磨く作業どのくらいかかるんですか?
これは2日くらい、磨くだけで2日くらいかかっちゃったかな。
2日前の状態と2日後の状態では全然違います?
全く違いますね、仕上がりがね。
完成度を上げるっていうことは僕あんまり好きじゃなくて、なんか結果的に磨き上げようとか、そういうことが好きなんじゃないんですよ。
そうじゃなくて、神代っていう木の性質を考えた時に最大限に魅力を引き出してあげたいなっていうことを考えたら、それが一番最適かなっていう風に思えたので、今回はやりましたけれど、
本来はもう粗削りのままこれでいいやって感じで、粗削りでも大まかな考えが形に現れていれば逆にいいんじゃないかなみたいなね、そういうような普段は考え方をしてるんですけど。
あれなのかな、この神代に限っては普段の考え方の方じゃなくて、神代の性質の方にかなり寄せてるっていう感じですかね。
そうですね。これは磨いて木目出してあげないと悪いなっていう、そんな気持ちでした。
じゃあこれは素材が神代だからやっぱりこういう仕上がりだし、あとこういう皮が出てたからとか、こういう特徴のある素材だからこの形になったっていう感じですかね。
おっしゃる通りだと思います。
本当に素材によって何ができるかっていうのが変わりますね。
そうですね。こないだのとは表情が全く違うので。
それがでも対話してるっていうことなんですかね。
うーん、僕はそう思ってるんですけど、素材が話しかけてくれる感じなのかな。
なんか素材が話しかけてくれるっていうのもあるだろうし、あと素材に効いてるっていう感じが。
あー効いてる。
ここが皮がこれがあるから、ここを残そうかね、みたいな。
そうですね。なんかね神聖な感じがしちゃうんですよ、そこを。
例えば皮の部分とかね。手をつけられないみたいな。
あー、もうその木が持っている個性っていうか、もうそれが立ち現れている場所だからかな。
はい。
そしたらもうこうならざるを得ないみたいな感じで決まっていくのかな。
本当にもうその通りで、やってるプロセスっていうのは必然性に流れてくって言ったらいいのかな。
必然のつながりで自分が動かされてくって言ったらいいのかな。
逆に自分の方がね、僕がこう何か形を作ってやろうっていうんじゃなくて、
もう木材に自分がコントロールされちゃって、使わされて仕上げさせられてくような、逆転しちゃってるって言ったらいいのかな。
木材の方が主人で、私は召使いでみたいなね。
前油絵の時もそんなことをおっしゃってましたよね。
そうですね、結局。
色を置く時に、やっぱり自分がどうとかじゃなくて、キャンバスにどの色を置いたらいいのかとか、
自分が道具かなっていう風にその時もおっしゃってましたよね。
そうですね。自分の方が道具になっちゃうんですよね。
いやでも綺麗になりましたね。すごい磨かれてる。
ね、テッカテカにしてあげて。
これで一番初めの写真の状態になるってことですかね。
かしわぎさんにこの状態で撮影していただいたってことですね。
いやー、あの撮影の写真すごい良かったですね。
そうなんですよ。もう機材とやっぱりフラッシュ取り付けたりとか、
あと背景をすごく反射がしない布を使ったりとか。
木目とかすごい綺麗に見えましたね。
すごくツヤも綺麗に出たんで。
これ実物を見たらまた面白いんだろうな。また写真と違いますもんね、実物って。
やっぱり彫刻の周りをぐるぐるとしゃがんだり、上から見たり、
周りながら見ると空間のつながりっていうのが体で感じられるので、
図物と写真は全然違うかな。あの彫刻に関してはね、特に。
これも、もあ展で発表されるんですか?
そうですね。もあで発表した後、個展でもこれ発表しようかなって思ってますね。
やっぱ全然違うな、写真も見たら。
写真で見るとこの真ん中の残したところ、これがかなり目立つというか、
さっき作ってる時にはそんなに目立って見えなかったけど、これがすごく見える。
あと下の、目立たないけど、下に残した川の部分。
これやっぱり残した甲斐があるなっていうすごい味が出てますね。
ねえ、よかったな。
これやっぱこの下あるないと全然違いますね。
そうですね。
作ってる動画とか写真とかはついついこのさ、面積が広い断面の川に目が行っちゃってたんですよ。
だけど写真で見るとこの真ん中と右下のちょっと欠けてるところの表情っていうのが際立ちますね。
はい。これが例えば右下が欠けてるのに対応して左下も斜面落としてるんですよね。
右上の川のセットバックのところに対して左上がセットバックしてるっていう形で。
いや面白いな。ここから一番初めの写真行ったら全然わからなかったです。
え、どういうこと?って思って。
色も違うし、厚みもなんか全然。
そうですね。
写真で見るより厚みがあるんですよね、きっと。
ああ、そうですね。意外に元のこの木の厚みは残ってるんで。
この真ん中のところに厚みがありそうですもんね。
そうですね。真ん中が一番厚い。真ん中は元の厚みが残ってる場所ですね。
面白いな。
え、違う彫刻の話になると思わなかったんだけど。
いや、前紹介したお話の続きしたかったんですけど。
いや、こっちでもすごく面白かったですけど。
脇道にそれたらずっと終わらなくて。
本当に毎日何時間だろう、本当に4、5時間ずっと連続でいつになって終わるんだろうみたいな感じで。
全然先が見えなかったですね、始めちゃったら。
元のでかいの作んなきゃと思いながらやってましたけど。
でも何だろう、5時間とか4時間とか作業してても5分ぐらいにしか感じないって言ったらいいのかな。
そうなんだ。
もう何か夢中でやってたらあっという間に時間が飛ぶようにあーって過ぎちゃってて。
えー。疲れるとかはあんまないんですか?5分ぐらいに感じるってことは。
その時点では全然ないんですけど、やっぱり後でちょっと時間経ったりすると結構やっぱり疲れてたんだなーなんて出てきて。
まあそれを1ヶ月続けてると、知らない間に朝、午前中絵描いてたりもするんで、ちょっと疲れが溜まってて、この間オーバーワークでダウンしちゃったんですよね。
うーん、そうなんですね。
でもその疲れ、分かんなくなっちゃうぐらい夢中になっちゃうんですね。
全然分かんなくなっちゃうんですね。
掘ってるとき。
はい、掘ってるときはね。
なんかスイッチが入るのかな。
そうですね。工具でガーって削ってたりとかいうのなんかスイッチあるんでしょうね。
子供たちが作業してる様子見てても、やっぱりちっちゃい3、4歳の子がダンボールカッター持つと、なんかすごいスイッチ入るんですよね。
えー。
ガーって削って。
で、なんか誇らしげにするんですよ。道具は使えたっていう時にね。
うーん。
そういうなんか人間に入れるスイッチっていうのが道具にはあるのかもしれないなぁ。
だから絵を描いて楽しい感じがしてるのかもしれないですね。
なんか形が作られていくのが、筆とか何も持ってない手とか、柔らかいものよりは工具の方が早いのかな。だからかな。グイーって進む感じがするのかな。
僕の感じてる感じでは逆で。
うん。
工具だと、例えば一つの直線的な面を作る時に、そこに丸1日とか丸2日、ちょっと面作るのにかかっちゃうんですね。
うーん。
まず寸法をとって、補助線に沿って、彫り進めていくっていうところから始まって、それを荒削りしたら、今度は磨いて、やすって、平らにして、それを今度磨き上げていくみたいな感じで、
一つの場所作るのに工程がいくつもあって、作業が長いわけですよ。
でもそれはキャンバスの上だと色を置いて、その色に対して暗くしたり明るくしたりみたいなことはあるんだけれども、
うん。
割と思考と筆がダイレクトに繋がっちゃってるんですよね。
うーん。
作業って呼べるものが彫刻よりは少ない。
そうなんだ。
なので、絵を描く方が疲れる感じがするんですよね。
次回は続きをお送りします。