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2026-02-09 05:19

令和8年度診療報酬改定|パブコメ5,808件と公聴会が示す5つの論点

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令和8年1月30日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第646回)では、令和8年度診療報酬改定に向けたパブリックコメントと公聴会の結果が報告されました。パブリックコメントには5,808件の意見が寄せられ、公聴会では10名の意見発表者が医療現場や患者の立場から改定への要望を述べています。

今回の報告から浮かび上がった主な論点は5つあります。第1に、物価高騰・賃上げへの対応が最多の意見を集めました。第2に、医療DX・ICTの活用推進に対する期待と課題が示されました。第3に、地域医療体制の確保と医療機関の機能分化が求められています。第4に、かかりつけ医機能の強化とオンライン診療の普及が要望されました。第5に、後発医薬品の安定供給と使用促進のバランスが論じられています。

パブリックコメントの概要:4つのテーマに5,806件の意見

パブリックコメントは令和8年1月14日から20日までの7日間、厚生労働省ホームページを通じて募集されました。意見提出件数は5,808件に上り、これらの意見は項目別に分類され、延べ5,806件として集計されています(1件の意見が複数項目に該当する場合や集計上の端数処理があるため、提出件数と項目別の総数にはわずかな差異があります)。以下では、4つの大テーマごとの件数と主な内容を整理します。

最も多くの意見が集まったテーマは「Ⅰ 物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」であり、2,070件が寄せられました。このうち、物件費の高騰対応に587件、医療従事者の処遇改善に435件、ICT・AI・IoT等の利活用推進に382件が含まれます。意見の多くは、基本診療料の引き上げによる賃上げ対応や、ベースアップ評価料の事務負担軽減を求めるものでした。

2番目に多かったテーマは「Ⅲ 安心・安全で質の高い医療の推進」で、1,592件の意見がありました。このテーマでは、歯科医療に関する意見が296件と突出しており、口腔疾患の重症化予防や歯科治療のデジタル化推進が求められています。薬局・薬剤師業務に関する意見も166件寄せられ、地域支援体制加算の見直しや対人業務の充実化が主要な論点となりました。

3番目のテーマは「Ⅱ 2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進」で、1,475件でした。かかりつけ医機能の評価に280件、在宅看取り等を担う医療機関・薬局の評価に199件が寄せられ、地域における切れ目のない医療提供体制の構築が求められています。

4番目のテーマは「Ⅳ 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」で、671件でした。後発医薬品・バイオ後続品の使用促進に156件、医学的妥当性や経済性を踏まえた処方の推進に138件が集まっています。

なお、医療DX・ICT関連の意見は、上記Ⅰの382件のほか、Ⅲの「医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価」(24件)やⅣの同再掲項目(43件)にも分散しており、テーマ横断的に関心の高さがうかがえます。

意見提出者の属性:回答者768名のうち医療従事者が約7割

パブリックコメントの意見提出者の属性も公表されました。なお、この属性データは意見提出件数5,808件のうち768名が回答したものであり、全回答者の属性を示すものではない点に留意が必要です。

年齢別では、40~64歳が69.5%と大半を占めました。20歳~39歳が12.1%、65歳~74歳が14.8%と続いています。

職業別では、医師が30.3%で最多となりました。看護師が24.9%、その他の医療従事者が10.5%、薬剤師が4.4%、歯科医師が1.0%であり、医療従事者全体で約7割を占めています。会社員(医療関係の企業以外)は6.9%、自営業は4.7%にとどまりました。歯科に関する意見が296件と多い背景として、歯科医師以外の医療従事者や患者からの意見も含まれていることがうかがえます。

公聴会の概要:石川県を中心に10名が意見を発表

公聴会は令和8年1月21日にハイブリッド形式で開催されました。石川県を中心とした北陸の意見発表者がオンラインで参加し、公募により選定された10名が意見を述べています。発表者の構成は、健康保険組合常務理事、医療法人社団理事長、労働組合事務局長、病院院長、中小企業代表取締役会長、歯科医院院長、行政課長、薬剤師、患者代表、病院看護局長です。保険者・事業主・労働者・医療提供者・患者・行政と、幅広い立場からの意見が寄せられました。

以下では、公聴会で示された5つの主要論点を整理します。

論点1:物価高騰・賃上げへの対応と被保険者負担のバランス

物価高騰と賃上げへの対応は、公聴会でも最も多くの発表者が言及したテーマです。この論点では、医療従事者の処遇改善を求める声と、保険料負担の増加を懸念する声の双方が示されました。

健康保険組合の常務理事からは、診療報酬の本体部分が大幅に引き上げられることについて、費用を負担する被保険者や事業主にとって納得のできる対応が必要との意見がありました。中小企業の代表からは、賃金と連動して増加する社会保険料が厳しい経営環境に追い打ちをかけている実態が報告されています。

医療提供側からは、賃上げの確実な実施と検証の仕組みが求められました。病院看護局長からは、夜勤手当が2010年以降ほとんど引き上げられていない現状が指摘され、職責に見合った賃上げが強く要望されています。労働組合事務局長からも、医療現場で働く全ての労働者の賃上げが一人一人の手元に確実に届くよう、実績報告を求め検証できる仕組みの必要性が述べられました。

論点2:医療DX・ICTの活用推進と現場の課題

医療DX・ICTの活用推進は、パブリックコメントでも複数のテーマにわたって意見が寄せられた重要テーマです。公聴会では、推進への期待とともに、導入・運用面での課題が具体的に示されました。

地域の診療所を代表する理事長からは、医療DXの効果を最大化するために、導入や運用段階の負担を適切に評価すべきとの意見がありました。特に小規模診療所では、システム導入に伴う説明・入力・連携調整の実務が増加しており、負担が顕在化しているとの報告です。

看護局長からは、ICT機器を導入するだけでは業務効率化は難しく、専任の看護職員がシステム設計や使用方法の支援に当たる体制が必要との指摘がありました。導入の効果と影響を検証しながら、システムや運用を改善し続ける体制づくりが求められています。

患者代表からは、医療DXを通じた患者への情報共有の推進が要望されました。医療機関同士の情報共有だけでなく、患者自身が自分の医療情報にアクセスできる仕組みの整備が重要であるとの意見です。紹介状の内容を患者に共有することも不可欠であり、患者への診療情報の共有が置き去りにされていると指摘しています。

論点3:地域医療体制の確保と機能分化

地域医療体制の確保と機能分化は、公聴会において北陸地域の実情を踏まえた切実な意見が寄せられたテーマです。能登半島地震の経験を踏まえた発言も目立ちました。

病院院長からは、能登半島地震の際に被災地だけでなく金沢以南の医療機関も逼迫した経験が報告されました。この教訓から、地域全体でのサージキャパシティ(急増する患者への対応力)の確保が必要であり、急性期医療機関が病床にゆとりがあっても経営的に成り立つ制度設計が求められています。

行政課長からは、人口減少に伴う医療提供体制の縮減は許されないとの認識が示されました。医師偏在是正に向けた対策として、重点的に医師確保が必要な区域への手当支給や、知事による指定制度への期待が述べられています。

薬剤師からは、石川県の中小薬局の実情が報告されました。人口減少地域では薬局の大規模化が必ずしも有効でなく、降雪地域では集約化がアクセスの阻害につながりうるため、立地や規模だけでなく薬局の機能を評価する配慮が必要とされています。

論点4:かかりつけ医機能の強化とオンライン診療の普及

かかりつけ医機能とオンライン診療は、パブリックコメントでも合計390件(かかりつけ医機能280件、オンライン診療110件)の意見が寄せられた重点テーマです。公聴会では、両者を連携させることで地域医療の質を高める具体的な提案がなされました。

患者代表からは、かかりつけ医と専門医がオンライン診療で連携する仕組みの普及が要望されました。地方では近隣に専門医がおらず、遠方の病院に通院する患者や、治療のために転居を余儀なくされる患者がいるとの実情が述べられています。オンライン診療の活用により、居住地にかかわらず適切な診療を受けられる環境の整備が求められました。

診療所の理事長からは、かかりつけ医としての役割を果たすには、診療行為そのものだけでなく、地域で医療を続けるための体制づくりへの評価が必要との意見がありました。24時間対応の体制維持や多職種連携の調整など、小規模診療所にとって負担の大きい取り組みへの支援が求められています。

論点5:後発医薬品の安定供給と使用促進

後発医薬品の安定供給と使用促進も、パブリックコメントで156件の意見が集まった重要テーマです。公聴会では、費用負担者の立場と医療提供者の立場の双方から具体的な要望が示されました。

健康保険組合の常務理事からは、後発医薬品の使用が後退しないよう、品質と安定供給の確保に向けた取り組みの継続が要望されました。バイオ後続品については、医療機関や薬局の協力がなければ使用促進が難しいため、保険者も一体となって普及に取り組む必要性が述べられています。

薬剤師からは、医薬品の供給不足がいまだ続いており、説明業務や在庫管理にかかるコストが現場を疲弊させている実情が報告されました。安定供給に関する評価の充実と、供給不足の解消に向けた対応が求められています。

パブリックコメントでも、安定供給を確保した上での使用促進を求める意見が46件寄せられ、供給不安と使用促進の両立が課題として浮き彫りになりました。

まとめ

中医協第646回総会で報告されたパブリックコメント5,808件と公聴会の結果からは、5つの論点が浮かび上がりました。物価高騰・賃上げへの対応では、医療従事者の処遇改善と被保険者負担のバランスが求められています。医療DX・ICTの活用では、推進への期待とともに導入・運用面の課題解決が必要です。地域医療では、能登半島地震の教訓も踏まえた体制確保と機能分化が急務です。かかりつけ医機能の強化とオンライン診療の普及は、地域間の医療格差を解消する手段として期待されています。後発医薬品については、安定供給の確保と使用促進の両立が引き続き課題です。これらの論点は、令和8年度診療報酬改定の答申に向けた議論の核心となるものであり、今後の個別改定項目の検討に大きく影響するでしょう。



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サマリー

令和8年度の診療報酬改定に向けて、医療現場から集まった5,808件の意見は、医療制度の危機的状況を明らかにしています。特に、賃上げやデジタル化、地域医療の維持、オンライン診療の連携、ジェネリックの供給問題が重要な論点として挙げられています。

医療制度の危機と重要な論点
さて、2026年2月に行われる次の診療報酬改定。なんだか少し難しく聞こえるかもしれないですけど、要は私たちの医療の値段とかルールを決めるものすごく大事な話し合いなんです。
そのために、今現場からですね、5,800件を超える意見が集まってまして、これをじっくり読み解いていくと、日本の医療が今まさに悲鳴を上げている姿っていうのが浮かび上がってくるんですね。
そうなんですよ。これ単なる要望リストっていうわけじゃなくてですね、医療従事者の方、患者さん、そして保険料を払っている企業、それぞれの立場からもう限界だっていうかなり切実な声が集まっているんです。
今回はこの膨大な声の中から、日本の医療が5つの方向から同時に圧迫されているその構造は深掘りしていきましょうか。
5つの圧力ですか。なるほど。では早速最も根本的な圧力、つまりお金の問題から見ていきましょう。テーマは物価高と賃上げです。
いやこれ特に衝撃的だったのが、看護師の方の夜勤手当なんですけど、2010年からほとんど上がっていないという声で、物価も社会もこんなに変わったのに、そこだけ時間が止まってるかのようですよね。
まさに、一方で保険料を負担する中小企業からは、いやこれ以上の負担増は倒産につながるっていうもう失痛な声も上がってるわけです。
ここで見えてくるのは単なる賃金問題じゃなくてもっと根深い対立なんですよね。
つまり医療は社会インフラなのか、それとも経済原則に従うべき一産業なのかと、その根本的な思想の対立がこのコメントの裏に透けて見えるんです。
なるほど。痛さみというよりは思想のぶつかり合いと、そしてその経済的な圧力が次のテーマにも直結してくるわけですね。
効率化が求められる中で期待されているのが医療DX、つまりデジタル化です。でも報告書を読むか、これもまた新たな負担になってるっていう現実が見えてきます。
特に小規模な診療所だとシステムの導入コストとか日々の入力作業がその本来の診療時間を奪ってしまっていると、そういう声が非常に多いんですよね。
ここで重要だなと思ったのが患者の代表の方からの意見で、医療機関同士で情報を共有するだけじゃなくて患者自身が自分のデータにアクセスできるようにしてほしいと。
それは大事な視点ですね。
これはDXが誰のためなのかを問い直す本質的な指摘だと思います。
業務効率化のためだけじゃダメなんだと。その話は3つ目の圧力、地域医療の維持と災害への備えにもつながってきますね。
そうですね。
ノトハン島自身の経験がこの議論にやっぱり大きな影を落としています。
はい。被災地の病院だけじゃなくて、その周辺地域の医療機関も一気に逼迫した。この教訓から今、サージキャパシティの確保が強く求められていますね。
サージキャパシティですか。それは個々の病院が備えるだけじゃなくて、地域全体で一つの大きな救急病院みたいに機能するっていうイメージでしょうか。
圧力と解決策の模索
まさにその通りです。平時から地域全体で連携して、いざという時に患者を受け入れるキャパシティを融通し合うという考え方です。
ただ、人口減少が進む地域でこれをどう実現するのか。
難しいですよね。
ええ。例えば雪深い地域で薬局を闇雲に集約すれば、住民の方は薬局を取りに行けなくなってしまう。地域の特性を無視した制度設計はかえって医療を遠ざけてしまうんです。
地方の医療体制をどう維持するかという話が出ましたけど、そこで解決策の一つとして期待されているのが4つ目のテーマ、かかりつけ医とオンライン診療の連携なんですね。
はい。地方に住んでいても、近所のかかりつけ医を通じて都市部の専門医の診察をオンラインで受けられるようになれば、医療格差の是正につながるかもしれない。
これ単なる利便性の話じゃなくて、通院という概念そのものを変える可能性を秘めてますよね。
そして最後の5つ目の圧力が、高発医薬品、つまりジェネリックのジレンマです。
ああ、来ましたね。
医療費を抑えるための切り札のはずが、今は供給不足で現場を混乱させていると。
ある薬剤師の方のコメントが非常に印象的でした。患者さんにはまたこの薬ないんですかって責められて、製薬会社に電話してもつながらないこの板はさみで心が折れそうだと。
うわあ、それは。
数字だけでは見えない現場の疲弊が伝わってきますよね。
安価な薬の使用促進と医薬品の安定供給、この2つの目標が今や互いに矛盾してしまっているのが現状なんです。
賃上げ、DX、地域医療、オンライン診療、そしてジェネリック。
こうしてみると5つのテーマはバラバラじゃなくて、全てが医療の質と社会の負担という天秤の上で揺れ動いてるんですね。
まさにその通りです。
これらの現場の声が最終的にどういう形で制度に反映されるのか、私たちはそのプロセスをしっかり見ていく必要がありますね。
今回浮かび上がったのは、未来の医療を守るための投資の必要性と、それを今誰がどう負担するのかという痛みを伴う現実でした。
さて、あなたはこの未来の安心と現在の負担のバランス、どう考えますか?
05:19

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