくりは“インクルーシブ”が進んでいない
・SDGs達成のためには自治体が旗振り役になることが必要
・海外では“共創”という言葉がよく使われている
・デジタルプラットフォームを活用している自治体は多い
・学童クラブを自治体が先導―未来の“共創”の担い手に(ノルウェー)
・ご近所パートナーシッププログラム―住民自身がまちを考える仕組み(イギリス)
・「まちの通貨くるっぽ」―デジタル活用で地域のつながりを可視化(鎌倉市)

▼書籍ウェブページ
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761527839/
SDGs都市戦略とターゲット
世界のSDGs都市戦略 デジタル活用による価値創造
このまち座ラジオで、今日は第2回対談をさせていただきたいと思います。
私は、著者の桜井美穂子と申します。
今日の対談のお相手は、私の国際大学グローコムの同僚の菊池英輝さんです。
菊池さんは、まちづくりと観光、文化の観点から研究をされています。
菊池さん、よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
ちょっと、菊池さんからいくつか質問をいただきながら、この本と絡めて話したいなと思います。
まずなんですけど、SDGsって17個のゴールがあると思うんですけど、
この本は17個のうち、どこを主にターゲットにしている本なんですか?
この本がターゲットにしているのは、ゴールの11です。
インクルーシブ・アンゼン・レジリエントで持続可能な都市づくり、
このように日本語で訳されているもので、
まちづくり全般に関わってくる内容はだいたい網羅しているかなという感じです。
僕のテーマ的には、インクルーシブとかすごい興味があるワードなんですけど、
自治体主導の役割と主体
やっぱり今のまちづくりの時に、本当にいろんな人がインクルーシブされているのかというところはすごい大事だと思うんですよね。
なかなか僕自身が今関わってたりとか見ている自治体では、
そんなにあんまりインクルーシブが進んでないんじゃないかみたいなところもあるんですけど、
例えばこの本の中でインクルーシブ、あるいは多分他のキーワードで言うと、
エンゲージメントとかもそうだと思うんですけど、
そういうのの旗振りって誰がしている感じなんですか?
この本はですね、ゴール11のまちづくりのいろんな戦略を、世界の戦略を見ているんですけれども、
一つの大きなメッセージとしては、自治体がSDGsのゴールに向けた旗振り役をしないとこれからいけないですよねっていうメッセージがあります。
いろいろな地域のステークホルダーとか主体をまとめて、
オーケストラで言ったら指揮者の役割を担うのがこれからの自治体の皆さんの非常に大きなミッションなのかなというふうに思っていて、
世界の事例の中でも自治体の方がそのハブになって、地域の競争っていう言葉がかなり使われているんですけれども、
コークリエーションとかワンチームとか、ラグビーでありましたね。
そのワードで自治体の人が旗振り役になっているという事例がすごく多くて、
ただ担いとしては自治体だけに限らなくて、
例えば藤沢のSSTというサステナブルスマートファインの事例もご紹介しているんですけれど、
そちらは民間主導で競争をやっているので必ずしも自治体には限らないんですけれど、
そこに何らかの主体が必要ですねっていうのは本書のすごくこの本の大きなメッセージかなって思います。
デジタル活用によるコミュニケーション
なるほど、なるほど。
誰か指揮者がいるとして、なかなかこれまでの自治体行政とかだと指揮が振れていなかったようなのを思うんですけど、
日本でも世界でも、どうやって指揮を振るときにそれこそいろんな人を巻き込んでいく、その仕組みって例えばどういうものがあったりするんですか?
この本の副題はデジタル活用による価値創造ってつけているんですけれど、
一つ大きなキーワードとしてデジタル活用っていうのがありまして、
主にコミュニケーションの観点でデジタルプラットフォームを入れている自治体が世界でもかなり多くてですね、
この本の中でいろんな自治体の例をご紹介しているんですけれど、
例えば私自身も住んでいたノルウェーのクリスチャンサウンドっていう町では、
ユースクラブっていう子どもたちの日本でいう学童のクラブ活動を自治体が先導して、市役所の文化担当部長の方がリードをされて、
一緒に子どもたちと遊んだり、ゲームボードで遊んだり楽器を弾いたり、大人も一緒に遊ぶっていうのがちょっと日本と違う特徴かなと思うんですけれども、
そういうユースクラブっていうのをやっていて、それのフェイスブックのページを作っていて、
メインとしては子どもたちの親御さんをターゲットにしているんですけれども、
そういうオンライン上のコミュニケーションを通して、子どもたちが将来的に自治体と競争の相手になれるような、
競争ってさっきのコークリエーションの相手になれるようなストーリーを描いているっていうのがすごくイメージで。
それめちゃくちゃ面白いですね。
だってなかなか日本の学童でフェイスブックを使っている例ってあるのかもしれないんですけど、
世間的な広報は知ってたりしますけど、そこにソーシャルメディアをかませて、
親と自治体がつながるし、しかもそれを通じて子どもたちも巻き込んでいくと。
しかも小さい時からなかなか行政とか自治体と子どもたちで関係作るって発想が日本にそもそもないじゃないですか。
すごい北欧ならではの視点だなと思って、私もいい事例だなと思っています。
あともう一つが、これも面白い事例が、イギリスのブリストルという町で、
ご近所パートナーシッププログラムというのを立ち上げてまして、
地域コミュニティのデジタル活用事例
この市の中を14つの地域に分けて、それぞれの地域に予算を最大で500万円くらいなんですけど、
予算を市から提供して、地域の課題を自分たちで解決してくださいとか、
地域の盛り上げを自分たちでやってくださいという形で組織をしていて、
ここでもやっぱりFacebookを使っていて、それぞれの地域ごとにFacebookページを作ったり、
市役所として一つこのプログラムのご近所パートナーシッププログラムのページを作っていて、
それぞれのページで市役所の連絡の担当者だったり、
地域の問題、あと学校とか駐車場の情報、毎日の太陽光発電の稼働状況、
いろんな情報、
町に関するいろんな情報がそのFacebookに載っていて、
そのFacebookを通して地域の人たちが自分たちでどういうふうに町を作っていこうかというのを、
自発的に考えられる仕組みとして作っています。
なるほど。
地域とか市とか行政単位って、ともすればやっぱり人の顔が見えなくなっちゃうじゃないですか。
でも実際にコミュニティって人と人の繋がりでできてるから、
ソーシャルメディアを使うと逆にそこが炙り出されてきていいですよね。
そのエンゲージメントってこの本で言っているんですけれど、
競争を共に作るために世界の自治体がすごく力を入れて、
市民との皆さんとのエンゲージメントとか、
観光でその時たまたまいらっしゃる人とのエンゲージメントとか、
いろんな観点で実践されているので、
ぜひこの本を読んで参考にしていただけると嬉しいです。
確かにあれですもんね、
Facebook使うとかYouTube使うって別にお金ほとんどかからないから、
日本の自治体とかでもできたりとかしますもんね。
逆に日本の例とかはないんですか?
日本もいろいろありまして、
この本では鎌倉氏さんをご紹介しているんですけれども、
街の通貨クルッポっていう地域のコインを、
オンラインプラットフォーム上でアプリで実装している。
地域通貨が進化したようなイメージですかね。
地域の人たちとの関係性とか、
自分がその地域で行ったアクションに対してポイントがつくっていう仕組みを導入していて、
これもデジタルを使って関係性とか、
いろんな地域との関わりを可視化して、
ゲーミフィケーションでやっていくっていうので、
すごく面白いなと思っています。
自治体主導のデジタル活用事例
そういう事例がたくさん入っているのが、
この世界のSDGs都市戦略ということですね。
20都市の事例がありますので、
何かご参考にしていただける情報があると嬉しいです。
少なくとも僕の研究分野的には結構知らない話ばかりで、
しかもこれってまさに実際に地域づくり、町づくりやろうとしている時に
結構使えるアイディアだなと思ったので、
早速明日、自分のやっている地域の人たちにこの話をしたいなと思いました。
ありがとうございます。
皆さんご清聴ありがとうございました。
ありがとうございました。
10:06

コメント

スクロール