さて、今回の探究ですけれども、令和7年9月11日、つい先日提出されたばかりの診療情報指標の最終報告に注目します。
これは、2年後に迫る令和8年度の診療報酬改定、 まあ、医療サービスの肯定価格を決める大きなルール変更ですね。
これに向けた重要な議論のベースになるものです。 手元にあるのは、診療報酬調査専門組織、入院外来医療等の調査評価分科会という、
専門家の会議に提出された診療情報指標等作業グループの最終報告書の抜粋になります。 ここから、今後の医療がどうなっていくのか、その方向性を読み解いていきましょう。
今回のミッションですが、この報告書の中から、特に地域の実情に応じた旧世紀医療の評価、 それから高齢者の入院医療、この2つのテーマですね、ここに関しての新しい考え方とか具体的な提案を掘り下げて、
それがこれからの医療提供体制、ひいては皆さんが受ける医療にどう影響するのか、 その辺りを探っていきたいと思います。
では早速、革新に迫っていきましょう。 まず、全体像をつかむために、この報告書が示している大きな論点、これは主に3つに整理できそうですね。
1つ目は、人口が少ない地域で、その地域にとって不可欠な旧世紀の病院、これをどう評価していくのか。
2つ目が、増え続ける高齢者の入院、特に手術を伴わない内科系の疾患ですね。 これに対する評価をどう見直すか。
そして3つ目が、患者さんの状態を示す重症度、医療看護必要度という指標、これの測定方法とか活用の仕方についてです。
ええ、その通りです。これら3つの柱は、それぞれ独立しているように見えて、実は深く関連しあっていますね。
まあ、現代日本の医療が直面している大きな課題、つまり地方における医療資源の確保ですとか、急速な高齢化への対応、それから医療現場の負担軽減と質の維持、これらに対する具体的な解決策の方向性を示唆しているといえます。
データに基づいて現状を冷静に分析して、課題解決に向けた具体的な提案を行うという、そういう姿勢が一貫していますね。
令和8年度改定の方向性を占う上では、極めて重要な文書だと思います。
なるほど。では、最初の柱、地域特性に応じた旧世紀医療の新たな評価から見ていきましょうか。
ここで非常に興味深いのが、地域シェア率という新しい概念、これの導入提案ですね。
人口20万人未満の二次医療圏、つまり比較的小さな医療エリアですよね。
そこにおいて救急車の受け入れ件数そのものは、例えば大都市の病院に比べると少なくても、その地域にとってはもう文字通り最後の砦みたいになっている病院ってありますよね。
ええ、まさにその点が課題でした。
現在の評価軸、例えば年間の救急搬送受け入れ件数のその絶対数だけを見てしまうと、そうした地域の基幹病院の貢献度っていうのが必ずしも適切に評価されないケースがあったわけです。
どうしても人口が多い地域の病院の方が絶対数は多くなりますからね。
ああ、なるほど。そこで出てきたのが地域シェア率。これは具体的にはどういう計算になるんでしょう。
計算式自体はシンプルでして、その病院が年間に受け入れた救急搬送の件数をですね、その病院が属している二次医療権全体の合計受け入れ件数で割るというものです。
つまり、その病院がその地域全体の救急搬送のうちどれくらいのパーセントを分担しているかという割合を示す指標ですね。
なるほど。絶対数じゃなくて地域の中での相対的な貢献度で評価しようということですね。
これなら人口規模の代償に左右されずに、その地域でどれだけ重要な役割を担っているか、それが可視化されそうですね。
その通りです。例えばですね、人口50万人のA病院にあるX病院が年間1000件、それから人口10万人のB病院にあるY病院が年間300件の救急搬送を受け入れていたとしますね。
絶対数だけ見れば当然X病院の方が多いわけです。しかし、もしB病院全体の搬送件数が年間500件だったとしたら、Y病院の地域シェア率は300割る500で60%にもなるわけですよ。
60%?
この60%という高い貢献度をきちんこ評価体系に反映させようじゃないかという意図があるわけです。これは地域医療を守る上で非常に重要な視点の転換と言えるでしょうね。
その考え方はすごくよく理解できます。ただ、この地域シェア率という指標を、良い面ばかりではない可能性もちょっと考えられませんか?
例えば、評価されることを意識しすぎるあまり、病院が受け入れやすい軽症の救急ばかりを優先してしまって、結果的に重症患者さんの受け入れ体制に何かしわ寄せが来るみたいな懸念はないんでしょうか。
あるいは、この指標の根拠となる二次医療権の配り自体が将来的に見直された場合、指標の安定性が損なわれるリスク、これも指摘されてますよね。
はい、鋭いご指摘ですね。まさにそうした潜在的なリスクとか、制度導入に伴う意図すざる結果については、報告書の中でも慎重な検討が必要だと触れられています。
シェア率を上げるために、特定のタイプの患者さんを選別するような、そういうインセンティブが働かないかといった点は注視が必要ですし、二次医療権の区割り変更への対応も確かに課題ですね。
ですから、この指標だけで全てを評価するというよりは、やはり他の要素と組み合わせて総合的に判断していくことが重要になります。
他の要素というと?
例えば、既存の旧正規医療体制を評価する総合入院体制加算とか旧正規充実体制加算といった評価項目がありますね。
これらについても、今回の報告書では整理統合の議論が進められています。評価の要件をより実態に合わせて統一したり、あるいは人口が少ない地域については要件を緩和したりなど、より柔軟な体系を目指す動きですね。
地域シェア率も、こうした既存の評価体系の中にどう位置づけていくかという、そういう議論になるでしょう。
全体としてみると、学位置的な基準を押し付けるのではなくて、多様な地域の実情に応じたオーダーメイドに近いような評価体系を模索している段階と言えるんじゃないでしょうか。
地域ごとのオーダーメイド評価ですか。それは理想的ですけど、実現にはかなり複雑な制度設計が求められそうですね。
では次の柱に移りましょうか。
2つ目は高齢者の入院医療、特に2022年度に新設された地域包括医療病棟、これに関する分析ですね。
ここでの焦点は手術などを伴わない内科系の疾患で入院した場合の評価ということですね。報告書を読み解くとちょっと驚くような実態が浮かび上がってきますね。
後縁性肺炎とか普通の肺炎、尿路感染症といった高齢者の方に多い内科系の病気で入院した場合、外科手術みたいにこう高額な処置が行われるわけではないのに、実際には非常に多くの医療資源、具体的には人的なケアとか細かな処置に多くの手間がかかっているということがデータで示されたと。
これってなんかこれまでの常識を少し覆すような指摘じゃないですか。
まさにそこが今回の報告書のハイライトの一つと言ってもいいかもしれません。地域包括医療病棟というのは包括払いという入院日数に応じて定められた基本的な費用の中に多くの検査とか処置が含まれる、そういう支払い方式が主体なんですね。
しかし、その包括範囲内で行われた個々の診療行為をでき高、つまり一つ一つの行為ごとに点数を計算する方式で積み上げて分析してみたところ、手術を伴う外科系の症例よりも内科系の症例の方がこの隠れたコストとも言えるような医療資源投入量が相対的に高い傾向が明確になったわけです。
つまり請求上の点数では見えにくい部分で、内科系の特に高齢者の緊急入院には相当なケアが集中している可能性があるということですね。
そういうことです。特に救急搬送での入院とか予定外の緊急入院が多いというのも特徴ですね。
データを見ると、地域包括医療病等において、手術を伴わない緊急入院というのは、予定入院とか待機的な入院に比べて、医療資源投入量がもう度質して高いことが示されています。
疾患別に見ても、後縁性肺炎、肺炎、尿路感染症といった内科系の疾患が上位を占めていて、これらの疾患では緊急入院の割合がなんと90%を超えるものも少ないんです。
90%以上が緊急入院。さらに報告書には、85歳以上の高齢者に限ると、内科系疾患の約9割が緊急入院という、これもかなり衝撃的な数字が出ていますね。
これは下科系の疾患と比べても、著しく高い割合です。
この事実はですね、高齢者医療における内科系疾患、特に緊急対応の重要性を改めて浮き彫りにしているといえます。
そして現在の診療報酬体系が、こうした手間のかかる内科系緊急入院の実態を十分に評価しきれていないんじゃないかという、大きな問題提起につながってくるわけですね。
これがひいては病院経営ですとか、現場の疲弊にもつながりかねないと。
その多面的な意義を再確認した上で、A項目処置・検査等、B項目解除必要度、C項目手術等をうまく組み合わせて患者さんの全体像を捉え、
必要なケアの内容とか量を評価するための、いわばリアルワールドデータとして、より有効に活用していくことが期待されているということです。
測定の効率化と評価の質の担保、その両立を目指すということですね。
なるほど。よくわかりました。ありがとうございます。
ここまで、報告書の3つの主要な柱を見てきましたね。
地域ごとの救世機医療の評価に、地域シェア率という新規軸を導入する提案。
高齢者、特に手間のかかる内科系入院医療の実態に光を当てた評価の見直し。
そして、日々の患者さんの状態評価である、看護必要度の測定負担軽減と評価の適正化。
かなり具体的で踏み込んだ提案が多かったですね。
まさにそうですね。
全体を通して言えるのは、これまで診療報酬体系の中では、ややもすると学位的な評価になりがちだったり、
あるいは手術などのわかりやすい処置に比べて評価が手薄になりがちだった部分に、
しっかりとデータに基づいてメスを入れて、より実態に即した評価を目指そうという、そういう強い意志が感じられますね。
特に地域シェア率という新たな視点や、高齢者の内科系緊急入院における医療資源投入量への着目。
これは今後の医療提供体制を考える上で、非常に視差に富んでいると思います。
これらの提案が最終的に2年後の令和8年度診療報酬改定で、どのような制度として具体化されていくのか。
これは医療関係者の方々だけでなく、私たち国民にとっても目が離せない動きですね。
地域医療の持続可能性を確保し、同時に医療の質を高めていくという、2つの大きな目標を達成するために、
今回の報告書が投げかけた論点というのは、避けては通れない重要な課題だと思います。
今後の具体的な制度設計のプロセスを、注意深く見守っていく必要があるでしょうね。
はい。今回は診療報酬改定という、少し専門的なテーマの背景にある重要な報告書の中身を、皆さんと一緒に深掘りしてみました。
地域シェア率、高齢者の内科入院、看護必要度。
ちょっと聞き慣れない言葉もあったかもしれませんが、こうした制度の見直しの一つ一つが、
巡り巡って私たち自身や家族が将来受ける医療の質、あるいは医療へのアクセスのしやすさに、少なからず提供を与えていく可能性があるんだなということを感じていただけたでしょうか。
そうですね。最後に一つ、この一連の議論を踏まえて、皆さんに少し考えてみていただきたい問いがあります。
それは、今回見てきたような評価の物差しが変わること、つまり何を測り、何を重視するかという基準が変わることが、医療を提供する側、つまり病院や医師、看護師の方々の意識とか行動に、どのような影響を与えうるかということなんです。
評価が変わると、行動が変わるということですか?
その可能性は大いにあると思います。例えば、地域シェア率が高く評価されるようになれば、先ほど話に出たように、人口の少ない地域でも、救急経営に積極的に取り組む病院が増えるかもしれません。これは地域住民の方にとっては非常に望ましい変化でしょう。
しかし、その一方で、例えば評価指標には直接現れにくいけれども、非常に重要な時間をかけた丁寧な隊員支援ですとか、地域の介護施設との連携強化、あるいは病気の予防活動といった機能への関心が、相対的に薄れてしまうようなことはないだろうかと。
なるほど。どうしても評価される項目、点数化される部分に組織としてのエネルギーとか資源が集中しやすくなるという側面は否定できないかもしれないですね。
そういう懸念ですね。これは非常に難しいバランスの問題です。新しい評価指標を導入することで、これまで光が当たっていなかった人たちにとっては非常に負担が大きいのではないかと思います。
効率化とか適正化の名のもとに、数値化できない大切なものが見過ごされてしまうリスクがあると。
そういう懸念ですね。これは非常に難しいバランスの問題です。新しい評価指標を導入することで、これまで光が当たらなかった部分に光が当たるというメリットがある一方で、光が当たらなくなる部分が出てくる可能性もあるわけです。
この変化が医療の現場で働く人々のモチベーションとかケアの質にどのような影響を与えるのか。単に制度が変わるというだけでなく、その先にいる人への影響まで創造力を働かせることが重要なんじゃないかなと思います。