令和8年度診療報酬改定では、療養病棟入院基本料について、患者の病態や医療資源投入量をより適切に反映させるため、医療区分2・3に該当する疾患・状態・処置等の内容が見直されます。あわせて、療養病棟入院料2における医療区分2・3の患者割合の要件も引き上げられます。
今回の見直しのポイントは3つです。第一に、感染症の治療に係る処置と他の処置を併せて行う場合に、医療区分3として評価されるようになります。第二に、非がん疾患に対する緩和ケアとして、末期呼吸器疾患・末期心不全・末期腎不全が医療区分2に追加されます。第三に、超重症児(者)・準超重症児(者)に該当する小児が、それぞれ医療区分3・2に追加されます。さらに、療養病棟入院料2の医療区分2・3の患者割合は、5割から6割に引き上げられます。
感染症処置と他の処置の併施による医療区分3の新設
第一のポイントは、処置に関する医療区分の引き上げです。従来、感染症の治療に係る処置(肺炎治療、尿路感染症治療など)は、いずれも医療区分2として評価されていました。今回の改定では、これらの感染症処置が創傷の治療等の他の処置と併せて行われている場合に、処置等に係る医療区分3として入院料を算定できるようになります。
この見直しの背景には、処置の複合的な実施に対する評価の適正化があります。医療区分2の処置には、肺炎と褥瘡のように合併しうる病態が含まれています。今回の改定では、これらの処置を「感染症の治療に係る処置」「創傷の治療に係る処置及び器具の管理等を伴う処置」「その他の処置」「リハビリテーション」の4カテゴリーに分類した上で、感染症の治療と創傷の治療等が合併した場合の医療資源投入量の増加を、医療区分3として適切に評価する仕組みが新たに導入されます。
具体的には、新設される「別表第五の三の二」の(1)と(2)の両方に該当する場合が、医療区分3の対象となります。(1)は感染症の治療に係る処置(肺炎治療、尿路感染症治療、脱水治療、頻回の嘔吐治療、経腸栄養)であり、(2)は創傷の治療に係る処置及び器具の管理等を伴う処置(褥瘡治療、末梢循環障害の開放創治療、創傷・感染症治療、中心静脈栄養、人工腎臓等、気管切開等)です。これらの処置をそれぞれ1つ以上同時に実施している場合に、医療区分3の算定が可能となります。
非がん疾患に対する緩和ケアの評価(医療区分2への追加)
第二のポイントは、非がん疾患に対する緩和ケアの評価です。従来、疾患・状態に係る医療区分2の対象は、悪性腫瘍に対する医療用麻薬等の薬剤投与による疼痛コントロールに限られていました。今回の改定では、悪性腫瘍以外の3つの末期疾患が、疾患・状態に係る医療区分2に新たに追加されます。
追加される3つの疾患は、末期呼吸器疾患、末期心不全、末期腎不全です。末期呼吸器疾患は、適切な治療が実施されているにもかかわらずヒュー・ジョーンズの分類がⅤ度の状態に該当し、呼吸困難に対して医療用麻薬の投与によるコントロールが必要な状態をいいます。末期心不全は、器質的な心機能障害により慢性的にNYHA重症度分類Ⅳ度の症状に該当し、頻回もしくは持続的に医療用麻薬の投与またはその他の点滴薬物療法による苦痛・症状のコントロールが必要な状態をいいます。末期腎不全は、慢性的に日本腎臓学会慢性腎臓病重症度分類Stage G5以上に該当し、腎代替療法を必要とする状態であるが透析療法の開始・継続が困難であり、医療用麻薬等の投与による苦痛のコントロールが必要な状態をいいます。
このように、3疾患とも「適切な治療にもかかわらず末期の状態にあること」と「医療用麻薬等による苦痛・症状のコントロールが必要であること」が共通の要件です。この見直しにより、療養病棟においても非がん疾患の終末期患者に対する緩和ケアが適切に評価されることになります。
超重症児(者)・準超重症児(者)の受入れに対する評価
第三のポイントは、医療的ケア児の受入れに対する評価です。今回の改定では、超重症児(者)入院診療加算の基準に該当する小児について、療養病棟入院基本料の医療区分に新たに位置づけられます。
具体的には、15歳未満の小児患者のうち、超重症の状態にある者が疾患・状態に係る医療区分3に追加されます。同様に、15歳未満の小児患者のうち、準超重症の状態にある者が疾患・状態に係る医療区分2に追加されます。ここでいう超重症・準超重症の状態とは、区分番号A212に掲げる超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算の注1・注2にそれぞれ規定する状態を指します。
この見直しにより、療養病棟における医療的ケアが必要な小児の受入れが、医療区分の仕組みの中で適切に評価されるようになります。
療養病棟入院料2の医療区分2・3患者割合の引き上げ
上記3つの見直しに加え、療養病棟入院料2における施設基準も変更されます。医療区分2・3の患者割合の要件が、現行の5割以上から6割以上に引き上げられます。
この引き上げは、より医療の必要性が高い患者の受入れを推進する観点から行われます。ただし、現に療養病棟入院料2を届け出ている保険医療機関については、令和8年9月30日までの経過措置が設けられます。令和8年3月31日時点で療養病棟入院料2を届け出ている医療機関は、同年9月30日までの間、新たな6割要件を満たしているものとみなされます。
まとめ
令和8年度改定における療養病棟入院基本料の見直しは、3つの柱で構成されています。第一に、感染症処置と他の処置の併施を医療区分3として評価する仕組みが新設されます。第二に、末期呼吸器疾患・末期心不全・末期腎不全の3疾患が非がん緩和ケアとして医療区分2に追加されます。第三に、超重症児(者)・準超重症児(者)に該当する小児がそれぞれ医療区分3・2に追加されます。さらに、療養病棟入院料2の医療区分2・3患者割合は5割から6割に引き上げられ、令和8年9月30日までの経過措置が設けられます。療養病棟を運営する医療機関は、医療区分の変更に伴う算定の見直しと、患者割合要件への対応を早期に進める必要があります。
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サマリー
令和8年度の診療報酬改定では、療養病棟入院基本料が見直され、複雑な病態を持つ患者への対応が強化されます。具体的には、感染症と他の処置を併せて行う場合に医療区分3として評価されるほか、非がん疾患の緩和ケアや超重症児・準超重症児の受け入れが医療区分に追加されます。これにより、療養病棟はより高度で専門的なケアの場へと転換し、医療区分2・3の患者割合要件も6割に引き上げられるため、地域の医療機関は早期の対応が求められます。