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2026-01-02 16:30

日本の高額療養費制度は皆保険の屋台骨:アメリカUSAプランが示す医療保険改革の本質

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日本では高額療養費制度の変更が議論されています。UCLA准教授の津川友介氏は、自身のnote記事「日本の高額療養費制度と、いまアメリカで議論されている最先端の医療保険制度の関係について」(2025年12月25日公開)で、アメリカの医療経済学者ダナ・ゴールドマン氏が提唱する「USAプラン」を紹介し、日本の高額療養費制度が皆保険制度における「ど真ん中」の問題であると指摘しています。本記事では、津川氏のnote記事で紹介された内容を基に、高額療養費制度の本質と日本への示唆を解説します。

高額療養費制度は、医療費の自己負担に上限額を設ける制度です。津川氏によれば、この制度は他国では「破滅的医療費保険制度(Catastrophic health insurance)」と呼ばれ、国民を破滅的医療費から保護するものです(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。世界保健機関(WHO)は、破滅的医療費を「家計の医療費自己負担額が家計の支払い能力の40%を超える状態」と定義しており、この状態では他の基本的な生活必需品が賄えなくなります。アメリカでは、医療に市場原理の効率性を維持しながら皆保険のような状態を達成する方法が議論されており、ダナ・ゴールドマン氏の「USAプラン」はその代表例です。この新しい医療保険プランは、すべての医療サービスをカバーするのではなく、セーフティネットとして機能するという考え方に基づいています。

USAプランの設計:所得に応じた自己負担構造

USAプランは、65歳未満の国民を対象に、所得ベースの自己負担額構造を採用しています(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。年収75,000ドル以下の家族には医療が無料で提供されます。年収75,000ドルを超える家族では、所得の10%までが免責金額となり、この金額までは保険は何もカバーしません。例えば、年収100,000ドルの4人家族の場合、1人あたりの自己負担額は2,500ドルです。

自己負担額には上限があります(出典:同上)。個人の自己負担額は1人あたり年間7,500ドル、または年収300,000ドルの4人家族の場合は年間3万ドルが上限です。平均すると、アメリカ人は約1,300ドルの個人自己負担額に直面することになります。予防医療や慢性疾患治療など、独立した第三者機関が「高価値医療」と認定した医療サービスは、自己負担から除外されます。この除外条項は、医療費の自己負担の障壁が必要な予防医療を妨げないようにしながら、日常的な医療サービスを受けるかどうかに関してより合理的な判断をすることを目的としています。

USAプランの経済哲学:モラルハザードの抑制とセーフティネットの両立

ゴールドマン氏の提案は、日常的な軽症医療に対するモラルハザードを引き起こす医療保険のデメリットを取り除くものです(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。津川氏は別のnote記事「モラルハザードとは、コンビニ受診のことである」(2024年10月16日公開)で、モラルハザードについて詳しく解説しています。モラルハザードとは、医療保険の影響で患者が支払う価格が市場価格よりも低くなっているため、本来必要としているサービスよりも多くの量のサービスを消費してしまう現象のことです。日本で言われている「コンビニ受診」のことを経済学ではモラルハザードと呼び、医療保険のようなシステムがあるときに起こるべくして起こる人間の行動パターンの変化を指します。

ランド医療保険実験により、医療サービスの価格弾力性は-0.2~-0.3であることが判明しました(出典:津川友介氏note記事「モラルハザードとは、コンビニ受診のことである」、2024年10月16日)。これは、自己負担の価格が10%上昇すると、患者が希望する医療サービスの量が2~3%下がることを意味します。USAプランは、この経済原理を活用し、日常的な医療サービスに関して国民がより合理的な判断をすることを促します。

一方で、USAプランはセーフティネットとして高額な医療費による経済的リスクから国民を守ります(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。高額な医療費負担によって不幸になってしまう人や、破産してしまう人を防ぐという、医療保険の本来の役割を果たします。ゴールドマン氏は、医療保険は「すべての人にすべての医療サービスを提供する必要はないが、すべての人に対するセーフティネットであるべき」という考え方を示しています。

高額療養費制度の国際的位置づけと日本の課題

高額療養費制度は日本特有のものではありません(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。津川氏によれば、ほぼすべての先進国で存在する制度です。ゴールドマン氏のUSAプランのように、これさえきちんと維持しておけば、あとは100%自己負担であっても「皆保険」の目的は達成できると考えられているような、皆保険の屋台骨とも言える制度です。

津川氏は、アメリカやシンガポールのように、健康リスクに関して自己責任の価値観の強い国であっても、そして医療保険への加入を義務としない国であっても、高額療養費制度だけは維持しておく必要があると考えられていると指摘しています(出典:同上)。この点は、高額療養費制度が単なる補助的な制度ではなく、医療保険制度の根幹をなすものであることを示しています。

USAプランの自己負担額の上限額と比べても、日本の高額療養費制度の上限額は現時点でも高く、さらに今後引き上げられることが検討されており、皆保険としての役割を果たさなくなってきていることを示唆しています(出典:同上)。ダナ・ゴールドマン氏とキップ・ハゴピアン氏は、論文「The Health-Insurance Solution」(National Affairs, 2012)において、破滅的医療費保険の設計原理を詳細に論じており、所得に応じた免責金額の設定や自己負担上限額の重要性を強調しています。

日本への示唆:窓口負担割合と上限額のトレードオフ

津川氏は、USAプランが示す重要な示唆として次の点を指摘しています(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。日本の医療費の窓口自己負担は現在1~3割ですが、USAプランが意味しているのは、窓口負担割合を5割などに上げても、高額療養費制度の自己負担上限額を低めに設定しておけば、国民が医療サービスによる経済的リスクを負うことはないということです。

この考え方は、医療保険制度の設計において重要な選択肢を提示しています。日常的な医療サービスでは患者がより多くを自己負担することで、医療サービスの価値を意識した受診行動を促す一方、高額な医療費が発生した場合には確実に保護されるという、メリハリのある制度設計が可能になります。

津川氏は、日本の高額療養費制度をどうするかは、日本の皆保険制度における枝葉の問題ではなく、「ど真ん中」の問題であると強調しています(出典:同上)。日本が「皆保険が崩壊した国」とならないためにも、①高額療養費制度の上限額を上げるのか、それとも②窓口自己負担割合を上げるのか、どちらの方がより国民の求める制度なのか、国民的議論が必要だと指摘しています。

まとめ

高額療養費制度は、破滅的医療費から国民を守る皆保険の屋台骨です。アメリカで議論されているダナ・ゴールドマン氏のUSAプランは、高額療養費制度を軸としたセーフティネットの重要性を示しています。このプランは、日常的な医療でのモラルハザードを抑制しながら、高額な医療費から国民を守るという、医療保険の本質的な役割を明確にしています。日本では高額療養費制度の上限額引き上げが検討されていますが、これは皆保険制度の根幹に関わる問題です。窓口自己負担割合と上限額のトレードオフを含め、国民的議論が求められています。

著作権・引用について

本記事は、津川友介氏のnote記事を引用元として明示した上で、その内容を紹介するものです。

津川氏のnote記事には「当サイトの情報を転載、複製、改変等は禁止いたします。その他の記事に引用する場合には許可を取ってください(無断引用を禁じます)。ご理解のほどよろしくお願いいたします。」との記載があります。本記事は、著作権法に定める引用の要件(引用の必然性、主従関係の明確性、出典の明示)を満たす形で、津川氏の論考を紹介するものです。詳細な内容については、必ず以下の原典をご参照ください。

参考文献・原典:

【主要引用元】

* 津川友介「日本の高額療養費制度と、いまアメリカで議論されている最先端の医療保険制度の関係について」note、2025年12月25日公開

* 津川友介「モラルハザードとは、コンビニ受診のことである」note、2024年10月16日公開

【USAプラン関連の原典】

* Dana Goldman “Money Alone Can’t Fix the ACA. Here’s How to Cover Everyone Without Increasing Costs.” USC Schaeffer, December 3, 2025 https://healthpolicy.usc.edu/article/money-alone-cant-fix-the-aca-heres-how-to-cover-everyone-without-increasing-costs/

* Kip Hagopian and Dana Goldman “The Health-Insurance Solution” National Affairs, Fall 2012 https://www.nationalaffairs.com/publications/detail/the-health-insurance-solution



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サマリー

日本の高額療養費制度の見直しが進む中、アメリカのUSAプランとの比較によって、国民皆保険の重要性が再認識されています。この制度は医療費の自己負担を抑え、家計を守るためのセーフティーネットとして機能し、貧困化を防ぐ役割を果たしています。また、高額療養費制度の皆保険としての重要性が強調され、医療費負担の形について深刻な議論が展開されています。この議論では、日常的な医療における負担と高額療養費制度の維持・強化の2つの選択肢が浮かび上がり、今後の医療制度の方向性が問われています。

高額療養費制度の見直し
最近、日本の高額療養費制度の見直しが議論されているの、耳にしたことありますか? 毎月の医療費の自己負担に上限を設けてくれる、あの制度です。正直、僕はこれまで、また少し負担が増えるのかな、くらいにしか思ってなかったんですけど。
ほとんどの方がそうだと思います。日々のニュースの中の一つ、というくらいの感覚ですよね。
そうなんです。でも今回、あなたが共有してくれた資料、特にUCLAの塚田雄介氏の論考を読んで、考えがガラッと変わりました。もしかしてこれって、僕たちが当たり前だと思っている国民皆保険というシステムの、その土台そのものを許しかねない、とんでもなく大きな話なんじゃないかと。
まさにその点に気づくことが、今回の出発点になります。一見地味な制度変更の議論の裏に、日本の医療が今後どっちの方向へ進むのか、という重大な分岐点が隠れているんですね。
というわけで今回は、塚田氏の分析を手がかりに、この問題を深く掘り下げていきたいと思います。特に塚田氏が紹介している、アメリカの新しい医療保険制度案、USAプランが、まるで鏡みたいに日本の現状を映し出していて、非常に興味深いんですよね。
そうですね。そのUSAプランを深く見ることで、高額療養費制度が持つ本当の意味と、今、日本が直面している選択肢をはっきりと浮かび上がらせていきましょう。
では早速、基本の確認からいきましょうか。そもそも高額療養費制度とは何か。すごく簡単に言うと、病気や怪我で医療費がどんなに高くなっても、個人の月々の支払いはこの上限額までですよ、と。キャップをはめてくれるありがたい仕組みですよね。
その通りです。そして、まず押さえておきたい重要な点は、これが日本だけの特殊な制度ではないということなんです。
そうなんですか。
国際的には破滅的医療費保険、英語だとCatastrophic Health Insuranceと呼ばれてまして、多くの国で医療保険の根幹機能と位置づけられています。
いい名前ですね。言葉のインパクトが強いですけど、それだけ切実な問題だということでしょうか。
ええ、的確な表現なんです。というのもWHO、世界保険機関が破滅的医療費を定義していまして、それは医療費の自己負担が家計の支払い能力、つまり食費とか住居費とかを除いた最良所得の40%を超えちゃう状態を指すんです。
40%?うわあ、それはもう生活を切り詰めてどうにかなるレベルじゃないですね。子供の学費とか、将来のための貯金とか、そういうもの全部諦めなきゃいけないみたいな。
おっしゃる通りです。病気になったせいで家計が破綻して貧困に陥ってしまう。そんな最悪の事態を防ぐための最後のセーフティーネット。
なるほど。
それがこの制度の本質なんです。だからこそ単なる補助的な給付じゃなくて、国民皆保険の屋台骨と呼ぶにふさわしい中心的な機能と言えるわけです。
最後のセーフティーネットですか。そう考えるとこの制度の重みが全く違ってきますね。でもそのセーフティーネットの在り方自体にもいろいろな考え方があるんでしょうか。実は資料にあったアメリカのプランがまさにその点を問い直すようなかなり大胆な内容で驚いたんですが。
医療経済学者ダナゴールドマン氏が提唱するUSAプランですね。あれは非常に視差に富んでいます。自由診療が基本のアメリカで市場の効率性を損なわずにどうやって国民を医療費のリスクから守るかっていうその問いに対する一つの答えなんです。
面白いのは日本の皆保険みたいに全ての医療を安価にカバーしようとするんじゃなくて、保険の役割をさっき出たセーフティーネット機能にある意味で特化させてる点ですよね。
ええ、その思想が具体的な制度設計に色濃く反映されています。所得に応じて自己負担の仕組みががらりと変わるのが特徴で、まず一つ目のポイントは低所得相当への配慮。年収7万5千ドル以下の家族は医療が原則無料になります。
なるほど、そこは分かりやすい。まず最も保護が必要な人たちをしっかり守る、と。でもここからがユニークですよね。
そうです。二つ目のポイント。年収が7万5千ドルを超えると、所得の10%が面積金額になるんです。
面積金額、つまりその金額に達するまでは保険が一切適用されず、100%自己負担になるということですね。ちょっと待ってください、所得の10%って結構な額じゃないですか。
ええ、かなりの金額です。例えば津川氏も例に出していますが、年収10万ドル、日本円で1500万円くらいの4人家族なら、面積金額は1万ドル、つまり150万円です。
150万円。家族全体で年間150万円までは風邪をひこうが、子供が転んで怪我をしようが、全部自分たちで払ってくださいね、と。
正直、僕の家計だと、子供がちょっと熱を出したくらいでは、病院に行くのをためらってしまいそうです。このくらいなら家で様子を見ようか、って。
まさにその行動変容こそが、この制度設計の狙いの一つなんです。この点については、後ほど詳しく触れましょう。
なるほど。
そして3つ目のポイントが、もちろん上限額の設定です。さっきの破滅的医療費を防ぐためのキャップですね。個人7年間7500ドル、高所得世帯、例えば年収30万ドルの4人家族でも、年間3万ドルが上限、これ以上は絶対にかからない。
ああ、なるほど。ここでセーフティーネットがしっかり機能するわけですね。日常的な細かい出費は自己責任で、でも万が一、がんみたいな大きな病気になっても、人生が破綻することはない、と。
そして僕が一番これは賢いなぁと思ったのが4つ目のポイントです。
例外規定ですね。
そうです。予防医療とか慢性疾患の管理とか、独立した第三者機関が価値の高い医療と認めたものは、この面積金額の対象から除外される。
そこが非常に巧妙な点なんです。面積金額があると、先ほどおっしゃったように、人々は受診をためらうかもしれない。でも、がんの検診とか、糖尿病の定期的なインスリン治療といった、将来の重症化を防いだり、生命を維持したりするために不可欠な医療まで控えられちゃうと、個人にとっても社会全体にとっても大きな損失ですから。
確かに、目先の医療費をけじったせいで、後で何倍ものコストがかかるなんてことになりかねない。
ですから、そういった高価値な医療は、自己批判なし、あるいはごく小額で受けられるようにして、必要な医療へのアクセスはきちんと確保する。無駄な医療は抑制しつつ、必要な医療はむしろ推奨する。非常に考え抜かれた設計なんです。
日本の現状と課題
うーん、これはすごい。日常的な軽い症状には自己責任を、でも本当に必要な医療や高額な医療には手厚いセーフティーネット、っていうメリハリがものすごく効いている。先ほど、面積金額の狙いという話がありましたけど、なぜわざわざそんな高いハードルを設ける必要があるんでしょうか。何か経済学的な理由があるんですよね。
ええ、ここで出てくるのがモラルハザードという経済学の概念です。
モラルハザード。津川氏の解説では、日本のコンビニ受診とほぼ同じ意味だと書かれていましたね。
その通りです。保険があることで自己負担が安くなるので、本来なら家で寝ていれば治るような軽い風邪でも、念のため病院に行っておこうか、というように必要以上の医療サービスを受けてしまう現象のことです。これは倫理的に悪いという話ではなく、価格が安ければ需要が増えるという、人間の合理的な経済行動なんですね。
なるほど。スーパーで野菜が安かったら、つい多めに買ってしまうのと同じようなものか。
まさに。そのことを実証した有名な研究に、ランド医療保険実験というものがあります。これは数千人規模の被験者を長期間追跡した非常に大規模の社会実験でして、この研究で、医療サービスの価格弾力性、つまり価格の変化に対して需要がどれだけ変化するかが、-0.2から-0.3だと示されました。
-0.2から0.3?
それはどういう意味でしょう?
つまり、自己負担額が10%上がると、医療サービスの利用量が2から3%減るということです。ゼロではないというのがミソで。
ああ、なるほど。
価格が医療の利用量に確かに影響を与えるということが証明されたわけです。USAプランはこの原理をダイナミックに利用している。所得の10%という高い面積金額を設定することで、本当にこの出費をしてまで病院に行く必要があるだろうか、と、人々に賢明な判断を促し、社会全体の医療費を抑制しようとしているんです。
-そうか。だから僕が病院に行くのをためらうかもしれないと感じたのは、まさにプランの設計者の思う壺だったわけですね。
-そういうことになります。しかしここが非常に重要なのですが、USAプランはモラルハザードを抑制する一方で、医療保険の本来の役割、つまり高額な医療費による経済的リスクから国民を守る、というセーフティーネットの機能は絶対に手放さない。
提唱者のゴールドマン氏は、保険は全ての人に全ての医療を提供する必要はないが、全ての人に対するセーフティーネットであるべきだ、と述べています。この哲学がプラン全体を貫いているんです。
-なるほどな。このUSAプランの哲学を聞いてから、もう一度日本の制度を振り返ってみると、高額療養費制度の位置づけが全く違って見えてきます。
これまで僕はこの制度って、あくまで3割負担とかを補うための追加的なオプション、まあ補助的な制度だと思っていたんですよ。
-多くの人がそう考えていると思います。
-でも、USAプランの考え方からすると、全く逆なんですね。この上限を設けるというセーフティーネット機能こそが保険のど真ん中、本丸であって、極論すればこれさえしっかりしていれば、みな保険の最も重要な目的は達成できる、とさえ言える。
-まさに、塚橋がみな保険の屋台ごてと表現しているのは、その確信をついています。その重要性は国際的な比較からも明らかです。
自己責任の価値観が強いとされるアメリカや、あるいはシンガポールのような国でさえ、この種のセーフティーネットだけは国として提供すべきだと考えられているんです。
-それはすごいですね。つまり、どんな政治思想とか経済体制の国であっても、病気のせいで国人を破産させてはいけない、という一点においては共通の認識がある、と。
-そう考えられます。しかし、ここで日本の厳しい現実が見えてくるんです。このUSAプランが提案している事後負担の上限額と比べると、日本の高額療養費制度の上限額はどう思われますか?
-いや、それはもちろん日本の方が手厚いんじゃないですか?手厚い港保険制度が自慢なわけでし。
高額療養費制度の重要性
-実は、所得水準にもよりますが、決してそうとは言い切れないんです。特に中間層以上では、日本の自己負担上限額は、現時点ですでにUSAプランで想定されている額よりも高いケースが出てきます。
-へー。
-そして、ご存知の通り、その上限額のさらなる引き上げが、今まさに検討されているわけです。
-そうなんですか。それはショックです。つまり、私たちが親対後手だと思っていたセーフティーネット機能が、知らず知らずのうちに少しずつ弱まってきている、と?
-そういう見方ができてしまうということです。これは非常に深刻な話で、USAプランが私たちに突きつけているのは、財源が限られる中で、何を優先し、何を諦めるのかという非常に重要なトレードオフの選択なんです。
-そこで、塚場氏が非常にわかりやすい、しかし究極ともいえる問いを投げかけていますよね。例えば、日本の窓口負担を現在の1割から3割という水準から思い切って5割に上げたとします。
-大反発が起きるでしょうね。医療費が倍になるのかとパニックになる人もいるかもしれません。
-間違いないです。でも、USAプランの論理で考えると、全く違う景色が見えてくる。たとえ窓口負担を5割に上げたとしても、もし同時に高額療養費制度の上限額を今よりもずっと低く設定しておけば、国民は破滅的な経済リスクからは守られるということになりますよね。
-その通りです。風邪で病院に行ったら、支払う額は今までの倍以上になるかもしれない。しかし、がんや心臓病のような大きな病気になって、年間500万円の治療が必要になっても、自己負担は例えば年間50万円で絶対に打ち止めです、と国が保障してくれる。そうなっていれば、少なくとも家計が破綻することはありません。
-日常的な医療では自己負担を増やしてコスト意識を高めてもらう。その代わり、本当に高額な医療が必要になったときには、国ががっちり守る。そういうメリハリのある制度設計も可能だと。ここで日本の進むべき道の選択肢が、はっきりと2つ見えてきた気がします。
-だからこそ、塚橋はこれがど真ん中の問題だというのです。さまつな制度改定の話じゃなくて、日本の医療制度を未来の形を決める、避けては通れない論点です。国民が今、真剣に議論すべきなのは、この2つの選択肢です。
-そして、選択肢の2つ目は発想を転換し、高額療養費制度というセーフティーネットは絶対に維持、あるいはむしろ強化する。その代わり、財源を確保するために、日常的な医療における窓口の自己負担割合を上げていくという道です。
-どちらが優位悪いという単純な話ではないですね。軽い風邪でも気軽に病院に行ける社会がいいのか。それとも、万が一の時に絶対的な安心がある代わりに、普段の軽い症状は自己責任で、という社会がいいのか。私たちの価値観そのものが問われる、まさに国民的な議論が必要なテーマだ。
いやー、今回は日本の高額療養費制度をアメリカの先進的な議論を鏡として深く見てきましたが、普段あまり意識していなかった制度がこれほどまでに重要だったとは本当に驚きました。
-ここで重要なポイントを一度整理しておきましょうか。
-お願いします。まず第一に、高額療養費制度は単なる補助ではなく、破滅的な医療費から私たちを守る皆保険の屋台骨であるということ。
第二に、アメリカで提案されているUSAプランは、保険の役割をセーフティーネットに集中させ、日常医療のコスト意識を高めるという明確な哲学に基づいていること。
-そして最後に、日本は今、その屋台骨であるセーフティーネットを少しずつ弱めていくのか、それとも日常医療の負担のあり方を根本から見直すのか、という重大な議論に立たされているということですね。
-ええ、その通りです。今回の議論は、主に医療費のコストを誰がどう負担するかという側面に焦点を当ててきましたが、ですが最後に一つ、あなたに考えてみてほしい問いがあるんです。
-何でしょう。
-USAプランでは、価値の高い医療は事後負担から除外されるという話がありましたよね。
-予防医療とか慢性疾患の管理といったものです。
-はい、ありました。非常に巧妙な仕組みだと感じた部分です。
-あれは、私たちに新しい視点を与えてくれると思うんです。つまり、支払いの方法を変えるのであれば、私たちは同時に、そもそもどのような医療に価値があるのかを、社会として、そして個人として、もっと真剣で考えるべきではないかということです。
-ああ、なるほど。私たちはこれまで、保険が適用される医療は全て等しく価値があるものだと無意識に考えてきたかもしれません。
-でも、本当にそうでしょうか。例えば、延命のためだけの治療と、生活の質を劇的に改善する治療は同じ価値なのでしょうか。
-ただ、安いか高いか、保険が効くか効かないかという話だけではなく、何が本当に私たちの健康や幸福にとって価値ある医療なのか、その価値の物差しを私たちは持っているだろうか、と。
その本質的な議論こそが、これからの日本の医療制度の未来を決める本当の鍵になるのかもしれません。
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