令和8年度診療報酬改定では、かかりつけ歯科医による口腔機能管理を推進するため、歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料の3つの管理料が見直されます。今回の見直しは、口腔機能発達不全症や口腔機能低下症と診断されているにもかかわらず、算定要件を満たさないために適切な管理を受けられない患者が多数存在するという課題に対応するものです。この記事では、個別改定項目「Ⅱ-3 かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価」⑥に基づき、3つの管理料の変更内容を解説します。
今回の改定のポイントは3つあります。第1に、歯科疾患管理料は初診月の減額規定が廃止され、90点に一本化されます。第2に、小児口腔機能管理料は2区分(90点・50点)に細分化され、評価項目2項目該当の患者にも対象が拡大されます。第3に、口腔機能管理料も同様に2区分(90点・50点)に細分化され、検査実施の有無で区分が分かれます。
歯科疾患管理料:初診月の減額廃止と90点への一本化
歯科疾患管理料は、初診月の80/100減額規定が廃止され、初診月・再診月を問わず一律90点に変更されます。
現行の歯科疾患管理料は100点ですが、初診月に算定する場合は所定点数の80/100(80点)に減額されます。この初診月減額の仕組みは令和2年度改定で導入されたものです。一方、在宅患者を対象とする歯科疾患在宅療養管理料には、このような受診月による評価の差がありません。
今回の改定では、この初診月減額規定が廃止されます。改定後の歯科疾患管理料は90点となり、初診月であっても再診月であっても同じ点数で算定できるようになります。点数の増減を整理すると、現行では初診月80点・再診月100点であったため、改定後の一律90点に対して初診月は10点の増加、再診月は10点の減少となります。
小児口腔機能管理料:2区分化と対象患者の拡大
小児口腔機能管理料は、現行の1区分(60点)から2区分(管理料1:90点、管理料2:50点)に細分化され、対象患者の範囲が拡大されます。
現行の小児口腔機能管理料は、「口腔機能の発達不全を有する18歳未満の児童」が対象であり、60点で算定されています。しかし、口腔機能発達不全症と診断されているにもかかわらず、算定要件を満たさないために管理料を算定できない患者が多数存在しています。NDBデータによれば、令和5年5月時点で口腔機能発達不全症の病名で歯科疾患管理料のみを算定している件数は約13万件にのぼる一方、小児口腔機能管理料の算定件数は約7,000件にとどまっています。
改定後は、この課題に対応するため、対象患者の表現が「口腔機能発達不全症の18歳未満の患者」に改められるとともに、評価項目の該当数に応じて2区分に分かれます。小児口腔機能管理料1(90点)は、口腔機能の評価項目において3項目以上に該当する者が対象です。小児口腔機能管理料2(50点)は、評価項目において2項目に該当する者が対象です。この2区分化により、従来は管理料を算定できなかった2項目該当の患者にも、口腔機能に特化した管理が提供できるようになります。
情報通信機器を用いた場合の点数も見直されます。オンライン診療の点数は、管理料1が78点、管理料2が44点にそれぞれ設定されます。
口腔機能管理料:検査実施に基づく2区分化
口腔機能管理料も、小児口腔機能管理料と同様に、現行の1区分(60点)から2区分(管理料1:90点、管理料2:50点)に細分化されます。
現行の口腔機能管理料は、「口腔機能の低下を来しているもの」に対して一律60点で算定されています。しかし、口腔機能低下症と診断されていても管理料を算定できていない患者が存在しており、令和5年5月時点で口腔機能低下症の病名で歯科疾患管理料のみを算定している件数は約7.7万件に対し、口腔機能管理料の算定件数は約7,400件にとどまっています。改定後は、対象患者の表現が「口腔機能低下症の患者」に改められ、病名に基づく管理がより明確になります。
改定後の区分は、検査の実施状況によって分かれます。口腔機能管理料1(90点)は、口腔細菌定量検査(2に限る)、咀嚼能力検査(1に限る)、咬合圧検査(1に限る)、口腔粘膜湿潤度検査、舌圧検査のいずれかを実施した口腔機能低下症の患者が対象です。口腔機能管理料2(50点)は、口腔機能管理料1の対象患者を除く口腔機能低下症の患者が対象です。この区分により、検査に基づく質の高い管理にはより高い評価がなされる一方、検査未実施の患者にも管理料が算定できるよう対象が広がります。
情報通信機器を用いた場合の点数は、管理料1が78点、管理料2が44点です。この点数設定は、小児口腔機能管理料と同一の構造となっています。
まとめ
令和8年度改定では、歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料の3つの管理料が見直されます。歯科疾患管理料は初診月の減額規定が廃止され、90点に一本化されます。小児口腔機能管理料と口腔機能管理料は、いずれも管理料1(90点)と管理料2(50点)の2区分に細分化され、対象患者が拡大されます。これらの見直しにより、口腔機能発達不全症や口腔機能低下症の患者がより幅広く口腔機能管理を受けられる体制が整備されます。
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サマリー
日本には口腔機能発達不全症と診断された多くの子供がいるにもかかわらず、医療費制度の「見えないバグ」により適切なケアを受けられない現状があります。令和8年度の歯科診療報酬改定では、この課題を解決するため、歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料の3つの管理料が見直されます。これにより、初診月の減額廃止や管理料の2区分化、対象患者の拡大が図られ、より多くの患者が口腔機能管理を受けられるようになります。
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